
更新日:2023/07/05
法人保険は節税効果なし?法人保険の本当の活用法をプロが直伝

法人保険に加入すると「節税になる」と持ちかけられることがありますが、節税目的での法人保険加入はいくつもの落とし穴があります。今回は「なぜ節税にならないのか」具体的な理由と、法人保険を考えるうえで重視するべきポイントなどについて紹介していきます。
- 会社経営者
- 経理担当者
- 節税目的で法人保険への加入を考えている方
- 本当に今加入している保険が最適で無駄がないか見直したい方
- 法人保険で節税ができる仕組み
- 節税目的で加入する法人保険の注意点と理由
- 法人保険の節税効果の実際のシミュレーション
- 法人保険での税金対策に対する国の対策
- 法人保険の節税以外の本当のメリット
内容をまとめると
- 法人保険の保険料は損金として計上できるので理論上は減税される
- 綿密な計画を立てて加入することが重要
- 節税目的での法人保険はすでに規制されている
- 法人保険は保障内容や貯蓄性を重視して選ぶべきである
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目次を使って気になるところから読みましょう!
法人保険で節税ができるという仕組みを詳しく解説
法人保険で節税ができるといわれるのは、会社経営者や経理が「法人税」を減らすためにまず考える、損金(経費)を増やして課税対象額を減らすことができるからです。
セールスマンからは、「法人保険に加入すれば会社が支払う保険料は経費になるので、節税ができる」と言われます。
保険料のうち経費にできる割合は種類によって異なりますが、確かに「全損」タイプの場合は保険料を全額「損金(経費)」に計上できます。
そして、支払った保険料は将来特定のタイミングで解約すれば、高い返戻率で解約返戻金として戻ってきます。
よって法人保険に加入した結果、
- 年間の所得が減ったので、法人税も減った
- 支払った保険料も解約時に戻ってきたので、損はしていない
このようなメリットがあると考えられ節税効果があるように感じられます。
節税ができるというのは嘘!課税を繰延しているだけ
法人保険による節税の仕組みとして、法人保険料として支払った分の金額を損金としてその年度の所得から控除することができることが大きく関わっています。
法人税の計算である「所得×法人税率」で求めたときに母数が減ることで法人の課税金額が軽減する効果が生まれます。
全額損金タイプや1/2損金タイプといった損金計上の割合の種類を選ぶことも可能です。
法人保険料を支払い続けることで解約した際に解約返戻金も得られます。
解約返戻金は契約をしたときからだんだんと金額が上がっていき、最も高いときに解約をすれば大きな金額が返ってくるため節税効果として大きいと感じられます。
なかには支払った保険料以上の金額を最終的に払い戻してくれる保険会社もあります。
損金と解約返戻金で法人保険による節税効果がでる仕組みがあるように思われます。
しかし実際のところ、本質的には法人税を節税することはできません。なぜなら、保険料を受け取る際に課税されるからです。
すなわち、節税というのは本質的な正解ではなく、課税のタイミングを遅らせているだけに過ぎないのです。
【基礎知識】法人税の計算方法〜保険の損金算入例
ここで、法人税の計算の仕組みを理解しておきましょう。
法人税の計算は、下記の計算式で求められます。
- 法人税=会社の利益×法人税率
会社の利益とは、1年間の売り上げから、給料などの経費を全額引いたもの。
この利益に、「法人税率」をかけたものが、法人税になる計算です。
法人税は、「資本金の額」と「会社の利益」によって異なります。
【資本金が1億円位以下の法人】
利益金額 | 法人税率 |
---|---|
400万円未満 | 21.43% |
400万以上800万円未満 | 23.21% |
800万円以上 | 33.58% |
【資本金が1億円以上の法人】
利益金額 | 法人税率 |
---|---|
400万円未満 | 28.31% |
400万円以上800万円未満 | 29.03% |
800万円以上 | 29.74% |
例えば、
- 資本金2000万円
- 利益金額500万円
- 500万円×23.21%=約116万円
- 500万円×29.03%=約145万円
法人保険を福利厚生費として計上した例
法人保険の福利厚生プランでは、養老保険や年金保険に加入することで、保険料の10分の1から半分を福利厚生費にすることができます。
福利厚生費として認められると、法人税の課税対象外となり、支払う法人税を少なくできます。
例えば、
- 資本金 2000万円
- 利益金額 500万円
- 福利厚生型養老保険200万円
上記の場合、法人税は
- (500万円ー200万円×1/2)×23.21%=約93万円
という計算になり、
保険料支払時の税負担が23万円程抑えられます。
ただし、福利厚生費として認められるためには、「原則として従業員の全員が加入しなければならない」(普遍的加入)という条件があることに注意してください。
また、従業員の全員が加入しなければならないのはあくまでも原則であり、例外的に全員の加入が必要でない場合があります。
例外とは、職種や勤続年数、年齢といった条件に応じて合理的な基準によって設けられた普遍的な格差である場合です。
例えば、新入社員は保険に加入してもすぐに退職してしまう可能性があるため、勤続年数5年以上であれば保険に加入できるといった条件は合理的な基準であると認められるのです。
長期平準定期保険を活用した例
長期平準定期保険とは、保険期間の満了時期を90歳や100歳といった長期に設定した定期保険のことです。
満期保険金は受け取れない代わりに、解約返戻率が高く、ピーク時に高額な解約返戻金を受け取れるのが長期定期保険の特徴です。
長期平準定期保険の場合全額損金算入できなくなるので注意しましょう。
そのため、長期平準定期保険では、勇退時期が流動的な中小企業経営者の退職慰労金の原資に適した保険です。
詳しい損金割合については、2019年改正後の定期保険の損金割合に関する記事をご覧ください。
損金算入可能なおすすめの法人保険を紹介
ここまで、法人保険が節税対策と呼ばれる仕組みや、法人税の計算方法をご紹介しました。
実際、世の中にはどんな法人保険が存在するのか気になりますよね。
その疑問や悩みすべてマネーキャリアの保険相談で解決することができるのです!
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法人保険で税金対策を考えている人が知っておくべき注意点
法人保険への加入を考えているなら、ポイントとなるのは、「最終的に損益はどうなるか」です。
目先の節税メリットだけ考えてこのポイントを見逃すことが多いので、次からは
- 保険料によるキャッシュフローへの影響
- 解約返戻金の返戻率
- 解約時の出口戦略
- 単純返戻率と実質返戻率について
- 年間保険料:300万円
- 税率:30%
- 保険期間:10年
①高額な保険料分のキャッシュが手元からなくなる
保険料を支払うということは、その分だけ現金がなくなる(=キャッシュでの資金が減る)ということです。
法人保険に加入し年間300万円の保険料を支払えば、一時的に損金計上ができたとしても、キャッシュは確実に減るため資金繰りは悪化します。
②解約返戻金で戻ってくる金額が100%未満の可能性がある
支払った保険料は、実は全額戻って来るとは限りません。
まず法人保険は支払う保険料は実質積み立てられているもので、将来的に確実に受け取れるものと考えている場合、注意してください。
保険料が全額戻ってくると考えている方が、返戻率が100%未満の保険に加入して、税金対策のためだけに300万円もの保険料を10年間支払うメリットはありません。
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③保険解約時の出口戦略を考えて加入する
法人保険の解約返戻金を法人名義で受け取ると、益金に算入されるので法人税の課税対象になってしまいます。
法人税を節税するために法人保険に加入したのに、受け取った解約返戻金に法人税を課税されてしまったら本末転倒です。
そこで、受け取った解約返戻金が損金算入されるように、出口戦略を考えておく必要があります。
出口戦略としては、以下のような例が挙げられます。
- 従業員や役員の退職金
- 従業員や役員のボーナス
- 事業承継時の準備資金
- 設備投資費
④単純返戻率と実質返戻率について
単純返戻率とは、支払った保険料の総額に対し、解約時に戻ってくる返戻金の割合を指します。
実質返戻率は、法人保険の加入により発生した節税金額を加味した、返戻金の割合のこと。
つまり、「法人税の軽減額」を含めた金額で返戻金が計算されるものです。
最初にあげた例にプラスして、
10年後の解約時、単純返戻率が80%だった場合
- 300万円×10年間=3000万円(=実際に支払った保険料の総額)
- 3000万円×80%=2400万円
単純返戻率の場合、2400万円が手元に返ってくる計算です。
では、実質返戻率の場合をみていきましょう。
10年間で支払った保険料の総額は3000万円でした。
つまり、10年間以下の金額を節税できたことになります。
- 3000万円×30%(=税率)=900万円
節税できた900万円を加味した、実質保険料の総額は、
- 3000万円ー900万円=2100万円
この金額を踏まえ、実質返戻率を計算すると、
- 解約返戻金額÷実質支払保険料総額(=節税を加味した金額)× 100=実質返戻率
- 2400万円÷2100万円×100=114%
一般的に「解約返戻率」は「単純返戻率」のことを指しますが、営業マンによっては「実質返戻率」を指している場合も。
例にあげた実質返戻率をみると、100%を上回っているため「損しない」と思いますよね。
法人保険は、単純返礼率で見ることが重要です。
解約返戻率には、「単純返戻率」と「実質返戻率」の2つがあることをしっかり頭に入れておきましょう。
法人保険の税効果をシミュレーション!
ここまでですでに結論は出ているように見えますが、節税になるのかどうかを再度シミュレートしてまとめてみましょう。
益金を3,000万円として、法人保険に加入しない場合、
- 3,000万円(益金) ✕ 30%(税率) = 900万円(年間税額)
- 900万円(年間法人税) ✕ 10年 = 9,000万円(総税額)
- 3,000万円(益金) ー 300万円(保険料) = 2,700万円(課税対象)
- 2,700万円(課税対象) ✕ 30%(税額) = 810万円(年間税額)
- 税金① 810万円(年間法人税) ✕ 10年(解約まで) = 8,100万円
- 税金② 3,000万円(解約返戻金) ✕ 30%(税額) = 900万円
- ① + ② = 9,000万円(総税額)
よって、基本的に法人保険に加入しても節税することはできないといえます。
法人保険は加入中のキャッシュフローから出口戦略まで綿密な計画を組んでから加入しないと後悔する可能性があるので、保険のプロと相談しながら加入を決めることがとても重要です。
国税庁による節税目的の保険商品の規制
今まではグレーゾーンであった部分、いわば「節税」というメインの訴求点が裏で打ち出されていた保険を、過去には多くの保険会社が販売していました。
しかし、それらは保険商品が持つ本来の目的を逸脱することになったため、国税庁により幾度も規制されてきました。
規制対象となった保険には、
- 長期傷害保険:損金算入可能額は4分の1
- 逓増定期保険:損金算入可能額は2分の1
- 法人向けがん保険:損金算入可能額は2分の1

法人保険の本当の活用方法
何のために保険があるのかを考えると、節税のために加入する保険が規制されてきたことは必然だといえます。
現に法人保険はもともとあった節税の役割をほぼ失っているため、もう一度保険の原点である「保障内容」や「出口戦略」に注目して、契約するメリットを考えなければなりません。
では具体的に、これからの法人保険にはどのような活用が求められるのでしょうか。
法人保険の5つの加入目的
- 事業保障
- 事業承継時の準備資金(事業承継対策)
- 福利厚生
- 役員や従業員の退職金(退職金積立)
- 経営者の死亡リスクに備える
法人保険について考えるならまずはマネーキャリアで無料相談!
余計な出費リスクを避けるために、法人保険は経営者や経理だけで決めるのではなく、保険のことを知り尽くした人に相談することができるでしょう。
たとえば、「マネーキャリア」の無料相談サービスでは、法人保険のプロに、無料で何度でも相談することができます。
ぜひそのようなサービスを利用して、保障内容というもっとも大切な部分にフォーカスした法人保険選びをしていきましょう。
法人保険以外の企業が検討するべき税金対策
法人保険が100%「節税対策」にならないことはお分かりいただけましたか?
そもそも、法人保険は「節税」のために加入すべきものではなく、事業資金や経営の保障、福利厚生などに活用されるのが本来の姿です。
しかし、「保険以外に課税金額を減額できるものはないの?」と思われる方も多いでしょう。
そこで、ここからは法人保険以外に企業におすすめの対策をご紹介します。
より、最適な対策を知りたい方は、「マネーキャリア」の無料相談もおすすめです!
ぜひ検討してみてください。
①経営セーフティ共済〜事業保障への備え
経営セーフティ共済は、取引先の急な倒産によるリスクに備えた中小企業倒産防止共済制度を活用できるもの。
中小企業倒産防止共済制度とは、取引先の急な倒産による、連鎖倒産や経営難に陥るリスクを防ぐ制度です。
加入するメリットの一つに、借り入れを無担保・無保証で受け取れることが挙げられます。
借入れまでのスピードも早いめ、 取引先の急な倒産で経営悪化に陥った場合も安心して事業を進められます。
掛金は月々5000円〜20万円までを自由に選択可能。
掛金は「損金」として算入できるため、効果を期待できます。
解約しても、「解約手当金」が受け取れるもの魅力のひとつです。
掛金を40ヶ月以上納めていた場合は、「掛金の全額」が手当金として返ってきます。
②役員社宅制度〜福利厚生への備え
役員社宅制度とは、企業で契約した住宅を役員へ貸し出し、役員から家賃を支払ってもらう制度のこと。
この制度が、「税金対策」と言われる理由は、大きく2つあります。
1つ目は、企業側は支払う家賃と役員が支払った家賃の差額を「地代家賃」として経費にできること。
2つ目は、役員の引っ越し費用や賃貸契約の手数料なども経費へ計上できること。
つまり、役員社宅制度を導入することで、社宅に関する経費が増えます。
経費が増えると、利益が減ることへつながるため効果が期待できる仕組みです。
また、経費を増やすことだけなく、役員の手取りが増えることもメリット。
社宅の使用料は、給与から差し引かれるため課税額を抑えられます。
税金がかからない分、手取り金額も増える仕組みです。
企業側が負担する、社会保険料も抑えられるため、両者ともにメリットが生まれます。
③小規模企業共済〜退職金への備え
【参考】個人事業主・宗教法人・学校法人の場合の法人保険での節税方法
ここでは下記の会社法人以外の3つの法人の場合における節税のための法人保険活用法を紹介します。
- 個人事業主
- 宗教法人
- 学校法人
個人事業主の法人保険を用いた節税
個人事業主は法人ではないので、法人契約での保険に加入することはできません。
しかし、個人事業主でも従業員を雇用している場合は、従業員を養老保険に加入させ、保険料の1/2を損金算入することができます。
そのとき、満期保険金の受取人は事業主でもよいのですが、死亡保険金の受取人は従業員の遺族を指定しなければなりません。
会社法人では、死亡保険金の受取人を法人にすることができるので、この点は異なっています。
宗教法人・学校法人の法人保険を用いた節税
宗教法人と学校法人は、法人税法上「公益法人」に分類され、営利を目的としない「非営利型法人」とされています。
公益法人の場合、一般的に言えば所得に対して課税されることはありません。
しかし、収益を上げることを目的に行った事業によって所得が生じた場合には課税されます。
営利を目的とする会社法人の場合、公益法人とは異なり、収益事業かどうかに関係なくすべての所得に課税されます。
そのため、宗教法人と学校法人でも、収益事業から生じた所得が大きくなってしまった場合は、法人保険に加入することで節税を行うことができます。
法人保険の節税効果に関するまとめ
今回は法人保険に関してさまざまな点を取り上げてきましたが、いかがでしたでしょうか。
この記事のポイントは、
- 法人保険の保険料は損金として計上できるので理論上は減税される
- 綿密な計画を立てて加入することが重要
- 節税目的での法人保険はすでに規制されている
- 法人保険は保障内容や貯蓄性を重視して選ぶ活用方法もある