非常勤役員の税務上の活用方法!非常勤役員の適正報酬や登記の流れを解説

法人税負担を抑えるために、非常勤役員に役員報酬を支払う場合もあります。もちろん役員が多ければそれだけ役員報酬が必要となりますが、いくつかの条件もクリアする必要があります。今回は非常勤役員へ役員報酬を支払う方法と、実践するときの注意点などを紹介します。




▼この記事を読んで欲しい人

  • 少しでも法人税の負担を減らしたい方
  • 自分が経営する会社に家族を雇用することを考えている方
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内容をまとめると

  • 非常勤役員の報酬を損金算入することが可能
  • 非常勤への妥当な役員報酬はおよそ5~15万円
  • 上手に活用すれば所得税や相続税の対策も可能
  • 法人向け保険に非常勤役員が被保険者として加入することでも税金対策ができる
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監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

非常勤役員の報酬の相場は月5万円~15万円


この記事をご覧のあなたは、非常勤役員の報酬における相場について調べておられるかもしれません。


会社経営をしている方のなかには、家族を従業員(役員)として登記し、役員報酬を支払っている方がおられるでしょう。


役員報酬は経費として計上できるので増額すればそれだけ課税金額の減額が可能のようにも思えますが、実は非常勤役員への役員報酬は「5~15万円」程度が相場であることをご存知でしょうか。


そこで今回は

  • 非常勤役員に役員報酬を出すことでなぜ課税金額が減額できるの?
  • 非常勤役員として報酬が否認されないための判断基準とは?
  • 非常勤役員の報酬はいくらぐらいが妥当?
  • 非常勤役員への報酬支払時の注意点とは?
  • 親族の非常勤役員に保険をかけて税金対策をすることは可能?
以上の点を取り上げていきます。

この記事をご覧いただければ、非常勤役員に出す報酬が経費として認められるボーダーラインについて具体的に理解できるでしょう。

ぜひ最後までご覧ください。

非常勤役員を利用した3つの税金対策


まずは、法人が常勤ではなくあえて非常勤役員を雇うことで税金対策を行うしくみについて、

  1. 報酬を分散させて所得税を減らす
  2. 財産を移して相続税に備える
  3. 役員退職金を損金計上する

これらの方法を説明していきます。

①報酬を分散して所得税を減額

非常勤役員を複数雇用すれば、一人に多額ではなく複数人に一定の給与を支払うことになり、報酬が分散されるので所得税も低くなります。


なぜなら役員が得る報酬、いわゆる給与にかかる税金は「累進課税」であるため、給与が多ければ多いほど所得税は高くなるからです。


わざわざ分散させなくても、だれかひとりの役員報酬を高くすることでも課税金額が減額できると思われるかもしれません。


しかし、基本的に従業員やアルバイトに労働に見合わない給与を与えていると、基本的にその分は報酬として認められません。


過大報酬として否認されれば経費として損金算入できないので、そのリスクを避ける意味でも非常勤を複数雇用して報酬を分散させるのは良い方法です。

②役員報酬として財産を移して相続税に備える

法定相続人となる役員を雇用している場合、役員報酬という名目で財産を相続人へ移行することで、相続税に備えることができます。


これは法人ならではのメリットでもありますが、個人事業主とは異なり法人の財産は相続人へ移しても相続扱いにはならないので、かかる税金は「所得税」と「住民税」のみとなります。


なぜならそもそも「法人」は個人のように「死亡」の概念がないからです。


ですから生前贈与として役員報酬を相続人へ支払うなら、相続税対策となります。

③役員退職金で損金計上して法人税を抑える

役員へ支払われる退職金は損金計上できるほか、所得税に関しては「退職所得控除」の対象となるため、法人と役員両方にとってメリットがあります。


まず大前提として、たとえ非常勤であっても「退職金」として報酬を支払うことは可能です。


退職金扱いであれば支払った法人側は経費として損金算入できるので、利益が減り結果的に課税金額を減額することが可能になります。


とりわけ利益が多くなる年に従業員の退職金支払いを合わせるのはこのためであり、法人保険などを用いた税金対策でもこのしくみが活用されます。


また、役員として退職金を受け取る側も「退職所得控除」の対象となり、

勤続年数控除額
20年以下40万円✕勤続年数
(最低でも80万円)
20年を超える800万円+70万円✕(勤続年数ー20年)

このような基準に基づいて収入に所得控除がかかるので、見かけ上の所得額が減り所得税を抑えることができます。

非常勤役員への報酬が否認されないための判断基準


さきほど「労働に見合わない給与を与える」と経費計上が否認されると記載しましたが、非常勤役員への報酬が経費として認められるためには、一定の基準をクリアする必要があります。


次からはその判断基準について紹介していきます。

形式的な基準

役員報酬は会社法第361条で定められているとおり「株主総会」で決めるのが基本であり、代表取締役が勝手に決めるようなことはできないため、「株主総会で決定した報酬額であるか」が一つの形式的基準となります。


もし報酬を自由に代表取締役が決められてしまうなら、「ある役員は頑張っているから金額を増やそう」とか「ある役員は個人的に気に入らないから報酬を減らそう」というようないい加減な基準がまかり通ってしまうので重要です。


ただし、株主総会で決められた報酬の上限額に基づいて代表取締役が役員の報酬額を決めることは可能です。


株主総会では基本的に

  • 役員に支払われる報酬の金額
  • 報酬がどのように算出されるか
以上の点が決定されることになりますが、株主総会での決議に妥当性が見出されることが重要であるため、株主総会で用いられた資料や決議録は重要資料になります。

実質的な基準

報酬の決定に関して「非常勤」だからこそ重要なポイントがひとつありますが、端的にいえば「非常勤への報酬として妥当な金額か?」という点であり、この基準をクリアしていないと経費として認められません。


例外もありますが、金額としては1カ月あたりおよそ「5~15万円」、平均的には「8万円」が妥当とされています。


一般的に「非常勤」は、その名のとおり勤務携帯が「集5日・8時間」のようなフルタイム勤務ではなく、「集2、3日・3~4時間」のように勤務日数や勤務時間が常勤よりも少なくなります。


そのような勤務形態にもかかわらず、たとえば一人あたり1カ月で100万円もの役員報酬を受け取っているとしたら、過大な役員報酬だと判断され、経費への計上が否認される可能性があります。


役員の業務内容や出勤状況、そして他の役員への報酬額なども含め総合的に判断されるため、株主総会と同様に金額の妥当性が証明できる書類やデータを用意します。

非常勤役員に報酬を支払って税金対策をする際の注意点


非常勤役員への報酬が税金対策になるということ自体は多くの方がすでに理解していることですが、金額の決め方以外にもいくつかの注意点があります。


次からはその注意点に関して取り上げていきます。

①役員を新しく選任するためには登記が必要!役員の変更方法

法人が役員を新たに選任する場合、たとえ非常勤であっても登記が必要です。


役員はまったく新しい人を選任することもあれば、いままで別の役職に就いていた人が役員に選任されることもありますが、

  • 株主総会で役員を選任する
  • 選任された人が受諾する
  • 登記申請書や議事録、承諾書などを用意し本人が押印する
  • 登記申請を行う

このような流れで役員が決められ、新任か変更かにかかわらず役員を選任したら必ず法務局へ登記を行います。


役員を辞める場合、単に役員の任期を満了した場合だけでなく、自ら辞任したり会社から解任されたような場合も同様に登記が必要です。


登記には「登記申請書」が必要となり、法務局の公式ページ「役員変更」からさまざまなケースに対応した申請書をダウンロード可能です。


ちなみに、登記は決議されてから2週間以内に行わなければならず、登記が遅れたり漏れがあると会社法第976条に基づいて罰金が科される場合があります。

②非常勤役員でも社長の被扶養者になれる

配偶者などの親族が非常勤役員として勤務しているならば、被扶養者にすることができます。


まず被扶養者に認定されるためには、

  • 年収が130万円未満である(60歳以上は180万円未満)
  • 被保険者の収入の半分未満である(別居している場合は例外)
以上の条件をクリアする必要がありますが、クリアすれば扶養者として社会保険料の支払いが不要となります。

年収の基準をクリアするためには、基本的に役員報酬(+その他事業費など)が年額130万円未満でなければなりません。

また、短時間労働者としての基準である
  • 1カ月あたりの勤務日数が、常勤労働者の4分の3
  • 1週間あたりの勤務時間が、常勤労働者の4分の3
この基準も本来はクリアしている必要がありますが、正当な理由が認められる場合にはその限りではありません。

③非常勤役員の役員報酬も源泉徴収の対象

非常勤の役員報酬はいわゆる「給与」と同義であるため、所得税や住民税がかかり、源泉徴収の対象となります。


ですから非常勤の働き方によって、

  • 甲欄(主たる給与):年末調整
  • 乙欄(従たる給与):確定申告
このような税金の申告を行う必要があります。

役員が複数の会社から給料を貰っており、役員報酬が「従たる給与」に該当する場合は会社で年末調整ができないため、確定申告が必要です。

④勤務実態のない役員は報酬の損金算入を否認される可能性がある

役員報酬を受ける役員は、形式上だけでなくきちんと「勤務実態がある」ことが求められます。


複数の非常勤役員に報酬を支払うことで、報酬が分散され税負担も軽くなるというのはすでに取り上げたとおりです。


しかし、たとえば税負担を軽くするために家族の名前で登記だけを行い、ほとんどその家族が仕事をしていない、いわば「経営に関わっていない」ような状態では、当然ながら報酬の損金算入が否認されます。


そのように税金対策だけを優先に考えてしまうと、架空の役員がいるとして脱税とみなされてもおかしくない状況になってしまうので、注意しましょう。

親族の非常勤役員任命と併せて生命保険も活用!


非常勤役員が配偶者などであれば役員を被保険者にして法人向け保険に加入することでさらに課税金額を抑えることが可能になります。


法人保険へ加入するメリットは将来へ「課税の繰延」ができることですが、

このような保険料が高額になる保険に加入して、その保険料を損金算入することで課税金額を抑えることが可能です。

どちらも解約返戻金が高く設定されており、返戻率がもっとも高くなるタイミングで解約を行うことで、支払った保険料の100%が戻ってきます。

ただし受け取る解約返戻金には税金がかかりますので、それこそ役員の退職金支払いのタイミングにぶつけるなどの、出口対策が必須です。

また当然ながら被保険者となる役員には、さきほど挙げた「勤務実態がある」など、報酬を受ける役員としての条件をクリアしている必要があります。

法人保険についてメリット・デメリットを詳しく知りたい方はこちら

まとめ


今回は非常勤役員の税務上の活用方法について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。


この記事のポイントは、

  • 複数の非常勤役員への役員報酬を損金算入し、課税金額を抑えることが可能
  • 報酬の分散により所得税が軽減でき、相続税に備えることも可能
  • 非常勤役員への役員報酬はおよそ「5~15万円」が妥当
  • 非常勤役員への役員報酬が多すぎたり、役員の勤務実態がない場合は否認される
  • 非常勤役員が配偶者など親族である場合、法人向け保険に加入し保険料を損金算入することで課税金額をさらに抑えることができる

以上の点です。


会社経営者にとって「法人税」は誰もが頭を悩ませる問題ですが、今回挙げたような方法があることを知っておくだけで、大きく選択肢が広がります。


どれだけ利益が出ても税金に持っていかれる、と感じている方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

検討時にはマネーキャリアにて無料で相談が可能なため、この機会に利用してみてはいかがでしょうか。


ほけんROOMではこの記事以外にも役に立つ記事を多数掲載していますので、ぜひそちらもご覧ください。

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