介護保険料の納付を延滞した場合の延滞金取り扱いと計算方法について

介護保険は満40歳を迎える月から強制的に加入する制度です。介護保険料は、医療保険料等と共に納めたり国民健康保険料の中に含まれているため、延滞金が発生しにくい性質ですがゼロの訳ではありません。介護保険料の延滞金の仕組みはどうなっているのでしょうか。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険料の延滞金について解説

介護保険料は、社会保険加入者ならその保険料、国民健康保険加入者であればその納付金の中に含まれているため、期日までに納付をしないということが発生しにくいものです。


しかし、中には、国民健康保険料を年金から天引きにしていない場合や、保険料を口座から自動引き落としで納付していない方もいらっしゃいます。


保険料の納付が遅れた時には、他の税金などと同様に延滞金が発生します。


では、いつから、どんな計算基準で発生するのでしょうか。詳しく解説いたします。


介護保険料延滞金の根拠法令

介護保険料は、介護保険法第129条第1項に規定により、市町村が徴収することとされています。

ただし会社勤めや公務員など、国民健康保険に加入していない労働現役世代の場合には、加入している公的医療保険制度によって、医療保険を徴収する機関に介護保険料の徴収を委託しているケースもあります。


このように、法律によって規定されている介護保険料の納付を延滞した場合、市町村が「延滞金」として滞納処分を定める法的な根拠もあるのでしょうか。


介護保険法には、保険料の「延滞」についての規定は定められていませんが、「滞納処分」として介護保険法第144条に次のように定められています。

  • 地方自治法第231条の3第3項の規定に定める歳入とする

地方自治法第231条の3第3項の規定には「同条第2項で定める手数料と延滞金を課して徴収することが出来る」とされています。


これが、介護保険料を納めない場合に「滞納処分」として延滞金を課す法的な根拠です。

介護保険料の延滞金の割合

前述したように介護保険料の延滞金は、地方自治法に定める規定により市町村が割合を定めることができるものです。

ただ何事にも基準があるとおり、介護保険料の延滞金の割合も大体が同じ割合を定めていることが多いものです。


何を基準にしているかというと「財政安定化基金の延滞金の割合」であり、年14.5%を加算しています。

しかし、滞納してひと月目からこの加算を課すのではなく、ひと月目は行政独自の割合で加算し2ヶ月目から14.5%程度の加算を適用させる市町村もあります。

介護保険料延滞金の特例基準割合とは


介護保険料の延滞金の割合を決めるのに「特例基準割合」というものがあります。


これは、財務大臣が告示する割合(詳しくは、国内銀行の貸出約定平均金利の年平均)に1.0%を加算した割合のことです。


例えば、平成27年10月から平成28年9月までの一年間の貸し出し約定平均金利の年平均は、0.7%となっています。

この場合、介護保険料延滞金における特例基準割合は、1%プラス0.7%で1.7%となるのです。

介護保険料に延滞金が加算されるまでの流れ

介護保険料は、他の保険料や税金などと同様に納付期限があります。

一日でも納付期限を過ぎてしまうと、その日から延滞金が加算されることになります。


加算される期間は、納付期限の翌日から納付した日までの額で、日割り計算が可能です。詳細な延滞金の計算方法は、次を参照してください。

介護保険料の延滞金の計算方法

介護保険料の延滞金の計算方法は、少しややこしくなります。

まず覚えておきたいのが、介護保険料自体が各自治体によって違いがありますので、加算される延滞金は一律ではない、ということです。


さらに延滞し始めてから一月目までと、二月目以降からの加算料率に違いがあります。


例えで考えてみましょう。

平成26年3月31日までに納付しなければならなかった介護保険料15,000円を、平成26年12月31日に納付しました。


滞納し始めてから一月目の加算料率は3%、二月目からは10%だとします。

平成26年4月1日~平成26年4月30日までの延滞金は、15,000円×3%(つまり0.03)に30日/365日を掛けることになりますから、450円×≒0.082となり、約36円となります。


平成26年5月1日~平成26年12月31日までの延滞金は、15,000円×10%(つまり0.1)に245日/365日を掛けますので、約1,005円です。


36円+1,005円=1,041円。これが、この場合の介護保険料の延滞金で加算される額となります。

介護保険料の延滞金を計算する上での注意点

介護保険料の延滞金は、毎年変わります。そのため、年をまたいで延滞している場合には、計算される加算料率が違ってきますので注意が必要です。

また、1,000円未満の端数がある場合には切り捨てることとなっていますので、1,999円であっても加算額は1,900円となります。


では、加算額が1,000円未満だとしたらどうでしょうか。この場合、全額が切り捨てられて延滞金はかからないこととなります。


さらに、加算額が2,000円未満の場合には延滞金は徴収しないこととなっています。ですから、延滞金の最低額は2,000円からということになります。


ということは、前述した1,900円の延滞金は徴収されません。

介護保険の滞納が続くとどうなるのか

介護保険料の延滞金の計算方法をみてきました。もしかしたら、あまり加算額がかからないことに驚かれたのではないでしょうか。

しかし、保険料の滞納というのは別の面で不利益を招くこととなります。詳しくみてきましょう。

介護保険料を1年以上滞納した場合利用料の支払い方法が変更になる

介護保険料を1年以上滞納した場合、介護保険サービスを受けた時の利用料支払い方法が変わってきます。

介護保険料の滞納がない場合には、介護保険サービスを受けた時のサービス料としては1割負担で済みました(平成27年度からは、一定の収入がある方は2割負担となっています)。


しかし1年以上滞納していると、まず10割をサービス事業者に支払っておいて、後から残りの9割(ないし8割)を市町村から還元してもらうこととなります。これを「償還払い」と呼びます。


例外として、滞納がなくても介護保険サービス適用の住宅改修を行った場合には、この償還払いが適用されます。

つまり改修に20万円かかった場合、まずは20万円を改修業者に支払っておいて、9割にあたる18万円があとから市町村から振り込まれる、という形になります。


これと同じことが生じるのです。


さらにざっくりといえば、要介護3の方が地域密着型のデイサービスを7時間利用された場合、滞納がなければ一回につき1,006円(食費等除く)の利用料で済みますが、滞納があるなら一回10,060円支払い後から9,054円が還ってくる、ということになります。


しかも、還ってくるのは早くても2ヶ月遅れです。

納付期限から1年半以上滞納した場合一時差し止めになる

介護保険料の滞納を1年半以上続けたらどうなるのでしょうか。

前項で「1年以上滞納した場合に償還払いとなる」と述べましたが、この償還払いされる分が一時差し止めになります。


そして、差し止められた分から介護保険料が徴収されることとなります。


つまり、還ってくるはずの9割分が、そのまま戻ってこないということが生じるのです。

納付期限から2年を以上滞納した場合自己負担額が3割になる

さらに、介護保険料を2年以上滞納した場合、滞納していなければ1割負担(一部2割負担)で済むはずの介護サービス利用料が、3割負担となります。

一年滞納した場合の項目で述べたデイサービスの例でいえば、一回1,006円で利用できるはずが3,018円かかるようになります。

しかもこれは償還払いの額ですから、最初に10,060円払っておいて還ってくるのが7,042円しかない、ということです。

また、この還ってくる額が差し押さえられて介護保険料の納付に充てられます。


つまり、いくら滞納金の加算額が少ないからといって介護保険料を滞納していても、良いことは何もないのです。

介護保険料滞納は時効がある

介護保険料を滞納した場合の延滞金には、時効がないのでしょうか。

まず、介護保険法第200条第1項には、介護保険料自体の時効として2年と明記されています。そして同法には、延滞金の時効については述べられていません。


ここで考慮されるのが、延滞金を加算する場合の法的根拠となった地方自治法及び条例です。


地方自治法の第236条第1項には、地方公共団体における金銭給付の決まりがあり、5年が過ぎると給付請求を行う権利を失うとあります。


つまり、延滞金についても5年が経過したら時効となるのです。

介護保険料延滞金が減免される条件

介護保険料の納付を滞納した場合の延滞金について、詳しくご紹介してきました。

ただ、介護保険料もそうですが、著しく収入が少ない年金受給者など保険料自体が減額、あるいは免除されている方もいらっしゃるのが現状です。


では、延滞金についても何かの理由で減免、つまり免除や減額されたりすることがあるのでしょうか。


介護保険料の減免同様に、延滞金の減免についても国が一律で基準を示している訳ではありません。そのため、ある程度市町村独自の考え方や規定が取り入れられています。


例えばある市の場合、次のような方は延滞金の減免対象者となります。


  • 生活保護の受給者
  • 住所が不明など、著しい理由で介護保険料の納付が困難な者
  • 条例に定められた理由で介護保険料が減免されている者

注意したいのは、いずれの場合でも対象となったからといって自動的に延滞金が減免されるわけではなく、市町村長に対して定められた様式で申請を行う必要があります。


もちろん、申請したけれど認可されなかった、というケースもあります。条件など、詳しくは住所のある市町村の役所に問い合わせましょう。

介護保険料延滞金の未徴収分を含む減免の適用範囲

介護保険料の延滞金が減免されることが決定した場合に、どの範囲までそれが適用されるのでしょうか。

これも、市町村によって解釈が異なりますので一概にはいえませんが、例えば、延滞金減免の申請書が提出され協議した結果、市町村長によって減免が認められることが決定した、その日からの延滞金が減免されたケースがあります。


大体どの市町村も同じなのが、すでに徴収してある延滞金については減免措置が適用されない、というものです。

まとめ

いかがでしたか。

介護保険料の納付を期日までに行わないと、その翌日から納付した日までの日数によって延滞金が発生します。そして、発生した一月目と二月目からの加算率が違うことが多いものです。


加算される延滞金の計算基準は、特例基準などもありますが市町村ごとの条例によって違いがあります。


また一定の条件下で介護保険料が減免されるのと同様に、延滞金についても減免されるケースがあります。そして、延滞金の加算が消失する時効も定められています。


延滞が長期間続くと、介護保険サービスを受けた時に償還払いを受ける必要があるとか、1割(2割負担)で利用できなくなることも分かりました。


ただ、市町村ごとに定められている条例が違いますので、詳しくは住所のある市町村の役所に問い合わせてみることをお勧めします。


いずれにしても、介護保険料に限ったことではありませんが税金はなるべく期日までに納めた方が、色々な不利益を被らずに済みます。

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