就労不能保険(就業不能保険)は必要?いらない?考え方のコツと知っておきたい基礎知識

生命保険には古くから死亡保険と医療保険が存在していますが、近年その間を保障する就労不能保険の開発が各保険会社で活発化しています。とはいうものの、本当に必要かどうかはしっかりした知識で判断したいところ。基本的な考え方について、公的保障を踏まえて解説していきます。

この記事の執筆者
永岑 和真(ながみね かずま)
乗合保険代理店 株式会社ホロスプランニング所属のファイナンシャルプランナー。ライフプランニングを元に、資産形成と保障設計を合わせた提案が得意。iDeCoやつみたてNISA等の資産運用に有利な制度との賢い付き合い方と、維持が年々厳しくなっている社会保障制度を元にした民間保険での備え方を中心に伝えている。

そもそも就労不能保険(就業不能保険)って?

保険会社によるCMや広告で認知度も増してきましたが、共働き世帯、独身世帯が増える中、就労できないリスクへ備えるニーズは高まってきています。 


一般的な医療保険が入院や手術といった「治療費の負担」を軽減する事を目的としていることに対し、就労不能保険は自宅療養や身体障害などで長期間就労できないことによる「収入の減少」を軽減する事を目的としています。


損害保険会社では所得補償保険と呼ばれており、万一時の収入の減少に対して保障を受けられることは心強いものの、本当に自身にとって必要かどうか、本当に困った時給付が受けられるかどうか、よく勉強しておく必要がある保険と言えるでしょう。 

まず押さえておきたい「傷病手当金」

働けなくなった場合、会社員の給料がどのような状況になるのかというと、下記の図のようになります。




会社員が業務上以外の事由により病気やけがをして仕事を休んだ場合は、会社からの給料は貰えなくなったり、減額をされることが一般的です。


しかし、有給休暇を消化しきったのち最長1年6カ月間までは、給与の3分の2相当額が傷病手当金として健康保険から給付されますので、無収入になる心配はありません。 


傷病手当金の給付期間が終了した後も障害が残った場合は障害年金の給付が受けられる可能性もあります。


家族構成にもよりますが傷病手当金より給付額は下がるという認識を持っておいた方がよいでしょう。 


家賃や住宅ローン、光熱費、携帯代等、固定費としてかかってくる生活費は家庭ごとに異なりますが、収入が3分の2になる期間が続いたとき、それらの生活費を預貯金と公的保障だけで凌ぐことが難しい場合は保険を比較・検討する必要も出てきます。 

働けなくなる原因は何が1位?

とはいうものの、「働けなくなる」という状況は中々イメージしづらい人も多いでしょうし、身の回りにそういった実例を聞く機会も少ないかもしれません。


そこで、先程取り上げた傷病手当金が、一体どういう理由で給付されているのかをまとめた統計がありますので、下記のグラフを見てみてください。 




全国健康保険協会が平成26年にまとめた、傷病手当金の支給事由調査のグラフになります。


筆者の方で色分けをしておりまして、横軸が年齢、縦軸が割合を示していますが、まず黄色の範囲が大きいことが目に入ってくるかと思われます。


こちらは精神および行動の障害ですので、20代~30代の働けなくなる理由第1位はうつ病などの精神疾患が占めていることを意味しています。


そして40代頃から、徐々に赤と緑の割合が増えてきますが、赤色の新生物はがんを指し、緑色の循環器系の疾患は脳血管疾患や心疾患といった血管を対象とする疾患を指します。


日本人の三大死因として有名なこれらの病気が、働けなくなる理由においても上位を占めていることが分かりますね。
 


この図からは、精神疾患と三大疾病が、ほぼ全年齢帯を通じて働けなくなる理由の約50%以上を占めていることを理解しておいてください。


自営業の場合は国民健康保険になりますので、傷病手当金が無いことには注意が必要です。


より預貯金を増やし民間保険での備えをしっかり行う必要性は高いといえるでしょう。 

民間保険を選ぶ時のコツ


生命保険、損害保険に限らず、保険商品は約款で定められた状況に該当した場合に給付を受けられる金融商品になります。


当然、その給付事由の範囲が広い方が保険料も高額になりますので、どの働けない状態をカバーしたいかを自分である程度絞っていく必要があります。


精神疾患も、三大疾病も、その他の身体障害、要介護状態も…と範囲を広げていくと、当然保険料は高額になっていきます。 


筆者が就労不能保険において民間保険を選ぶポイントを3つに絞りましたので、それぞれ参考にしてみてください。 

1:三大疾病系の保障が対象か、またその範囲

先述の通り、三大疾病は日本人の三大死因であり傷病手当金の給付要件でも精神疾患と並び上位を占めるものになります。


就労不能保険という名前ではありませんが、働けなくなった時に備える保険として三大疾病保険は検討候補に入ってくるでしょう。


保険会社によっては特定疾病保険という名前で販売しているところもあります。 


また、あわせて確認しておきたいのが、三大疾病の適用範囲です。


がん・心疾患・脳血管疾患が三大疾病の内訳ですが、特に心疾患と脳血管疾患は、急性心筋梗塞のみ、脳卒中のみ、と範囲が狭い保険会社も存在します。


商品名では区別がつかないケースがほとんどですので、実際に担当者やFPと相談する場合は「この商品の三大疾病の範囲は、心臓の病気部分は心疾患が対象ですか?それとも急性心筋梗塞のみですか?」などと質問してみてください。


特に心疾患に占める急性心筋梗塞の割合は2%程度ですので、かなり範囲が異なります。 

2:公的社会保障制度と連動しているか

以前は、就労不能保険は「いかなる職業においても全く就業できないと医学的見地から判断される状態」「保険会社所定の状態」等といった、どういう状況が給付要件に該当するのか非常にわかりづらい表現で定義されている商品が多かったのですが、最近では公的な社会保障制度と連動する事でわかりやすいものも増えてきています。 


「障害年金2級に該当した場合」「身体障害者等級3級に該当した場合」「要介護2と認定された場合」等、国が定めた基準に連動するタイプのものも一つ選定基準に取り入れるとよいでしょう。
 


要介護認定については、特別養護老人ホームの入所の対象者が、2015年4月1日の介護保険制度の改正に伴い、原則要介護3以上となった影響で、要介護3以上の認定は非常に厳しくなりましたので、民間保険では要介護1や2からでも給付されるものを選ぶのも一つポイントになります。 

3:精神疾患系の保障は給付要件をよく確認してから

最後に、精神疾患系の保障はうつ病などをはじめ非常に社会的な需要も高まっていますが、裏を返すと給付数も多くなってしまう事から保険料の設定が難しく、現在精神疾患を対象とした就労不能保険を取り扱っている保険会社は極めて少なくなっています。 


ただ、精神疾患への保障を取り扱っている会社でも「精神疾患により入院60日以上が継続された場合」等、厳しい支払い条件を設定している保険会社がほとんどですので、注意が必要です。

現状、FPとしての筆者の個人的な見解としては、精神疾患系への保障は主に貯蓄をしっかりする事が最大の保険であると考えています。


精神疾患についての保障は問い合わせの多い分野ではありますが、各保険会社の支払要件をお話しすると大体の方は「メンタルの病気で自宅療養はよく聞きますが、中々入院はそこまでしないですよね…」「しっかり貯蓄する事が大事ですね」という結論になることが多いです。 

就労不能保険(就業不能保険)の必要性のまとめ

いかがでしたでしょうか。
 


働けなくなる事へのリスクを考える場合は、傷病手当金という公的保障をまず理解する事、そしてその傷病手当金が給付されている理由を知り、精神疾患と三大疾病が半数を占めている事を押さえておいてください。 


今回は省略しましたが、残り半数の傷病手当金の支給事由については、個々の保険会社の商品で対応しているケースもありますので、詳細は各保険会社に確認してみてください。
 


その上で預貯金だけでは心もとないと感じた場合は、「三大疾病(特定疾病)」「公的保障との連動」「精神疾患の給付要件」の3つのポイントを踏まえながら民間保険を検討されることをオススメいたします。 


保険の検討は常に、本当に自身にとって必要かどうか、本当に困った時給付が受けられるかどうか、よく理解してから加入するようにしましょう。

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