更新日:2024/04/10
厚生年金加入者の扶養家族の保険料の仕組みや年金受給額を解説!
厚生年金保険料は扶養家族の分まで払うのか、厚生年金加入者の配偶者は年金をいくらもらえるのか、厚生年金保険の仕組みや扶養家族の考え方をまとめました。健康保険・国民年金・厚生年金の社会保険制度ごとに異なる扶養家族の取扱いや保険料の仕組みについても解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
扶養家族がいる際の厚生年金保険料はいくら支払うの?
健康保険料や年金保険料など、サラリーマンの給与からは様々な社会保険料が引かれています。
しかし支払った保険料が自分の分だけなのか家族の分も含まれているのか、よく分からず疑問に感じている人も多いはずです。
特に厚生年金の保険料は老後の年金生活にも関わる大事な保険料なので、家族の老後の生活設計を考える上でも仕組みを理解しておく必要があります。
勝手な思い込みで家族分の保険料も払っていると勘違いしたり家族の年金も将来もらえると思っていると、老後に自分も家族も困ることになりかねません。
そこで今回のこの記事では「厚生年金の扶養家族」について
- 厚生年金における扶養家族の保険料の仕組みや他の社会保険制度との違い
- 厚生年金加入者の配偶者がもらえる年金
以上のことを中心に解説します。
自分だけでなく家族全員が安心して老後の生活を送るために役立つ知識です。ぜひ最後までご覧ください。
厚生年金は扶養家族分の保険料は納めない!
厚生年金はあくまでサラリーマンなどの加入者本人が保険料を支払って老後に年金を受け取る制度です。
そのため後述する健康保険や国民年金のように扶養家族という考え方はありません。
あくまで加入者本人の給与を基準にして定められた標準報酬月額と標準賞与額に保険料率18.3%を掛けて保険料額が計算されます。(出典:日本年金機構HP)
厚生年金扶養という考え方はなく、配偶者や子供など扶養家族が何人いても保険料率や納める保険料額は変わらない仕組みです。
そして配偶者等の扶養家族に対して厚生年金から老後の年金が直接支払われることもありません。
ネット上の書き込み等で「厚生年金加入者の配偶者が対象になる」という表現が用いられることがありますが、これは国民年金の話です。
国民年金の仕組みについては後述しますが、国民年金と厚生年金では仕組みそのものが異なります。混同しないように注意しましょう。
また扶養家族の位置付けは社会保険の制度ごとに異なります。健康保険・国民年金・厚生年金での扶養家族の考え方や保険料の違いを理解することが大切です。
扶養家族があるのは健康保険
厚生年金とは違って健康保険では扶養家族の考え方があります。一定の要件を満たす家族は扶養家族として加入者本人と同様に給付を受けられる仕組みです。
健康保険の保険料額は加入者本人分のままなので、実質的に家族分の保険料を負担することなく家族が健康保険制度を利用できるようになっています。
ただし誰でも扶養家族になる訳ではなく、以下の被扶養者の範囲に含まれる家族で生計維持の認定要件を満たしていることが条件です。
[被扶養者の範囲]
- 父母や祖父母などの直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹で被保険者によって生計を維持されている者。
- 上記以外の3親等内の親族で、被保険者によって生計を維持されていて同一世帯に属す者。
- 年間収入130万円未満。ただし60歳以上又は障害者の場合は年間収入180万円未満。
- 第2号被保険者と同居の場合には収入が半分未満。別居の場合には収入が仕送り額未満。
そして上記の条件に該当する扶養家族が新たに増える場合には被扶養者異動届を提出する必要があります。
扶養手続きの詳細は日本年金機構HPで確認できますが、子供が生まれたり結婚して配偶者が扶養に入る場合が該当します。
国民年金は厚生年金加入者の配偶者のみが扶養対象
国民年金にも扶養家族の考え方がありますが、健康保険と違って国民年金では配偶者のみが扶養対象です。
厚生年金加入者の配偶者で且つ以下の収入要件を満たす場合に国民年金の第3号被保険者に該当します。
[収入要件]
- 年間収入130万円未満。ただし60歳以上又は障害者の場合は年間収入180万円未満。
- 第2号被保険者と同居の場合には収入が半分未満。別居の場合には収入が仕送り額未満。
厚生年金加入者の配偶者に対しては厚生年金から老後の年金が支給される訳ではなく、国民年金から支給される仕組みです。
ただし第3号被保険者の保険料は厚生年金が実質的に負担する形になっているので、第3号被保険者である配偶者本人が保険料を納付する必要はありません。
また第3号被保険者期間は保険料納付済期間として扱われて将来の年金額に反映されます。つまり配偶者は保険料を納めずとも老後に年金がもらえます。
なお結婚して扶養に入る場合には被扶養者異動届の提出が必要です。収入要件や扶養手続きの詳細は日本年金機構HPで確認することができます。
厚生年金加入者の配偶者は老後の年金はいくらもらえる?
厚生年金加入者の配偶者は厚生年金から老齢年金をもらう訳ではないので、配偶者が老後にもらえる金額を知るには国民年金について理解する必要があります。
ただし厚生年金にも、会社員等の加入者本人だけでなく配偶者のことも考慮した制度が設けられています。
厚生年金加入者の配偶者の老後の生活設計を考える上では、国民年金と厚生年金の両方の知識が必要です。
以下で詳しく解説していきます。
厚生年金加入者の扶養対象である第3号被保険者の年金について
厚生年金加入者の扶養対象である配偶者は、国民年金の第3号被保険者として年金が支給されます。
国民年金は保険料納付済期間が40年間あると満額が支給され、例えば第3号被保険者期間が20歳から60歳までの40年間あると老後に満額をもらうことができます。
保険料納付済期間が40年より短いと年金額が減額されますが、年金をもらうには保険料納付済期間や免除期間等の合計である受給資格期間が最低10年必要です。
また国民年金だけでなく厚生年金の制度の中にも、配偶者が老後にもらえる金額に影響するものがあります。厚生年金の加給年金と国民年金の振替加算です。
厚生年金扶養という考え方はないので厚生年金から配偶者が直接老齢年金をもらう訳ではないものの、配偶者への国民年金支給額が増える場合があります。
加給年金
厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人が、65歳になった時点で生計を維持している配偶者または子がいるときに老齢厚生年金額が加算されます。
配偶者は65歳未満であること、子は18歳到達年度の末日までの間にあるか又は1級・2級の障害の状態で20歳未満であることが条件です。
加給年金額は平成31年度であれば年間で224,500円で、子については3人目以降は74,800円になります。
また生計を維持されていると認められるには、同居していることと「前年の収入が850万円未満であること又は所得が655万5千円未満であること」が条件です。(出典:日本年金機構HP)
振替加算
夫(妻)が受けている老齢厚生年金に加算されている加給年金額の対象者になっている妻(夫)が65歳になると、夫(妻)への加給年金額が打ち切られます。
妻(夫)が国民年金の老齢基礎年金を受けられる場合には、一定の基準により妻(夫)自身の老齢基礎年金の額に加算がされます。これが振替加算です。
ただし大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれた人だけが対象です。
また夫(妻)が受けていた加給年金額と同額が振替加算額として支給される訳ではありません。振替加算の額は生年月日に応じて変わるので注意が必要です。
加給年金と振替加算については日本年金機構HPにも掲載されているので、確認してみると良いでしょう。
厚生年金加入者の扶養対象である配偶者の年金受給額
厚生年金加入者の扶養対象である配偶者は、国民年金の第3号被保険者期間が40年あれば老齢基礎年金を満額で受け取れます。
満額の金額は物価変動を考慮して年ごとに変わるものの、平成31年度であれば年間受給額は780,100円です。
ただし国民年金の保険料納付済期間が40年より短い場合には加入期間の長さに応じて減額されます。
また結婚して第3号被保険者になる前に自身が厚生年金保険に加入していた場合等には、厚生年金からも年金が支給されて老後の年金額が増えることになります。
そして前述の振替加算の条件に該当する場合も年金額が増えます。ただし生年月日によって振替加算額は異なるので注意が必要です。
振替加算の具体的な支給額や計算方法は日本年金機構HPで確認することができます。
まとめ:厚生年金には扶養家族は存在しない
「厚生年金の扶養家族」について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
この記事のポイントは
- 厚生年金で納付する保険料は本人分のみで扶養家族分は納付しない
- 厚生年金加入者の配偶者の年金は国民年金から支給される
厚生年金には扶養家族という考え方自体がなく、あくまで加入者本人が保険料を納めて老後に年金を受け取る仕組みであることが理解できたと思います。
扶養家族の範囲や収入要件が細かく規定されているのは健康保険や国民年金なので、社会保険制度ごとの違いを理解しておくことも大切です。
厚生年金加入者の配偶者が国民年金から満額をもらう場合には年間で約78万円支給されますが、年金制度への加入状況等によって年金受給額は変わります。
家族がもらう年金も含めて、老後の生活設計を立てるためには厚生年金と国民年金への理解が不可欠です。
ほけんROOMではこの他にも役立つ記事を多数掲載していますので、様々な記事を読むことで年金に関する知識・理解を是非深めていって下さい。