シフト制パートの雇用保険加入条件とは?「月87時間」を中心に解説

雇用保険の加入条件のひとつに「週20時間以上の勤務」がある一方で、シフト制パートは「月87時間以上の勤務」と言われています。その理由をご存じですか?この記事では、なぜシフト制の場合だけ「月87時間」が雇用保険の加入条件とされているのか、などを説明します。

シフト制パートの雇用保険加入条件について「月87時間」を中心に解説

内容をまとめると

・シフト制の雇用保険の加入条件は「月87時間」以上

・これは非常勤などの短時間労働者やバイトも同様 

・しかし、加入できるかどうかは実際に働いた実労働時間ではなく企業が想定する所定労働時間で判断されるので注意 

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週20時間以上働いていること」が雇用保険への加入条件のひとつだとご存じの方は多いかと思います。

でも、シフト制パートの場合は週に何時間働くか決まってないので、加入するためにはどうすればいいか気になりますよね?

実は、シフト制パートが雇用保険に入れるかどうかは1ヶ月の所定労働時間で決まります。週単位で計算するのは難しいので、月87時間以上雇用保険へ加入するための条件となります。

この記事では、
  • なぜ「月87時間以上」がシフト制パートが雇用保険へ入るための条件なのか
  • 雇用保険の加入条件を判断する労働時間は何時間に決まっているのか
  • シフト制パートには、「月87時間」以外にも加入条件があるのかどうか
について解説します。


この記事を読んでいただけたら、雇用保険へシフト制パートが加入するための条件を理解し、雇用契約の際に迷わなくてすむので、ぜひ最後までご覧ください。


シフト制の雇用保険の加入条件が「月87時間」以上である理由

会社は雇用形態にかかわらずに、週20時間以上働いている従業員を雇用保険に加入させることが義務づけられています。


しかし、1週間ごとの希望シフトを提出してもらって労働時間を決めるシフト制の場合、週の労働時間は変動します。


そのためシフト制については便宜的に、ひと月の所定労働時間を使って条件を満たしているかを判断します。そして、シフト制パートが雇用保険に入るための労働時間の要件は月87時間以上といわれています。


では、なぜその時間が月87時間以上なのでしょうか。その理由について、順次ご説明します。

あくまでも加入条件は「週20時間」

雇用保険に入るための労働時間の条件は、あくまでも「週20時間以上」です。シフト制パートの場合は週の労働時間が変動するので、便宜的に月の労働時間から週の労働時間を計算しているのです。

それでは、なぜ週の所定労働時間が20時間を超えるには月87時間以上となるのか、計算式を交えながら説明します。

その算出方法は、
  1. 1年を52週に換算する
  2. 1ヶ月の所定労働時間 × 12ヶ月 = 年間の労働時間
  3. 年間の労働時間 ÷ 52週 = 1週間の平均労働時間
となります。

以上を踏まえて、1週間の平均労働時間が20時間となる1ヶ月の労働時間をaとして計算すると、
  1. (a × 12) ÷ 52 = 20
  2. a × 12 = 1040
  3. a = 86.666666
  4. a = 86時間40分
となります。

つまり、所定労働時間が月87時間を超えれば、週20時間という条件をクリアしているとみなされるのです。

非常勤などの短時間労働者やバイトも同様(夜間学生も含む)

以上のように、シフト制で月87時間以上働くパートは必ず雇用保険へ入らなければいけません。これはパートに限ったことではなく、シフト制で働く非常勤の短時間労働者アルバイトなどにも適用されます。


雇用形態に関係なく適用される加入条件ですが、学生は原則として入れません。しかし、大学の夜間学部、高校の夜間・定時制の学生などが月87時間以上働く場合は加入しなければいけません。


雇用保険の被保険者に該当するかどうかは、厚生労働省の「雇用保険が適用される者とされない者の具体例等について」でご確認ください。

基本は契約上の所定労働時間で判断

雇用保険への加入については、雇用保険事務手続きの手引き第4章 被保険者についてに記されているように、就業規則や雇用契約書などに定められた所定労働時間で判断します。


所定労働時間とは、始業から終業までの時間から休憩時間を除いた時間をいいます。そして、労働基準法で決められた法定労働時間の範囲内で企業が自由に設定できます。


加入できるかどうかは、実際に働いた実労働時間ではなく、企業ごとに決めている所定労働時間で判断されることに注意してください。


たとえば、労働条件通知書に次のように書かれていたとします。

  • 勤務日:火、木、金
  • 就労時間:10:00~16:00(うち、休憩1時間)
  • 時間外勤務:週5時間程度
  • 休日勤務:なし
そして、実際に週5時間残業したとします。その場合、所定労働時間が5時間×3日で15時間、残業が5時間なので、週の実労働時間は20時間となります。

つまり、この場合実労働時間は週20時間ですが、所定労働時間が15時間なので雇用保険には入れないのです。

シフト制の雇用保険加入条件は「月87時間」だけではない

シフト制パートが雇用保険に加入するためには、次の3つの条件をすべて満たさなければいけません。

  • 勤務開始から31日以上雇用される見込みがあること
  • 週20時間(月87時間)以上勤務すること
  • 学生ではないこと(例外あり)


31日以上雇用される見込みというのは、具体的には次のいずれかに該当する場合です。

  1. 雇用期間が定められていない場合
  2. 31日以上雇用される場合
  3. 雇用契約に更新規定があり、31日未満で雇い止めされない場合
  4. 雇用契約に更新規定はないけど、31日以上雇用された実績がある場合
雇用保険への加入条件は労働時間だけではないので注意してください。

注意!勤務日数は条件ではない

どこかで「月の労働日数が11日以上」という言葉を耳にし、雇用保険の加入に勤務日数は関係あるのだろうかと疑問に思われた方もいるでしょう。


この日数は失業保険の給付に関する条件です。雇用保険へ加入しておけば、失業したときに「失業保険」がもらえるという関連性があるために混同しやすいので注意してください。


失業保険とは、次の条件を満たす人が失業認定されたときに、再就職までの一定期間支給されるものです。

  • 働く意思と能力があり、就職活動をしているにもかかわらず職が見つからない
  • 離職前の2年間に、1ヶ月あたり11日以上働いていた月が通算12ヶ月以上ある

この「1ヶ月あたり11日以上」という失業保険の給付条件が雇用保険の条件と混同されやすいのです。雇用保険の条件はあくまで週20時間(月87時間)以上の勤務で、勤務日数は関係ありません。

参考:法改正によって短時間労働者の加入対象が拡大したのは社会保険(月120時間)

平成29年4月の法改正によって「中小企業等に対する被用者保険の適用拡大」が施行されました。これによって、従業員500人以下の会社でも労使で合意すれば社会保険に入ることができるようになりました。


ここで注意したいのは、短時間労働者の加入対象が拡大したのは雇用保険ではなく社会保険です。


同様に、雇用保険の判断基準となる月87時間以上と、社会保険の加入条件である「週の労働時間が30時間(月120時間)以上」も混同されやすいので注意が必要です。

雇用保険の加入条件と「月87時間」についてのまとめ

シフト制のパートが雇用保険に加入するための条件と「月87時間」について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか? 


 この記事のポイントは、

  • シフト制パートは「月87時間以上」が加入するための条件といわれる理由
  • 実労働時間ではなく、所定労働時間で週20時間を超えているかどうかを判断する
  • 「月87時間」以外にも、働き始めてから31日以上雇用される見込みがあること
でした。


雇用保険は、失業した後の生活の安定や再就職を促進するために、さまざまな保障を受けることができる国の社会保険制度のひとつです。加入しておくことで、より厚い保障が受けられるメリットがあります。


シフト制パートが雇用保険に入るためには、月87時間以上の所定労働時間がなければいけません。月87時間未満では加入することができないので、雇用契約や更新の際には気をつけましょう。


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