オペレーティングリースとは?会計処理の仕組みを解説!

オペレーティングリースとは、ファイナンスリース以外のリース取引のことで、企業の税金対策としても利用されています。この記事では、経営者として知っておきたいオペレーティングリースに関する基礎知識や税効果などを詳しくみていきます。



▼この記事を読んで欲しい人
  • オペレーティングリースについて知りたい人
  • オペレーティングリースの会計処理方法を知りたい人
  • オペレーティングリースを活用した節税の仕組みを知りたい人
マネーキャリアなら事業リスク・資金繰りなども考慮して法人の節税にベストな方法を無料で紹介してくれます!

内容をまとめると

  • リースとレンタルの違いは借りられる物件や借りる期間
  • オペレーティングリースの取引対象になるものは、長期間使用するもの・残価設定できるものである
  • オペレーティングリースの借手のメリットは、途中解約が可能・税務効果がある・リース料が安くなること
  • オペレーティングリースの貸手のメリットはキャピタルゲインが得られる・減価償却できること
  • デメリットはリース物件売却時に損をする可能性があること
  • 失敗した事例もある
  • オペレーティングリースで中途解約して違約金が発生した場合は、「雑損失」「雑収入」として、別途計上する

経営者なら知っておくべきオペレーティングリースの基礎知識を解説



この記事では、オペレーティングリースに着目し


  • リースとレンタルの違いとは
  • オペレーティングリースとは
  • オペレーティングリースの借手・貸手のメリット
  • オペレーティングリース取引の会計処理方法は?
  • オペレーティングリースの節税失敗事例
  • オペレーティングリースを中途解約したときの仕訳方法


といった内容でご説明していきます。


「オペレーティングリースについて興味はあるけど詳しくはわからない」といった人は、ぜひ最後までご覧ください。

【前提知識】リース取引とは?

リースはファイナンスリースオペレーティングリースに、大きく2つに区分されます。


▼ファイナンスリース

物件の購入費はすべてリース料でまかなわれ、途中解約はできません。


また、物件の修繕などの費用などは借手の負担となります。


▼オペレーティングリース

物件の購入は貸手がおこない、借手はリース期間分のみリース料を支払います。途中解約も可能です。物件の修繕などの費用は、貸手が負担します。

リースの仕組み

リースとは、借手が注文したものを貸手が購入し、借手に貸し出すことです。


下記の金額がリース料として徴収されます。

物件の購入費用×リース料率

リースの特徴としては、


  • 借手が物件を選べる
  • メンテナンス費用が借手の負担となる
  • リースはレンタルにくらべ割安になる


といったことがあげられます。


借手が好きな物件を選ぶことができ、最新のものを借りることが可能となります。


リース料として月々支払っていくので、高額の設備などを用意するときに、一括で購入するのにくらべ、費用準備の負担がありません。


物件の修理などのメンテナンスの費用は、借手の負担となりますが、リースの期間は長めに設定されるため、レンタルとくらべると割安となります。


ただし、リース料には利子が含まれるので、購入するよりは割高となります。

レンタルとの違いは?

レンタルもリースと同様に「借りる」ことには違いないのですが、貸し借りの期間や、物件のメンテナンスの費用負担など、さまざまな違いがあります。


違いを表にまとめました。


レンタルリース
物件貸手の所有しているもの(中古)借手の注文したもの(新品)
期間短期間中長期間
中途解約不可
メンテナンス費用貸手が負担借手が負担
費用割高割安


レンタルではなくリースを利用した方がよいのは、高額なものを長期間借りたいときです。


例えば会社を興したときなどは、設備や什器などを準備するにあたってリースを利用すれば、初期費用をおさえることができます。


リース会社は法人向けであることが多くなっています。

オペレーティングリースとは?

オペレーティングリースとは、貸手が借手の希望する物件を購入し、借手に貸し出すことです。


ここでは、


  • オペレーティングリース取引の対象となるのはどのようなものか
  • オペレーティングリースの対象となる物件の条件とは


といった内容でご説明していきます。

オペレーティングリースの取引対象になるもの

オペレーティングリースの対象となるものは幅広く


  • IT機器関連
  • 建設機械
  • 自動車
  • 建物
  • 工作機械
  • 医療機器
  • 航空機
  • コンテナ
  • 船舶


といったように様々です。


ただし、対象となる物件は、リース期間後に中古として売却することができるもの、残価設定ができるもの、ということになります。

オペレーティングリースの対象物件の条件

オペレーティングリースの対象となる物件の条件とは、リース期間後に中古としてある程度価値が残るもの、残価設定できるものとなっています。


オペレーティングリースではリース期間後の売却益を見越して、リース料の総額が物件の価格よりも安く設定されています。


貸手には、リース後にリース料からは徴収できなかった物件の購入費用の残りを、返却された物件を売却することで回収する必要があるのです。

このオペレーティングリースの仕組みを活用する方法が以下の記事で解説していますので是非ご覧ください。

オペレーティングリースの借り手のメリット

オペレーティングリースリースには、ファイナンスリースよりも費用負担が軽くなる、オフバランス効果がある、といったメリットがあります。


ここでは、オペレーティングリースの借手について


  • ファイナンスリースにくらべ、柔軟な契約が可能
  • オフバランス効果がある
  • 初期費用が少なくて済む
  • 借り換えがしやすく、最新の物件を借りられる
  • 会計処理が楽になる


といった内容でご説明していきます。

①柔軟な契約ができる |ファナインスリースとの違い

オペレーティングリースファイナンスリースと違う点は


  • リース料が安くなること
  • 途中解約ができること
  • リース中の物件のメンテナンスの費用は、貸手が負担すること


などです。


ファイナンスリースでは、リース期間中に借手が物件の購入費の全額をリース料でまかないます。(フルペイアウト)


また、途中解約はできません。


一方、オペレーティングリースでは、借りたい期間分だけのリース料を支払うので、リース料は安くなります。(ノンフルペイアウト)


借手が希望する期間借りた後は貸手に物件を返却し、貸手が物件を売却することで利益を得るシステムとなっているからです。


オペレーティングリースは、ファイナンスリースよりも、柔軟に契約することが可能といえます。

②リース資産は資産計上しないからオフバランス効果が得られる

オペレーティングリースは、オフバランス効果が得られるというメリットがあります。


オペレーティングリースで取引した物件については、資産計上する必要がないからです。


リース物件を資産として賃貸借表(バランスシート)に固定資産として計上することなく、そこからでた収益を当期純利益に計上できます。これをオフバランス効果といいます。


オフバランス効果によって、会社の収益性をみる指標であるROA(総資産利益率)を改善することができ、会社としての評価を高めることができます。

③初期費用が少なく済む(ノンフルペイメント) 投資効率UP!

オペレーティングリースファイナンスリースと比較して、リース費用が少なくて済むことがメリットです。


ファイナンスリースではフルペイメントが原則となっています。


借手が注文して貸手が購入した物件の費用は、借手がリース料として全額貸手に支払います。


実質的には、物件を分割のローンで購入することとほぼ同じといえます。


オペレーティングリースの取引で用意した物件は、ノンフルペイメントとなります。


物件は貸手が購入し、リース料については借りた期間についてのみかかってきます。


ファイナンスリースのように物件の価格の全額についてリース料で支払わなければならないわけではないので、費用負担が少なくて済むのです。

④最新の物件が利用できるなど、借り換えが容易

オペレーティングリースでは、ファイナンスリースと違い、必要な物件を借りたい期間だけ借りることができます。


借りた物件は長期間借りていると古くなり、資産価値は年々落ちていきます。


オペレーティングリースなら、新しい製品がでたらもともと借りていた物件についての契約を解約して貸手に返却し、新しい物件をリースし直すことも可能です。

⑤税務上の会計処理が楽になる

オペレーティングリースには、税務上の会計処理が簡単になるというメリットがあります。


オペレーティングリースの会計処理


  • 借手は賃貸借処理をするのみ


となり、会計処理がシンプルです。


「お金を払って、ものを借りている」という処理だけですので、貸手から決められた月々の支出を仕訳処理するだけとなります。


オペレーティングリースは賃貸借表(バランスシート)に資産として計上する必要が無い為、経理上とても楽な処理で済むことになります。

オペレーティングリースの貸し手のメリット・デメリット

オペレーティングリースについて、貸手側からの視点で


  • リース期間終了後はキャピタルゲインを得ることができる
  • 節税効果がある


というメリットと


  • リース期間終了後、物件を売却した金額が残価より低かった場合は損をする


というデメリットについてご説明していきます。

メリット①リース期間終了後に売却してキャピタルゲインを得れる

オペレーティングリースでは、


  • リース期間終了後に物件を売却することで、利益(キャピタルゲイン)を得ることができる


というメリットがあります。


オペレーティングリースは、物件に残価設定をし、リース後の売却益を見込んでリース料を設定するためリース料が安くなるという仕組みです。


このような理由から、リースの対象物件の条件として、リース期間終了後でも売却できる価値の残るもの、ということになっています。

メリット②減価償却で会計処理するから利益を繰り延べられる

オペレーティングリースでは、リース物件の所有権は貸手にあります。


また、取引対象となる物件は、IT機器や自動車、工場設備などの固定資産で減価償却の対象となる減価償却資産です。


  • リース物件の所有者として賃貸借対照表に計上
  • 減価償却を行って減価償却費を経費として計上
  • 借手から受け取るリース料を収益として計上


減価償却費を経費として計上すれば、利益をおさえることができ、法人税を節約できます。


貸手には、リース物件を所有し減価償却することで利益を繰り延べることができ、税効果が見込まれるというメリットがあります。

デメリット①満了時の売却額が残価を下回れば損をするリスクがある

オペレーティングリースで貸手のデメリットは、リース期間終了後の物件の売却費が、設定していた残価を下回ることです。


オペレーティングリースでは、


  • 物件のリース期間終了後に残る価値を考慮してリース料を設定


します。


ファイナンスリースのように、物件の購入費用が借手からのリース料の収入でまかなわれるわけではありません。


リース料の総額を物件の価格よりも安く設定しているため、もし物件が設定していた残価以上で売却することができなければ、物件の購入費用が回収できないことになり損をする、というリスクがあります。

オペレーティングリース取引の会計処理方法

オペレーティングリース取引は、一般的な賃貸借契約とほとんど変わらないため、会計上の処理もあまり複雑ではなくシンプルなものとなります。


リースには他にもファイナンスリースなどもありますが、会計処理についての方法はかなり違うものとなります。


ここでは、オペレーティングリース取引の会計処理方法について、


  • 貸手側
  • 借手側


とに分けてみていきます。


リース料の支払い時に発生する消費税の処理についてもご説明します。

貸手側

オペレーティングリース取引の貸手側の会計処理をみていきます。 


オペレーティングリースは一般の物の貸し借りとほぼ同じ扱いで、リース物件を引き渡した時点では会計上の処理は発生せず、リース料の支払いが行われた時点で会計処理が発生します。


消費税についてはリース料の支払い時に発生し、 消費税の税率は税務上のリース料の支払いがあった時点での税率を使用して算出することとなります。 


毎月のリース料が10万円の物件を貸した場合の 貸手側の仕訳処理は、以下となります。


▼税抜経理方式の場合(消費税別を別にして仕訳る)


借方貸方 
現金・普通預金・当座預金など
11万円
受け取ったリース料

10万円

消費税

1万円


▼税込経理方式の場合(消費税を含めた合算で仕訳る)


借方貸方
現金・普通預金・当座預金など
11万円
受け取ったリース料
11万円


借手側

オペレーティングリース取引の借手側の会計処理をみていきます。 


オペレーティングリース取引の会計処理では、リース会社が決めたリース料を、毎月仕訳処理します。 


消費税はリース料の支払い時に発生し、 消費税の税率は税務上のリース料の支払いがあった時点での税率を使用して算出することとなります。 


毎月のリース料が10万円の物件を借りた場合の 借手側の仕訳処理は、以下となります。


借方貸方
支払ったリース料
10万円
現金・普通預金・当座預金など
11万円
1万円


端数調整が必要な月以外は、リース期間中は同じ処理となります。 また、期末に未払い分などがあるときは、繰越処理、見越し処理が必要です。  

【参考①】オペレーティングリースの失敗事例



オペレーティングリースでは、税務効果やキャピタルゲインを得られることを期待されますが、失敗することもあります。


オペレーティングリースの失敗の理由には、リース期間後の物件の売却が上手くいかず利益を得られなかったり、リース料を回収することができなかったりすることがあげられます。


失敗事例として航空機のオペレーティングリースの事例をご紹介します。


コロナの蔓延が長引き、航空会社も苦境に立たされているのをご存じでしょう。


航空機やコンテナ、船舶などの高額なリース物件を出資者を募って購入し、貸し出すことで、出資者は大きな償却資産を取得したのと同じ節税効果と売却後のキャピタルゲインを得ることができるという仕組みがあります。


これを「日本型オペレーティングリース」といいます。


この「日本型オペレーティングリース」の案件で、ある航空会社が経営破綻し、リース料が得られなくなるということがありました。


通常ですと、物件が返却され売却する、または新たな借手を探すという措置をとるでしょう。


しかし、コロナ禍の中で、これらの措置をとることができず、航空会社の再建も困難となりました。


航空機を売却、再リースできない期間は、航空機の維持費の負担などは出資者にかかってくることとなります。


今後航空機が売却出来たり、航空会社が再建できたりしたとしても、元本割れの可能性や追加出資などのリスクが残ることとなります。

オペレーティングリースを中途解約した場合の仕訳方法

オペレーティングリースは、ファイナンスリースとは異なり、途中で解約することができます。


ただし、たいていの場合は一定の間は解約できなかったり、違約金が発生したりします。


自由に借手が解約できるとなると、貸手の利益が発生せず仕組みとして成り立たなくなります。


貸手の利益を守るためにも、ある程度制限はかけられることになっています。


ここでは、オペレーティングリースで中途解約した場合について


  • 貸手の仕訳方法
  • 借手の仕訳方法


についてご説明します。

貸手の仕訳方法

オペレーティングリースを途中で解約する場合、基本的にはもともとリース期間中に支払われるはずだったリース料を一括で受け取ります。


一括で受け取ったリース料については「売上」「雑収入」などの勘定科目で収益として計上します。


▼未払いリース料が10万円の場合(税込経理方式・違約金無)


借方貸方
現金・普通預金・当座預金など
11万円
雑収入
11万円


▼未払いリース料が10万円の場合(税抜経理方式・違約金無)


借方貸方
現金・普通預金・当座預金など
11万円
雑収入
10万円

消費税

1万円


また、契約によっては、違約金を受け取る場合があります。


違約金は「雑収入」などの勘定科目で仕訳します。


▼未払いリース料が10万円の場合(税込経理方式・違約金5万円の場合)


借方貸方
現金・普通預金・当座預金など
16万円
雑収入
16万円


▼未払いリース料が10万円の場合(税抜経理方式・違約金5万円の場合)  


借方貸方
現金・普通預金・当座預金など
16万円
雑収入
15万円

消費税
1万円

借手の仕訳方法

オペレーティングリースを途中で解約する場合、基本的にはもともとリース期間中に支払うはずだったリース料を一括で支払います。


一括で支払う解約金は「リース解約損」として計上します。


「リース解約損」には消費税がかかります。


▼未払いリース料が10万円の場合(違約金無)

借方貸方
リース解約損
10万円
現金・普通預金・当座預金など

11万円
消費税
1万円


契約によっては、違約金がかかる場合があります。


違約金は「雑損失」や「損害賠償金」などの勘定科目で仕訳します。


▼未払いリース料が10万円の場合(違約金5万円の場合)


借方貸方
リース解約損

10万円
現金・普通預金・当座預金など

16万円
消費税

1万円

雑損失
 5万円
 


まとめ

この記事では、オペレーティングリースに関連することとして

  • リースとレンタルの違いは借りられる物件や借りる期間
  • オペレーティングリースの取引対象になるものは、長期間使用するもの・残価設定できるものである
  • オペレーティングリースの借手のメリットは、途中解約が可能・税務効果がある・リース料が安くなること
  • オペレーティングリースの貸手のメリットはキャピタルゲインが得られる・減価償却できること
  • デメリットはリース物件売却時に損をする可能性があること
  • 節税に失敗した事例もある
  • オペレーティングリースで中途解約して違約金が発生した場合は、「雑損失」「雑収入」として、別途計上する


といった内容でご説明してきました。


法人の財務戦略の悩みはマネーキャリアへの相談で解決できます。マネーキャリアでは法人の方も無料で何度でも相談が可能なため、この機会に利用してみてはいかがでしょうか。


ほけんROOMでは、他にもさまざまな法人保険の記事を掲載しております。ぜひご覧ください。

ランキング