任意労災保険(労災上乗せ保険)とは?補償内容と必要性を徹底解説!

皆さんは任意労災保険についてご存じでしょうか。任意労災保険とは加入義務のある政府労災に上乗せする形で、事故などの際に補償してくれる保険です。今回の記事では、この任意労災保険について詳しい補償内容と加入の必要性、加入する保険を選ぶ際のポイントなどを解説します。

任意労災保険とはどのような保険?補償内容は?

経営者なら、業務上のリスクは最小限に抑えたいものです。


事故を未然に防ぐためのマニュアル整備はもちろん、万一事故が起こってしまった場合に備えておくことも大切です。


しかし、経営者のみなさんの中にはその備えも「政府労災だけでは少し足りない」とお思いになっている方が多いはずです。


いざというときの備えとして任意労災保険は非常に効果的ですが、選び方や加入の仕方にはポイントがあります。


ここでは、

  • 任意労災保険とは
  • 任意労災保険と政府労災の違い
  • 任意労災保険に加入するメリット
  • 任意労災保険の選び方

の4つのポイントについて解説します。


この記事を読み終わる頃には、任意労災保険とはどんな保険なのか、加入するメリットは何があるのか、どのようなポイントで選べばいいかがわかるでしょう。


任意労災保険への加入を検討している方はぜひ最後までご覧ください。


任意労災保険とは?政府労災との違い

任意労災保険とは、政府労災で足りない補償を補うために民間の保険会社が提供している保険です。


政府労災の保険金に上乗せして補償されるものや、政府労災の保険金とは別で補償を受け取れるものがあります。


政府労災とは、政府によって義務付けられた保険で、1名でも従業員を雇用している場合加入は必須です。


それに対して、任意労災保険の加入は義務ではありません。


任意労災保険とは、企業が独自にメリット・デメリットを判断して加入を決める保険です。

任意労災保険(労災上乗せ保険)の補償内容

さて、ここまで任意労災保険とはどんな保険なのか、政府労災とはどう違うのかを説明してきました。 


任意労災保険は決して義務ではありませんが、加入しておくことでさまざまなトラブルを防ぐことができます。


労災事故はいつ起こるかわからないものです。


経営者であれば、いざというときの備えをしておくことは経営のリスクヘッジになります。


任意労災保険に加入するメリットについて、補償内容やトラブル事例をまじえて説明します。


一つずつ確認していきましょう。

①:従業員が死亡した場合や障害を負った場合の補償

任意労災保険では、労災事故によって従業員が治療を受ける場合、障害が残った場合、死亡した場合などを補償することができます。


労災事故とは、業務中や通勤途中の事故のことをいいます。


ケガや治療費に対する直接的な補償や、後遺障害や死亡が発生した場合の保険金、労務トラブル発生時の相談費用などが補償内容に含まれます。


また、任意労災保険では、企業の業務内容や規模に応じてさまざまな特約をつけることができます。


必要な特約とは何かを見極め、自分の会社に合った任意労災保険に加入することが大切です。

②:事業主や役員にかかる治療費の補償

政府労災とは従業員を守るための保険なので、事業主や役員は対象外です。


そのため、事故が発生した場合も事業主や役員は治療費を自己負担しなければなり


しかし、任意労災保険に加入しておけば、事業主や役員も治療費の補償を受け取ることができます。


任意労災保険に加入しておくことは、経営のパートナーともいうべき大切な役員を守ることになるのです。


任意労災保険では、通院日数や休業日数に応じて補償を受け取ることもできるので、事業主や役員の不在によって実質的な損失が生じた場合も安心です。

③:労災訴訟を受けたときの補償

最近は、権利意識が高まったことやインターネットの普及で簡単に事例を収集できることから、労災訴訟が増加傾向にあります。


労災訴訟とは、労災によって被害を被った従業員本人や家族が、使用者側の責任を問う訴訟です。


労災訴訟が起きたときの負担ははかりしれません。


示談金や損害賠償金だけでなく、弁護士への相談費用なども発生します。


これらの費用は、政府労災では一切補償されません。


労災訴訟をきっかけとして資金繰りが悪化したケースもあります。


任意労災保険を活用して、労災訴訟に備えておくことが大切です。

企業が任意労災保険(労災上乗せ保険)に入る必要がある理由

ここまでで任意労災保険の補償内容についてお伝えしました。 


従業員の死亡や障害などの保障だけでなく、事業主や役員が病気やケガを負った場合の治療費も補償、またもし労災訴訟をおこされた場合の補償などもあることをご理解いただけたと思います。 


これらの補償内容だけでも任意労災保険のメリットをご理解いただけたと思いますが、以下でさらに、任意労災保険に加入すべき理由を掘り下げてご説明していきます。 


政府の労災保険の補償の場合と比較して具体的にご説明しますので、是非確認してみてくださいね。 

理由①:政府の労災保険の補償だけでは不十分であるため

政府の労災保険の加入は必須とされていますが、その補償内容は必要最低限と考えておく方がよいでしょう。 


例えば、自動車保険で考えるとわかりやすいのですが、法律で加入が義務付けられている自賠責保険と任意保険がありますが、ほとんどの方が任意保険にも加入されていると思います。 


それは、万が一の場合、自賠責保険だけでは補償が不十分であると考えられているからです。  


これを政府の労災保険の補償に置き換えて考えると、例えば、病気やケガで仕事を休むことになった場合の休業補償は全額ではなく、それまでの給料の80%までとされています。 


また、もし死亡や重度の障害が残る労災事故で遺族から訴訟をおこされた場合など、その費用は甚大なものになる可能性もあります。
 


このように、万が一のことを考えた場合、企業の存続にも影響するリスクもあるため、十分な対応ができるよう、政府の労災保険に加えて任意労災保険に入っておくべきといえるのです。

理由②:重大事故における政府の労災認定は遅い傾向があるため

上で、死亡や重度の障害が残るような労災事故の例をお伝えしましたが、この場合、問題になるのは補償の金額だけではありません。 


このような大きな労災事故となると、政府の労災保険では、労災と認定され保険金が支払われるまでにかなりの時間がかかるようなのです。 


一概に何日、何ヶ月とはいえませんが、死亡や重度の障害が残るなどの事故の場合、1年~2年かかることもあるようです。 


これは、労働基準監督署へ会社が請求書を提出、その内容の確認、労災と認定されるかどうかの調査などに時間がかかるという背景があるからです。 


しかし、遺されたご家族にとっては、家族を亡くした精神的なショックを受けているにもかかわらず、1年も2年も保険金がおりないという状況はとても納得できないでしょう。 


このように、対応に時間がかかるというデメリットを補うためにも、任意労災保険の加入をおすすめします。

補足:建設業など危険のある業種の場合は加入したほうがいい

ご参考までに、土木・建設業など業務内容に危険が伴うと思われる業種の場合は、特に任意労災保険への加入をおすすめします。
 


その理由は、上で述べたように、政府の労災保険の補償だけでは十分ではないことに加え、以下のような理由もあります。 


  • 下請け企業の社長や役員も補償の対象 

建設業の場合、現場で働いている人たちには、自社の社員だけでなく、下請けや孫請けの会社の社員も含まれています。 


下請けや孫請けの会社の場合、政府の労災保険では、社員のみが補償の対象であるため、その社長や役員が現場で事故にあった場合は補償を受けることができません。 


しかし、任意労災保険では、社長や役員も補償の対象となっているため土木・建設業の現場では、万が一に備えて任意労災保険に加入しておく方がより安心といえるでしょう。 


  • 一定の条件に値する任意労災保険への加入で、経営事項審査で加点される 

経営事項審査とは、公共事業を行う建設業が必ず受けなければならない審査で、経営状況、経営規模、技術力、その他の審査項目などについて評価するものです。 


任意労災保険に加入していれば、この経営事項審査で15点が加点されるため、土木・建設業は任意労災保険に加入しておくべきでしょう。 

任意労災保険の選び方とは?重要ポイントを紹介!

さて、ここまで任意労災保険に加入するメリットや補償内容について説明してきました。


任意労災保険は事業主や役員にとってメリットの大きな保険です。


任意労災保険があれば、いざというときの損失も最小限に抑えることができるでしょう。


ここからは任意労災保険の選び方と加入するときのポイントを解説します。


せっかくリスクに備えるなら、自分の会社に合った補償内容や特約を選び、万全の状態にしておくことが大切です。


一つずつ確認していきましょう。

保険金を会社が受け取る事が重要

任意労災保険に加入するうえで一番大切なポイントは、保険金の受取人を会社にすることです。


保険金を会社が受け取ることで、従業員本人や家族に会社からお金を渡すことができます。


会社からお金を渡すことが誠意につながり、従業員本人や家族の気持ちを落ち着かせることになるのです。


受取人が従業員になっていて直接本人に保険金が支払われた場合、従業員本人や家族から別途裁判を起こされるリスクがあります。


直接支払われた保険金は、示談金とみなされない場合もあるため、注意しましょう。


会社からお金を渡すことが、金銭問題の勃発を防ぐことになります。


任意労災保険に加入するときは、受取人には十分注意して保険を選びましょう。

会社で働く人を幅広く補償しているかの確認

任意労災保険に加入するときは、会社で働く全ての人に補償がいき渡る事が重要です。


現場では、従業員だけでなくさまざまな人が働いています。


パート・アルバイトはもちろん、派遣社員、下請作業員、構内作業員なども補償対象としている保険を選びましょう。


カバー範囲を広げることで、企業側のリスクを低減することができます。

高額賠償に備えて使用者賠償責任補償特約の付帯がおすすめ

任意労災保険では、使用者賠償責任補償特約の付帯をおすすめします。


使用者賠償責任補償特約とは、損害賠償金・慰謝料・訴訟費用・弁護士報酬等を補償する特約です。


死亡時の慰謝料の相場は数千万円といわれ、場合によっては1億円以上かかるケースもあります。


法律の整備が進んだことから、企業は安全管理義務や使用者責任を問われやすくなっています。


安全管理義務とは、従業員が安全に働けるよう配慮する義務です。


使用者責任とは、従業員が業務中に第三者に損害を与えた場合の従業員を使用する側の責任です。


安全管理義務や使用者責任に関して訴訟を起こされると、高額な賠償金の支払いを求められることが少なくありません。


使用者賠償責任特約があれば、企業が賠償金を支払わなければならない場合も資金調達に苦労せずにすみます。

【参考】任意労災保険の仕訳について!保険料の勘定科目は?

任意労災保険とは万一の事態に備えて加入する積み立て部分のない保険です。


そのため、任意労災保険の保険料は全額経費にすることが認められています。


任意労災保険の保険料を支払った場合は、全額を「保険料」の勘定科目で経費計上しましょう。


例えば、任意労災保険の保険料が20万円の場合の仕分けは以下のようになります。 


借方勘定課目金額貸方勘定科目金額
保険料200,000円普通預金200,000円


いかがでしょうか。

このように、借方勘定科目は「保険料」、そして全額を経費として計上します。

まとめ:任意労災保険は加入しておいたほうがいい

ここまで任意労災保険の意味や補償内容、効果的な選び方について解説てきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは、

  • 政府労災では最低限の補償しかされないため、任意労災保険に加入することが経営のリスクヘッジになる
  • 任意労災保険では事業主や役員の治療費、慰謝料や損害賠償金など幅広い補償を受け取れる
  • 政府の労災保険では補償が不十分、労災認定が遅い傾向があるため、任意労災保険へ加入して補う
     
  • 任意労災保険加入のポイントは、保険金を会社受け取りにする、幅広く従業員を補償しているかを確認、高額賠償に備えて使用者賠償責任補償特約を付加する 

です。


労災事故は突然降りかかるもので、万一の事態に備えていなければ事業主も本人も苦しむことになります。


そのため、任意労災保険を賢く活用し、事業主にとっても従業員にとっても安心できる職場づくりをすることが大切です。


状況に応じて必要性は変わりますが、任意労災保険に加入していない事業者の方は、是非任意労災保険への加入について真剣に考えてみてください。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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