北朝鮮からミサイルが飛んで来たら、保険はそれぞれ適用されるの?

北朝鮮のミサイル攻撃によって被害を受けた場合、我々に身近な保険といえる、火災保険・家財保険・自動車保険・死亡保険・医療保険には、約款中に「免責事項」があり、保険金が下りることは困難です。ミサイル等による戦争被害を補償する保険は、船舶に関係する保険に存在します。

北朝鮮情勢が緊迫する今、知っておきたい保険の知識

今年の8月29日と9月15日に北朝鮮は弾道ミサイルを発射しました。いずれも北海道上空を通過し、太平洋上に落下しています。  

発射直後には全国瞬時警報システム(Jアラート)で国民に避難を呼びかけた話題は、記憶に新しいと思います。 


この2回のミサイル発射ではいずれも、日本の領域へミサイルの破片等は落下しておらず、航空機・船舶への被害も寄せられてはいません。 


北朝鮮は、国際社会の批判を無視した核実験の強行、そして日本に向けてミサイルを発射する等、そのの暴挙を発端として東アジアの情勢は緊迫を強めています。 


今回は、万が一、戦争状態に発展し北朝鮮からの攻撃を受けた場合、損害保険や死亡保険等が適用されるかどうかを検証します。 



北朝鮮のミサイルで保険が適用されるか?5つの場合を検証!

まずは我々に身近な保険といえる、火災保険・家財保険・自動車保険・死亡保険・医療保険の5つの場合に、保険金が下りるのかを検証します。

  

これらの保険で注目すべきなのは、各保険約款の中に存在する「免責事項」についてです。お時間があるときにでも、ご自分が契約した保険の免責事項を確認してみることをお勧めします。 

その1:自宅がミサイルにより破壊、火災保険は適用される?

火災保険とは、建物および建物内に収容された住宅内の家財、工場などの設備・商品等の火災や風水害による損害を補填する損害保険の一つです。

  

火災保険を扱うどの損害保険にも約款がありますが、約款中に概ね次のような一文が設けられています。 


「戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動」に起因する損害へは保険金を支払わないという「免責事項」があります。 


北朝鮮が日本にミサイル攻撃を行った場合は、「外国の武力行使」に該当し、この免責事項により保険金が下りる可能性は極めて低いと想定されます。 

その2:家具がミサイルによって破壊、家財保険は適用される?

家財保険とは、持家・賃貸にかかわらず、ご自分の住居にある家財一式に対して付帯する火災保険です。  

家財保険も家財を目的に付帯する火災保険契約であるため、火災保険の場合と同様に、北朝鮮のミサイル攻撃に関して家具が破壊されても「免責」になってしまいます。 

その3:車がミサイルによって破壊、自動車保険は適用される?

自動車保険とは、車・バイク・スクーターの利用に伴って発生した損害を補償する損害保険を言います。 

 

よく戦争映画では、車にレーザー照準を合わせ、発射したミサイルが正確に対象車両に命中するというシーンがありますが、北朝鮮の弾道ミサイルは核弾頭が装備可能な兵器であるため、映画で描かれるような正確な命中率は必要ありません。 


しかし、北朝鮮が日本へ宣戦布告し戦争状態になるにしても、北朝鮮の奇襲攻撃で日本本土へいきなりミサイル攻撃を加えるにしても、日本領土内へのミサイル着弾による爆風や落下物によって、車が破壊されるケースは否定できません。 


自動車保険の場合も、免責条項によりその損害へ保険金が下りる可能性はかなり低いものと想定されます。 

その4:ミサイルによって死亡した場合、死亡保険金は下りる?

死亡保険とは、保険の被保険者の死亡による損失を保障することを目的とした生命保険の一つです。  

弾道ミサイルは大量破壊兵器に該当し、都市が狙われれば建物ののみならず人間にも大きな被害を及ぼします。 


湾岸戦争時には、イラクの指導者であったフセイン大統領(当時)が執拗にイスラエルをミサイル攻撃しましたが、防空用地対空ミサイルによって、イラクから発射されたミサイルを撃墜する映像が各国のメディアを通じて流されました。 


このような防空システムは日本国内にも存在しますが、北朝鮮のミサイルの脅威にさらされた場合に当該ミサイルを撃墜しても、落下したミサイルの破片が命中して亡くなる方が出ないという保障はありません。 


しかし、どの生命保険会社の約款にも、概ね「戦争、その他の変乱」という記載があり、やはり死亡保険金が下りることは難しいと解されます。 

その5:ミサイルや核による健康被害で医療保険は適用される?

医療保険とは、病気やケガで入院・治療をした際に、給付金による金銭的サポートが受けられる保険です。

ミサイルの爆風や破片によるケガや、核爆発が原因の放射能汚染による健康被害が懸念されます。


これらのケースで医療保険が適用されるかどうかですが、他の保険と同様に免責事項として戦争、クーデターのような変乱が列記されており、給付金が受け取れる可能性は低いものと考えられます。


日本国の迎撃ミサイルの誤射による被害の場合は保険が適用される?

前述したとおり、日本にも防空システムは存在し、今年の4月にも北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えて、東京の市ヶ谷に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備されたことはメディアでも報道されました。

高性能の防空システムとは言えますが、撃ち損じや誤射が無いとは言い切れません。


これらが原因で被害を被った場合にも、各保険の免責事項にある「戦争」に該当し、保険金が下りる可能性は極めて低いといえます。


そもそも保険会社の免責はどうして必要なの?

保険会社は、免責事項として戦争、クーデターのような変乱、自然災害である地震、噴火、津波の場合も保険金は支払われないことを明記しています。 

この様な事態は、保険会社と契約を結んだ保険契約者、保険金をかけている被保険者、保険金が下りる際の受取人、いずれかの不注意とはとてもいえません。


しかし、保険金支払額やその対象者が莫大な数に上るリスクがあるため、免責事項が設けられていると言えます。それは、保険金支払額・その対象者が多数に上ると、保険会社自体も存続の危機に陥る場合があるからです。


被害が甚大となる事態をあらかじめ想定し、これらの事態には保険会社が保険金を支払う責任を負わない旨を、契約の際、保険契約者に合意させることで、会社の存続を保つことを意図した措置と言えます。


免責事項であっても保険が絶対適用されないわけではない

この免責事項があるからと言って、各保険が全く適用されないわけではありません。


2011年3月11日に発生した大規模地震災害である「東日本大震災」では、東北の太平洋側にある各市町村が津波による壊滅的被害を受けたのをはじめ、東日本一帯に多大な被害を及ぼしました。 

これに対応し、生命保険会社・損害保険会社は地震等に関する免責事項を適用せず、保険金・給付金の全額を支払うことにしました。非常に人道的な措置と言えます。 


ただし、東日本大震災の場合は、自然災害であり、あまりにも被害が大きかったためにとった特例措置であした。


人為的な災いと言える北朝鮮によるミサイル攻撃や、武力行使が原因となる被害、その後に誘発される危険性が高い大規模な戦争に対して、同様の措置がとられるかどうかは、非常に判断が難しいです。

ミサイルの被害に対して何らかの個人補償を受けられる見込みは?

現在のわが国では、戦争や変乱が原因となる他国からのミサイル攻撃や、その迎撃措置により、国民の人命や財産に被害が生じた場合の補償について、直接規定する法令はありません。

では各個人が国を訴えることで、日本政府から賠償を勝ち取ることができるかというと、そうとも言い切れません。


日本政府は北朝鮮からのミサイル被害を防げるはずだったのに、何も措置とらなかったという「不作為」があるなら、国を訴え賠償責任が認められる可能性はあります。


しかし、政府は前述した地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備や、イージス艦を日本を取り囲むように展開し、対空防衛力の強化を行っています。


また、政府は国民向けに地下道等への避難方法の周知に努めています。そのため、裁判によって国の「不作為」が認められる可能性は非常に低いと考えられます。

損害保険会社による、船舶戦争保険は存在する

では、日本国内では戦争や、それが原因となったミサイル攻撃による損害は誰も補償してくれないのか?と言うとそうではありません。

非常に聞き慣れない保険ではありますが、「戦争保険」というものも存在します。日本では、「船舶戦争保険」が一般的で、各損害保険会社が販売しています。


  • 船舶戦争保険とは

この保険は戦争やミサイル、テロ、海賊行為などの「戦争危険」による損害を補償します。船舶が戦争に巻き込まれ、銃弾やミサイル、魚雷、機雷等が原因となった損傷への損失を特別に補償する保険です。


  • 補償内容

内容は、①戦争その他の変乱、②ミサイルや魚雷、爆弾の爆発、③急襲部隊等の襲撃、④だ捕・捕獲・抑留、⑤海賊行為または強盗、⑥その他、ストライキなどの争議行為、暴動、社会的騒じょう、テロ行為も補償されます。ただし、核兵器の爆発は除かれていることがあります。

船体のみならず、船員の死亡やケガの賠償責任も補償の対象です。


  • 個人が加入する保険とはいえない

船舶戦争保険は、あくまで船舶・船員が戦争に巻き込まれた危険を想定しての保険です。個人が、「戦争になると怖いから加入したい。」と思って入れる保険ではありません。

また、現時点では、個人向けの戦争保険商品を販売している保険会社は見受けられません。

まとめ:ミサイルなど、戦争・テロなどは保険会社の免責事項

他国間との戦争・武力行使は、あくまで最終手段であり、その間には各国の外交努力が図られることでしょう。

しかし、開戦状態となり日本本土がミサイル攻撃や爆撃機による空襲に曝された時には、その被害は保険会社の免責事項に該当し、民間会社がこの事態に直面した時、東日本大震災と同様の対応とるか断言はできません。


そのため、戦争被害が発生した場合には、戦争被害者に対して、政府や地方自治体が事後的に弔慰金・生活再建支援金制度を設ける等の立法措置をとる必要があります。

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