更新日:2023/09/02
畜産農家(養鶏・養豚・肉牛・酪農)に必要な保険・共済を徹底解説!
家畜の盗難、自然災害により施設が破壊されて経営不振に陥るなど畜産農家を取り巻くリスクはたくさん存在します。保険や共済に加入していなければそのような事態に陥ったときに対処できない可能性があります。この記事を読んで保険や共済に加入することを検討してみてください。
内容をまとめると
- 家畜の疾病、自然災害、盗難など畜産農家にも様々なリスクが存在する
- 実際に飼養している豚や鶏などが被害に遭い、経営に大きな影響を与えた事例もある
- そのようなリスクに備えて火災保険など経営状況にあった保険に加入するべき
- 保険以外にも組合会員向けの家畜共済がある
- 法人保険や事業のリスク対策に関する相談は「マネーキャリア」がおすすめ
目次を使って気になるところから読みましょう!
畜産農家を取り巻くリスク
自身の手で大切に育ててきた家畜が予期せぬトラブルに巻き込またり、第三者に損害を与えてしまう場合があります。それらのリスクに備えるためには保険に加入しておく必要があります。
各リスクに備えた保険を紹介する前に、ここではまず畜産農家を取り巻くリスクを4つ紹介します。
- 家畜の疾病(疫病やケガ)
- 自然災害(火災・風災・落雷など)
- 賠償責任(管理責任など)
- 盗難(子豚や子牛など)
①家畜の疾病(疫病やケガなど)
まずは家畜の疾病リスクについてです。家畜が一頭伝染病にかかってしまうと、飼養している家畜をすべて殺処分しなくてはなりません。
これは自身の資産を全て捨ててしまうことに等しいことです。そうならないようにまず疾病、主に伝染病を持ち込まないようにすることが大切です。
感染経路は以下2点があります。
- 接触感染
- 非接触感染(蚊やダニなどの吸血昆虫を介して病原体が伝播)
②自然災害(火災・風災・落雷など)
続いて火災や落雷、台風などによる自然災害のリスクです。日本は他の国に比べて台風や、地震などの災害が多い国です。そのため災害の対策には何倍も気を使わないといけません。
人命が優先ですが、家畜も命ある生き物なので、いつ起こるのか分からない災害に対しても被害を最小限に抑える対策をすることは必須です。
例えば養豚場で火災が発生した場合に、鎮火作業が遅れると人命は救助できても飼育していた養豚が死亡してしまうケースが多くあります。
自然災害は起こった後も大変です。災害後の施設の立て直しなど経営を元の状態に戻すまでに、多額の時間とお金を投資しないといけません。
③賠償責任(管理責任など)
3つ目は、賠償責任に関するリスクです。例えば、養豚場で飼養している豚などが脱走して交通事故にあったなどのリスクが考えられます。
この場合の責任は誰が負うことになるのでしょうか?それは飼養していた経営者の管理不足のため責任を負うことになります。
他にも生産された食用の肉や乳製品で第三者に損害を与えた場合にも損害賠償責任を負わなければなりません。
このように自身の手の届かない範囲で起きた損害に対しても責任を負う場合があります。
④盗難(子豚や子牛など)
最後は飼養している子豚や鶏などが盗難に遭うリスクです。センサーや監視カメラなどを設置していたとしても盗難のリスクはあります。
監視カメラもあるし自分の飼養施設で起こるはずがないと考えている方もいるかと思いますが、監視カメラから見えない場所から侵入し子豚や子牛などが盗難される可能性はあります。
そして、この場合は盗難のリスクだけではありません。侵入者が侵入の際に伝染病を飼養施設に持ち込む危険性もあります。
そうなると家畜が伝染病を発症し殺処分しなくてはいけないという最悪の事態を招くことにもなりかねません。
畜産農家の具体的な損害例
ここでは先ほどまで説明していた、畜産農家(養鶏・養豚・肉牛・酪農)が取り巻くリスクの実際の事例をご紹介します。
ご自身の経営している養豚場や養鶏場などの畜産施設でもこのようなリスクがないか、照らし合わせながらご覧ください。
①家畜(養鶏・養豚・肉牛・酪農)が伝染病に感染した事例
いくつか伝染病はありますが、ここでは鳥インフルエンザの事例を紹介します。
そもそも鳥インフルエンザとは何かを説明します。鳥インフルエンザとは、A型インフルエンザウイルスによる鳥類の感染症の事です。
養鶏が鳥インフルエンザに感染すると以下のような症状がみられます。
- 元気消失
- 呼吸器症状
- 下痢
- 肉冠や肉垂の出血や壊死
- 産卵の低下
- 死亡など
②東日本大震災の災害事例
続いては自然災害での事例をご紹介します。2011年3月11日に発生した東日本大震災の事例を紹介します。
こちらは説明するまでもないと思いますが、東北地方で発生した大規模な自然災害です。こちらは震災の脅威と共に津波の脅威も私たちに伝えました。
そんな自然災害は人命を奪っただけでなく、畜産農家にも絶大な被害を及ぼしました。
飼育していた肉牛や乳牛などが津波から逃げれず、津波に飲み込まれてしまい死亡してしまう被害が多数発生しました。
こちらの被害は3次被害の原子力発電の爆発事故により特定の区域は立ち入ることができなくなっていたため、物理的に仕事を失った方もいるため特殊な事例です。
しかし自然災害によって家畜が失われ、仕事も失う可能性もあるので無視できないリスクであることは間違いありません。
③畜産農家の損害賠償事例
④子豚などの盗難事例
最後の事例は家畜の盗難事例です。
群馬県内で家畜の盗難が昨年12月から相次いでいます。県内の養豚場3カ所で合計22頭の子豚が盗難されていたようです。
いずれの養豚場でもセンサーライトを設置していたのですが、センサーの届かない範囲の子豚が盗難されていました。
子豚の盗難だけでなく、豚熱を持ち込まれる可能性もあるので対策が必要とのことです。
このように盗難によって伝染病が持ち込まれ二次被害を被ることにもなりかねないのが、盗難のリスクです。
畜産農家におすすめの法人保険
ここからは、これまで紹介してきたリスクに備えるために畜産農家におすすめの法人保険をいくつか紹介します。
畜産農家が加入できる保険は以下の4点です。
- 法人向けの火災保険
- 農業者賠償責任保険
- 再生産費用保障保険
- 畜産動産総合保険
①法人向けの火災保険
まずは、法人向けの火災保険から解説してきます。
法人向けの火災保険は補償対象を自身で決めることが可能な保険です。火災保険の対象は建物と家財に分類することができます。
具体的な説明として養豚場を例にします。養豚場の養豚は火災保険では家財の対象となり補償対象です。
当然ですが、豚舎も火災保険の対象となります。被保険者がどれを補償対象に保険を契約しているかによりますが、火災保険で豚舎、養豚共に補償することは出来ます。
養豚を補償対象として保険に加入する場合は、養豚の年齢により保険金額が異なったり、加入の条件がある場合があります。
また火災保険という名前ですが、その他の自然災害で損害が出た場合でも補償対象となることがあります。例えば、台風や落雷、盗難などがあります。
法人向けの火災保険については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はご覧ください。
②農業者賠償責任保険
続いては、農業者賠償責任保険について解説していきます。
損害賠償は他人への損害だけでなく、自身が仕事をしているときにケガをしたなど自身への損害に対しても保険金が支払われることがあります。
畜産農家の損害賠償として保険金が下りるリスクは以下の3点です。
- 施設リスク
- 生産物リスク
- 保管物リスク
これまで説明した、損害事例がこの損害賠償責任保険で補償できることが分かると思います。また、この他に特約として生産物品質特約、民泊補償特約などがあります。
生産物品特約は、生産物賠償事故が発生した際に再発を防止するための回収費用を補償する特約です。民泊補償特約は体験農業で提供した飲食物が原因で食中毒になったなどの賠償事故を補償する特約です。
③再生産費用保障保険
続いて、再生産費用保障保険について解説していきます。
再生産費用保障保険とは、家畜経営で伝染病や自然災害の発生により、飼養家畜が死亡等した場合における代替家畜導入以降の、飼育・肥育生産コストの一部を保険にて補償することで畜産業者の経営継続を支援することを目的としている保険です。
こちらの保険では家畜共済では補うことの出来ない範囲を補償してくれる保険になっています。家畜共済では家畜の導入から家畜の疾病による家畜の損失までを補償しくれます。
それに比べて再生産費用保障保険は、家畜の飼養から出荷までを補償してくれます。つまり家畜共済に加入しながら、再生産費用補償保険に加入していれば、疾病や自然災害が起こったとしても負担は大幅に軽減されます。
④畜産動産保険
最後は畜産動産保険です。
畜産動産保険とは、養鶏、養豚を対象にした保険です。そのため肉牛や酪農では加入することができません。
以下が保険金が支払われる対象になります。
- 火災、落雷、台風などの自然災害により養豚場などの施設が損壊した場合
- 衛生設備の事故による水漏れ
- 養豚場などの施設内での盗難
- 爆発事故
- 豚舎の倒壊による養豚、養鶏の死亡事故
組合が提供してる家畜共済
ここからは、畜産農家が加入できる組合会員限定の家畜共済について解説していきます。
まず補償内容ですが以下の2点です。
- 死亡廃用共済
- 疾病傷害共済
死亡廃用共済とは、家畜が死亡・廃用となった際に共済金が支払われる制度です。また疾病傷害共済は、家畜が疾病や障害で獣医からの治療を受けた場合に診療費が共催として支払われるというものです。
死亡廃用共済・疾病傷害共済の対象となるは、肉牛、乳牛、養豚、馬が対象になります。養鶏は補償対象外です。
補償期間は、共済掛金の支払日の翌日から1年間になります。ただし、群単位肉豚は、群ごとに出生後第20日(又は、離乳した)の日から出生後第8月の月の末日までになります。
次は共済金額について解説します。
死亡廃用共済の場合、以下の計算式で共済金額が出されます。
共済金額=共済価額×付保割合
共済価額は1年間に飼養する家畜の評価額の合計額のことです。死亡廃用共済は、共済価額の2~8割の範囲で、補償割合(付保割合)を農家が選択します。
病傷共済金支払限度額=期首の引受価額×病傷共済金支払限度率×短期係数
反対に疾病傷害共済は、死亡廃用共済とは異なり、病傷共済金支払限度額を超えない範囲で農家が申し込んだ金額となります。
まとめ:畜産農家を取り巻くリスクと保険・共済での対策について
畜産農家を取り巻くリスクや加入すべき保険を紹介しましたが、いかがでしたか?以下が今回の記事の簡単なまとめになります。
- 自然災害、家畜の疾病、家畜の盗難など畜産農家を取り巻くリスクは多く存在する
- 畜産農家の負担を軽減する保険がある
- 火災保険や農業者賠償責任保険、再生産費用保障保険などがおすすめ
- 保険以外にも組合が提供している共済がある