履行保証保険とは?履行ボンドとの違いや保証内容等を解説!

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履行保証保険は公共工事を受注した会社が加入する保険で、基本的には「金銭的保証」をしてくれます。しかし、法人向け履行保証保険は履行ボンドと似ているので相違点に関してや、保険金の支払い方法、2つの注意点を詳しくご説明します。

内容をまとめると

  • 履行保証保険の契約者は工事の受注者、被保険者は発注者で、金銭的保証を行ってくれる。
  • 金銭的保証では債務不履行の違約金も保証してくれる。
  • 履行保証保険の保険金は実額てん補契約と実損てん補契約の2種類がある。
  • 履行ボンドでは金銭的保証の他に役務的保証も選べる。
  • 履行保証保険では与信枠を得ることと、公共工事の落札後すぐに契約する必要がある。 

履行保証保険とは?履行ボンドとの違いは?


建設業における土木関連企業の経営が不安定になると、工事の途中で請負業者が倒産してしまい、工事を継続できなくなることがあります。


特に公共工事の場合は、工事が継続できなくなることで道路や水道といったインフラが使えなくなったりするなど、市民生活に大きな影響が出てしまいます。


そのような場合に備えて、会計法や地方自治法では、公共工事の請負業者に対して契約保証金の納付が義務付けられています。


契約保証金の代わりに履行保証保険履行ボンドに契約することができ、この2つは保証内容が異なるので、どのように違うのかをしっかり確認しておくことが重要です。


そこで、今回は履行保証保険と履行ボンドについて 

  • 履行保証保険の保証内容 
  • 履行ボンドの保証内容 
  • 履行保証保険の2つの注意点 

以上を中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、公共工事を行うにあたって加入が義務付けられている履行保証保険や履行ボンドについてや、その違いなどについて詳しく知るのに役立つと思います。


ぜひ、最後までご覧ください。

履行保証保険の補償内容は主に2種類!


さまざまな契約で交わされる契約書は契約を履行させるためのものですが、契約書は「契約が100%履行されることが保証してくれるもの」ではありません。


今回紹介する「履行保証保険」は、正式な契約を結んでいても受注側が委託業務を完了できなかった場合、損害額を保険会社から支払うことで発注側を守るための保険であり、受注者側は必ず加入することが求められます。  


具体的には以下の基準で補償されます。

  • 実額てん補契約
  • 実損てん補契約

①実額てん補契約:工事費用をベースに保険金が支払われる

履行保証保険における補償方法の1つ目は、「実額てん補契約」です。


これはあらかじめ契約で賠償額を決めておき、その金額が発注した側(被保険者)に保険会社から支払われる(定額てん補方式)というものです。


官公庁などから公共工事などを業者に依頼する場合は主にこの契約が用いられますが、民間企業が発注する工事の場合は、工事費用が高額になるスケールの大きい工事の場合に契約が求められる場合が多いです。


この契約方法はあらかじめ工事内容や工事費用によって金額が決まっているため、契約不履行によってどれくらいの損害が出たかどうかに関わらず、一定の保険金額支払われることになります。

②実損てん補契約:実損費用をベースに保険金が支払われる

補償方法の2つ目は、「実損てん補契約」です。


これは賠償額が定額である「実額てん補契約」とは異なり、契約が不履行になったことによって発注者側に実際に発生した損害額相当の保険金が支払われます。


あくまで例ですが、Aという業者がBから「7,000万円」で工事を請け負い、「5,000万円」分まで工事が完了していましたが、労働環境などを理由にA社から退職者が続出したため、残りの工事が行えなくなってしまいました。


この場合契約が不履行となり、残り「2,000万円」分の工事が終えられていない(=発注者は2,000万円の損害)ため、本来は保険に加入していたB社は2,000万円の支払いを受けなければなりませんが、B社は別の業者に工事の続きを「3,000万円」で発注しました。


その場合、発注者は実質「1,000万円」の損失を出したことになるので、その分が保険金額として支払われます。


これがいわゆる「実損てん補契約」の仕組みですが、無制限ではなく、保険契約における補償の上限額以上は支払われません。

履行保証保険の3つのポイント


履行保証保険では、業者が公共工事を継続できなかった場合に、「金銭的保証」をしてくれます。


もし工事を請け負った業者が倒産してしまった場合、別の業者に依頼しなければならず、発注者の金銭的負担が重くなってしまいます。


そのような場合に備えて、履行保証保険では工事が継続できなくなった時に発注者に対して保険金を支払ってくれるのです。


ここからは、履行保証保険について以下の3つのポイントを解説していきます。 


  1. 契約者は公共工事を受注した業者 
  2. 金銭的保証は違約金の支払いを保障 
  3. 履行保証保険の保険金の支払い方法

契約者は公共工事を受注した業者

法人向け履行保証保険は、国や地方自治体などから公共工事を請け負った法人が、発注者のために加入する保険です。


そのため、法人向け履行保証保険の契約者は受注した業者で、被保険者は発注者である国や地方公共団体です。


保険金は、国や地方公共団体などの指示に従い、請負金額に対する一定割合が設定されます。


一般的には10%〜30%です。


保険期間は請負契約書に定められた契約期間となっています。

「金銭的保証」は違約金の支払いを保障

公共工事の請負契約では、工期が遅れたり工事が中止になった場合に、契約が解除できると定められているのが一般的です。


受注者の債務不履行によって契約が解除された場合、違約金が発生してしまいます。


履行保証保険は、契約解除の際に受注者が負担しなければならない違約金についても、保険金の支払い対象となっています。

履行保証保険の保険金の支払い方法

履行保証保険の保険金は、以下の2種類の方法で支払われます。


  1. 実額てん補契約:契約した保険金額と同額が支払われる 
  2. 実損てん補契約:当初の契約金額と発注者が再契約した場合の契約金額との差額 が支払われる


実額てん補契約では、当初から契約していた保険金額が支払われるので、計算は不要です。


しかし、実損てん補契約の方は計算が必要で、例えば最初の請負業者に1億円で工事を発注し、この請負業者が倒産したとします。


次の請負業者に1億2,000万円で工事を発注したとすると、1億2,000万円と1億円の差額である2,000万円が保険金として支払われるのです。

保険期間は?工期が延長したら保険期間はどうなる?


履行保証保険では保険期間は、工事期間がそのまま保険期間となります。つまり、工事の請負が締結された時点から、工事が完了して引き渡しを行った時点までとなります。


ただし、たとえば掛け捨て保険で「60歳まで」と保険期間を決めるように「◯月◯日以降は絶対に補償しません」としてしまうと、工期延長となった場合に対応できません。


そのためあくまで「工事が完了するまで」が保険期間となりますが、契約で定めた保険期間がある場合、保険の延長手続きが必要です。

履行ボンドは「金銭的・役務的」保証どちらも選択できる


履行保証保険は「金銭的保証」をしてくれるものでしたが、履行ボンドは「金銭的保証」と「役務的保証」のどちらも選択することができます。


役務的保証とは、発注者に対して金銭で補償を行うのではなく、代わりの業者を見つけることで補償を行うということです。


役務的保証では、履行ボンドの役務的保証では、代わりに業者と契約を結ぶのは発注者や受注者ではなく、保険会社となります。


公的機関から工事を受注した業者が、市民の暮らしに欠かせない道路や水道などの工事を完了できなかったらどうなるでしょうか。


工事請負契約に関する法律で定められているように、リスクが現実となってしまっても、そもそも有事が発生しても途中でやめて良いような工事ではないためお金で解決するだけでなく、今後の見通しとして新たな業者に工事が引き継がれなければなりません。


このような工事の発注者側が契約不履行に伴い必要とする補償は2点に分類できます。

  • 金銭的保証:発注者側が負った「金銭的」損害を賄うための保証
  • 役務的保証:工事が完了されないという「役務的」損害を補うための保証

履行保証保険は「金銭的保証」をしてくれるものでしたが、履行ボンドは「金銭的保証」と「役務的保証」のどちらも選択することができます


役務的保証では、履行ボンドの役務的保証では、代わりに業者と契約を結ぶのは発注者や受注者ではなく、保険会社となります

履行保証保険の2つの注意点


履行保証保険は、公共工事を請け負う業者が、契約保証金を納める代わりに加入が義務付けられているものです。


もし契約保証金を納めるよりも履行保証保険に加入することを選択した場合は、以下の2つの注意点についてよく確認しておきましょう。 


  1. 決算書を提出して与信枠を得る必要があること 
  2. 公共工事を落札したらすぐに契約すべきであること


ここからは、履行保証保険のこれらの注意点について具体的に解説していきます。

【注意点①】決算書を提出して与信枠を得る必要がある

履行保証保険は債務不履行となった請負業者に対して融資を行うという側面があるため、無条件で加入できるわけではなく、審査があります。


請負業者の経営状況によっては、審査の結果、履行保証保険への加入を断られてしまう可能性もあるのです。


そのため、履行保証保険に加入する場合は、決算書類を提出することで、保険会社の与信枠を得る必要があります。

【注意点②】公共工事を落札したらすぐに契約をしよう

公共工事は、落札した翌日に契約、または工事開始といった場合が少なくありません。


そのため、落札したらできるだけ早く契約を行う必要があります。


契約をする上で、保険会社に素早く書類を提出できるように以下の情報を用意しておきましょう。


  • 工事名 
  • 工事現場の場所 
  • 請負金額 
  • 発注者の名前 
  • 発注者の住所 
  • 請負業者の名前 
  • 請負業者の住所 
  • 契約締結日 
  • 予定工期

加入の際に必要な書類と記載事項


履行保証保険の保険契約には以下の事項を証明する書類が必要です。

  • 工事の名前や場所、内容や期間など詳細を説明するもの
  • 請負金額が記載されているもの
  • 発注者および受注者の名前や住所が記載されているもの
  • 契約の開始日および予定されている工事期間

具体的には以下のような書類です。
  • 工事の契約書:契約内容が記載
  • 工事経歴書:完了した工事や未完了の工事などを記載
  • 決算書:会社の財務状況(貸借対照表・損益計算書など)が記載
  • 経審結果通知書:経営状況や工事評価などを評価した公的機関の審査結果が記載
  • 保険証書(既契約)
  • その他会社についての資料
 
工事の受注者側は保険会社に対して工事内容や会社の経営状態などが記載された書類の提出が必要です。 

これらの書類は、保険における補償の上限額を決定するためにも必要です。

まとめ:履行保証保険は金銭的に保証してくれる


履行保証保険について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは 

  • 履行保証保険の契約者は工事の受注者、被保険者は発注者で、金銭的保証を行ってくれる。 
  • 金銭的保証では債務不履行の違約金も保証してくれる。 
  • 履行保証保険の保険金は実額てん補契約と実損てん補契約の2種類がある。
  • 履行ボンドでは金銭的保証の他に役務的保証も選べる。 
  • 履行保証保険では与信枠を得ることと、公共工事の落札後すぐに契約する必要がある。 

でした。 


履行保証保険は契約保証金を納付する代わりに請負業者が選ぶことになる保険で、現金を用意するのが難しい場合はおすすめです。


契約解除となった場合に、請負業者が金銭的・役務的に負担することになりますが、役務的保証では保険会社が代わりの業者と契約してれるので、請負業者の負担が少なくなります。


もし金銭的・役務的な負担が厳しいと思ったら、履行保証保険や履行ボンドに加入しましょう。


ほけんROOMでは、読んでおきたい法人保険に関するさまざまな記事を掲載しておりますので、ぜひご覧ください。


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