老後も安心して暮らすには60歳までにいくら貯金すればいい?

人生100年といわれる時代。長生きはお金の面ではリスクとなります。年金が減少していくと予想される中で、老後を安心して暮らすにはどのくらいの貯金があればいいのか。今回は老後に必要な貯金についての漠然とした不安を解消するため、具体的な数字を使って考えていきます。

この記事の執筆者
竹国 弘城
証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナー(FP)として独立。金融商品を販売しない独立系FPとして、企業の利益ではなく相談者の利益を第一に考え、自分のお金の問題に自分自身で対処できるようになるためのコンサルティングを行う。ラポール・コンサルティング・オフィス代表。1級FP技能士。

50歳代以降の貯金額の現状

金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査」によると、50歳代以降の貯金額(金融資産保有額)は以下のようになっています。


金融資産保有額(二人以上世帯・単身世帯)

平均値中央値貯金なしの
世帯割合
二人以上世帯50歳代1,481万円900万円17.4%n=648

60歳代1,849万円1,000万円22.0%n=853
70歳代以上1,780万円700万円28.6%n=917
単身世帯50歳代1,043万円100万円39.5%n=395
60歳代1,613万円500万円26.7%n=581
出典:「家計の金融行動に関する世論調査・平成30年調査結果[二人以上世帯調査]/[単身世帯調査]」(金融広報中央委員会)より抜粋


出典:「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]平成30年調査結果」(金融広報中央委員会)より作成 


出典:「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]平成30年調査結果」(金融広報中央委員会)より作成


60歳代では、二人以上世帯の金融資産保有額の平均値は1,849万円、単身世帯では1,613万円となっています。

金融資産保有額ごとの分布を見ると、2割弱(二人以上世帯:18.6%、単身世帯: 18.8%)の世帯が3,000万円以上の金融資産を保有する一方、二人以上世帯で22.0%、単身世帯 では26.7%の世帯が金融資産を保有していない現状があります。

その結果、金融資産保有額として実態により近いと考えられる中央値(*1)は、二人以上世帯で1,000万円、単身世帯で500 万円となっています。

(*1)中央値:データを少ない順(または多い順)に並べたときに、中央に位置する値のこと。

老後の生活費はいくら必要?

2017年総務省の家計調査によると、老後に必要な毎月の生活費(消費支出)の平均額は、高齢夫 婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)で235,477円、高齢単身無職世 帯(60歳以上の単身無職世帯)で142,198円


支出項目ごとの内訳は、下図のとおりとなっています。




出典:「家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)家計の概要」(総務省統計局)



この統計によれば、夫婦二人世帯では毎月54,519円、単身世帯では毎月40,715円生活費が不足します。


この赤字分が、貯金を切り崩して補填しなければならない金額です。ただし年金額や生活水準(支出額)には個人差も大きく、それぞれの状況に応じた補正も必要です。


たとえば高齢世帯では持家率(*2)が高くなっており、統計上は住居費が低くなります。


老後も賃貸住宅に住み続ける方であれば、家賃がかかる分だけ不足額を多めに見積もっておくべきといえます。


(*2)持家率(60歳代):二人以上世帯82.6%・単身世帯58.0%
 参考:「家計の金融行動に関する世論調査・平成30年調査結果 [二人以上世帯調査]/[単身 世帯調査]」(金融広報中央委員会)

60歳までに貯めておきたい貯金額は?

平成29年簡易生命表によると、60歳の平均余命は男性23.72年、女性28.97年


仮に60歳で退職し平均余命まで生きるとすると、不足する生活費の補填に必要な貯金額の概算額は以下のよう になります。


世帯構成毎月の不足額必要期間必要貯金額
(概算)
夫婦世帯54,519円23.72年1,808万円
(夫死亡後)40,715円5.25年
(60歳以降の無収入期間)
 209,198円年金支給開始年齢:65歳
 5年1,255万円
単身世帯(男性)40,715円23.72年1,159万円
    (女性)40,715円28.97年1,415万円
(60歳以降の無収入期間)
 114,027円年金支給開始年齢:65歳
 5年684万円

*年齢が同じ夫婦でそれぞれが平均余命まで生きると仮定。夫死亡後は、単身世帯の不足額を計算に使用。


医療費や介護費、葬儀費用などに備え、できれば数百万円程度は用意しておきたいところ。


またゆとりのある生活には、最低限必要な生活費に毎月10万円以上の上乗せが必要というデータ(* 3)もあり、その場合の必要貯金額は2~3倍に膨らみます。


(*3)“経済的にゆとりのある老後生活を送るための費用として、老後の最低日常生活費以外に 必要と考えられている金額の平均は月額で12.8万円” 


出典:平成28年度生活保障に関する調査(生命保険文化センター


上記の数字は現在60歳の方が仮定の条件のもと、平均的な生活を送るために必要な貯金額の概算であり、当然個人差があります。あくまで参考として捉えてください。


いつまで働くのか

60歳で退職して年金生活という老後のモデルケースは、もはや過去のもの。


65歳への年金支給開始年齢引き上げに伴い、今や65歳まで働くのは当たり前となっています。


また所得水準や物価変動を加味した実質的な年金支給額は、今後減少していくと予想されています(*4)。


(*4)年金支給額は徐々に減額され2043年度には現行より20%程度低い水準となる見通し(参考:平成26年財政検証・厚生労働省


このように時代が変化する中では、定年という明確な区切りをつけず、老後も働きながら暮らしていくという考え方が重要ではないかと私は考えます。


老後に備える貯金が必要なのは、家計が赤字となるため。老後も働いて年金以外に収入が得られるなら、老後の生活費に備える貯金は少なくて済みます。


定年を境にいきなり仕事がなくなると時間を持て余してしまう方も多く、仕事をすることには、やりがいを感じたり、生活に張り合いが出るなどのメリットも期待できます。


逆に老後は働かず自由に時間を使いたいという希望があるなら、その分貯金額を増やしておくべきでしょう。

お金をいかに働かせるか(資産運用)

働いてお金を稼げれば老後のお金の心配を減らせますが、年齢を重ねるにつれて今度は働けなくなる心配が大きくなっていきます。


老後も安心して暮らすには、資産運用を行い、お金にも働いてもらうことが大切です。



*マネーシュミレーター「みらい電卓」を用いて試算 


仮に1,000万円の貯金を毎月5万円ずつ切り崩していくとすると、全く運用しない場合(利回り 0%)には16年8カ月で貯金が底をつきます。


一方、年5%の利回りで複利運用を行いながら切り崩せば、貯金を使い切るまでの期間を2倍以上の34年7カ月まで伸ばすことができます。


資産運用にはリスクも伴いますが、年3~5%程度の利回りであればそれほど大きなリスクを取らなくても十分に実現可能です。


また、日本では長い間物価がほとんど上がらない状況が続いていますが、今後物価が上昇に転じ、お金の価値が目減りしていくリスク(インフレリスク)は常にあります。


インフレリスクによる価値の目減りを防ぐにも、物価上昇率よりも高い利回りで資産を運用することが最低限必要となります。

まとめ

平均値を用いたシミュレーションの結果、老後に平均的な生活を送るために必要な60歳時点での貯金額は、夫婦世帯で約3,000万円、単身世帯で約1,800~2,000万円(60歳以降無収入・年金支給額・物価変動を加味しない場合)。


年金支給額の減少や給開始年齢のさらなる引き上げによる影響、ゆとりある生活を希望する場合の上乗せ分を含めると、より多くの貯金が必要と考えられます。


一方、老後も働いたり資産運用を行うことで、老後に備える貯金は減らすこともできます。


人それぞれ必要な貯金額は異なりますが、老後どのように暮らしていきたいのか、大まかでもいいのでイメージを持つこと。


そして目標を定め、なるべく早い時期から計画的に貯蓄、運用を始めること。


それが漠然とした老後のお金の不安を解消する第一歩です。

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