【FP監修】老後の生活費はいくら必要?40代50代から考える貯蓄の方法

更新日:2019/02/02
人生の三大資金のひとつである老後資金について、40代・50代は本格的に考えておかなければならない世代です。この記事では現役のFPの意見を元に、老後の生活費を貯蓄するのにおすすめの貯蓄方法や老後の生活費を貯蓄していく上での考え方についてまとめました。
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FPアンケート【老後の生活費を貯蓄する上でおすすめな方法は?】
教育資金や住宅資金のメドがついてくる40代・50代は、人生の三大資金のうち残る老後資金について本格的に考えていかなければならない世代といえます。
定年まで働き、老後は公的年金と退職金で生活していくのが「これまでの」老後の標準プランでした。
しかし人生100年時代ともいわれる今、これから老後を迎える世代にとってこのプランはすでに当てはまらなくなりつつあります。
このような状況の中で、老後にお金が足りなくなってしまう「老後破綻」に陥らないためには、40代・50代で老後を見据えた計画的な貯蓄ができるかが大切になります。
では実際にどのような方法で貯蓄していけばいいのか、お金のプロであるFPがおすすめする老後資金の貯蓄方法から考えていきましょう。
FPがおすすめする老後資金の貯蓄方法のメリット・デメリット
老後資金の貯蓄においては、安全性・流動性・収益性のバランスを考え、資金を運用しながら貯蓄(積立)していくことがポイントとなります。
ここでは老後資金の貯蓄方法としてFPがおすすめする商品と、それらの特徴を確認しておきましょう。
定期預金
銀行に一定期間お金を預け、金利を受け取りながら貯蓄を行う商品です。
【メリット】
- 元本保証
- すぐに現金化できる
万一金融機関が破綻した場合にも元本1,000万円とその利息までは預金保護機構により保護され、元本が保証される最も安全性の高い商品です。
また一定期間預金の解約を制限することで、普通預金よりも高い金利が設定されています。
しかし、普通預金金利との差額を返還すればいつでも解約して現金化ができるため、流動性の高い商品でもあります。
【デメリット】
- 運用効率が悪い
2018年4月現在の定期預金金利は、メガバンクで0.01%、比較的金利の高いネット銀行でも0.1%台とほとんど金利はつきません。
1回分のATM手数料のほうが金利より高いような状況であり、運用効果はほとんど期待できません。
個人年金保険
被保険者が死亡するまで年金を受け取ることができる「終身年金」と、年金を受け取れる期間が10年・15年のように決まっていいる「確定年金」があります。
同じ保険料であれば、年金額(年額)は終身年金よりも確定年金の方が多くなりますが、長生きするれば終身年金の年金総額が確定年金の年金総額を上回ることもあります。
【メリット】
- 保険料は生命保険料控除の対象
- 定期預金に比べると運用効率がよい
- (終身年金の場合)年金をずっと受け取れる安心感
終身年金は被保険者が亡くなるまで年金を受け取り続けることができ、長生きすることでお金が足りなくなってしまう不安への備えとなります。
【デメリット】
- 途中解約による元本割れリスク
- インフレに弱い(積立利率固定の場合)
個人型確定拠出年金(iDeCo)
【メリット】
- 掛金は全額が所得控除の対象
- 運用益は全額非課税
- 運用成果次第で年金額を大きく増やせる
掛金が全額控除、運用益は非課税となるため節税効果が非常に高くなります。
そのため、直接定期預金や投資信託で運用するよりも有利に貯蓄・運用することができます。
【デメリット】
- 60歳まではお金を受け取れない
- 年金額が運用成果に左右される
積立金を受け取ることができるのは原則60歳以降であり、それまでに必要な資金まで拠出してしまわないようにしなければなりません。
また運用商品の選択やその運用成果は自己責任であり、運用次第で年金額を大きく増やすこともできる反面、年金額が想定を下回ってしまうリスクもあります。
終身保険
【メリット】
- 保険期間中は死亡保障を確保できる
- 解約返戻金が支払保険料総額を上回ることもある
- 相続対策としての活用
解約返戻金は支払保険料総額を上回ることもあります。そのため実質保険料負担なしで死亡保障を確保しながら、運用益を得ることもできます。
また解約するよりも死亡保険金として受け取る方が金額は多くなるため、解約せず家族に残すという選択をすることもできます。
さらに、生命保険金の非課税枠(相続税)や受取人指定などの仕組みを使った相続対策も可能です。
【デメリット】
- 途中解約による元本割れリスク
- インフレに弱い(積立利率固定の場合)
保険料払込期間中の解約返戻金は通常払込保険料を下回ります。特に短期で解約してしまうと大きく元本割れしてしまうため注意が必要です。
養老保険
投資信託
【メリット】
- 少額から分散投資ができる
- 運用成果次第で大きく資産を増やすこともできる
多くの投資家から集めた資金を様々な商品へ分散投資することで、少額の資金でも効率的な運用やリスク軽減効果が期待できます。
【デメリット】
- 手数料や運用コストの負担
- 運用成果次第で資産が減ることもある
運用成果次第では資産を増やすことができる反面、運用がうまくいかなければ資産を減らしてしまうこともあります。
またファンドの運用にかかる信託報酬や手数料といったコストを負担する必要があり、その分運用にはマイナスとなります。
国民年金基金(国民年金対象者)
自営業者やフリーランスなど、厚生年金制度ない国民年金の第1号被保険者を対象に、厚生年金に相当する公的年金への上乗せとして用意されている制度です。
国民年金保険料に最大月6万8,000円までの掛金上乗せして支払うことで、老後に受け取れる年金額を増やすことができます。
【メリット】
- 掛金は全額が所得控除対象
- (終身年金の場合)年金をずっと受け取れる安心感
個人年金保険の所得控除額は、年間4万円(年間保険料8万円以上の場合)が上限となるのに対し、国民年金基金の掛金は全額が所得控除対象となります。
例えば、課税所得金額が約400万円の方が年30万円の掛金を納めた場合、所得税・住民税が約9万円の軽減されます。
また国民年金基金の年金は終身受取がベースであり、生きている間は年金をずっと受け取れる安心感があります。
【デメリット】
- 加入後は任意に脱退できない
- 受け取れるのは65歳以降
国民年金基金は任意加入ですが、いったん加入すると任意で脱退することができません。
掛金を変更することはできますが、0にすることはできません。
また65歳まで年金を受け取ることができないため、それまでに必要な資金としては使うことができません。
特にFPから人気だった個人型確定拠出年金(iDeCo)をさらに詳しく
老後の生活費を貯蓄する方法として、多くのFPがおすすめしているのが個人型確定拠出年金(iDeCo)です。
その最大の理由は、拠出時・運用時・受取時それぞれにおける節税効果の高さにあります。
税制メリット | |
---|---|
拠出時 | 掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)対象 |
運用時 | 運用益が非課税(通常20.315%) |
受取時 | 【一時金で受け取り】退職所得控除対象 【年金で受け取り】公的年金等控除対象 |
課税所得500万円の方であれば、税率(所得税+住民税)は約30%です。
この方が年間24万円(月2万円)の掛金を拠出したとすると、その約30%(7.2万円)の税金が安くなる(還付される)ことになります。
節税分を運用成果の一部と考えれば、それだけで年30%のリターンが確保されていることになり、かなり有利な運用・貯蓄の方法だといえます。
さらに運用益にかかる通常20.315%の課税もありません。
ただ年金受取時には、公的年金等(年金受取)、あるいは退職所得(一時金受取)として課税対象となります。
とはいえこれも所得控除の対象となり、控除額も大きいため、それまでの税制メリットの大きさに比べれば大きな負担とならないケースがほとんどです。
さらに2017年の制度改正によって、20〜60歳までの現役世代のほとんどが個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用できるようになっています。
これまで利用してこなかったという方にも、老後の生活費を貯蓄する方法として積極的に活用したていただきたい方法だといえます。
FPの方たちがおすすめする老後の貯蓄方法に対するコメント
- 50歳までならiDeCoがお勧めです。
掛け金を全額所得控除できるので節税になります。
できれば投資信託などを選んだ方が、老後資金を増やせる可能性が高まると思います。
iDeCoは10年以上運用できる方がお勧めなので、50歳過ぎた人は60歳まで10年ないし、あまりお勧めではありません。
老後の備えとして王道はやはり貯金。なんにでも使えるし、銀行にあれば元本割れはないので、安心材料です。
(拝野洋子)
- 貯金方法を、いい所取りで分散しましょう。
個人年金保険では、働いている期間は控除を利用できるというメリットを活かします。
終身保険では、やはり控除を受けながら、そして死亡保障を持ちながら貯金ができるというメリットを活かします。
iDeCoも全額所得控除、運用益非課税、公的年金等控除、退職所得控除の対象になったりと税制面での優遇があります。
60歳になるまで引き出すことができないのがデメリットでもあるので、やはり分散の一つとして考えるべきでしょう。
人生様々なことが起こります。
突発的なことにも対応できるよう銀行口座にも少しお金がほしいですね。
子育て時代には難しいですが、それぞれに1万円ずつ貯金できると理想です。
(下澤純子)
- 定期的に積み立てる上に、税制度の優遇もあるため。
「国民年金オンリー」「厚生年金オンリー」、「厚生年金+企業年金基金(厚生年金基金または共済年金)」の対象かで考え方が異なる。
個人年金保険は、年金額が国民年金に比べ多い「厚生年金オンリー」「厚生年金+企業年金基金(厚生年金基金または共済年金)」に少し上乗せするのに使い勝手のいい保険である。
国民年金対象者は国民年金基金に加え、定期預金でカバーしないと手取り額が低くて生活困窮に陥る可能性が高い。
(鳥海光夫)
- 所得控除があるので、税金を軽減できる。
生命保険や個人年金保険もそれぞれ税的にメリットとなる控除が利用できます。
しかしiDeCoの場合、拠出する掛金は全額所得控除となるので、税的メリットが大きくなります。
またiDeCoは、運用益が非課税になる点も押さえておきたいです。
通常の定期預金はコツコツ貯蓄する方法もいいと思います。
預金は元本割れすることもなく、貯蓄した分が確実に貯まっていくので、通常預金とiDeCoを併用する方法をおすすめします。
(前佛朋子)
- 税的メリットをうまく活用できるから。低金利の今は、保険での低率の運用でずっとというのはうま味が少なすぎる。
iDeCoで税的メリットを受ける方が大きい。
運用時は掛け金が全額所得税控除が受けられ、受取時は退職金控除が受けられるなど、保険にはない大きなメリットがあるから。
(正田きよ子)
- その人の状況次第ですがiDeCoは節税効果が高いためです。
個人年金保険や終身保険については利回りが高い場合がありその点はメリットと言えますが、反面破綻リスク、中途解約時の解約控除リスク等を慎重に考慮すべきです。
iDeCoは運用成果次第という面がありますが全く運用せずにiDeCo内で元本確保型商品に投資していくだけでも所得控除による節税メリットがあり人によってはそれだけでかなりの実質利回りが得られます。
ただし60歳ま原則引き出し不可ですのでライフプランを立てた上で可否を判断する必要があります。
(林健太郎)
- どこの預けても金利の低い現在は節税をメインに考えましょう。
確定拠出年金は 解約できないため、税金の負担を軽くしつつ、確実に老後資金が貯まりますよ。
ただし、受取時には課税対象となるので注意が必要です。
(横川由理)
- 年代や状況によって変わるが、資産分散が大切。個人年金とiDeCoは40歳以降におススメをしている。
どちらも基本的に60歳まで支払いが続くので(掛金を停止する事はできるが、その間も管理手数料がかかってしまう)、20代や30代だと、長期的に資産が固定されてしまい、他の商品を持つ事ができなくなってしまう可能性が高い。
20代、30代は、終身保険の短期払い(15年以内)や投資信託などで、短期的に支払う商品を選んで、40代に突入した時に、別の商品で資産形成を行うと良い。
(冨士野喜子)
- あらゆる選択肢からベストな方法を選ぶべきで、老後の生活費を確保する手段は、保険を含めていろいろあります。
収入が公的年金等に限られる老後は、支出を如何にコントロールするかがポイントになります。
必要以上のリスクをとって運用する必要もありません。
そのため、ベストな選択肢は個々によってことなります。
保険商品には所得控除できるメリットや相続対策、終身で年金を受け取れる安心感等の良さはあるので、人によっては選択肢に挙げた商品を活用することがベストな場合も考えられます。
(松浦建二)
まとめ
老後の生活費を貯蓄するには様々な方法があり、それぞれに特徴(メリット・デメリット)があります。
多くのFPに共通していたのは、それぞれの特徴をふまえた上で、複数の商品を適切に組み合わせて利用するという意見でした。
ほけんROOMには、老後の生活費を貯蓄していく上で役立つ記事が他にも多くあるので、ぜひご覧ください。