更新日:2024/03/12
国民年金基金の仕組みとデメリットを詳しく解説【破綻する?】
国民年金基金は自営業やフリーランスの方が老後、国民年金に加えて受け取ることができる制度ですが、破綻リスクが高い点や、一度加入すると脱退不可能というデメリットがあります。加入する際はそういった点を踏まえ、他の個人年金や私的年金と比較検討する事をおすすめします。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 国民年金基金とは?そのデメリットを解説
- 国民年金基金について解説
- 国民年金基金のデメリットについて詳しく解説!
- 国民年金基金のデメリット:脱退が難しい
- 国民年金基金のデメリット:準備金の額が少なく破綻のリスクが
- 国民年金基金のデメリット:現在の利率が低い
- 国民年金基金のデメリット:インフレになったときの対応が無い
- 国民年金基金のデメリット:付加年金に加入できない
- 国民年金基金のメリットを解説
- 国民年金基金のメリット:将来貰える年金の増額
- 国民年金基金のメリット:所得税と住民税の税制面での優遇
- 国民年金基金のメリット:終身型・確定型給付を選択できる
- 国民年金基金のメリット:掛金の増額(増口)・減額(減口)ができる
- 【どっちに入るとお得?】国民年金基金とiDeCo等の私的年金、付加年金との違いを解説
- iDeCoと国民年金基金の比較!併用も可能
- 個人年金保険と国民年金基金の比較
- 付加年金と国民年金基金の比較
- 国民年金基金の加入方法を紹介
- まとめ:ご自身のライフプランを踏まえた年金の検討を
目次
国民年金基金とは?そのデメリットを解説
- 国民年金基金のデメリット
- 国民年金基金のメリット
- iDeCo(イデコ)・個人年金保険・付加年金との比較
- 国民年金基金の加入方法
国民年金基金について解説
まずは国民年金基金がどのような制度かをおさらいしていきましょう。
国民年金基金とは、公的年金制度を利用した私的年金です。私的年金なので、加入の義務はありません。
そもそも国民年金基金が設立されたのは、将来の年金格差を生まないためです。詳しく解説します。
国民全員の加入が義務付けられている国民年金は、自営業や学生・無職の人などの第1号被保険者と、会社員の第2号被保険者、会社員の配偶者である第3号被保険者に分かれています。
国民年金 | 職業 | 義務加入 年金 |
---|---|---|
第1号 被保険者 | 自営業 学生 フリーター 無職 | 国民年金 |
第2号 被保険者 | 会社員 | 国民年金 厚生年金 |
第3号 被保険者 | 会社員の 配偶者 | 国民年金 厚生年金 |
なぜ職業によって分かれているのかというと、第2号被保険者は国民年金以外にも厚生年金に加入しているからです。
そのため、会社員(第2号被保険者)は、国民年金の保険料と厚生年金の保険料を支払っていることになります。
支払う保険料が多いということは、将来受け取ることができる年金も多くなります。
言い換えれば、第1号被保険者は第2号被保険者よりも支払う年金保険料が少ない分、将来受け取ることができる年金も少なくなるということです。
このような年金格差を生まないためにも、公的年金制度の一環として国民年金基金が作られました。
国民年金 | その他年金 | 国民年金基金 |
---|---|---|
第1号 被保険者 (会社員以外) | なし | 加入できる |
第2号 被保険者 (会社員) | 厚生年金 | 加入できない |
そのため、国民年金基金には以下のような特徴があります。
- 第1号被保険者しか加入することができない
- 国民年金保険料が猶予・免除・未納になっている場合は加入できない
- 税制上の優遇を受けることができる
国民年金基金の掛金(保険料)などについては、ほけんROOM「国民年金基金とはどんな制度?iDeCoや付加年金とどっちがお得?」をご参照ください。
老後資金に関する不安なニュースが流れる中で、老後資金形成は重要な問題です。
そのため国民年金基金は、自営業などの国民年金第1号被保険者の人にとっては、確実な老後資金を形成でき、税制上の優遇を受けることができるのは、大きなメリットと言えます。
国民年金基金のデメリットについて詳しく解説!
一見メリットが大きいように見える国民年金基金ですが、もちろんデメリットも存在しています。
老後資金という将来に関わることだからこそ、メリットとデメリットの両方を把握した上で、加入するかどうかを決めることが重要になります。
そこでここでは、国民年金基金のデメリットについて解説していきます。簡単にまとめると、以下の6つの点がデメリットと言えます。
- 脱退が難しい
- 破綻のリスクがある
- 現在の利率が低い
- インフレ対応に弱い
- 付加年金との併用ができない
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
国民年金基金のデメリット:脱退が難しい
国民年金基金の最も気になるデメリットは「脱退が難しい」ことでしょう。
一度加入すると、原則として脱退することはできません。脱退には「加入資格の喪失」が必要になります。
(国民年金基金の詳しい脱退条件はこちらをご確認ください。)
また、脱退する・しないにかかわらず、原則として60歳になるまで掛金を引き出す(年金として受け取る)ことができない点にも注意が必要です。
国民年金基金のデメリット:準備金の額が少なく破綻のリスクが
これは国民年金でも叫ばれている問題です。国民年金基金にも破綻のリスクはあります。
国民年金基金の準備金は不足しています。将来支払う年金額に対する保有積立金の割合は、現在82%ほどと言われています。
しかしながら、2017年度末時点では積立金が366億円とも言われているため、すぐに破綻するとは考えにくいと言えます。
しかし今後の運用によっては、国民年金基金の支給額が減額となる可能性は大いにあるでしょう。
国民年金基金のデメリット:現在の利率が低い
国民年金基金のメリットは「将来受け取る年金額が確定している」点です。
言い換えればiDeCo(イデコ)のように将来受け取る年金額を資産運用によって増やすこともできません。
国民年金基金は確定給付
国民年金基金は、掛金や運用方法がすでに決まっており、選択することができません。また、受け取る年金もあらかじめ決まっています。
受け取る年金が決まってるのは「予定利率」が決まっているからです。現在の予定利率は1.5%と決して高くはありません。
高くはない利率ながらも確実な年金額を受け取りたい人は国民年金基金がよいでしょう。
自ら資産運用しながら受け取る年金額を増やしたい場合は、iDeCo(イデコ)などがおすすめです。
国民年金基金のデメリット:インフレになったときの対応が無い
国民年金基金の「将来受け取る年金額が決まっている」というメリットは、経済状況によってはデメリットとなります。
それが「インフレ」です。インフレとは、物の値段が高くなるために紙幣価値が下がることです。
国民年金基金では支給額がすでに決まっているため、過剰なインフレになっても支給額は変わりません。
例えば毎月1万円支給される場合、インフレによって1万円が現在の5,000円ほどの価値になっても、支給金額が変わることはありません。
国民年金基金のデメリット:付加年金に加入できない
国民年金は将来受け取ることができる年金額が確保される分、その掛金も一定金額がかかります。
そこまでの掛金を支払いたくないなど、国民年金基金への加入をためらう人もいるでしょう。この場合に活用できるのが「付加年金」です。
付加年金とは
付加年金とは、第1号被保険者が加入できる制度です。
毎月400円の追加保険料を納めることで、将来付加年金納付期間に応じた年金を受け取ることができます。受け取る年金額は以下の計算式で求めます。
200円×付加年金保険料納付月数
2年間で元が取れると言われるため、少額から手軽に老後資金を形成したい場合におすすめですが、付加年金と国民年金基金は併用できない点に注意するようにしましょう。
国民年金基金のメリットを解説
このように、国民年金基金には加入に際して知っておきたいデメリットがいくつかありますが、それでも37万人もの人が加入しています。
それだけの人が加入するということは、もちろん国民年金基金には加入するメリットがあるということになります。
そこでここからは以下4つの国民年金基金のメリットを解説していきます。
- 老後資金形成ができる
- 税制上の優遇を受けることができる
- 終身型給付と確定型給付から選択できる
- 掛金の増額・減額ができる
国民年金基金のメリット:将来貰える年金の増額
国民年金基金の最も大きなメリットは、将来受け取ることができる年金額が増額できる点でしょう。
国民年金基金の支給額は、加入年齢や加入条件によって異なります。
国民年金基金 加入時期 | 終身年金 (1口目) | 終身年金・確定年金 (2口目以降) |
---|---|---|
20歳~35歳 | 年金額 2万円 (月額) | 年金額 1万円 (月額) |
35歳~45歳 | 年金額 1万5,000円 (月額) | 年金額 5,000円 (月額) |
45歳~50歳 | 年金額 1万円 (月額) | 年金額 5,000円 (月額) |
「年金が破綻するのでは?」「年金支給額が減額になるのでは?」といった不安視がされる中で、毎月これだけの金額が安定的に得られるのは、老後の安心材料と言えるでしょう。
国民年金基金のメリット:所得税と住民税の税制面での優遇
さらに、国民年金基金の大きなメリットは税制上の優遇が手厚いという点です。
というのも、国民年金基金は、
- 掛金を支払うとき
- 年金として受け取るとき
- 遺族が一時金を受け取るとき
掛金を支払うとき
まず、支払う掛金は全額「社会保険料控除」の対象となります。そのため、所得税や住民税を節税することができます。
課税対象となる所得金額によって税率は変わりますが、節税額の概算を求めるには以下の式で求めることができます。
基本掛金月額×12か月×税率
(税率については、国民年金基金パンフレットをご覧ください。)
例えば、
- 年収500万円・配偶者ありの31歳
- 課税所得金額は195万円
- 毎月の掛金1万1,210円
1万1,210円×12か月×15.105%=20,319円
つまり、将来年金として受け取ることができるだけではなく、掛金を支払っている現役世代のうちから受け取れることは大きなメリットと言えます。
年金・遺族一時金を受け取るとき
掛金に対してだけではなく、年金・遺族一時金として受け取る際にも税制上の優遇を受けることができます。
これは、私的年金である「個人年金保険」にはないメリットです。
年金として受け取る際には「公的年金等控除」が適用され、また遺族一時金として受け取る場合には非課税となります。
国民年金基金のメリット:終身型・確定型給付を選択できる
国民年金基金のメリットは、給付スタイルを「終身型給付」と「確定型給付」から選択できる点にもあります。
終身型(終身年金)と確定型(確定年金)の違いは?
国民年金基金の1口目(最初の加入)は必ず終身年金となります。
終身年金というのは、支給開始の65歳から死亡時まで年金が支給されます。
2口目(追加契約)から選択できる確定年金は、支給開始年齢から契約で定めた年齢まで年金が支給される年金です。
支給開始年齢 | 最終支給年齢 | |
---|---|---|
終身年金 A型・B型 | 65歳~ | 死亡時まで |
確定年金 Ⅰ型 | 65歳~ | 80歳まで |
確定年金 Ⅱ型 | 65歳~ | 75歳まで |
確定年金 Ⅲ型 | 60歳~ | 75歳まで |
確定年金 Ⅳ型 | 60歳~ | 70歳まで |
確定年金 Ⅴ型 | 60歳~ | 65歳まで |
自分に合った年金支給スタイルを選ぶことができるのはメリットと言えるでしょう。
国民年金基金のメリット:掛金の増額(増口)・減額(減口)ができる
【どっちに入るとお得?】国民年金基金とiDeCo等の私的年金、付加年金との違いを解説
ここまで見てきたように、国民年金基金にはメリットとデメリットがありました。
国民年金第1号被保険者でなければ国民年金基金に加入することはできませんが、国民年金基金以外にも、
- iDeCo(イデコ)
- 個人年金保険
- 付加年金
そこでここでは、これらの私的年金と国民年金基金を比較しながら、どちらに入るとお得なのか、併用ができるのかどうかなどを解説していきます。
iDeCoと国民年金基金の比較!併用も可能
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、確定拠出年金法に基づいて作られた私的年金制度です。
国民年金基金とは異なり、職業による加入制限がなく、自ら資産運用方法を選ぶことができるのが特徴です。
iDeCo(イデコ)の特徴は以下の通りです。
- 誰でも加入することができる
- 掛金・給付のどちらにも税制上の優遇がある
- 職業によって毎月の掛金上限がある
- 運用益が課税対象にならない
定期預金や投資信託の場合、資産運用によって得た運用益は課税対象となりますが、iDeCo(イデコ)では運用益は非課税となります。
また、国民年金基金と同様に、掛金を支払った際には全額が所得控除となり、また将来年金として受け取る際にも公的年金等控除を受けることができます。
iDeCo(イデコ) | 国民年金基金 | |
---|---|---|
加入条件 | 誰でも | 国民年金 第1号被保険者 |
掛金上限 | 職業によって 異なる | 6万8,000円 |
税制上の優遇 | 掛金支払い時 年金受け取り時 一時金受け取り時 | 掛金支払い時 年金受け取り時 一時金受け取り時 |
年金 | 運用次第で 年金額が変わる | 加入時に 年金額が決定 |
税制上の優遇は、iDeCo(イデコ)と国民年金基金とでは変わりません。
しかし、受け取る年金額や加入条件・掛金上限を踏まえると、第1号被保険者の人は併用を視野に入れても良いかもしれません。
iDeCo(イデコ)と国民年金基金をより詳しく比べたい人は、ほけんROOM「個人型確定拠出年金(iDeCo)と国民年金基金を比べてみました!」をご覧ください。
個人年金保険と国民年金基金の比較
個人年金保険は、生命保険などと同様に一般的な保険商品です。そのため、誰でも加入することができます。
運用方法や年金支給開始額の設定など、自分に合った商品から選ぶことができる一方で、税制上の優遇が手薄になる点が大きなデメリットです。
個人年金保険 | 国民年金基金 | |
---|---|---|
加入条件 | 誰でも | 国民年金 第1号被保険者 |
掛金条件 | 特になし | 6万8,000円 |
税制上の優遇 | 掛金支払い時 | 掛金支払い時 年金受け取り時 一時金受け取り時 |
年金 | 運用次第で 年金額が変わる | 加入時に 年金額が決定 |
個人年金保険は様々な商品から選ぶことができる点が非常に魅力的ですが、年金受け取り時や一時金として受け取る時に課税されてしまう点がデメリットと言えるでしょう。
個人年金保険についてより詳しく知りたい人は、ほけんROOM「個人年金保険のポイントをおさえて説明します!」をご覧ください。
付加年金と国民年金基金の比較
200円×付加保険料納付額
200円×(30年×12か月)=4万8,000円
400円×(30年×12か月)=7万2000円
国民年金基金の加入方法を紹介
では、国民年金基金に加入する場合はどのようにすればよいのでしょうか。
国民年金基金には「全国国民年金基金」と「職能型国民年金基金」の2種類があります。
どちらにしても、国民年金基金に加入する際は、国民年金基金から委託を受けた生命保険会社・銀行といった金融機関にて申し込みをする必要があります。
全国国民年金基金は、職業を問わず国民年金第1号被保険者であれば誰でも加入できますが、職能型国民年金基金は特定の職業に従事している場合に加入することができます。
加入の際は、先ほども見てきたように、本人都合の途中脱退をすることはできないことに注意しましょう。
まとめ:ご自身のライフプランを踏まえた年金の検討を
国民年金基金のメリット・デメリット、私的年金制度と国民年金基金を比較しながら解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
この記事のポイントは
- 国民年金第1号被保険者であれば国民年金基金に加入できる
- 将来もらえる年金額が確定しているのはメリットでもありデメリットでもある
- 税制上の優遇が手厚いが、原則途中脱退ができない
- iDeCo(イデコ)との併用は可能
- 付加年金との併用はできない
- 私的年金ごとの特徴を比較して、自分に適したものを選択することが重要になる
でした。
国民年金に対する不安が増している今、様々な私的年金が存在しています。
付加年金のように国民年金基金と併用できないものもあれば、iDeCo(イデコ)のように同時に加入できるものもあります。
これらの特徴・メリットやデメリットをきちんと理解した上で、自分に合った制度を上手に活用して、悔いのない老後資金形成をしていきましょう!
ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険やマネーライフに関する記事が多数掲載されていますので、是非ご覧ください。
参考:国民年金基金連合会