経理担当なら知るべき決算対策テクニック集と注意点【プロ激選】

決算月は経理担当者にとって、一番の腕の見せ所です。決算月には税金対策を要求されることがあるかと思います。企業にとってより効果的な決算対策を知っていますか?本記事では決算対策のテクニックやポイント、注意点を解説します。




▼この記事を読んで欲しい人
  • 決算対策を検討中の人
  • 法人税の税金対策を検討している人
  • 例年よりも多くの利益があり、至急税金対策がしたい人
  • 中小企業でもできる税金対策を知りたい人
  • 決算直前でもできる税金対策を知りたい人

▼この記事を読んでわかること
  • 良い税金対策とは何か
  • 決算の3ヶ月前でもできる税金対策
  • 中小企業がチェックすべき税金対策
  • 決算対策で注意すべきポイント
  • 決算前に取り組むべきこと
  • 黒字化対策のテクニック
企業のお金の悩みならまずはマネーキャリアで気軽に相談してみてください!

内容をまとめると

  • 税金対策には現金を減らさないことと、税効果が高いことが重要
  • 税金対策では、無駄な固定資産の排除や未払計上などで、損金算入項目を増やす!
  • 中小企業の税金対策には、減価償却の特例や、中退共・倒産防の利用が便利
  • 税金対策が目的の経費の無駄遣いは要注意
  • 決算3ヶ月前には利益・納税予測、消費税予測、黒字化対策の検討をする!
  • 会社の決算期は経営者が自由に決められる!
  • 長期的な対策には法人の生命保険がおすすめ
  • 法人保険の加入は、節税だけが目的にならないように注意が必要
  • 法人保険の相談なら満足度93%マネーキャリアの無料相談おすすめ
  • マネーキャリアは全国対応で、スマホひとつで予約から面談までできる!

決算対策とは?決算対策の必要性


経営者や経理担当者にとって最も大切な決算。


決算でどれだけの所得が合ったかにより、納税額が大きく異なります。


納税額が少なければ会社に残るお金が増えるため、経営には適切な税金対策が重要です。


本記事では、


  • 良い税金対策とは何か 
  • 決算の3ヶ月前でも可能な税金対策
  • 中小企業が可能な税金対策 
  • 決算対策の注意点
  • 決算前に取り組むべきこと
  • 決算期の決め方
  • 黒字化対策の方法


以上の点を解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。


ほけんROOMではこの他にも、保険に関する様々な記事を掲載しているのでぜひ参考にしてください。

企業にとって良い税金対策の定義

税金対策は、考えられるものを何でもやれば良いというわけではありません。


選択を間違えてしまうと、全く効果がなかったり会社のお金が減ってしまったりする可能性があります。


そこで本章では、良い税金対策のポイントを解説します。


税金対策を行う際は、ポイントを押さえた上でより効果的なものを選択しましょう。

①現金を減らさない

企業にとって良い税金対策の一つ目は、現金を減らさないことです。


税金対策になるからといって、


  • 消耗品を大量購入
  • 頻繁に車を買い替える
  • 飲食費を沢山使う


といった手法を取ろうとする企業があります。


確かに経費計上できるため税効果があるようにも思えますが、経費を大量に使うことで会社の現金が減り、お金が残らなくなってしまいます。


そのためできるだけ現金を減らさない税金対策を立てましょう。


具体的には、


  • 使っていない固定資産の排除
  • 含み損を抱える資産の売却


などがこれに当たります。


対策を検討する場合は、最初に無駄になっているものはないかを確認してください。

②税効果が高い

企業にとって良い税金対策の二つ目は、税効果が高いことです。


仮に現金が減ったとしても、税効果が高ければ、その分の恩恵が受けられます。


一例としては、


  • 売上計上基準を遅くする
  • 固定資産を見直し損金を増やす
  • 国の特別控除を受ける


などが挙げられます。


ただしどの企業も同じような税効果が得られるとは限りません。


どの方法が効果的かは、企業の経営状況により異なります。


そのため税効果がの高い方法に関しては、税理士と相談しながら考えることが大切です。

事前に法人向け生命保険に加入するのがおすすめ!

長期的な対策を行う場合は、法人向け生命保険への加入がおすすめです。


法人向けの生命保険は、保険料の一部(商品によっては全額)を損金にできます。


損金算入することで課税金額が抑えられるため、効果的な活用方法です。


ただし損金算入するには、原則として役員・従業員の全てを、その福利厚生の対象とする必要があるため注意しましょう。


また法人向け生命保険は本来の保険としての役割である、


  • 満期保険金
  • 死亡保険金


なども受け取れます。


上記の保険金を、経営者・役員の勇退退職金や死亡退職金に回すことで、会社の費用負担を押さえながら退職金の準備が可能です。


よって保障もしつつ対策をしたいという方は、法人向け生命保険への加入も検討してみてください。


法人保険のメリット・デメリットを知りたい方はこちら

決算の3ヶ月前でもできる9個の税金対策テクニック


税金対策には中長期に行うものや、短期でできるものなど様々です。

しかし決算が近づくにつれ、取れる対策は限られてきます。

そこで本章では決算3ヶ月前でもできる9個の税金対策テクニックを、

  • 現金を減らさない
  • 税効果が高い

というポイントを点を押さえご紹介します。

決算の3ヶ月前は、 

  • 利益予測
  • 納税予測 
  • 上記に伴う決算対策 

 などを行うべき重要な時期です。

急を要する決算対策に備えて、短期的な方法を確認しましょう。

①無駄な固定資産の排除

現在使わずに放置されている、

  • パソコン
  • 機械類


などの固定資産はありませんか?


もしあるのであれば、処分をするのがおすすめです。


これらの固定資産は、使っていなくても資産に計上されますが、処分を行うことで除却損として計上できるのです。


除却損は、償却期間の残っている固定資産を、廃棄する際に発生する損失を指します。


償却期間が残っているにも関わらず使われていない資産を損金化すれば、その分だけ課税金額を減額することができます。


償却資産税は合計金額が150万円未満ならば免税扱いで課税されません。


廃棄処分にあたっては多少の出費があるかもしれませんが、ほとんど出費がなく法人税を抑えることが可能になります。


よって使わずに放置されている固定資産がある場合は、処分をしましょう。

②1人当たりの飲食交際費の特例

法人税の計算上では、基本的に交際費は損金不算入です。


ただし1人あたり5,000円を超えた接待飲食費においては、50%の損金算入が可能になる特例があります。


また期末の資本金、または出資金が1億円以下の企業に関しては、年間800万円までの接待飲食費が損金にできます。


社内接待や親族への接待の場合は適用されないため注意しましょう。


この特例は当初2020年3月末までの予定でしたが、「令和2年度税制改正」によって、2022年3月末まで延長済みです。


なお5,000円以下の接待飲食費は交際費から除かれるため、特例なしで損金算入ができます。

③含み損を抱える資産を売却

決算対策として、含み損を抱える資産を売却することで発生する繰越欠損金により、税効果を期待できます。


欠損金は法人税の計算時に、所得金額がマイナスになっている状態を指します。


欠損金は一定の期間であれば、所得(黒字)と相殺可能です。


この繰り返されている欠損金を、繰越欠損金と呼びます。


前述の通り、繰越欠損金は所得(黒字)と相殺が可能なため、課税金額を抑えることができます。


ただし繰越の認められる期間は決まっており、期間が過ぎたら税効果が得られません。


またずっと赤字が続いている場合は相殺ができないため、期間中に黒字にできるよう対策が必要です。


よって利益が多く収める税金が高くなりそうな場合に、活用してみると良いでしょう。

④売上計上基準の変更

売上を認識するタイミングをどこにするかを決めることを、売上計上基準と呼びます。


売上のタイミングが遅れると、今期の売上を減らすことができます。


よって課税対象となる利益が減り、法人税の負担が軽くなるのです。


効果的な売上計上基準の一例は以下の通りです。



売上計上基準
棚卸資産販売検収日
引き渡しを行う請負契約・作業結了日
・搬入日
・検収日
・使用収益開始日
上記の中から、合理的な範囲内で最も遅いタイミング
不動産仲介斡旋業取引完了日(継続適用が条件)



売上計上基準の変更も、ぜひ検討してみてください。

⑤社会保険料・労働保険料・固定資産税の未払計上

  • 社会保険料(会社負担分)
  • 労働保険料
  • 固定資産税


など、今期中に生じた費用でも、支払いは次の期になる場合がありますよね。


このような今支払っていなくても、債務が確定済みの費用は、今期の費用に未払計上が可能です。


未払計上できる費用はこの他にも、


  • 事務所の家賃
  • 水道光熱費
  • 保険料


などが挙げられます。


未払計上は、継続的に行われている契約に対してのみ可能です。


一度きりの契約に対する未払い分は、未払計上の対象にはならず、未払金として分けて管理する必要があります。

⑥資本金の減額

資本金の減額を行うことで、税金が減る可能性があります。


現在の税制を簡単にまとめると次の通りです。


資本金税制
1,000万円未満(設立時)会社設立後2事業年度は消費税免税
3,000万円未満「中小企業投資促進税制」の適用
1億円以下中小法人として扱われ、様々な税制優遇あり
1億円を超える大法人として扱われ、税制優遇が少ない


以上のように資本金は、


  • 1,000万円
  • 3,000万円
  • 1億円


が制度が切り替わるラインになっています。


資本金が増えることで税金が増加する可能性があるため、増額を検討する際は税理士によく相談しましょう。

⑦中古固定資産の購入

車などの固定資産を購入する場合は、中古固定資産の購入を検討してみてください。


車などの固定資産は、一度で経費化できるわけではありません。


減価償却の期間が過ぎてようやく経費化ができます。


例えば新車の普通自動車は、償却期間(耐用年数)が6年です。


6年かけてようやく経費になるのでは、あまり税効果が望めません。


しかし中古の場合は、


  • 耐用年数が既に経過しているもの →  2年
  • 耐用年数が残っているもの → (耐用年数-経過年数)+経過年数×20%


以上が償却期間になります。


そのため新品で買うよりも早い段階で経費化が可能になるのです。


また30万円未満の固定資産であれば、「少額減価償却資産の特例」によって、償却期間を待たずに一括で経費化可能です。

⑧役員退職金の支払い

中小企業の場合は、役員退職金も決算対策として有効です。


役員退職金の控除額は以下の通りです。

(退職金総額-退職所得控除額)×1/2

役員退職金は高額になることが多いことから、非常に多くの金額を損金算入できます。


ただし不当に高額な役員退職金は損金算入ができないため、適正な金額になるよう注意しましょう。


退職金は分類課税であるため、他の所得との合算はされません。


そのため税率が累進せず、安い税率に収まりやすいというメリットもあります。


なお退職金は株主総会で認められれば、未払計上も可能です。

⑨旅費規程の作成

出張費は全額費用にできるため、


  • 消費税
  • 法人税
  • 住民税


などの税金を安くできます。


当然のことながら、不当な金額の手当は税務署に指摘される可能性があります。


よって、出張手当の支給には旅費規定の作成が大切です。


旅費規定とは、


  • 出張の範囲
  • 日当支給の範囲


などを定めた社内ルールを指します。


旅費規定の作成をすれば、出張手当が正当な社内ルールに基づいた金額である証明となります。


また税務署からの指摘を回避するためにも、出張をした証拠などもしっかり残しておきましょう。

中小企業が検討するべき10個の税金対策テクニック

法人税法において、資本金1億円以下の企業中小企業と呼びます。


中小企業は大企業と比べると、


  • 実質的な税負担が重い
  • 資金調達が難しい


といったリスクを抱えています。


よって少しでもキャッシュフローを改善するために税金対策が欠かせません。


本章では中小企業が検討すべき税金対策を10個解説します。


中小企業だからこそ活用できる特例や、見落としがちな項目をチェックして、決算に備えましょう。

①未払費用の損金算入

支払いが次期になる未払費用をそのままにはしていませんか?


例えば、


  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 事務所の家賃


などの継続的に受けるサービスの費用は、翌月以降に支払いますよね。


このような費用は、未払費用として今期に損金算入が可能です。


中小企業の場合は、このルールが意外と熟知されていないケースが多いようです。


したがって本来損金にできるはず費用が、損金算入されていない可能性があります。


決算前には今一度、未払費用に計上できるものがないかの確認を徹底しましょう。

②短期前払い費用の損金算入

今期にサービスを受けていなくても、1年以内にサービスを受ける契約への支払いに対しては、損金算入ができる場合があります。


これを短期前払い費用と呼びます。


短期前払い費用の損金算入が認められる条件は以下の通りです。


  • 年払いであること
  • 毎年同じように支払っていること


月払いは対象外になるため、適用したい場合は相手と合意の上で、年払いへの契約変更が必要です。


なおサービス内容が月によって大幅に異なるような場合は、短期前払い費用の対象にならないため注意してください。

③設備投資の前倒し

次期以降に大きな設備の導入や修繕の予定はありませんか?


その設備投資の前倒しは可能でしょうか。


前倒しにしてその分の費用を損金算入すると、今期の黒字幅を減らすことができます。


そのため近いうちに設備投資を行う予定がある場合は、前倒しでの導入を検討してみてください。


税金対策のためといって今する必要のない設備投資を行っては、ただの浪費になってしまいます。


よって設備投資の前倒しは、あくまで直近に予定がある場合だけに留めましょう。

④不良在庫の損失額計上

商品が売れずに不良在庫となってしまった場合は、損失額計上を行いましょう。


損失額計上には以下の3種類があります。


内容
売却損売れ残り商品をセールで原価より安く販売すると、原価と売値の差額分を売却損にできる
廃棄損売れる見込みのない商品を廃棄すると廃棄損にできる
評価損棚卸資産の評価を低くすると評価損にできる


ただし不良在庫の損失額計上は、誤魔化して行われやすいことから、基準が非常に厳しいです。


そのため不良在庫を無闇に損失額計上すれば良いというわけではありません。


詳しい基準に関しては、国税庁のホームページを参照してください。

⑤不良債権の損失額計上

取引先の経営状況の悪化などの影響で、


  • 売掛金
  • 手形


といった債権が回収できず、不良債権になることがあります。 


この場合は損失額計上を行ってください。


不良債権の損失額計上は、


  • 貸倒損失
  • 貸倒引当金


以上の2つです。


不良債権の金額を損金算入を行う貸倒損失に対し、貸倒引当金は将来的に回収不能になりそうな債権のうち、事前に一定額を損金算入するものです。


いずれも誤魔化しが起きやすいことから、厳しい基準が設けられています。


特に貸倒引当金は完全に貸し倒れが起きたわけではないため、極めて厳しい基準になっています。

⑥使わない設備などの資産の損失計上

会社の固定資産台帳に、使われていない設備や、大きく損傷してそのままになっている設備などの資産はありませんか?


そのような資産は、損失計上ができるかもしれません。


損失計上の方法は以下の通りです。


内容
売却損帳簿価格より安い価格で売却することで、差額分を売却損にできる
廃棄損不要な資産を廃棄すると、廃棄損にできる
除却損固定資産台帳には記載があるが、実際には失くなっている資産は除却損にできる
(例:パソコンのソフトウェア)
評価損災害などの影響で資産価値が低くなったものは、減った分を評価損にできる


使われておらず無駄になっている資産があれば、損失計上を検討してみましょう。

⑦減価償却資産の前倒し購入(30万円/個未満・合計3000万円以下)

本来減価償却資産は、数年をかけて少しずつ損金にしていきます。


しかし資本金1億円以下の中小企業には、減価償却の特例が設けられているのです。


特例の内容は以下の通りです。


  • 30万円/個未満の固定資産は、少額減価償却資産になり一気に全額を損金算入できる
  • 少額減価償却資産は、年間合計300万円まで損金算入できる


これを利用し、近い将来購入を予定している固定資産を、前倒しで購入を検討してみましょう。


次期に購入予定の物を前倒しで購入し損金算入することで、今期の法人税額を抑えることができます。


ただし購入するのはあくまで近いうちに予定のある物だけにし、無駄な買い物はしないよう気を付けましょう。


(ほけんROOM様 見出し「3000万円」→「300万円」に修正お願いします)

⑧減価償却費用の計上

通常は毎年少しずつ損金にしていく減価償却資産ですが、一気に全額を損金算入できる特例がいくつか設けられています。


その一つが中小企業経営強化税制です。


中小企業経営強化税制は、


  • 即時償却
  • 取得価額の10%の税額控除


いずれかを選択し、適用できます。


少しでも現金を手元に残すのであれば、即時償却がおすすめです。


この他にも一括損金が認められている、


  • コインランドリー
  • 太陽光発電


などへの投資の活用も検討してみても良いかもしれません。


また減価償却の仕組みを活用し、



などの、オペレーティングリースを活用し、一度に数百〜数千万円を損金にするという方法もあります。

⑨従業員への還元

大きな利益があった場合は、従業員への還元も検討してみてください。


還元方法の一例は以下の通りです。


内容
社員旅行全従業員のうち半数以上が参加する、4泊5日以上の旅行
決算賞与全従業員を対象とし、決算月から1ヶ月以内に支給する決算賞与
スマートフォンの支給社内連絡用にスマートフォンを支給し、通信費を経費として計上
社宅・寮の家賃法令で定められている家賃の50%以上を従業員が負担する場合は法人の負担分が非課税になる


従業員への還元は決算対策はもちろんのこと、従業員のモチベーションの向上にも繋がります。


従業員満足度を高め、より良い経営状態にするためにも、ぜひ検討してみましょう。

⑩ 中小企業退職金共済・中小企業倒産防止共済に加入する

従業員の退職による大きな支出、取引先の倒産の影響による連鎖倒産といったリスクに備えるために、中小企業退職金共済(中退共)中小企業倒産防止共済(倒産防)への加入を検討しましょう。


各共済の概要は以下の通りです。


内容
中退共従業員の退職時に、中退済から従業員に直接退職金が支払われる
掛金は全額経費にできる
倒産防取引先の倒産時に、最大で掛金の10倍の金額が借入可能
掛金が損金算入可能(年間最大240万円、累計800万円迄)
解約時に掛金が全額返金(加入期間40ヶ月以上が条件)


以上のようにリスクへの対応と決算対策の両方ができます。


なお決算対策としては、掛金を1年分前納がおすすめです。

決算対策の際に注意するべき5つポイント

税金対策は、あれもこれも無闇に行えば良いというわけではありません。


中には損金不算入で税効果のないケースや、対策のつもりが無駄遣いになるケースもあります。


よって税金対策を行う際は、


  • 税効果のある方法なのか
  • 本当に必要なことなのか


といった見極めを行うことが大切です。


本章では決算対策の際に注意するべき5つのポイントを解説します。

①役員に決算賞与を渡すこと

前章で従業員への決算賞与は決算対策になる旨を解説しました。


しかし基本的に、役員への決算賞与は損金にできません。


役員への決算賞与を損金算入するには、「事前確定届出給与に関する届出」を行う必要があります。


事前確定届出給与とは、前もって金額と支払い時期を、税務署へ届出をしてから支払う給与です。


ただし事前確定届出給与は、


  • 会計年度が開始して4ヶ月以内に届出
  • 届出の金額と1円の違いもなく支払う


などの決まりがあります。


よって決算直前になって決算対策として活用することはできません。

②高額な減価償却資産の購入

「4年落ちの高級外車を購入する」という対策を聞いたことがある経営者は多いのではないでしょうか。


しかし必要もないのに購入しては、ただの無駄遣いになってしまいます。


また購入した場合に損金にできるのは、購入してから期末までです。


つまり決算直前になって決算対策として購入する場合、ほとんど税効果がありません。


よって税金対策のために高額な減価償却資産を購入する場合は、


  • 本当に必要なものか
  • 購入のタイミング


などをよく考える必要があります。


減価償却資産を活用した税金対策を検討する場合は、前章で解説した


  • 少額減価償却資産
  • 中小企業経営強化税制


などの活用がおすすめです。

③損金算入目的の接待

基本的に交際費は損金算入が制限されていますが、接待に使った飲食費に関しては、以下の特例が認められています。


  • 1人5,000円を超える接待飲食費の50%が損金算入可能
  • 中小企業は年間800万円までの接待飲食費が損金算入可能


よって接待を行うほど、損金算入のできる金額が増えていきます。


しかし税金対策のためだけに接待を行うのは無駄遣いです。


確かに税金は減るかもしれませんが、これでは会社のお金まで減ってしまいます。


税金対策はあくまで、会社の使えるお金を増やし、キャッシュフローを改善するための手段です。


よって現金の減る税金対策は、良い方法とは言えません。

④損金算入だけが目的の出費

税金対策のつもりで無駄な出費をしていませんか?


確かに損金算入できる金額が増えれば、その分課税金額を抑えることができます。


しかし税金対策のためだからと、


  • 必要のないものを購入
  • 不要なサービスを利用


などをしては、無駄に現金が減っていくだけです。


無駄遣いで現金を減らすくらいならば、税金を支払って利益を事業や従業員への還元に活用する方が、その後の経営に役立つのは間違いありません。


また良い税金対策のポイントは、


  • 現金が減らない
  • 税効果が高い


以上の2点です。


よって税金対策を行う場合は、本当に必要な出費かをよく検討しましょう。

⑤計画性のない法人保険の加入

法人保険の中には掛金の一部、あるいは全額を損金算入可能なものがあります。


しかしこれはあくまで課税の繰り延べです。


保険金や解約返戻金は益金として計上され、税金を支払わなければなりません。


そのため掛金を損金算入しても、最終的には税金を支払うことになるのです。


また近年は2019年のルール改正やホワイトデーショックなど、法人保険を利用した税金対策に対してのルール変更が行われています。


そのため今後もルール変更で税効果が弱くなる可能性があります。


よって法人保険に加入する場合は、


  • 相続税対策
  • 退職金の準備
  • 福利厚生


など、加入の目的を明確にすることが大切です。


企業によって必要とする保障は異なります。


どのような保障が合っているかを判断するには、FPなどの保険のプロへの相談が一番です。


マネーキャリアなら、オンライン上でFPへの無料相談ができます。


全国どこでも、スマホ1台で予約から面談まで可能ですので、お気軽に利用可能です。


法人保険への加入を検討中の人は、ぜひ一度利用してみてください。


法人保険のメリット・デメリットについて詳しくはこちら

その他の決算対策テクニックをまとめて紹介

これまで挙げた以外にも、決算対策のテクニックは多数あります。


本章では決算対策の一例をご紹介します。


内容
セミナーへの参加事業に関係のあるセミナーであれば計上が可能
資格取得支援福利厚生として計上が可能
健康診断全従業員を対象とした健康診断で、会社が診断費を負担する場合は、福利厚生として計上が可能
別会社の設立子会社・グループ会社を設立することで、軽減税率や税制優遇などが受けられる可能性がある
広告宣伝費今期中に掲載される広告に関しては、今期の広告宣伝費として計上が可能
所得拡大税制給与を一定額引き上げた場合、引き上げた金額の10%が減税できる
雇用促進税制従業員を一定数増加した場合、増加した人数×40万円が減税できる
コンテナリース70〜80%を初年度に、残りを2〜3年目に損金算入
船舶リース50〜80%を初年度に、残りを2〜3年目に損金算入
航空機リース50〜80%を初年度に、残りを2〜3年目に損金算入
ヘリコプターリース初年度に全額を損金算入


以上が決算対策の一例です。


表の後半で紹介している各リースは、オペレーティングリースと総称されています。


オペレーティングリースでは最初に一括で出資を行い、初年度に多くの金額を損金算入できる特徴があります。


そのため突発的に大きな利益が出た場合の決算対策に利用可能です。

決算対策の3ヶ月前にするべきこと


取るべき決算対策は、今期の利益や経営状況により異なります。


そのため決算対策を検討するためには、先に今期の利益・納税予測や税金対策など、様々な点から精査しなければなりません。


この精査は遅くとも決算の3ヶ月前には行いましょう。


本章では、決算の3ヶ月前にするべきことを解説します。

①利益・納税予測

利益・納税予測の際は、最初に利益予測を行います。


利益予測で行う時は、


  • 大まかな売上の総利益を算出
  • 経費の計算(変動費と固定費を分けて算出)
  • その他投資等の減価償却費の試算


などの項目を元に、大体の所得を算出します。


この時、前年度の月次推移損益計算書を参考にすると便利です。


利益予測ができたら、次に法人税の納税予測を行いましょう。


法人税の納税予測は所得に、所定の法人税率を掛けて算出します。


税率は以下の通りです。


所得税率
普通法人全て23.4%
中小法人800万円以下/年15%
中小法人800万円超/年23.2%


この時控除や中間納付した金額は除いて算出しましょう。


なお法人税だけでなく、地方税も含めて計算する場合は、法定実行税率を元に算出します。

②消費税予測

納税予測を行う際は、消費税予測も忘れてはなりません。 


消費税は、基準期間の課税売上高が、1,000万円を超えると課税されます。 


基準期間は、課税期間の前々年度です。 


消費税の課税方法には、


  • 原則課税方式
  • 簡易課税方式


以上の2通りがあります。


課税売上高が5,000万円未満であれば、「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出することで簡易課税方式が利用可能です。


選択次第では、納税額が大きく変わる可能性があります。


よってどちらを選ぶかは慎重に検討する必要があります。


特に中小企業の場合は、消費税が法人税よりも高額になる可能性があるため、十分計算しておきましょう。

③黒字化対策の必要性を検討

決算3ヶ月前には、来期の資金調達についても検討も行います。


もし赤字の状態であると、金融機関からの融資が受けづらくなります。


よって資金調達が必要な場合は、黒字化対策をしなければなりません。


この場合は税金対策とは反対に、


  • 費用ではなく資産として処理
  • 売上計上基準の変更(時期を早くする)
  • 保険の解約
  • 経費削減


など、益金を増やすような方法の検討を行います。

決算期はいつにするのがベスト?

会社の決算期は、経営者が自由に決められます。


それでは決算期はいつにするのがベストなのでしょうか。


決算期を決める際のポイントを簡単に説明すると以下の通りです。


  • 繁忙期は避ける
  • 資金繰りから逆算(資金が少ない時期の2ヶ月前は避ける)
  • 消費税の免税期間

会社の繁忙期に合わせると、他の業務に追われつつ決算を必要があるため、十分な取り組みが難しくなります。

決算期=3月というイメージをお持ちの人は多いかと思いますが、3月は税理士の繁忙期とも重なるため、より円滑に決算業務を行いたい場合は、税理士の繁忙期も避けた方が良いでしょう。

また決算月の2ヶ月後には納税を行う必要があることから、資金が少ない時期と納税時期が重なるのは避けたいです。

消費税については設立時の資本金が1,000万円未満の会社を対象に、2年度に渡って消費税が免税されます。

よって免税のメリットを最大限生かせる時期を検討することが大切です。

【参考】黒字化対策のテクニック5選


経営状態次第では、資金調達が必要になるかもしれません。


この時大切なのが黒字化対策です。


赤字の状態では、金融機関からの融資が受けづらいです。


そのため合理的な範囲内で、黒字化対策を行う必要があります。


本章では決算前に大切な黒字化対策のテクニックを5つご紹介します。

①経費の見直し

計上予定の経費で、次の期に回せるものがないか検討しましょう。


例えば


  • 広告の出稿日
  • 商品の引き渡し日


などを決算後にずらすことで、今期ではなく次の期の費用として計上できます。


税金対策では前倒しを行いますが、黒字化対策ではその逆のことをするイメージです。

②売上計上基準見直し

今期の売上を増やすために、売上計上基準を早められないか見直しをします。


売上計上基準を前にすると、決算をまたいで計上予定だったものが、今期の売上に計上できるかもしれません。


例えば販売業で現在の計上基準が検収日ならば、出荷日にすると早く計上可能です。


これにより売上が増え、黒字化対策ができます。

③経費削減

黒字化対策には経費削減も欠かせません。


一例としては以下の通りです。


  • 少額減価償却資産を一括計上しない
  • 仕入単価を下げる
  • 旅費規定を見直す
  • 外注部分を自社に変更する


固定費や変動費の見直しはもちろんのこと、人件費や事務所の家賃などについても、削減できないか検討しましょう。

④役員報酬の減額

黒字化対策を行う場合は、役員報酬の減額も検討してください。


ただし役員報酬は厳しく扱われるため、すぐさま減額することは困難です。


  • 経営状態の悪化
  • 役職の変更


など、税法上で認められたケースのみ減額できます。


よって一時的な黒字化のための利用はできない点に注意しましょう。

⑤法人契約の生命保険を解約

解約返戻金は益金として計上されるため、不要な法人の生命保険の解約も黒字化対策として検討してみましょう。


法人の生命保険を活用する場合は、以下の点に注意してください。


  • 保険積立金より解約返戻金の方が多い状態で解約する
  • 掛け捨て保険には、解約返戻金がない

上記の点を意識しないと、黒字化対策になりません。

また法人で生命保険に加入している場合、

  • 勇退・死亡退職金
  • 万が一の時の保障

などの用途を考えているのではないでしょうか。

しかし解約をすると、このような保障が得られなくなってしまいます。

よって解約をする場合は、不要な保険だけに留めた方が良いでしょう。

まとめ

税金対策に関して解説しましたが、いかがでしたでしょうか。


その年度の経営状態次第では、決算対策が必要になります。


直前になって焦って取り掛かると、対策が不十分になってしまうかもしれません。


万全な決算対策のためにも、遅くとも3ヶ月前には取り掛かりましょう。


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ほけんROOMでは他にも法人保険に関する記事を多数掲載していますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。

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