法人税の節税目的で法人保険への加入を考えている経営者の方が多いのではないでしょうか。実際に法人保険を活用することで、法人税の負担を軽減することができますが、様々な注意点もあります。このカテゴリでは法人税対策に関して、法人保険の活用法を中心に解説しています。
- 法人税の基本を理解して、法人保険をうまく活用しよう
- 法人税の基本
- 法人税は法人所得に課税される
- 現在の法人税率は?
- 実効税率
- 法人保険で法人税の負担を軽減できる仕組みは?
- 法人税を軽減できるのは損金割合が高い法人保険
- 全額損金定期保険
- 逓増定期保険
- 医療保険
- 法人保険で法人税対策を行うときの注意点は?
- 出口戦略をしっかりと考える必要がある
- 金融庁から問題視されている法人保険もある
- 提示される実質返戻率に注意!
- 法人保険以外で法人税対策をする方法
- 小規模企業共済への加入を検討する
- 機械などの設備や人材への投資をする
- 法人の保険を見直すポイント
- 法人保険で決算対策をしよう
- 法人保険で法人税対策をするときは注意点を確認しておこう
目次
法人税の基本を理解して、法人保険をうまく活用しよう
法人税の基本
法人税の節税を考えるうえで、まず法人税の仕組みについて理解しておきましょう。
法人税の基本を理解していれば、法人保険がどのように活用できるのかを正しく理解できるはずです。
法人税は法人所得に課税される
法人税は法人の所得に課税されます。
法人所得とは法人の益金から損金を引いた金額になります。
この時、益金とは法人の利益のことを指し、解約返戻金や保険金を受け取ったときには益金に算入されます。
損金とは、会社から出た経費のことを指し、後に詳しく解説しますが保険料などは損金になります。
現在の法人税率は?
法人税の税率は、普通法人又は人格のない社団法人等については23.2%(資本金1億円以下の普通法人又は人格のない社団法人等の所得の金額のうち年800万円以下の金額については15%)とされています。
2019年現在の法人税率は以下のようになっています。
法人税率 | 23.2% |
---|---|
中小法人の軽減税率(800万円以下) | 19% |
中小法人の軽減税率の特例(800万円以下) | 15% |
参考:税務省
実効税率
実効税率とは法人が実質的に負担することになる法人税の割合を示すものです。
実効税率は以下のような計算によって算出されます。
実効税率=(法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率)÷(1+事業税率)
しかし、実際には法人税率自体が年々変化しているので長期間の実効税率を算出することはあまり意味がないように思われます。
この実効税率は後に説明する実質返戻率と深く関わっています。
法人保険で法人税の負担を軽減できる仕組みは?
では実際に法人保険が法人税の節税になる仕組みを解説していきます。
法人保険の保険料は経費として損金にすることができます。
つまり益金を減らすことができ、結果的に法人税の負担を軽減することができるのです。
しかし、損金に算入できた金額は後に解約返戻金や保険金など益金として法人に戻ってきてしまいます。
このままでは戻ってきた益金が課税の対象となり、この益金を損金となるようにしなければ「課税の繰り延べ」となってしまいます。
そこで重要になってくるのが出口戦略です。
出口戦略とは、解約返戻金や保険金をどのように経費にするかなどの計画のことです。
例えば、退職金の準備や設備への投資などの方法が考えられます。
解約返戻金や保険金を出口戦略で損金にすることで、法人税を節税することができるのです。
法人税を軽減できるのは損金割合が高い法人保険
では、具体的にどのような法人保険に加入すれば高い節税効果を得ることができるのでしょうか。
一般的には法人保険料の損金割合が高い法人保険が人気です。
特に、保険料が全額損金になる法人保険などはよく節税対策として活用されます。
しかし、1/2損金や1/3損金などの法人保険は解約返戻金の割合が大きくなる傾向があり、資産運用を行いたい場合に加入することも多いです。
加入条件や保険料、出口戦略などの計画と見比べ、一番会社にマッチした法人保険に加入することが大切です。
全額損金定期保険
文字通り、保険料を全額損金にすることができ、節税効果が高い法人保険です。
全額損金定期保険は解約返戻率のピークが比較的長いため、解約時期をある程度調整することができます。
しかし、後に説明するように全額損金タイプの法人保険は金融庁が問題視しており、加入には注意が必要です。
逓増定期保険
損金の割合が1/2や1/3になる定期保険です。
逓増定期保険の特徴は比較的短期間で解約返戻率のピークを迎えることです。
全額損金の保険に節税効果では及びませんが、節税をしながら短期間での資産運用を行いたいという方にとってはおすすめの法人保険です。
医療保険
医療保険は保険料を全額損金にできる法人保険です。
医療保険には終身型と定期型が存在し、従業員の福利厚生に活用したり、役員の退職金の代わりとしても活用できます。
特に終身型医療保険は法人が短期払いで保険料を負担し、その後、社長や役員などの個人に名義変更することで、個人の負担無しに一生涯の保障を受けることができます。
法人保険で法人税対策を行うときの注意点は?
ここまで、法人税対策をすることができる仕組みや法人保険の種類を解説してきました。
しかし、法人保険の活用にはメリットだけではなく注意点もあります。
注意点についてしっかりと把握しておかなければ、法人保険のメリットを享受するどころか、会社にとって大きな損失につながってしまう可能性もあります。
よく考慮してから、法人保険に加入しましょう。
出口戦略をしっかりと考える必要がある
法人保険料を損金にすることで、法人税の負担を軽減できると解説してきました。
注意点として、上記にも述べていたように出口戦略をしっかりと計画しておかなければ、いくら保険料を経費にできても、ただの「課税の繰り延べ」に終わってしまいます。
解約返戻金や保険金を退職金の準備に使うのか、設備や人材の投資に使うのかなどをしっかりと計画しておきましょう。
金融庁から問題視されている法人保険もある
近年、全額損金になる法人保険の商品などに火がつきましたが、節税目的で法人保険に加入する会社があまりにも多かったため、金融庁が問題視するようになりました。
これまでにも、高い節税効果がある商品が開発されてきましたが、その都度に金融庁によって規制されてきました。
現在、問題視されているのは以下のようなタイプです。
- 全額損金タイプの法人保険
- 低解約返戻金型の逓増定期保険
- 養老保険の逆ハーフタックスプラン
規制される前に加入しておけば、規制後も規制前の制度で法人保険の保障を受けることができることもありますが、規制後の制度に変更されることもあります。
節税効果のみを求めず、どのような目的で法人保険に加入するのかもう一度よく考えながら検討することが大切です。
提示される実質返戻率に注意!
法人保険への加入を検討しているとき、よく実質返戻率について語られると思います。
実質返戻率とは、法人が支払う所得税を加味して考えられた法人保険の解約金の返戻率を指します。
一見すると大変役に立つ指標に見え、提示される実質返戻率が高いものほど節税効果があるという風に考えがちです。
しかし、実質返戻率は実効税率をもとにして計算されており、法人の所得税率が年々変化していることを考えると、あまりあてにすることができません。
実質返戻率だけで判断して、自分の会社には合わない法人保険に加入してしまうことがないように十分注意してください。
法人保険以外で法人税対策をする方法
ここまで、法人保険を活用した法人税対策について解説してきました。
法人保険は節税になる他に、保障や福利厚生が備わっているため大変便利ですが、自社のキャッシュから考えて法人保険を利用するのは避けたいと考えている経営者の方もいるはずです。
では、法人保険に加入する以外にどのような法人税対策を行うことができるのでしょうか。
以下では、
- 共済への加入
- 機械や設備・人材への投資をする
の2点を解説していきます。
小規模企業共済への加入を検討する
法人保険に加入できるほど会社にキャッシュが残っていないと考えている経営者の方は、まず小規模企業共済など、共済への加入を検討してみましょう。
法人が加入を検討するべき共済は以下の3つです。
- 小規模企業共済
- 中小企業退職金共済
- 中小企業倒産防止共済
共済は法人保険にくらべ保障内容や節税効果などに見劣りはするものの、掛金が法人保険料よりも低く、事業保障や退職金準備にも活用できるのでおすすめです。
機械などの設備や人材への投資をする
法人税対策として、機械などの設備や人材への投資をして経費を増やすという方法もあります。
設備や人材への投資はいずれしなければいけない問題であり、また設備や人材へ投資したお金は後になって戻ってくるので、節税対策として成り立ちます。
ただ、むやみに経費を増やすのではなく、計画的に対策をしていくことが重要になってきます。
法人の保険を見直すポイント
法人保険に加入している経営者の中には、法人保険を見直したいと考えていらっしゃる経営者の方もいるはずです。
ここでは法人保険を見直すポイントについて紹介します。
法人保険を見直す方法としては、
- 現在加入している法人保険の全体像を知る
- なぜその法人保険に加入したのかを思い出す
- 本当に必要な保険かどうかを判断する
- 必要のない保険、自社に合わない保険は解約
- 自社の規模に合っているか
- 無駄な保障がついていないか
- 出口戦略をしっかりと考えているか
法人保険で決算対策をしよう
会社の利益などは決算直前にならないとわからないという経営者の方もいらっしゃるはずです。
このような場合、長期の法人税対策をすることは難しくなります。
しかし、法人保険は決算直前(最短で1週間前)に加入することができ、保険料を経費にすることができます。
また、法人保険を活用することで、決算に表示される負債をきれいにすることができます。
法人保険で法人税対策をするときは注意点を確認しておこう
ここまで、法人税対策について法人保険の活用を中心に解説してきました。
法人保険はうまく活用すれば高い節税効果を得ることができますが、注意点をしっかりと把握しておかなければ、損失につながってしまい、最悪の場合は会社が倒産してしまう可能性もあります。
自社の規模に合った法人保険をしっかりと考えて加入しましょう。
ほけんROOMでは、読んでおきたい法人保険に関するさまざまな記事を掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
法人保険に加入することで、法人税を節税することができると耳にしたことがある経営者の方が多いのではないでしょうか。
しかし、実際に法人保険がどのような仕組みで法人税の節税になるかということについて詳しく理解している人は少ないと思います。
どのような仕組みで節税になるかをしっかりと理解しておかないと、法人保険の営業マンの言いなりになってしまい、結局は損失になってしまったという状況になりかねません。
実際、よく計画して法人保険に加入しておかないと、いざという時に必要なお金が会社になかったり、節税を考えていたのに課税の繰り延べにしかならなかったという状況になる可能性が高いのが現状です。
そこでこのページでは、ほけんROOMの記事を中心に法人税の基本と法人保険を活用した法人税対策について詳しく解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。