更新日:2024/04/12
法人契約した養老保険の経理処理の方法を解説!損金算入の割合とは?
会社で保険に加入した時や保険料を支払った際には経理処理をしなくてはなりません。ただ法人の場合、保険商品の内容によって損金算入の割合が違ってきます。そこでこの記事では法人が加入する養老保険の経理処理を、損金算入の割合とともにわかりやすく解説していきます。
内容をまとめると
- 法人の養老保険は貯蓄性が高いためどこかのタイミングで必ず保険金が受取ることができる
- 法人向けの養老保険はハーフタックスプランなどの4種類がある
- 法人向けの養老保険は受取人を誰にするかで損金算入できる金額が異なる
- 法人向けの養老保険の見直しをしたい方は「マネーキャリア」がおすすめ
目次を使って気になるところから読みましょう!
法人向けの養老保険ってどんな保険?
養老保険は生命保険のなかでもかなり長期の保険期間となっていて、たとえば会社の代表者にもしものことがあった場合に、死亡保険金を事業の保障としての備えとして備えることができ、その後満期まで何もなければ支払った保険料の総額よりも若干高い満期保険金がその代表者の退職金として備えることができる保険ということとなります。
さらには中途解約をしたとしても早い時期に90%に達するだけの解約返戻金を受け取ることのできる保険です。
- 代表者の万一の死亡保障金として
- 役員・従業員など会社のすべての人が加入できるため退職金や弔慰金の備えができる
- 中途解約が可能なため急な資金調達にも役立てることができる
養老保険の保険料の経理処理の基本的な考え方
法人が加入する定期保険は、令和元年に大きく改正され経理処理の仕方が変わりましたが、養老保険に関しては基本事項は変わっていません。
① | ② | ③ | |
---|---|---|---|
死亡保険金 | 法人 | 被保険者又はその遺族 | 被保険者又はその遺族 |
満期保険金 | 法人 | 被保険者又はその遺族 | 法人 |
経理処理 | 全額資産計上 | 全額損金計上 | 1/2資産・1/2損金計上 |
国税庁の公式ページによると、上記のように受取人によって経理処理が変わります。
②のケースで死亡保険金と満期保険金の受取人が被保険者個人や又はその遺族の場合、支払った保険料に関しては、被保険者個人に支払う給与のため損金計上となり、③のケースの場合の保険料は半額を資産に半額が福利厚生費として損金計上できます。
法人向け養老保険は4つに分類できる
法人向けの養老保険には死亡保障金と満期保険金の受取人によって経理処理の仕方が変わることがわかりましたが、ここでは、以下の4つのプランについて詳しくみていきましょう。
- 事業保障・経営者の退職金準備のためのプラン
- 従業員と役員、その遺族の福利厚生のためのプラン
- 福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)
- 租税回避プラン(逆ハーフタックスプラン)
①事業保障・経営者の退職金準備のためのプラン
法人向けの養老保険が貯蓄性が高いことは先に述べましたが、事業保障や経営者の退職金準備のためのプランとしても活用できます。
ただこうした備えとして準備するのであれば、あくまでも死亡保障金・満期保険金ともに受取人が法人となっていなければならないため全額資産計上となります。
事業保障・経営者の退職金準備のためとして養老保険に加入すると、保険料はすべての金額が資産計上となります。さらに受取時もしも受取額が保険積立金より多い場合は雑収入、少ない場合は雑損失として処理することとなります。
借方 | 貸方 | |
---|---|---|
保険料支払時 | 保険積立金 〇〇円 | 預金 〇〇円 |
死亡保険金受取時 | 預金 〇〇円 | 保険積立金 〇〇円 |
満期保険金受取時 | 預金 〇〇円 | 保険積立金 〇〇円 |
②従業員と役員、その遺族の福利厚生のためのプラン
2つ目のプランとして、被保険者を従業員や役員の個人名とした場合で、たとえば会社の役員や従業員にもしものことがあった場合に、遺族に死亡保険金を生活の保障として役立ててもらい、その後満期まで何もなければ満期保険金も被保険者が受取ることができる保険です。
すなわち会社側が従業員や役員のための保険料を給料の上乗せとして支払うため、全額が損金算入となり福利厚生費のためのプランとして損金計上することができます。
そのため死亡した時も満期になった時も会社としては何も処理を行いません。
借方 | 貸方 | |
---|---|---|
保険料支払時 | 福利厚生費 ○○円 | 預金 ○○円 |
③福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)
3つ目のプランとして、被保険者を従業員や役員の個人名とした場合で、たとえば会社の役員や従業員にもしものことがあった場合に、遺族に死亡保険金を生活の保障として役立ててもらい、その後満期まで何もなければ満期保険金は会社が受け取って、被保険者の退職金などの資金に充てることができる保険となります。
この福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)では、死亡保険金は個人が、満期保険金は法人が受取りますから、保険料の支払時の経理の処理は資産と損金各1/2ずつの金額となります。
ところがもしも満期時までに被保険者が死亡してしまった場合、死亡保険金は直接遺族が受取ることとなります。そうなった場合には会社側には1円も入ってきませんので、雑損失かもしくは死亡退職金などの損金計上をしなければなりません。
その代わり満期保険金を受取る時には半額分が雑収入となるため、退職金として支払うことを予定しておけば税金面でも得になるでしょう。
借方 | 貸方 | |
---|---|---|
保険料支払時 | 保険積立金 〇〇円 福利厚生費 ○○円 | 預金 〇〇円 |
死亡保険金受取時 | 雑損失(死亡退職金) 〇〇円 | 保険積立金 〇〇円 |
満期保険金受取時 | 預金 〇〇円 | 保険積立金 〇〇円 雑収入 ○○円 |
④租税回避プラン(逆ハーフタックスプラン)
4つ目のプランは③の逆ハーフタックスプランということですが、この方法に関しての経理処理についての明示はありませんが、会社の代表者が被保険者の場合で、たとえば会社の代表者にもしものことがあった場合に、死亡保険金を事業の保障としての備えとして、そしてその後満期まで何もなければ満期保険金に関してはその代表者個人の老後の生活資金として備えようというものです。
ただこのようなプランは代表者の利益だけを考えているようなイメージのため、税務署がどこまで損金として認めてくれるかどうかは定かではありませんし、保険商品としての合理性が乏しいともいえるでしょう。
逆ハーフタックスプランをシミュレーション
ここでは先ほどの④のプランでもある、逆ハーフタックスプランについてどのようなものなのかを解説していきます。
先ほどの③のプランの逆バージョンということになり、受取人をさかさまにした④のプランですが、下の表を見ていただくと死亡保険金が法人で満期保険金が個人ということになり、この場合は全額損金計上ができるというのです。
③ | ④ | |
---|---|---|
保険契約者 | 法人 | 法人 |
被保険者 | 役員・従業員 | 役員・従業員 |
死亡保険金受取人 | 役員・従業員 | 法人 |
満期保険金受取人 | 法人 | 役員・従業員 |
④の項目を参考にしてたとえばこのような内容が通ったとして、経理処理を行ってみましょう。この仕訳を見る限り役員としての報酬を20年間受取って、さらに満期保険金も受取ることとなります。
借方 | 貸方 | |
---|---|---|
保険料支払時 | 支払保険料 250,000円 役員報酬 250,000円 | 預金 500,000円 |
死亡保険金受取時 | 預金 10,000,000円 | 雑収入 10,000,000円 |
最初に述べたように、国税庁での養老保険にかかる保険料の取扱いの中にこのプランは含まれていませんでしたから、養老保険として認めてもらえるかどうか、そして否認される可能性の方が大きいですし、そもそも保険商品として成立していないため明記されていないということに繋がっているのでしょう。
養老保険の死亡保険金・満期保険金・解約返戻金受取時の経理処理
法人向けの養老保険には4つのプランを解説して、それぞれに受取時のイメージも合わせて述べてきました。ここでは、その中でも一番現実的でもあり、合理性のあるプランでもある③福利厚生プランで実際にはどうなるのかみていきましょう。
契約時の条件
- 被保険者:役員・従業員全員(15人)
- 死亡保険の受取人:被保険者の遺族
- 満期保険金の受取人:法人
- 20年満期の養老保険
- 1人年間30万円
- 1名の従業員が10年経って急死
借方 | 貸方 | |
---|---|---|
毎年の保険料支払時 | 支払保険料 2,250,000円 保険積立金 2,250,000円 | 預金 4,500,000円 |
死亡保険金受取時 | 雑損失(死亡退職金) 1,500,000円 | 保険積立金 1,500,000円 |
満期保険金受取時 | 預金 90,000,000円 | 保険積立金 43,500,000円 雑収入 46.500,000円 |
解約返戻金受取時 | 預金 62,700,000円 | 保険積立金 33,000,000円 雑収入 29,700,000円 |
払済保険に変更した時の経理処理
ここでは養老保険を払済保険に変更した際の経理処理についてみてみましょう。
たとえば中小企業10人未満の会社で20年満期の養老保険に加入して10年間続けてきましたが、少し経営的に苦しくなってきたので払済保険に変更することになりました。
今までは役員・従業員合わせて7人で年間5,600,000円支払っていましたが、10年目でストップした場合、毎年の保険料の支払が無くなるだけで、経理処理は特に必要ありません。
ですから、資産表には資産として28,000,000円の保険積立金が残っていることになります。
まとめ
養老保険の経理処理とともに損金参入の割合などをわかりやすく解説してきましたが、経理処理の仕方を模索していた方には参考になったのではないでしょうか。
- 養老保険は貯蓄性の高い保険である
- 養老保険の保険料の経理処理は受取人によって変わる
- 法人向け養老保険は受取人などにより4つに分類できる
- 逆ハーフタックスは保険商品と成り立たない
- 養老保険の死亡保険金等を受取る時受取人によって経理処理が変わる
- 払済保険に変更した時の経理処理は不要
福利厚生プランは養老保険として、会社にも従業員にもとても合理的な保険商品と言えるのではないでしょうか。
どちらにせよ、会社としては大切な資産をどのようにしたいのか、使い道やその先のことまで見据えた計画を立ててから保険の加入をおすすめ致します。
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