公的・民間の医療保険の問題点・改善点とは?プロ目線で徹底解説!

公的・民間の医療保険の問題点・改善点とは?プロ目線で徹底解説!-サムネイル画像

ここ最近、高齢化やコロナ問題などの理由により医療費の対所得費用が高くなってきています。そこで、公的・民間の医療保険の仕組みと現状を正しく理解し、賢く制度を利用することが重要です。今回はFPである編集者が医療保険制度について徹底的に解説します。


▼この記事を読んで欲しい人
  • 医療保険が抱える問題点を心配している人
  • 公的医療保険だけで大丈夫か不安な人
  • 民間医療保険加入時の注意点を知りたい人

内容をまとめると

  • 公的医療保険は収納の減少と支出の増大という問題点があり、老人医療費の包括化や応能主義の導入などの方策が必要
  • 各種民間医療保険にも様々な問題点があり、その問題点を意識したうえで加入する必要がある
  • 民間医療保険に加入する場合は、告知義務違反、責任開始日、給付保証外の手術などの注意点を頭に入れてからにする
  • 民間医療保険には先進医療特約、保険料控除など、公的医療保険にはないメリットがあり、加入する意味が大きい
  • 医療保険相談では、相談が何度でも無料のマネーキャリアがおすすめ
  • マネーキャリアの顧客満足度は93%と高いので、相談すれば納得がいくことが多い
  • マネーキャリアにはオンライン相談から出張相談まであり、自由に相談形態が選べる

公的医療制度の基礎知識



公的医療保険には様々な問題点があり、その問題点をいかに解決していくかが今後の課題になっています。


ただし、その問題点を理解するには、公的医療保険についての基礎知識を勉強しておく必要があるので、ここで以下のような内容について詳しくご紹介します。

  • 公的医療保険(国民皆保険)
  • 後期高齢者医療制度
  • 高額療養費制度
これらについて学んでおくことで、今後公的医療保険の問題点がどのように推移していくのかも見えてきますから、しっかりと内容をお読みください。

①公的医療保険(国民皆保険)

公的医療保険にはいくつかの種類がありますが、もっとも一般的なのが健康保険(略して国保ともいう)です。これは都道府県市町村と各種国民健康保険組合が保険者になって運営している保険制度で、自営業者、農林漁業従事者、年金生活者、非正規雇用者、無職者やその家族などが加入するものです。 


公的医療保険にはさらに、健康保険(略して健保ともいう)という種類もあります。こちらは全国健康保険協会や各種健康保険組合が保険者になって運営し、一般被用者(サラリーマンのこと)保険ともいます。加入するのは企業の従業員とその家族です。 


このほかにもありますが、いずれにしろ日本国民はいずれかの公的医療保険に加入することが定められています。 これを国民皆保険と言います。


それぞれの制度の概要ですが、病気や怪我をした時に医療機関に受診する際の医療費負担を抑えてくれます。通常は3割負担となり、残りは公的医療保険から医療機関に支払われます。70歳以上74歳以下の人は2割負担、6歳未満の人も2割負担です。

②後期高齢者医療制度

平成18年6月の健康保険法等の一部改正を受け、平成20年4月から新たに後期高齢者医療制度が創立されました。対象となるのは、75歳以上の高齢者と65歳以上の一定の障害がある方になります


後期高齢者医療制度が設けられた背景には以下のようなものがあったといいます。

  • 財政運営の責任と現役世代と高齢者の負担分担が明確ではなかったので、それらをしっかりと把握できるようにするため
  • 後期高齢者が将来にわたって安心して医療サービスの恩恵を受けられるようにするため


後期高齢者医療費制度は、都道府県ごとの医療水準に合わせた保険料を後期高齢者で公平に負担するようになっています。その保険料については、税金負担が5割、国民健康保険+被用者保険(会社員、公務員、船員などが加入する保険) が4割負担で、高齢者の負担は1割に抑えられています。つまり、税金のほか、現役世代からの支援金を受けることで、高齢者の保険料負担は軽減されているのです。


具体例を挙げるとわかりやすいでしょうから、一つ例を見てみましょう。医療費が3,000円だとします。この場合は、1割負担になりますから、医療機関で支払う医療費は300円です。

③高額療養費制度

医療費は思いもよらぬ高額になることがあります。そのようなときは家計への負担も非常に大きくなります。 


医療費が原因で生活が苦しくなることもあるでしょう。そんな苦境を救ってくれるのが公的医療保険の高額療養費制度で、医療費の自己負担分を軽減させてくれます。 


高額療養費制度の利用でポイントになるのが上限額です。その上限額を超えた医療費が後ほど払い戻されます。 


上限額については、年齢や所得による適用区分がありますが、少し複雑になっているので以下の表を引用しておきます。表の内容をご自分に照らし合わせてみてください。


70歳以上の方(平成30年8月診療分から)

適用区分外来(個人ごと)ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円~
標報83万円以上/課税所得690万円以上
252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770万円~約1,160万円
標報53万円以上/課税所得380万円以上
167,400円+(医療費-558,000)×1% 
年収約370万円~約770万円
標報28万円以上/課税所得145万円以上
80,100円+(医療費-267,000)×1% 
年収156万~約370万円
標報26万円以下
課税所得145万円未満等
18,000円
年14万4千円
57,600円
Ⅱ 住民税非課税世帯
8,000円
24,600円
Ⅰ 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
8,000円
15,000円

※厚生労働省保険局の「高額療養費制度を利用される皆さまへ」の表を引用しました。


69歳以下の方(平成27年1月診療分から)

適用区分ひと月の自己負担上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円~
健保:標報83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770~約1,160万円
健保:標報53万~79万円
国保:旧ただし書き所得600万~901万円
167,400円+(医療費-558,000)×1% 
年収約370~約770万円
健保:標報28万~50万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
80,100円+(医療費-267,000)×1% 
~年収約370万円
健保:標報26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円
住民税非課税者
35,400円

※引用元は上記と同じです。

公的医療保険が抱える6つの課題・問題点

公的医療保険は日本国民にとってはとても大事な制度で、これがあるおかげで安心して医療機関にかかることができます。病気や怪我をしても不安にならなくて済むのです。


ところが、この公的医療保険には現在様々な課題問題点が浮上してきています。以下のような課題や問題点です。

  • 医療費の対国民所得費の増加
  • 経済成長の低減による保険料収入の減少
  • 後期高齢者の増大に伴う保険料の自動引き上げ
  • 国民健康保険の高い滞納率と資格証明書交付の難点
  • 診療報酬の引き下げ
  • コロナ問題による医療保険制度改革

問題点① 医療費の対国民所得費の増加

公的医療保険の第1の問題点は、医療費の対国民所得比の増加です。そこでこの問題の正確な把握のために、厚生労働省が発表した「平成30年度 国民医療費の概況」と「平成20年度 国民医療費の概況」をもとに、医療費の対国民所得比の数値を比較してみましょう。

年度国民医療費対国民所得比
平成30年度43兆3949億円10.73%
平成20年度34兆8084億円9.90%

医療費の対国民所得比は10年で1%近く上昇しています。


その上昇の主な要因となっているのが医療費の増大です。対国民所得比は国民負担率とも言いますが、医療費の増大で国民の負担が増えつつある実態が明らかになりました。


その医療費増大の原因は二つの要素にあります。一つは高齢者の医療費の増加で、高齢者人口の増加により、掛かる医療費も増え、国民所得とのバランスにも影響を与えています。


もう一つの要素は医療技術の高度化です。高度な医療が受けられれば、国民の健康のためには大いに寄与はしますが、その分お金は多く掛かります。それが医療費の増大につながっているのです。


これらの要素が絡み合って、医療費が増大し、対国民所得比を上げていると思われます。今後も高齢者人口は増え、医療はますます高度化していきますから、対国民所得比はさらに上昇していくことでしょう。

問題点② 経済成長の低減による保険料収入の減少

次の公的医療保険の問題点は、経済成長の低減による保険料収入の減少です。収入が減れば、現在の制度が維持できなくなるのではとも危ぶまれています。


公的医療保険の収入の主要な財源は保険料です。1961年当時、日本の経済は成長期にあり、雇用も安定し、労働人口も多かったので、保険料の確保もスムーズに行われていました。


その後もこの傾向が続き、保険料が十分入ってくるので、老人医療費が無料化になりました。日本の公的医療保険の健全な体制を象徴する出来事でした。


しかし、1990年代のバブル崩壊による経済低迷、労働者人口の低減などにより、保険料収入が減っていき、現在の公的医療保険の制度の安定性の問題点に繋がっています。

問題点③ 後期高齢者の増大に伴う保険料の自動引き上げ

公的医療保険の第3の問題点は、後期高齢者の増大による保険料の自動引き上げです。現在は後期高齢者の数の増大に伴って、医療費は大幅増加中です。各保険者の老人保健拠出が大きな割合を占め、負担が増加しています。

それに加えて、前段の問題点で指摘した経済成長の低減による保険料収入の減少もあり、公的医療保険は非常に苦しい状況にあります。今後も財政状況の維持に非常に苦労すると思われます。

後期高齢者の保険料負担は1割ですから、その他の部分は税金と現役世代でカバーしていきます。後期高齢者の増大により公的医療保険の支出が増え続ければ、保険料の自動引き上げという事態にもなるでしょう。

問題点④ 国民健康保険の高い滞納率と資格証明書交付の難点

厚生労働省がプレスリリースした「平成30年度国民健康保険(市町村)の財政状況について」によると、令和元年の国民健康保険滞納世帯数は245万世帯となっています。全世帯のおよそ13.7%に当たります。


この数字は最近減少傾向が見られますが、それでも高い数字であることは確かです。国民健康保険を滞納した世帯には、資格証明書が交付されます。資格証明書の交付世帯数は令和元年では15.1万世帯でした。


資格証明書の不便なところは、いったん医療機関の窓口で医療費を全額負担をしなければいけないことです。あとで市区町村の窓口で払い戻しを受けますが、かなり面倒です。


しかし、資格証明書の問題点はただ不便であるということだけではありません。国民皆保険制度という日本の根幹をなす部分が崩れることにつながりかねません。また、国民健康保険の収入自体も減ります。


資格証明書が交付されるということは、国民健康保険の保険料を納めていないということですが、その数を増やしているのがフリーターや自営業者の増加です。本来はフリーターも自営業者も国民健康保険に加入することになっているものの、収入が不十分で保険料を収められず、資格証明書が交付されているというケースもあります。

問題点⑤ 診療報酬の引き下げ

公的医療保険が抱える問題の五つ目は診療報酬の引き下げです。診療報酬が引き下げられれば、医療費が減っていいのではと思えるかもしれませんが、医療サービスの低下という懸念もあります。


患者が必要とする医療の質と量を維持するためには、それなりの診療報酬も必要です。それが引き下げられれば、サービス低下という事態もあり得ます。


令和4年度の診療報酬改定においては、政府が全体で0.94%引き下げる方針としました。人件費分は0.43%、薬価分は1.37%の引き下げです。


高齢化に伴う医療費の自然増を考えると、国民の負担軽減のためにも当然の措置ということのようです。


現在、医療機関の経営状況も安定しつつあり、診療報酬の引き下げもそれほど影響がないものと見られています。ただ、長い目で見ると、診療報酬の引き下げが医療サービスの低下につながらないように願いたいものです。

問題点⑥ コロナ問題による医療保険制度改革の先送り

今後の国民皆保険制度を維持していくうえで重要なのが医療保険制度改革です。2020年5月下旬には「全世代型社会保障検討会議」も開催され、ここで最終報告が取りまとめらる予定でした。


ところが、新型コロナの蔓延の影響を受け、先送りになりました。医療保険制度改革の決定も先延ばしとなりました。


医療保険制度改革には様々なテーマがありますが、そのうちの一つが後期高齢者の医療費2割負担です1割から2割負担増にすることで、公的医療保険の財政状況の改善を目指したのです


また病院での受診時にワンコイン(100円)を求めるという案もありましたが、これも結局は取り上げられないことになり、一時的に医療保険制度改革がストップしたようにも見えました。


最終的には、2021年6月4日に参議院本会議で医療制度改革関連法が成立し、後期高齢者の2割負担が一定の所得以上の人に義務付けられれることになりました。ただ、その効果はあまり大きくないとも見られ、今後もさらなる医療保険制度改革の必要がありそうです。

公的医療保険制度における解決されるべき3つの改善点

これまでの説明で公的医療保険制度に様々な課題や問題点があることがおわかりになったでしょうが、大事なのはその改善点を模索することです。そこでここでは以下のような改善点を示しておきたいと思います。

  • 診療報酬制度における老人医療費の包括化
  • 所得や世代のみでなく資産も考慮した応能主義を導入
  • 国民健康保険の初期未納者・分割納付者への電話催促

改善点① 診療報酬制度における老人医療費の包括化

後期高齢者の増加により、医療費が増加し、公的医療保険を圧迫しつつあります。これを避けるためには、いかに医療費を下げるべきかが焦点になってきますが、そのうちの一つの方法が診療報酬制度における老人医療費の包括化です。


包括化とは、1日当たりに受ける医療すべての診療報酬をまとめるというものです。診察料、検査料、薬剤料、入院料などが含まれ、診療報酬は一定額となります。


従来の方式では出来高払い方式となっていて、診察、検査、注射、手術ごとに診療報酬が決まり、それを清算して患者が支払うようになっていました。


包括払いを採用すると、診療報酬が一定額になり、医療費が削減されるのではと期待されています。増加しつつある老人医療費の包括化でも、医療費が減少する可能性があると見られています。


ただし、包括払いにはデメリットもあります。それは診療報酬が一定額という点に医療機関が満足せず、医療サービスの質と量を低下させてしまう恐れがあることです。つまり、過小診療ということであり、これでは患者が安心して診療を受けることができません。


この点をどうクリアするか考えたうえで、老人医療費の包括化を導入していけば、医療費削減に向けて大きな役割を果たすことができ、公的医療保険制度の存続に寄与することになるでしょう。

改善点② 所得や世代のみでなく資産も考慮した応能主義を導入

医療費負担を求める場合、所得だけではなく資産も計算に入れた応能主義を導入してみてはという考え方があります。所得と資産の両方を考慮して、それに応じた医療費負担にしてみるという方法です。


2021年6月4日に参議院本会議で成立した医療制度改革関連法によると、単身世帯の後期高齢者の場合は年金を含めた年収200万円以上、複数世帯では320万円以上が医療費2割負担となっています。つまり所得に応じた設定になっているのです。


現役世代の場合も、前年の所得で健康保険料が算出されます。所得による算出も一つの方法ではあると思いますが、所得以外に資産を持っている人もいます。高齢者の中には大きな資産を持っている人もいます。


その資産を含めて応能主義による負担を求めるという方式を検討課題としてみてみることもできます。


具体的には、後期高齢者の場合、資産が多くなれば、2割負担、3割負担にしてみます。これで公的医療保険の財政状況改善に少しは役立つことになるでしょう。

改善点③ 国民健康保険の初期未納者・分割納付者への電話催促

国民健康保険の初期未納者の場合、うっかりミスで保険料を支払っていなかったという場合もあるでしょうが、このようなときは自治体が督促状を送付する前に電話で催促するのもいい方法です


電話を使って口頭で注意されると、支払う気持ちが高まることも考えられます。文章以上の効果がある場合もあるのです。


国民健康保険の滞納問題は自治体や関係者にとっても頭の痛いところです。滞納が多くなれば、国民健康保険の財政状況にも悪影響が及びます。それだけに、いかに滞納者を減らすかがポイントです。


多くの自治体では、このようなときに法律に基づき督促状を送付します。それでも滞納が続けば、さらなる文章による催告も行われます。


しかし、その前に電話催促を行うことで、未納者の減少に役立つ場合もあります。同じように分割納付者へも電話催促をすることで、納期が早まったり、納付忘れを防いだりできる率が高まります。

民間医療保険の基礎知識

間医療保険にも様々な問題点があります。その問題点を見る前に、民間医療保険の基礎知識も学んでおく必要がありますから、以下のような内容をお送りします。

  • 公的医療保険制度とのバランスが重要
  • 保険業法上の分類
  • 医療系の保険商品の性質
これらの基礎知識を学んだうえで、民間医療保険をチェックしてみると、問題点が把握しやすくなり、今後の加入是非の判断もしやすくなるでしょう。

公的医療保険制度とのバランスが重要

民間医療保険が重要になってくるのは、公的医療保険制度とのバランスが取れるからです。民間医療保険では、公的医療保険制度でカバーできないような保証を受けられ、双方が助け合う構造になっています。


民間医療保険の場合、入院保障や手術保証がついているのが普通です。これは公的医療保険では賄いきれない多額の出費に備えるためのもので、差額ベッド代、食費、手術の費用などの出費を賄ってくれます。


ただし、民間医療保険では応益負担が原則です。充実した保証を受けようと思えば、その分保険料が高くなります。


また、公的医療保険制度と違って平等ではありませんから、利用者の健康状態や経済状態による差別もあるでしょう。そのため、最もサービスを必要としている人が恩恵を被れないというデメリットもあるのです。


これらの点を踏まえたうえで、公的医療保険制度を補うために加入するのが民間医療保険です。

保険業法上の分類

保険業法では、保険の種類を3つに分けています。第1分野(生命保険固有分野)、第2分野(損害保険固有分野)、そのどちらにも属さない第3分野の3つです。それぞれの特徴があり、内容を知っておく必要があるので、確認しておきましょう。

第1分野第2分野第3分野
生命保険会社の扱い損害保険会社の扱い生命保険会社も損害保険会社も扱う
人生の死亡・生存にかかわる保険偶然の事故にかかわる保険傷害・疾病などにかかわる保険

このうち、民間医療保険が該当するのが第3分野です。第3分野は、第1分野の生命保険会社、第2分野の損害保険会社という取り決めと違い、双方の会社が取り扱えるようになっています。そのため、申し込む場合は、いずれかの会社が提供している商品を好きなように選べるようになっています。


なお、第3分野の保険については、当初外資系の保険会社だけに参入許可が下りていました。日本の大手保険会社の参入が認められたのはようやく2001年7月からのことです。そのため、現在も第3分野の保険商品は外資系保険会社のものが多いです。

医療系の保険商品の性質

民間医療保険の主な特徴は、入院と手術に対して保険金が給付されることです。入院では1日当たり5,000円~1万円、手術では1回あたり10万円から数十万円の給付金支給という商品がよく見られます。


また、がん三大疾患(がん、心筋梗塞、脳卒中)や婦人科病など、特定の病気に対して多くの給付金が支給される商品もあり、特約で付属できる場合があります。ほかにも、様々な保障を付加できるものがあり、多種多様な商品が提供されています。


医療保険単独で出ている商品以外にも、生命保険や損害保険に特約を付けて医療保険を加えているタイプもあり、利用者の選択肢は広がっています。

民間医療保険5つの種類別の問題点

民間医療保険にはいくつかの種類がありますが、その種類ごとに問題点があります。次のような問題点です。

  • 定期医療保険:最も資金が必要な老後の時に保障が終わる
  • 終身医療保険:保障内容が古くなっていく
  • 就業不能保険:掛け金が家計の負担になりやすく給付条件が厳しい
  • 所得補償保険:会社員なら傷病手当金で代替できる
  • 女性保険:女性疾病に的を絞って高く保険料を払っても意味がない
どれもかなり気になる問題点で、加入する際はよく考慮しておく必要がありそうです。そのうえで、商品選択をしていくことになります。それぞれの問題点を詳しく見てみましょう。

定期医療保険:最も資金が必要な老後の時に保障が終わる

定期医療保険では、ある一定以上の年齢になると、更新が打ち切りになるケースが多いです。そうなると、その年齢以上では、保証なしとなってしまいます。


人間が病気をする時期といえば、老後が最も多いでしょう。ところが、定期医療保険ではその老後に更新ができないことがあり、一番病気にかかりやすい最も資金が必要な時期に保証が終わってしまうという問題点があります。 


定期医療保険は更新をすることでまた保証を受けられるようになりますが、その都度保険料が上がっていき、負担が大きくなるという問題点もありました。


さらに、一定年齢以上でその更新が終わるとなれば、その問題点も大きくなります。それだけに、老後の幸せを考えた場合、定期医療保険以外の選択肢も考えておく必要があるでしょう。

終身医療保険:保障内容が古くなっていく

終身医療保険には落とし穴があります。次のような落とし穴です。

  • 医療情勢は時代とともに変わっていて、入院よりも通院に重きが置かれている場合もある
  • 若いうちに加入しても、実際に病気になるのは後だから、保証を受けるのが数十年後ということもある
  • 保障内容は加入当初のものが続き、その後通じなくなることもある
  • 特約追加やアップデートを求められることがある

医療情勢が変わる

終身医療保険は生涯にわたって保証を受けられる制度ですが、医療情勢は時代とともに変わります。最近は入院よりも通院の重きを置くようにもなっていて、終身保証があっても、実際に利用する場面は少なくなっているともいえるでしょう。

保証を受けられるのは数十年後

終身医療保険に若いうちに加入しておくと、保険料も抑えられるのですが、実際に病気になるのは年齢を重ねてからの方が多いでしょう。つまり、数十年後にやっと保証が受けられるということであり、若いうちは終身医療保険の恩恵は受けにくいです。

加入当初の保証内容が続く

終身医療保険では、加入当初の保証内容がそのまま継続するのが普通です。つまり、その当時に合理的と思われる保証内容になっているのですが、新しい時代に対応できない場合も多いです。

特約追加やアップデートを求められることがある

加入当初の保証内容では現在の医療に通用しないということで、特約を新たに追加したりアップデートしたりなどを求められることがあります。その場合は、料金が必要になり、負担増となるでしょう。また、アップデート自体が難しい場合も多いです。

就業不能保険:掛け金が家計の負担になりやすく給付条件が厳しい

就業不能保険には二つの問題点があります。それぞれの問題点を詳しく見てみましょう。

掛け金が大きくなりがち

病気や怪我で長期間働けなくなった場合、給料が入ってきませんから、生活が苦しくなります。そのようなときに役立つのが就業不能保険で、所定の就業不能状態になり、それが一定期間継続すると、毎月給料のように保険金が支給されます


就業不能保険はとてもありがたい保険のように思えますが、給付金を十分な額にしようと思うと、掛け金が大きくなります。そのため、生活が圧迫されることもあるでしょう。

給付条件が厳しい

次の就業不能保険の問題点は、給付条件が非常に厳しいことです。条件としては単に働けなくなるというだけでなく、次のような条件がよく指定されています。

  • 病気や怪我で入院中
  • 病気や怪我で医師の指示のもと在宅療養している
  • 国民年金の障害等級2級以上に該当
これは一般的な条件ですが、商品によっても細かい指定があり、必ず自分が当てはまるとは限りません。場合によったら、再起不能レベルの人にしか給付金が支給されないケースもあるようです。

加入のメリットはある

病気や怪我で働けなくなったときに支給されるお金というと、傷病手当金もありますが、こちらの支給期間は1年6か月だけです。万一のことを考えると、就業不能保険に加入するメリットはあります。

長期治療が必要な病気の遺伝リスクや罹患歴がある人も、自分や家族のために入っておくのも賢明なことといえるかもしれません。

所得補償保険:会社員なら傷病手当金で代替できる

就業不能保険に似た商品に所得補償保険がありますが、この商品にも問題点があります。その問題点を考慮に入れると、傷病手当金や就業不能保険で代替できると思われます

傷病手当金との比較

会社員の場合、病気や怪我で仕事を休んだ時に健康保険から傷病手当金という保証が受けられます。そこで所得補償保険の必要性を考えるためにも、まず傷病手当金の支給額と所得保障保険の支給額を比較してみましょう。

種類支給額
傷病手当金1年半にわたって給料の3分の2
所得補償保険契約前の1年間(12か月)における所得の50%~70%

上記の表を見ればわかるように、支給額には大差がありません。そのため、所得補償保険は傷病手当金で代用できると考えることができます。

就業不能保険との比較

傷病手当金の支給期間は1年半ですが、それ以降や会社員以外の自営業者の場合は、所得補償保険が必要なように思えるかもしれません。しかし、この場合も就業不能保険で十分です。そこで、この点の理解の助けになるように二つの商品の比較表を掲載しておきましょう。

ライフネット生命の就業不能保険あいおいニッセイ同和損保の所得補償保険
取り扱い会社ライフネット生命あいおいニッセイ同和損保
保証理由病気や怪我で働けなくなる左記に同じ
保険期間最長70歳まで1年や5年など
保険金の支給期間働けないのなら満期までずっと最長で2年まで
保険金の額月額10万円~50万円の5万円単位国保加入者は平均所得額に対して70%以下
健保加入者は50%以下

※それぞれの参照元は、ライフネット生命の「就業不能保険 働く人への保険3⃣」とあいおいニッセイ同和損保の「所得補償保険」です。


この比較表からわかることは、就業不能保険の方が条件がいいことです。それだけに、わざわざ所得補償保険に加入しなくても、就業不能保険に加入しておけば、病気や怪我で働けなくなっても心配がありません。

女性保険:女性疾病に的を絞って高く保険料を払っても意味がない

女性保険とは、女性特有の病気に備えるための保険のことですが、女性の場合、男性とは違う病気が発症することがあるので、そのための保険が用意されています。


ただし、女性保険に高い保険料を支払っても意味がないとも言えます。その理由を詳しく見てみましょう。

女性の方が医療費が掛かるわけではない

女性と男性の医療費の比較を載せてみます。

女性男性
生涯医療費2,831万円2,621万円
64歳までの医療費1,138万円1,156万円

生涯医療費については、女性の方が男性よりも高くなっていますが、これは寿命とも関係があります。女性の平均寿命が87.26歳で、男性が81.09歳なので、寿命が長い分、女性の方が医療費が掛かるというわけです。


64歳までの医療費を見れば、男性の方が医療費が大きいですから、女性だからと言って、医療費が多く掛かるわけではありません。そのため、女性保険に加入する意味もそれほど大きくないと思われます。

女性特有の病気の入院日数が短くなっている

また、女性特有の病気の入院日数も短くなる傾向にあります。あるデータによると、それぞれの病気の入院日数は以下の通りです。

病名入院日数
乳がん11.5日
子宮頸がん13.9日
子宮体がん9.1日
卵巣がん9.1日
子宮平滑筋種7.1日
子宮内膜症6.8日


女性特有の病気の入院日数は長くても10日あまりとなっていて、それほど長期入院にはなっていません。それだけに医療費も高額になりにくく、重篤化しない場合も多いですから、女性保険の必要性も低いでしょう。


女性専用の保険に多額の保険料を支払うのは合理的ではないかもしれません。女性は女性専用の病気だけにかかるわけではありません。ほかの病気になる場合もありますから、女性専用では意味がありません。専用という言葉には魅力もありますが、これは保険会社の商売文句と受け取っておいてもいいでしょう。

民間医療保険の加入における3つの注意点

民間医療保険に加入しようと思っている人は、3つの注意点を覚えておきましょう。以下の3つです。

  • 告知義務違反
  • 責任開始日以前の疾患(免責期間)
  • 給付保障外の手術
注意点の理解が十分でないと、民間医療保険に加入できない、加入できても十分な保障を受けられない、契約解除などのケースもありますから、よくこれからの説明を読んでおいてください。

注意点① 告知義務違反

告知義務違反とは 

告知とは書面提出や保険会社指定の医師への伝達などの方法で自分自身の現在と過去の健康状態を保険会社に申告することです。告知内容は保険会社が保険加入の判断材料となります

ところが、その告知時に事実を正しく伝えない、嘘偽りを伝えるなどの場合があり、これが告知義務違反に該当します。告知義務違反は保険会社にとっては由々しき問題であり、その事実が判明すると、契約解除、または該当の症状が出ても給付金を支給しないなどの措置を取ります。つまり、加入者にとっては大きな損失となるのです。

告知義務違反になる場合 

告知義務違反となるケースはいろいろと報告されていますが、二つほど例を挙げておきましょう。 

  • うつ病になって薬物治療を受けていたものの、その事実を告知しないまま医療保険に加入。後で同病で入院
  • 軽度のがんが見つかったものの、医療保険加入時にがんの罹患歴はないと告知。後でがんの手術を受けることになり、入院給付金や手術給付金を取得しようとした。

これはほんの一部の例ですが、ほかにも多数の報告があります。告知義務違反をして、一時は保険会社をだますことはできますが、結局はそれが自分に跳ね返ってきます。長い目で見たらいいことはありませんから、告知時には真実を告げるようにしましょう。

注意点② 責任開始日以前の疾患(免責期間)

民間医療保険に加入したら、その時点から保障がスタートするのだと安心してはいけません。免責期間というものがあり、それを過ぎて責任開始日以降になってから、はじめて保証が始まります。


責任開始日とは、簡単に言うと保険会社の責任が始まる日という意味で、この日を起点に保険会社も給付金の支給義務を果たしてくれます。


ということは、この日以前に疾患にかかった場合は、給付金の支給は0です。これでは困りますから、責任開始日についてはしっかりと頭に入れておく必要があります。


通常責任開始日は

  1. 申込書類の提出
  2. 告知と診査
  3. 1回目の保険料の払い込み
という流れをたどったうえで始まります。ただ、1または2が完了した時点で、保証が始まるケースもあるようです。特に保険料の支払いが口座引き落としになっているときにそうなりやすいです。

注意点③ 給付保障外の手術

民間医療保険のメイン保証の一つが手術給付金です。ただし、すべての手術がOKで、支給しますよというわけではありません。対象手術には制限があり、普通は公的医療保険対象の手術、または約款で認めた手術を対象としていることが多いです。特約で前者を追加できるタイプもあります。


ここでは注意すべきことがあります。公的医療保険対象の手術と言っても、法令などの改正によって対象が変わることがあること、また抜歯や創傷処理などは対象外であることは頭に入れておきましょう。


また、民間医療保険の加入前や責任開始日以前の病気や怪我が原因で、それ以降に受ける手術もNGです。そのほか以下に挙げるような手術にも給付金は支給されません。

  • 美容整形手術
  • 疾病とは関係のない不妊手術
  • レーシックのような視力矯正目的の手術

詳しいことは、加入している保険約款をよく確認してください。それでもよくわからなければ、保険会社に問い合わせるのが一番いい方法です。

民間の医療保険に加入が必要な4つの理由

民間医療保険の問題点や注意点を見ると、加入に慎重になり、やめておいた方がいいのかなと考えるかもしれません。確かに様々な問題点があるので、そう思う気持ちは理解できますが、それらの問題点を考慮しても、加入する必要がある理由があるのです。以下のような理由です。

  • 先進医療特約が使える 
  • 保険料控除が利用できる 
  • 治療が長期化・再発しても心強い 
  • 公的医療制度が改悪される可能性もある 
これらの理由についてこれから詳述していきますが、それを見て、加入の必要性がわかっていただければと思います。

理由①:先進医療特約が使える

先進医療とは新しい医療技術のことで、大きな効果が期待されています。ただ、公的医療保険の支給対象外で、その恩恵を被ることができません。


そのため、先進医療を希望する場合は、全額自己負担となります。そうなれば、相当な医療費となり、経済的負担も大きくなるでしょう。


具体的に先進医療にどのくらいの費用が掛かるのか、厚生労働省の「第81回先進医療会議の開催について」という資料の中の「令和元年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」を参考に表を作成してみましょう。「 令和元年度実績報告(平成30年1月1日~令和元年6月30日)」です。

1件当たりの額(円)
平均入院期間(日)
陽子線治療
2,697,65819.8
重粒子線治療3,089,3439.6
MRI撮影および超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法107,6612.5

ここに紹介したのはごく一部の先進医療ですが、中には300万円を超える治療費になっているものがあります。これが全額自己負担では大変です。


しかし、 先進医療を受けることで、治癒に近づくのではとも思われている病気も増えつつあります。例えば、がんです。 


がんの治療に先進医療を利用すれば、治療に役立つといわれています。役立つというよりも、命が助かる場合もあり、とても重要な意味を持っています。


逆に言えば、先進医療が受けられなければ、命を捨てることにもなりかねません。そのため、多額の費用が掛かっても、先進医療を受ける準備をしておきたいところです。


とはいえ、患者が支払える医療費には限界もあります。そこで活用したいのが民間医療保険です。 


民間医療保険に先進医療保険特約をつければ、わずか月々数百円の支払いだけで、1,000~2,000万円もの保証が受けられるのです。これで高額の先進医療費用もカバーできます。

理由②:保険料控除が利用できる

国民の義務である納税ですが、その納税額を算出する際に基準となるのが課税所得です。課税所得とは、収入からある額を差し引いたした所得のことです。 


収入から差し引きする額には諸経費や控除などがあり、特に控除を所得控除と言います。この所得控除の恩恵により、課税所得も下がり、納税額も下がり、少し納税負担が楽になるのです。 


所得控除にはさまざまなものが含まれますが、その中に民間医療保険の保険料の適用があります。民間医療保険の保険料が控除されるときは、生命保険料控除の介護医療保険料控除という制度が利用されることになります。これは、平成24年の法改正から始まった新制度です。 


介護医療保険料控除の場合、最大4万円もの控除があります。大きな控除額ですから、ぜひとも利用したいところです。 


もう一つ、医療費控除という制度もあります。これは、医療費が一定額以上になったときに所得控除があるという制度で、医療費から民間医療保険の保険金などを差し引いた額が対象になります。一定額の基準は以下の通りです。 

所得区分所得が200万円以上所得が200万円未満
控除額10万円総所得金額の5%

理由③:治療が長期化・再発しても心強い

治療が長期化したり再発したりした場合に心強いのが民間医療保険です。


この場合、治療費のほかに差額ベッド代、食費、交通費、各種ローンや家賃の返済、子供の教育費などの出費もかさみますが、すべて自己負担となり、公的医療保険ではカバーしきれません。


医療費の自己負担額についても、公益財団法人生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、1日当たりの入院で平均23,300円、1回の入院で20.8万円となっています。


この金額を含めて、長期治療に掛かる費用を高額療養費制度や傷病手当金、貯金だけに頼るのは危険とさえいえるでしょう。


治療後についても、多額の医療費を支払った後は、生活が苦しくなるのを避けられません。健康で仕事をしていた時分のような生活は無理かもしれません。


さらに、後遺症の問題もあります。病気や怪我の後遺症が残ると、その療養費だけでもかなりの金額になることが予想されます。


これらもろもろの点を考えると、普段からの準備が必要となります。その準備に該当するのが民間医療保険です。民間医療保険不要論もありますが、現実的ではありません。


民間医療保険不要論では、いざ病気や怪我になった時に、どうすればいいというのでしょう。公的制度の活用だけでは限界があり、生活の維持も難しいでしょう。だからこそ、民間医療保険が必要なのです。

理由④:公的医療制度が改悪される可能性もある

公的医療保険制度はいろいろな問題点を内部にはらんでいます。その一つが収入が減少気味で、支出が多くなる傾向にあることです。


これでは国民皆保険制度が現状のまま維持できなくなるのではと危ぶむ声も聞かれます。また、国民皆保険制度をなんとか維持しようとして、社会保障費や公的医療制度を改悪しようという流れもあるとのことで、無視できない動きです。


そうなれば、これまでのような保証が受けられなくなる恐れもあります。現在の高額療養費制度の保障が手厚いからといって、安心してはいられません。


それらの点を考えると、民間医療保険の必要性はますます高まっているともいえます。

まとめ:制度が複雑な医療保険の利用にはプロへの相談が安心!

ここまで、公的医療保険民間医療保険の問題点や改善点などについて考えてみました。


日本には国民皆保険という制度があり、一部の人を除いて国民全員公的医療保険への加入が義務づけられています。これで安心して医療サービスを受けられるようになっているのですが、その公的医療保険には様々な問題点の指摘もなされています。そのため、今後の行く末を不安視する向きがあるのも確かです。


そこで注目を浴びているのが民間医療保険です。公的医療保険の足りない部分を補う商品で、いざとなったときにとても頼りになります。それだけに利用者も増えています。


ただ、公的医療保険にしろ民間医療保険にしろ、制度が複雑でわからないという声もよく聞きます。専門家でないと、その特徴を把握するのは難しいです。


そのようなときに利用したいのがプロへの相談サービスです。相談サービスには様々種類がありますが、マネーキャリアもおすすめです。


マネーキャリアはお金や家計、保険の悩みを相談できるサービスで、医療保険相談も受け付けています。


マネーキャリアで相談を何度してもお金は不要で、完全無料です。そして、どこにも出かけずに自宅でオンライン相談ができるほか、希望の場所での出張相談も可能です!


マネーキャリアの相談満足度は93%と高水準ですから、きっとご満足していただけることでしょう。

ランキング