更新日:2022/08/24
節税目的の名義変更はNG!税制改正の真相を解説
2021年3月、生命保険会社を激震させた「ホワイトデーショック」。経営者の間で密かに人気となっていた、保険商品を利用した節税方法が撤廃されるという通告でした。今回は「ホワイトデーショック」がどのような出来事だったのか、詳しく解説していきます。
内容をまとめると
- 低解約型定期保険の譲渡時に評価額はピーク時の解約返戻金の金額で評価される
- 改正前のルールで名義変更をするなら2021年7月まで
- 2019年7月8日以降に契約した保険にも遡及適用される可能性大
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目次を使って気になるところから読みましょう!
ホワイトデーショックをわかりやすく解説!低解約型逓増定期保険による節税が規制された!
2021年3月、ホワイトデーショックという言葉が生命保険会社や経営者の間で騒がれたことをご存知ですか?
一部の経営者の間で、「低解約型逓増(ていぞう)定期保険という経営者向けの商品を利用して節税をする」という方法が横行していました。
その抜け道に鉄槌を下したのが、いわゆる「ホワイトデーショック」という出来事です。
今回はそんなホワイトデーショックについて、
- 「ホワイトデーショック」で具体的に何が起こったの?
- 逓増定期保険での節税方法はどのようなものだった?
- ホワイトデーショックにおけるポイントをご紹介!
- これからどうなってしまうの?
ホワイトデーショックとは?名義変更プランが否認される!
2021年3月中旬に「拡大税制研究会」と呼ばれる集会で、国税庁が生命保険会社各社に対して通告を行いました。
その通告とは、低解約型逓増定期保険の契約者を法人から個人へと切り替え、所得税を抑えるという手法(名義変更プラン)の撤廃を伝える内容です。
この集会で「保険契約の名義変更時の評価の見直し」という税務ルールの見直し案が示されることとなりました。
現状の税制では「名義変更時の評価額=その時点で受け取ることができる解約返戻金」と設定されています。
しかしこの見直し案によれば、「譲渡される時点での解約返戻金の金額が資産計上額の7割に満たない場合は、名義変更時の評価額=ピーク時の解約返戻金」と見なされることになるのです。
つまり、解約返戻金の評価額を低いまま譲渡することができなくなるのです。
この変更によってこれまで低解約型逓増定期保険で行っていた節税対策が不可能になりました。
低解約型逓増定期保険(名義変更プラン)で法人税を節税する仕組み
低解約型逓増定期保険の法人税に対する節税効果とは、具体的にどのように利用したときに発揮されるものだったのでしょうか。
そもそも逓増定期保険をしっかり理解していないという方もおられるかも知れません。
以降、横行していた節税の仕組みとして
- 低解約型逓増定期保険はどんな性質を持った保険なのか
- 名義変更プランと呼ばれる節税方法
低解約型逓増定期保険とは?
名義変更プラン(名変プラン)と呼ばれる節税の仕組み
名義変更プランとは
上記で説明した低解約返戻型保険を利用するため、契約した段階では解約返戻金が低く設定されています。
解約返戻金が低い段階では法人が保険料を支払い、この期間のうちに保険の名義を会社から個人に変更します。このとき、従来のルールではこの時点での解約返戻金で評価されるので当然、支払った保険料より安い金額で個人に譲渡されます。
そして、解約返戻金が高くなった時に解約し個人がその解約返戻金を受け取れるという仕組みです。この時受け取るお金は税制上で役員報酬ではないため、一時所得とみなされるので所得税よりも税金が安くなります。
この仕組みを利用することで保険料の損金算入で法人税も節税しながら役員への退職金準備に備えていました。
名義変更プランの具体的な例
年数 | 累計保険料 | 解約返戻金 | 返戻率 |
---|---|---|---|
1年目 | 2000万円 | 0円 | 0% |
2年目 | 4000万円 | 200万円 | 5% |
3年目 | 6000万円 | 600万円 | 10% |
4年目 | 8000万円 | 1600万円 | 20% |
5年目 | 1億円 | 9800万円 | 98% |
(9800万円-1600万円(取得額)-2000万円(保険料)-50万円(特別控除額))*1/2=3075万円
ホワイトデーショックのポイントは「遡及課税」
ホワイトデーショックにおける抑えておくべきポイントは「遡及課税」です。
このホワイトデーショックによる税制改正においては、法人税基本通達9ー3ー5(2)に基づいて、2019年7月8日以降(バレンタインショック以降)に契約した保険も遡及適用され、改正後に名義変更をした場合、この税制のルールが適用されるという情報が流れています。
該当する契約において、税制改正日時以降に法人から個人へと名義変更を行えば改正後のルールが適用されることとなります。
要するに、2019年7月8日以降に低解約型逓増定期保険に加入した方は
- 現在の解約返戻金が低い期間に保険を解約する
- 税制改正前に名義変更を行い、経営者個人で保険料を負担する
というどちらも損失が生じる可能性のある対応しか残らないと考えられます。
前者の場合には解約返戻金は支払った保険料より少ないためその差額分の損をします。
後者の場合には長期間に渡って個人で保険料を負担することになります。
政府は「税制を改正してはその抜け道を探されるといういたちごっこをやめる」と言及し、今回このような結果となりました。
これから低解約型逓増定期保険はどうなる?
これまでは中堅企業に法人税対策に有用なため人気な保険でしたが、税制改正によって最大のメリットが失われます。
またこの低解約型逓増定期保険への加入を勧誘した代理店などと顧客との間で、トラブルが発生してしまう可能性もあります。
各社の対応次第では、販売数の減少や販売停止の可能性も十分に考えられます。
税制改正後の法人保険による節税プランならまずはマネーキャリアで無料相談!
出口戦略を考え、法人保険に加入したにもかかわらず、ホワイトデーショックによる税制改正が行われ、出口戦略の変更を余儀なくされるケースもあります。
企業側はホワイトデーショックと呼ばれる税制改正前には、お得に法人保険を活用するために数々の提案やプランをしてもらいながら、さまざまな法人保険の検討もされていたはずです。ところが税制改正が行われてしまうと、また振り出しに戻ってしまいます。
そして法人保険を利用した税制優遇は、多くの企業が活用しているはずですから、最新の税制を把握することが企業の課題となるでしょう。
そのためホワイトデーショックによって節税が満足にできなくなった後は、どんな節税方法をしていけば良いのか、またもっと効果的な方法はないのかと、経営者にとっては悩みどころでもあるはずです。
そんなときはマネーキャリアの法人無料保険相談の活用をおすすめします。マネーキャリアならどんな些細な法人保険の疑問や質問、さらには企業のあらゆるお金の悩みを解決することができます。また何度相談しても無料ですから気軽に相談することができます。ぜひこの機会にマネーキャリアでお金のプロから、ホワイトデーショックのような税制改正後の対策を学んで、今後のプランに役立ててみてはいかがでしょうか。
法人保険の税制改正後の具体的な損金処理の方法
法人保険に加入している場合、ホワイトデーショックによる税制改正が行われた後会社の経理方法も変わってきます。わからない場合は加入している保険会社に聞くことも可能ですが、ここでは税制改正後の具体的な損金処理の方法をみていくことにしましょう。
まず加入済の法人保険は貯蓄性のある保険なのか、それとも貯蓄性のない保険なのかで分かれます。さらに、保険の受取人を誰に設定しているかどうかでも経理処理が変わってきます。
貯蓄性のない保険いわゆる法人の掛捨て保険の場合は受取人が会社であろうと、役員などの個人であろうと、全額が損金となります。ただし、受取人が次の場合損金処理になるものの、科目が変わりますので注意が必要です。
受取人 | 費用 |
---|---|
従業員全員 | 福利厚生費 |
特定の個人 | みなし給与 |
また、貯蓄性のある保険の場合すなわち解約返戻金を受け取ることのできる保険の場合には、税制改正後の経理処理が変わっています。ただし、最高解約返戻率が50%以下の場合は、全額損金算入とすることができます。
最高解約返戻率 | 資産計上額 | 損金計上額 |
---|---|---|
50%超〜70%以下 | 40% | 60% |
70%超〜85%以下 | 60% | 40% |
85%超(保険開始10年目まで) | 返戻率×90%×保険料 | 返戻率×10%×保険料 |
85%超(保険開始11年目以降) | 返戻率×70%×保険料 | 返戻率×30%×保険料 |
最新の損金算入についてもっと詳しく知りたいという方は、下記の記事をご覧になって法人保険の経理処理について学んでみてはいかがでしょうか。
法人保険の税制改正についてのまとめ
ホワイトデーショックという出来事について、その内容や今後の動きなどを解説してきましたがいかがだったでしょうか。
今回の記事のポイントは、
- ホワイトデーショックは、保険に関する抜け道を利用した節税への対策として取られた税制改正の見直し案が通達されたという出来事のこと
- ホワイトデーショックによって、低解約型逓増定期保険を法人から個人へと名義変更することで所得税を抑える手法が撤廃される
- 横行していた節税方法は、低解約型逓増定期保険の譲渡額が返戻金と同額に評価されるという特徴を利用したものだった
- 見直し案が正式に発表されれば、一定期間まで遡って課税されることが想定されている