保険料や家賃の短期前払費用とは?特例適用で課税負担の軽減が可能!

短期前払費用について詳しくご存知でしょうか?短期前払費用の特例が適用されれば課税負担の軽減がされます。特例適用の条件等もあるので、検討時は事前に確認を行ましょう。本記事では短期前払費用とその特例等について解説しております。

短期前払費用とは?特例が適用されれば課税負担の軽減が可能!

テナントの家賃や保険料など、事業を行なっていると毎月固定費がかかりますが、これらの固定費は経費に算入することができます。


実は、これらの毎月継続的にかかる経費は、「短期前払費用」として前払いできることをご存知でしたか?


「短期前払費用」として前払いすると、損金算入することができるので、知っておくと事業を行う上で有利になります。


しかし、毎月の経費を「短期前払費用」にするには「特例適用」されなくてはならないので、その要件をしっかりと知っておくことが重要です。


そこで、今回は短期前払費用について

  • 短期前払費用になるための要件・経理処理・利点と注意点。
  • 短期前払い費用の影響で税務処理がどう変わるのか。
  • 短期前払費用が特例適用されないケース。
  • 短期前払費用以外で税務上費用計上する方法。

以上を中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、短期前払費用を活用方法を知ることで、資金効率の改善等が図られます!


ぜひ、最後までご覧ください。


短期前払費用とは?

短期前払費用とは、国税庁の説明によると、「法人が、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、その支払時点で損金の額に算入すること(国税庁)」となっています。


つまり、短期前払費用とは、法人が毎月継続的にかかる固定費などの経費を、次の事業年度ではなく、その事業年度に支払うことができるということを意味しているのです。

短期前払費用になる要件とは?

短期前払費用は、法人が支払う経費について、翌事業年度に支払うものを、当事業年度に支払うことで経費にできると説明しました。


しかし、​法人が支払うどのような費用でも、短期前払費用にできるわけではないので注意しましょう。


短期前払費用になるためには要件が定められており、以下の6つの要件を満たしている必要があります。


  1. 一定の契約に従って、継続的にサービスなどの役務を受けるものであること。
  2. 毎月継続的に同じ経理処理を行うものであること。
  3. 重要性が乏しいものであること。
  4. 次の事業年度において費用化されるものであること。
  5. その事業年度に支払いが済んでいること。
  6. 収益に対応する費用ではないこと。


1番目の「一定の契約に従って、継続的にサービスなどの役務を受ける」とは、「等量・等質のサービス」であることを意味しています。


2番目の「毎月継続的に同じ経理処理を行う」も、「等量・等質のサービス」であるため、経理処理も毎月同じものでなくてはならないということです。


3番目の「重要性が乏しいもの」とは、企業会計の「重要性の原則」と呼ばれ、「重要でないものは本来の厳密な経理処理をしなくて良い」ということを意味しています。


4番目、5番目についてはこれまで説明してきた通り、翌事業年度の費用を当事業年度に支払うことができるというものです。


6番目の「収益に対応する費用ではない」とは、例えばマンションやビルの転貸のように、収益を上げることを目的とした費用は含まれないということです。

短期前払費用の経理処理について

ここからは短期前払費用の経理処理について、「リゾート会員権」を例に挙げて解説します。


以下は登録料と入会金の経理処理についてです。


  • 登録料・入会金は資産計上する。
  • 資産計上された登録料・入会金は償却が認められない。
  • 会員を脱退、または会員権を場とした場合、登録料・入会金が返還されない場合は、その額は脱退・譲渡した日の属する事業年度に損金算入する。
  • 有効期間が定められているレジャークラブの入会金は、脱退・譲渡の際に返還を受けることができない場合、繰延資産として償却できる。


他にも、毎年管理費や年会費がかかる場合は経費にすることができますが、接待目的の場合は交際費、福利厚生目的の場合は福利厚生費として計上します。

短期前払費用の利点と注意点は?

短期前払費用の利点は、支払いが済んでいれば、翌事業年度の費用も当事業年度に損金算入できるため、法人税の課税対象額が小さくできることです。


これにより、例年よりも多く収益が上がった事業年度の法人税の支払額を少なくすることができるため、課税負担軽減することができます。


注意点としては、翌事業年度に支払う費用を当事業年度に前払いするので、費用の支払い額が多くなり、キャッシュフローが圧迫されてしまうことです。


課税負担を小さくするために短期前払費用するのに、キャッシュフローが圧迫されてしまったら本末転倒です。


また、利益が出た年だけ特例を使い損金算入をするというやり方は利益操作として税務調査で指摘をされる可能性がある為、注意してください。


短期前払費用は、継続的にキャッシュフローに余裕がある場合に利用するようにしましょう。

短期前払費用の特例が適用されると損金算入可能!

「短期前払費用の要件とは?」の見出しでご紹介した6つの要件をすべて満たすと、短期前払費用の特例が適用されることになります。

例えば、毎月100,000円の保険料を支払っているとすると、1月から12月まで合計120,000円かかることになります。

しかし、実際には3月を決算期としている法人が多いため、4月から12月までの保険料90,000円は翌事業年度の経費となります。

短期前払費用では、この90,000円を翌事業年度ではなく、当事業年度の経費として損金算入することができるのです。

これにより、損金算入額が大きくなるため、法人税の課税対象額が小さくなります。

どんな費用が前払費用の対象となる?

前払費用として計上することが認められているものとして、以下のような費用があります。


  • 家賃・テナント料
  • 土地賃借料
  • 保険料
  • 利息
  • レジャークラブの会員費


このように、毎月一定額支払うことになる費用は、前払費用として計上することが可能です。

短期前払費用の特例が適用されない場合について

短期前払費用の特例が適用されない場合として、以下のような例が挙げられます。


  • 契約することなしに前払する場合。
  • 支払い時から一年を超える期間が対象期間となっている。
  • 決算日までに支出が行われていない
  •  一般的なリース取引。


短期前払費用は当事者間の契約に基づいたものでなければならないので、短期前払費用の契約することなく勝手に支払っても特例は適用されません。


また、短期前払費用は支払い時から一年以内の契約について適用されるため、一年を超える期間が対象期間となっていると適用されません。


例えば、4月から翌3月までの契約をしていた場合、翌3月を超える期間の支払いを前払にすることはできません。


そして、支払い時から一年以内の契約であったとしても、決算時までに支払いが行われていなければ、短期前払費用は適用されません。


リース料はこれまでであれば短期前払費用として認められていたのですが、いまでは「一般的なリース取引」は 資産購入とみなされ、短期前払費用が適用されなくなりました。

【コラム】他にどんな税金対策がある?

短期前払費用以外にも、費用計上や税控除を受ける方法はとても多く、すべてを紹介することはできません。


そこで、ここでは短期前払費用以外で税金対策を行う方法の中でも、代表的な方法について紹介します。


  • 法人保険への加入。
  • 中小企業倒産防止共済に加入する。
  • 小企業企業共済に加入する。
  • 機械設備の購入など設備投資を行う。
  • 従業員のボーナスをアップする。
  • 福利厚生を充実させる。
  • 広告宣伝費用を計上する。
  • 役員や従業員に退職金を支払う。


以上が代表的な方法ですが、法人が経費として計上できる幅はとても広いので、事業に合った方法を選択することをおすすめします。

まとめ:短期前払費用の特例を活かして法人税が軽減できる

短期前払費用の特例を活かした税金対策について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは

  • 毎月継続的に支払っている固定費について、翌事業年度の費用を、短期前払費用として当事業年度に支払うことができる。
  • 6つの要件を満たしていないと短期前払費用として認められない。
  • 短期前払費用によって法人税の課税負担を軽減できるが、キャッシュフローを圧迫してしまうことがある。
  • 短期前払費用として認められるのは、保険料や家賃、賃貸料、利息などがある。
  • 短期前払費用の特例適用されない場合もあり、特にリース料は適用されないので注意が必要。

でした。


短期前払費用の特例適用を利用することで、課税負担を軽減できるので、事業を展開する上で有利になります。


短期前払費用以外にも課税負担を軽減する方法はたくさんあるので、製造業であれば機械設備に投資するなど、業種ごとに最適な方法を選択するといいでしょう。


ほけんROOMでは、読んでおきたい法人保険に関するさまざまな法人保険の記事を掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

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