「実質返戻率」だけで法人保険を決めるのは危険?3つの注意点を解説

解約返戻金が給付される法人保険に加入する際に「実質返戻率」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。しかし、実質返戻率が高いからと言ってお得というわけではないのです。今回は、実質返戻率の3つの注意点と法人保険の解約時のデメリット、出口戦略に関して解説します。

解約返戻金がもらえる法人保険は実質返戻率を確認すれば大丈夫?

法人保険の解約返戻金で重要になる項目といえば実質返戻率ですよね。


しかし、「返戻率の高さ=返戻金の高さ=法人の利益」と安易にイメージしてしまう人が多いのではないでしょうか。


確かに実質返戻率は法人保険における重要な指標の1つですが、実際にはそこまで単純ではなく、その他にも返戻金と結果的な法人の利益を決定する「重要な3つの注意点」があります。


その3つの注意点とは、

  • 実効税率の問題
  • 法人所得額の問題
  • 法人保険の設計の問題

に関することです。


これらの問題を把握せずに実質返戻率のみで法人保険を選んでしまうと、利益が出ないばかりか大きな損害を被る可能性があります。


この記事を読んでいただくと、実質返戻率の正しい知識が身に付き、法人保険の加入時や法人保険の見直し時に役に立つと思います。


ぜひ最後までご覧ください。

             

法人保険の実質返戻率だけでの判断は危険!3つの注意点を解説

保険期間中に解約を行うと、払い込んだ保険料の一部が戻ってくるお金があり、これを解約返戻金と言います。


そして、解約返戻率とは解約するまでに支払った保険料に対する返戻金の比率です。


結論から言えば、実質返戻率のみで法人保険を判断するべきではありません。


まず、実質・単純比率の違いを説明した後、実質返戻率を見るときの以下の3つの注意点を解説しましょう。


  1. 法人実効税率は下がり続けている
  2. 税率は法人所得額によって変わる
  3. 1/2損金の法人保険では資産計上分が税金負担になってしまう

では、早速確認してみましょう。

実質返戻率は単純返戻率となにが違うの?

実質返戻率と単純返戻率の違いは法人税を計算に入れるかどうかです。


単純返戻率

単純返戻率とは、支払い金の総額に対して解約時に戻ってくる返戻金の割合です。


例えば200万円の保険料を5年間支払ったとしましょう。


この時の総支払額は、

200万×5=1000万円

です。


この際、単純返戻率が80%であれば、

1000万×0.8=800万円

が返戻されます。


実質返戻率

実質返戻率とは、本来支払うべきはずだった法人税を引いた金額を基準とした返戻率です。  


分かりづらい思うので、もう一度上記の例を使って説明します。


仮に1000万円を保険料として支払わず、利益として計上したと考えてみましょう


法人税を35%とした場合、

1000万×35%=350万円

を納税しなくてはなりません。


しかし、実際この1000万円は保険料として支払いました。


従って損金として経費化されています。


ということは、350万円が節税されていますから、実際に法人が支払ったのは650万円と考える事も出来るのです。


この値を基準にもう一度計算してみると、

800万÷650万=1.23

となり、実質返戻率は123%ということになります。


ここからは実質返戻率を考える上での注意点を解説していきます。

【注意点1】法人実効税率は年々下がっている

1つ目の注意点は法人実効税率が下がり続けている事です。


法人実効税率とは法人の実質的な所得税負担率のことで、政府の経済政策等に応じて変動します。


これは、保険の実質返戻率を決定するのに使われる数値の1つでもあり、保険設計書にも記載されています。


上の式から考えれば、法人実効税率が上がれば実際に支払う額が下がるので、実効税率に比例して実質返戻率も上がることになります。


つまり、法人実効税率に応じて実質返戻率は変動するのです。


しかし、法人保険の設計書では法人実効率は固定されていて、実効税率の変動に対応していません。


平成27年度に経済へのテコ入れとして法人税改革が実施され、実効税率が32.11%まで引き下げられました。


改正前の26年度は34.62%です。それ以来実効税率は下がり続け、28年度には29.97%となり、ついに20%台となったのです。


では、上述の例を使い、26年度を約35%、28年度を約30%として再び計算してみましょう。

26年度 : 800万÷650万=1.23(=123%)

28年度 : 800万÷700万=1.14(=114%)


実効税率5%の減少に対して、実質返戻率は10%近く減少しました。


この変化は僅か2年足らずの間に起こっており、影響の大きさが分かります。


このように実質返戻率のみで判断することは大変危険です。

【注意点2】法人所得額の違いで税率が変わる

2つ目の注意点は法人の所得額に応じて税率が変わることです。


法人の所得額によって、法人税、住民税、事業税等の税率は異なります。


利益が大きければ税率も高まるのは法人に限らずとも当たり前です。


特に法人の所得額は変動しやすので、一律設定の法人保険の返戻率では必ずしも得をするとは限らず、損失を被ることもあります。


【注意点3】1/2損金の法人保険では資産計上分が税金負担に

3つ目の注意点は法人保険が1/2損金の場合です。


法人保険には保険料の一部が損金にならず、資産計上になるタイプのものがあります。


つまり、税金負担が増加するのです


税金負担が増えれば実質返戻率が高くても利益を出すのは難しくなります。


これは税率の変動ではなく、法人保険の商品設計の問題なので、事前に全額損金タイプにするか1/2損金タイプにするか精査することが大事になって来ます。


基本的な特徴として、全額損金タイプは税負担の軽減になる分、返戻率が低く、1/2損金タイプは税負担が増えるため返戻率が高い傾向にあります。


もちろん一概には言えませんが、資金繰りに不安があるようなら全額損金タイプ、安定しているようなら1/2損金タイプを選ぶのがオーソドックスな考え方です。

結局、課税の繰り延べにしかならないこともある

3つの注意点をご紹介しました。


実質返戻率のみで法人保険を選ぶのは注意が必要だということがお分かりになったかと思います。


加えて、返戻金の受取時の対応によっては課税の繰り延べにしかならないということも往々にしてあります。


注意すべき点は、以下の3点になります。

  1. 法人実効税率の変動を視野に入れる必要がある
  2. 法人所得額の変動を考慮に入れる必要がある
  3. 資金繰りに応じて法人保険のタイプを選ぶ必要がある


実践するのは困難ですが、法人保険の加入をお考えの方は、必ずこうした点を考慮に入れる必要があります。

実質返戻率の計算方法を確認

上記の例で実質返戻率の計算を行いましたが、もう一度公式と併記してご紹介するなら、


公式:解約返戻金÷[支払保険料-(損金算入金額×実効税率)]

例  : 800万÷{1000万−(1000万円×35%)}(=1.23=123%)


で実質返戻率を求めることが出来ます。

解約返戻金がある法人保険のデメリット

解約返戻金がある法人保険のデメリットについても触れておきましょう。


解約返戻金がある法人保険のデメリットとしては、

  1. 資金繰り・キャッシュフローが悪化する可能性がある。
  2. 解約のタイミングによっては損失が出る。
ということが考えられます。

1に関しては個人や一般家庭の場合と本質的には変わらず、単純に毎年保険料を支払わなければいけないわけですから、キャッシュフローに影響が出ます。

もしかすると人員拡充や設備投資が行えなくなり、資金繰りまで悪化する可能性もあるので注意が必要です。

2も重要な点です。

一般的に言って早期の解約は返戻率が低いので、ある程度待つ必要があるのですが、定期保険の場合、一定の時期を過ぎるとまた返戻率が下がっていくという特徴があります。

「ここぞ」というタイミングで解約しなければ、法人保険に加入するメリットを享受できない可能性もあります。

出口戦略を考えて法人保険に加入することが大切

法人保険加入の際は、実質返戻率もある程度重要ですが、出口戦略をしっかり立てることが必要です。


出口戦略とは「撤退時に損失を少なくするための戦略」と言えますが、法人保険の場合は「可能な限り税負担を軽減すること」と考える必要があります。


法人保険に加入しても課税の繰り延べにしかならない場合が多いということはすでに触れましたが、実際は返戻金のみで利益を出すことは出来ません。


返戻金自体も課税対象だからです。


この点を考慮するなら、返戻金が払い戻される時期に合わせて経営上のアクションを起こすべきです。


具体的には、

  • 退職金に当てる。
  • 他の法人保険に入り直す。

などが挙げられます。


こうしたアクションを事前に考え、返戻時に備える必要があります。


以下の記事で法人保険の出口戦略に関してのより詳細な解説をしておりますので、ぜひお読みください。

まとめ:実質返戻率のみで判断しないで

実質返戻率とそれを取り巻く注意点についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは、

  1. 実質返戻金率のみで法人保険を選んではならない
  2. 実効税率・法人所得額を常に考慮に入れる必要がある
  3. 返戻金のみで利益を出すことは出来ず、追加のアクションが必要
です。

法人保険の加入時や見直し時に、どの法人保険に加入すべきかを正しく検討できるようになるためには、実質返戻率についての正しい知識を持っておくことが重要になってきます。

ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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