更新日:2023/09/18
電気工事業で加入すべき保険と事業を取り巻くリスクについて徹底解説
電気工事業では、火災や爆発による損害リスクなど様々なリスクがあります。電気工事業の経営でそのようなリスクを避けるために保険に加入することをおすすめします。事業のリスクや保険に関する相談を専門家にしたい方は、「マネーキャリア」をご利用ください。
内容をまとめると
- 電気工事業にはコスト上昇や火災、労災といったリスクがある
- 過去には施工ミスによる停電や作業中の感電死といった事故が起きている
- 法人向けの火災保険やPL保険に加入しておけば万が一の際に安心
- 保険の選び方がわからない方はマネーキャリアにご相談を!
目次を使って気になるところから読みましょう!
電気工事業の経営を取り巻くリスク
電気工事業を取り巻くリスクマップ
最初は、電気工事業の経営を取り巻くリスクにはどのようなものがあるのかを解説していきます。その後に、電気工事業において加入すべき法人保険の紹介をしていきます。
上記に掲載しているマップはリスクマップと言います。事業が抱えるリスクを可視化してマップにしているものです。リスクが発生する頻度とリスクが経営にどのくらい影響を与えるのかの2つの軸で構成されています。事象を財物リスク、人的リスク、経営リスク、賠償リスクの4つのカテゴリに分類しています。
今回のこちらの記事では、以下の3つのリスクを解説していきます。
- 工事コストの上昇(発生頻度・高、リスク・大)
- 火災・爆発(発生頻度・低、リスク・大)
- 従業員の労働災害(発生頻度・中、リスク・小)
①工事コストの上昇(発生頻度・高、リスク・大)
電気工事業を行っている方は、予期せぬコスト上昇が起こる可能性もあるため、緊急時への備えが必須です。
電気工事業を行うにあたり、作業を行うスタッフの確保や工事に必要な道具などを確保しなければなりません。
業務によっては専門的な分野を含むため、業者によっては専門的な知識を培うためのトレーニングを行う必要もあるでしょう。その場合は、スタッフ向けの講習を行う必要があるため、別途費用を捻出しなければなりません。
専門的な知識と技術を持つスタッフを雇うことも可能です。ただし、人件費が高騰する恐れがあるため、スタッフをトレーニングするか、専門のスタッフを雇うかどうかを慎重に検討する必要があります。
原材料のコスト上昇も注意しておきたいポイントです。原材料は海外から輸入するものも多いため、経済状況が悪化しているときは材料価格そのものが高くなります。
また、法整備の影響でコストが上がる恐れもあるので、予期せぬ事態に慌てずに済むよう対策が必要です。
②火災・爆発(発生頻度・低、リスク・大)
電気工事業は作業中に何らかの原因で火災が起こり、爆発する可能性があるため注意しなければなりません。火災時の補填は業者側で行うため、場合によっては高額の賠償責任を負います。
建物内でコンセントなどの接続部のゆるみ、配線のショートといった問題が起こると、そこから火災が起こる恐れがあります。
これらは建物を利用している人の不手際によって発生する可能性が高いものの、電気工事業者のミスによって起こる火災があることもご存じでしょうか。
施工不良や使用した部品の劣化、設置した電気製品の故障などが原因で火災や爆発が起こるケースもあります。そのため、使用する部品が劣化していないか、電気製品に問題がないかをしっかりと確認しておかなければなりません。
火災や爆発は起こる頻度がさほど高くはありません。ただし、万が一起こった場合は電気工事業者が高額の賠償責任を負うため、多大なリスクがあると考えておいてください。
③従業員の労働災害(発生頻度・中、リスク・小)
電気工事業は屋外・屋内の電気設備設計と施工、コンセントや照明の設置、電線の敷設といった様々な業務があるため、業務中に労働災害が起こる恐れもあります。
設計はデスク作業なので労災が起こるリスクは極めて低いといえます。しかし、施工時は手を怪我する可能性が高く、高所での作業をする場合は転落事故の恐れもあるでしょう。
手の怪我であれば入院が必要になるほどの大怪我にはならないものの、転落した場合は命にかかわる事態になるかもしれません。障害が残ったり、死亡したりした場合は遺族への賠償も発生するため、対策をしておくことが重要です。
労働災害は発生頻度が中程度、リスクは小さいといえます。ただし、時と場合によってはリスクが非常に大きくなるため、リスクに対処できる保険への加入がおすすめです。
電気工事業で実際に起こった事故・損害事例
電気工事業には様々なリスクがあり、これまでに事故や損害の事例があります。自社で大きなトラブルが発生していなくても、今後大きな問題が起こる可能性はゼロではありません。万が一に備えて、保険への加入を検討しておきましょう。
ここからは、電気工事業で実際に起こった以下の事例を解説します。
- 掘削工事中の停電
- 施工ミスによる事故例
- 工場での作業中に感電死
今はまだ保険の必要性を感じていなくても、実際に起こったトラブルを見ておけば保険の大切さを実感できます。保険への加入を迷っている方は必見です。
事例1:掘削工事中の停電
1つ目の事例は掘削工事中に起きた停電事故です。
増設工事のためにショベルカーを使用した業者が、地中にある高圧ケーブルの保護管を破損させ、停電させました。破損した部分の部品が当日中に用意できず、翌日に修理を行って停電は回復しています。
地中にある高圧ケーブルについては、工事前の打ち合わせで作業者に知らされていました。ケーブルを破損すると大きな問題となるため、その部分に関しては手作業で進めるよう指示されていたようです。
しかし、工事が遅れて時間がなかったことから、作業者はショベルカーを使ってそのまま作業をしてしまいました。ある程度掘り進めても大丈夫だろうという安易な判断から停電を引き起こし、大きな問題に発展してしまったのです。
事例2:施工ミスによる事故例
2つ目の事例は施工ミスによる賠償事故です。
電気工事業者がトマトを育てるハウスへの動力を供給する電柱変圧器交換作業を行いました。問題なく設置できていればハウスへの動力が供給できるため、トマトの育つ環境が整えられるのですが、施工ミスにより、供給が行えなくなっていたのです。
異変に気付いたハウス管理者がすぐに電気工事業者に連絡をして修理をしたものの、育てていたトマトは全滅してしまいました。1年分の農作物がだめになってしまったとして、電気工事業者は巨額の損害賠償請求をされています。
作業を行った電気工事業者は保険に加入していましたが、今回の事故がメンテナンス中のケースだったため、対象外でした。
こちらのケースのように、場合によっては保険対象外となるので、加入を決める前にどのようなケースで補償となるかを確認することが大切です。
事例3:工場での作業中に感電死
3つ目の事例は作業時の感電死による労災事故です。
ある工場から照明の増設作業を依頼された電気工事業者は、依頼先の保全係から工事内容についての説明を受けたうえで、作業に取り掛かりました。
電線コードと電源コードを接続する際、圧着ペンチで取り付けたところ、絶縁スリーブを突き抜けて作業者が感電してしまいます。
感電した作業者は取引先の従業員に発見されましたが、見つかったときにはすでに息を引き取っていたようです。
作業に取り掛かったスタッフは絶縁用の手袋やゴーグルといった保護具を身に着けておらず、通常の作業着で業務を行っていました。
また、自社で感電防止についての教育を行ったこともなかったので、電気工事を行うことでの危険性を理解しきれていなかったことが、この事故につながったと考えられます。
電気工事業者が加入すべき損害保険
ここからは、電気工事業を取り巻くリスクを回避・軽減するための損害保険を紹介します。今回こちらの記事で紹介する損害保険は以下の5つになります。
- 工事保険
- 労働災害総合保険(労災上乗せ保険)
- 法人向けの火災保険
- PL保険(生産物責任保険)
- 請負業者賠償責任保険
①工事保険
まずは工事保険について解説します。工事保険とは、工事中に工事目的物に生じた損害を補償する法人保険のことです。
工事保険には大きく分けて3種類の保険があります。
- 建設工事保険
- 土木工事保険
- 組立保険
- 火災・爆発
- 台風
- 暴風
- 落雷
- 地盤沈下
- 放火
- 盗難
- 作業ミスなど
②労働災害総合保険(労災上乗せ保険)
続いては労働災害総合保険について解説していきます。労働災害総合保険とは、政府労災保険では、補いきれない範囲を補償するための損害保険です。
そのため、労災上乗せ保険とも言われています。そんな労働災害総合保険は、以下の2つの保険を組み合わせて提供されています。
- 使用者賠償責任保険
- 法定外補償保険
- 従業員が死亡した場合や障害を負った場合の補償
- 事業主や役員にかかる治療費の補償
- 労災訴訟を受けたときの補償
③法人向けの火災保険
続いては、法人向けの火災保険についてです。法人向けの火災保険とは、火災や自然災害などにより自社の建物や設備などに損害が発生した場合の費用を保証してくれる保険です。
つまりこちらの保険は賠償責任を補償するためではなく、自社の資産を保全する目的の法人保険となっています。
そんな法人向けの火災保険では、以下のような災害が発生した場合に補償が適応されます。
- 火災・落雷・破裂・爆発
- 風災・雹災・雪災
- 水漏れ
- 盗難
- 水災
- 電気的・機械的事故
- 騒擾や労働争議 など
法人向けの火災保険について詳しく解説している記事をほけんROOMでは公開しています。気になる方は以下からご覧ください。
②PL保険(生産物責任保険)
施工ミスによるトラブルを危惧している方は、PL保険に加入しましょう。PL保険は施工後の結果によって対人・対物事故が起こった場合、発生する損害を補償してくれるものです。
作業内容についてしっかりと把握し、丁寧に作業をしていても思わぬミスは起こるものです。ヒューマンエラーによって施工後にトラブルが起こる可能性もあるため、保険は万が一のお守りとなってくれるでしょう。
PL保険は会社によって保険対象になるケースとならないケースが異なります。法律上で発生する損害賠償請求から賠償請求に関する訴訟費用と弁護士費用までを対象にしてくれる保険もあるため、対象範囲が幅広いものを選ぶといいでしょう。
PL保険はどんな事故でも補償対象になるわけではありません。作業者の故意、または重大な過失によって生じた事故に関しては補償外となるため、作業スタッフの教育も必須です。
しっかりと対策をしたにもかかわらず起きた事故に関しては補償してもらえるので、保険への加入と一緒に、スタッフの教育も入念に行いましょう。
参考:東京海上日動
PL保険について詳しく解説している記事を公開しているので気になる方は、以下からご覧ください。
③請負業者賠償責任保険
請負業者賠償責任保険は電気工事を行うにあたって起こった対人・対物事故を補償するものです。
PL保険は施工結果による事故を対象としたものですが、こちらは工事中に起こった事故を対象とするものなので、どちらにも加入しておいた方がいいでしょう。両方に加入にしておけば、施工中から施工後まで保険の対象範囲となります。
電気工事の施工中も事故が起きる可能性はゼロではありません。例えば、照明の施工を行っている際に脚立が倒れ、近くにいた人にぶつかって怪我をさせてしまったケースなどが該当します。
人ではなく物に当たった場合も対象になるので、施工開始から完了後まで保証してほしい方はぜひ加入してください。
参考:東京海上日動
請負業者賠償責任保険について詳しい内容を知りたい方は、以下の記事で解説しているのでそちらをご覧ください。
電気工事業でのリスクアセスメント
電気工事は命にかかわる感電といったリスクがあるため、自社内でリスクマネジメントを行い、対策をすることが重要です。
作業中に工具で手を切ったりすることはあるものの、軽傷で済むケースが多いでしょう。しかし、感電は服装によっては死亡する恐れもあるので、スタッフへの感電防止教育はもちろん、保護具についても周知しておかなければなりません。
また、電気工事中のミスによって停電トラブルを起こす恐れもあります。停電につながる部分があるのなら、作業前に必ず社員に伝えておきましょう。
停電は損害賠償に発展する恐れもあるため、決して無視できないリスクだといえます。従業員の労災だけでなく、停電のリスクも把握したうえで対策を進めてください。
まとめ:電気工事業を取り巻くリスクと損害保険
ここまで電気工事業を取り巻くリスクや加入すべき損害保険の解説をしてきました。本日の記事の簡単なまとめは以下になります。
- 電気工事業の経営には、火災や爆発、従業員の労災などのリスクがある
- このようなリスクを回避・軽減するために法人向けの損害保険の加入が必要
- 法人保険や事業を取り巻くリスクに関する相談は「マネーキャリア」がおすすめ
- 作業前にリスクマネジメントを行い、対策をすることが大切