年金から引かれるものは何?65歳以上の年金から天引きされる税金とその金額

年金から引かれるものについてご存知でしょうか?年金は額面通りの金額を受け取れるわけではなく、住民税や所得税、介護保険料などの社会保険料が天引きされるのです。今回、65歳以上の方の年金から引かれる税金の種類、年金の手取り額の計算やシミュレーションを解説します。

年金から引かれるものは何?天引き後の年金額をシミュレーション


年金をもらうための準備として「年金定期便」であらかじめもらえる金額を教えてもらえるのはうれしい制度ですよね。 

 

でも、実際に65歳になったときに年金をもらうときに、額面通りの金額がもらえないのはご存知でしたか?


 実は、年金から引かれるものはさまざまあります。税金や社会保険料が差し引かれて手取りとなるのです。


 国民年金の支払い期間は60歳で終了します。支払い期間から5年後の65歳からもらえる年金額を、年金定期便に書かれている額面を全てアテにしていたら、思ったよりも手取りが少なくでガッカリした。という話をよく聞きます。
 


65歳以上になった時の年金から天引きされた後の金額がいくらなのかをしっかりと知ることで、老後の暮らしのメドがたちますよね。


 そこで今回の記事では次のことをお伝えします。

  • 年金から税金や社会保険料が引かれる理由 
  • 年金から引かれる税金とは?
  • 年金の手取額シミュレーション 
  • 天引きされる税金の決め方は? 
  • 年金受給者が確定申告が必要な場合はどんな時? 

最後まで読むことで、年金から引かれる保険料や税金種類は何か、実際の手取りはいくらになるのかが分かります。
どうぞ最後までお読みください。   

なぜ年金から税金や社会保険料を天引きしている?

なぜ年金から税金や社会保険料を天引きしているのでしょうか?
 

理由は次の2つがあります。 

  1. 年金受給者が、税金や社会保険料の支払い忘れを防ぐことが出来る 
  2. 市町村側が、税金や社会保険料を100%徴収することが出来る

 65歳以上になった人は、何らかの公的年金を受給しています。 

公的年金の中から、税金や保険料を支払わなければなりません。
 


支払いの際、年金からの天引きがされていないと、年金受給者は金融機関に振りこみに行く、あるいは口座から引き去りするために口座の残高を確認しておく必要があります。 


しかし、年金から天引きすることで、自動的に支払ってもらえますから、支払い忘れや口座の残高不足で引かれないなどということがおきません。
 


市町村側から見ると、毎回年金受給者に対して納付の勧奨をしなくても100%徴収することが出来て手間がはぶけます。
 


このように、年金受給者と市町村双方にメリットがあるため、年金から税金や社会保険料を天引きしているのです。 

天引きが中止される場合は、年金の差し止めが理由かも

年金からの天引きが中止される場合がありますが、年金の差し止めがひとつの理由と考えられます。


年金の差し止めをされる場合は次の2つのケースがあります。

  1. 年金の受給が複数あり、ひとつを選択をしなければならないが、選択しなかったとき
  2. 年金の現況届の提出が期限後となったとき


また、次のケースのときも年金からの天引きは中止されます。


  • 年金を担保にして融資制度を利用し、返済中のとき
  • 市町村側から日本年金機構に対して天引きを中止するように依頼があったとき


なお、年金からの天引きは市町村から日本年金機構に連絡があって再開となります。

 再開は10月定期支払いからです。
 


ただし、4月定期支払い時点で上記の中止理由に該当した場合や、市町村の判断で天引き対象者からはずされたときは、天引きの再開は行われませんので注意してください。 


年金から天引きされないときは、年金受給者が個別に支払う必要があります。 

年金から引かれる税金の種類とその金額について解説



年金を受け取るとき、一定の金額以上を受け取っている人は、年金から引かれるものとして税金があります。税金が天引きされた金額が手取りとして振り込みされます。


 年金から引かれている税金の種類は、「所得税」「住民税」「介護保険料」「国民健康保険料」「後期高齢者医療保険料」です。


年金から引かれる保険料については、市によってはHPに早見表をのせているところもありますので、参考にしてみてください。


なお、年金から介護保険料・国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・住民税が天引きされている年金受給者には、市町村から年金から天引きする「お知らせ」が送られますので参考にしてください。


では、年金から引かれるものの「税金」についてひとつずつ説明していきます。 

天引きされる税金①所得税

年金から天引きされる税金①は「所得税」です。


年金に所得税がかかるときは、必ず年金から天引きされるものとなります。


 年金の所得税は「雑所得」となります。


 公的年金の収入額から公的年金の所得控除額(120万円+各種控除額)を引いて所得金額を出します。 

ですから、年金額が120万円以内の場合、所得税は非課税になり、所得税は年金から引かれる税金にはなりません。


 ちなみに、所得税の計算方法は、次の式で計算されます。

 所得税=(年金額-社会保険料控除等、各種控除)×5.105%(所得税率5%×復興特別所得税率0.105%)

天引きされる税金②住民税

年金から天引きされる税金②は「住民税」です。


65歳以上の方のうち、老齢もしくは退職を理由として受給している年金で、年間の年金額が18万円以上の人が、年金から引かれるものとして住民税が引かれます。


住民税は、所得金額(年金額から120万円を差し引いた額)から社会保険料、控除額を差し引いた額に、各市町村で定められた住民税の税率をかけて、さらに調整控除額を引きます。そして一律の均等割りを加えて計算します。

天引きされる税金③介護保険料

年金から天引きされる税金③は「介護保険料」です。


65歳以上の方のうち、老齢もしくは退職、障害または死亡を理由として受給している年金で、年間の年金額が18万円以上の人が、年金から引かれるものとして介護保険料が引かれます。


65歳以上の年金受給者は介護保険の「第1号被保険者」の保険料が引かれます。

金額は所得を10段階に分けて計算しています。

5段階の人を基準額とし、基準額×0.3~基準額×1.8で計算します。

このように、介護保険料は年金から引かれる保険料となります。

天引きされる税金④国民健康保険料か、後期高齢者医療保険料

年金から天引きされる税金④は「国民健康保険料」「後期高齢者医療保険料」です。


65歳以上75歳未満の人の年金から引かれるものとして「国民健康保険料」があります。

老齢、退職、障害または死亡を理由として受給している年金で、年間の年金額が18万円以上の人です。


もうひとつは、75歳以上の人、もしくは65歳以上75歳未満でも、重度障害などが理由で後期高齢者医療保険制度に該当する人は、年金から引かれるものとして「後期高齢者医療保険料」があります。

老齢、退職、障害または死亡を理由として受給している年金で、年間の支給額が18万円以上の人です。


保険料は所得割額+均等割額+平等割額で決定されます。

このように年金から引かれる保険料には以上の2つが入ります。

年金から引かれるものはいくら?手取り額をシミュレーション


年金から引かれるものはいくらになるか、手取額をシミュレーションしていきましょう。


2018年の厚生労働省の資産では、男性の被保険者の手取り額平均は418万円です。

対して、夫婦二人の平均世帯年金額は男子被保険者の平均手取り額の約62%に当たる、262万円になります。


そこで、夫婦共に65歳以上で、公的年金が、平均世帯手取り額の①262万円の年金収入の場合と、②300万円の場合をそれぞれ計算していきます。

シミュレーション①公的年金が夫婦合計で262万円の場合

では、公的年金が夫婦合計で262万円の場合のシミュレーションをしましょう。


次のケースで計算します。


年金額
夫の年金  185万円
妻の年金 77万円
合計262万円

    

社会保険料は市町村ごとにそれぞれの保険料が算定されます。 

ここでは、藤沢市のHPで試算をした数字を参考にします。→令和2年度藤沢市国民健康保険料試算ページ

社会保険料は(医療分+支援分+介護分)約6.3万円。(均等割・平等割5割軽減適用となっています。)


 所得税を計算します。 

 公的年金控除額は120万円です。 

 妻は年金額が77万円ですので非課税。 


 夫を計算します。 

1.所得金額は、公的年金の収入-公的年金所得控除=185万円-120万円=65万円・・・① 

2.所得控除金額は、社会保険料控除+配偶者控除+基礎控除=6.3万円+38万円+48万円=92.3万円・・・②  

3.課税される所得金額は、 ①-②=65万円-92.3万円=0万円 


 所得税は非課税となります。 


 住民税を計算します。

1.所得金額は、上記①の65万円 

2.所得控除金額は、社会保険料控除+配偶者控除+基礎控除=6.3万円+33万円+33万円=72.3万円・・・② 

3.課税標準額は、①-②=72.3万円-80万円=0万円


 住民税も非課税となります。
 


つまり、平均世帯収入の夫婦の場合は、社会保険料の6.3万円分のみ年金から引かれるものになります。 

年金額の約5.3%の金額が年金から引かれるものになりますので、年金額の約97%が手取り額となります。   

シミュレーション②公的年金が夫婦合計で300万円の場合

次に、公的年金が夫婦合計で300万円の場合でシミュレーションしましょう。

妻は専業主婦の場合)


所得税を計算します。

1.所得金額
公的年金の収入-公的年金所得控除=300万円-120万円=180万円・・・①
 

2.所得控除金額
社会保険料控除+配偶者控除+配偶者特別控除+基礎控除=21万円+38万円+38万円+48万円=145万円・・・② 

3.課税される所得金額
①-②=180万円-145万円=35万円 


所得税は35万円×税率5.105%=約1.7万円 


住民税を計算します。

1.所得金額は①の180万円 

2.所得控除金額は、社会保険料控除+配偶者控除+基礎控除=21万円+33万円+33万円=87万円・・・② 

3.課税標準額は①-②=180万円-87万円=93万円・・・③
 


住民税は93万円×約10%-人的控除額等で、約9万円。
 


年金から引かれるものは、所得税1.7万円+住民税9万円+社会保険料21万円=31.7万円。


従って、300万円の年金をもらっている人は、300万円-31.7万円=約269万円の手取りとなり、年金額の約90%が手取り額となります。      

天引きされる税金は、どのようにして決まる?

天引きされる税金は、どのようにして決まるのでしょうか? 


年金から引かれるものとして、上記で説明してきたとおり、4つの税金や保険料があることがわかりました。 


年金が全額もらえるわけではなく、4つも年金から引かれるものがあって、初めて手取りとなります。 年金の額面どおりではなくて、思っていたよりも少ない金額でガッガリしたという話もよく聞きます。
 


そこで次に、年金から引かれる税金や保険料の決め方を2つお伝えします。 

扶養親族等申告書

年金から引かれるものの計算には「扶養親族等申告書」が、もとになります。 


例えば、配偶者がいる、いないによって、配偶者控除額が変わってきます。

きちんと申告をすれば、控除額が増えて、所得税の税率が下がります。 


ですから、この書類をきちんと出さなければ、本当は控除される金額が控除されなく
なってしまうのです。
 


書き方は少し難しいかもしれませんが、年金から引かれるものは少ないにこしたことはないですよね。しっかりと記入して提出するようにしましょう。

住んでいる市町村が決める

年金から引かれるものの金額は「住んでいる市町村」が決めます。
 


例えば、介護保険料の場合は、厚生労働省が決めた基準額があり、住んでいる市町村が行っているサービスの水準に合わせて決められているのです。
 


また、住民税は市民税、県民税と2つありますが、この割合いも住んでいる市町村によって違っています。 


例えば、A市は8:2、B市は6:4というように、割合いも違っています。
 


詳しく知りたい場合は、お住まいの市町村の窓口へ問い合わせてみてください。

参考:年金受給者でも確定申告が必要な場合もあるので注意

ところで、年金受給者でも確定申告が必要な場合があることはご存じでしたか?


ほとんどのケースの場合、年金から引かれるものは天引きされていますので、改めて確定申告を行うことはありません。 


ただし、次のケースの場合は確定申告が必要となりますので、キチンと確定申告をして税金を納めましょう。
 

  • 公的年金などの収入の合計額が400万円を越えているとき 
  • 年金以外の所得が20万円を超えてあるとき 
  • 源泉徴収の対象とされていない海外の年金を受け取っているとき
     


また、反対に次のケースの場合は確定申告をすることによって税金が戻ってきます。

  • 一定額以上の医療費を支払ったとき 
  • マイホームをローンで購入したとき 
  • 災害や盗難にあったとき 

 特に医療費控除は確定申告で戻ってくるケースが一番多いです。 

「10万円以上」か「所得が200万円以下の人は所得の5%以上」の金額で対象になりますから忘れずに申告しましょう。
 

少しでも年金から引かれるものが少なくなるようにしていきましょう。 

参考:年金から天引きされる介護保険料を年末調整に含められる

年金から天引きされる介護保険料を年末調整に含められるでしょうか? 


年金を受給するようになってからも会社で働いている人はたくさんいます。
 

そのような人が会社の年末調整のときに介護保険料を含めて申告することができるか気になりますよね。 


 結論から言いますと、年末調整で控除できます。
 


年金から引かれる保険料はあくまで年金を受け取っている本人が支払ったものです。 

ですから年末調整のときには、年金から引かれた保険料を「社会保険料控除」として控除することが
できます。 

詳しくは 国税庁HP「令和元年分年末調整のしかた」32頁を参照ください。


なお、配偶者の方の年金から引かれた介護保険料は、配偶者本人の社会保険料控除となりますので注意してください。      

まとめ:年金からひかれるもの一覧と天引きされる額の計算

年金から引かれるものと天引きされる額の計算をしてみましたがいかがでしたか?


年金から引かれるものについて次のことがわかりました。

  • 年金から税金や社会保険料を天引きしているのは支払い忘れを防ぐためと100%徴収することができるためである 
  • 年金の天引きが中止される理由は年金の差し止めが理由となるケースがある
     
  • 年金から引かれる税金・保険料の種類は「所得税」「住民税」「介護保険料」「国民健康保険料」もしくは「後期高齢者医療保険料」の4種類ある
  • 夫婦合計の年金額が平均の262万円の場合は税金は非課税となり、社会保険料のみ天引きされる
     
  •  天引きされる税金は扶養控除申告書がもとになり、住んでいる市町村が決める 
  •  年金受給者も確定申告が必要なケースがある


自分の年金から引かれるものがどれくらいあるのか、手取りでどのくらいになるのかがあらかじめ分かっていると、

老後の暮らしを考える上で安心ですよね。

手取り額をしっかりと把握して楽しい老後の生活を送りましょう!

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

ランキング