退職金を現物支給するメリットを解説!節税のために知るべき知識

内容をまとめると

  • 退職金の現物支給は、主に会社役員への退職金支給時に用いられる
  • 生命保険、不動産、自動車の名義変更による譲渡が用いられる
  • 会社の流動資産比率を向上できる
  • 現物の評価額、税金関連の事前確認が必須 手続きに必要な書類、費用まで含めて確認しておく
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監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

退職金を現物支給するメリットとは?


退職金
と聞くと、まとまったお金がもらえるイメージが強いんじゃないでしょうか。


一般の従業員として退職金を受け取る場合は、まとまったお金で払われるのが原則です。


一方で、役員などの会社経営者には現金以外の支給も認められており、お金以外のものを退職金代わりに支給することも可能です。

また、ケースによっては、会社・個人双方に有利になる可能性があるんです。


この記事では、以下の内容を解説していきます。

  • 退職金の現物支給とは?
  • メリット①現金より多くの資産になる
  • メリット②会社の流動資産比率を向上できる
  • メリット③法人税の節税対策ができる
  • 事前に知っておきたい知識


また、退職金制度について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

現物支給とは?

現物支給とは、会社が従業員に支給する報酬について、現金の代わりに「もの」を渡す方法です。


従業員に支払う報酬は、経費の性質を持つものを除いて現金で支払う原則があるので、

退職金を現物で支給することはできません。


ですが、従業員とは異なり、経営者への報酬は現金以外で支給することも可能です。


もちろん、役員に対しても現金で支払うケースは多いですが、

現金で払うよりも現物で支給した方が、会社・役員双方にメリットが生まれることがあります。


では具体的にどんなメリットがあるのか見ていきましょう。

退職金を現物支給するメリット①現金より多くの資産額を得れる

現物支給の方が、現金を支給することと比べて多くの資産を得られる可能性があります。


退職金の現物支給で用いられる代表的な方法は以下の3種類です。

  1. 生命保険
  2. 不動産
  3. 自動車

これらに共通しているのは、「会社名義から個人名義に変更すること」「支給した際の評価額より、換金したときの金額が大きくなること」です。


それぞれどんな仕組みで多くの資産を得られるのか、詳しく解説していきますね。

1.生命保険

生命保険の評価額は、「解約返戻金」が評価額になりますが、
役員に譲渡した時点の金額と、役員が解約した際に受け取った額の差額が利益になります。

ここで活用される代表的な保険が、「低解約型逓増定期保険」です。
この保険は、契約後数年間は返戻金が安く、この期間以降に高額となる特徴を持っています。具体的な活用例で見ていきましょう。

まず会社が低解約型逓増定期保険の契約を結び、役員が退職する際に保険の名義を役員に変更します。

名義変更時点の返戻金が0円の場合は、譲渡された保険の価値は0円と判断されます。

その後、返戻金が高額になるため、譲渡時の評価額が0円だったにも関わらず、高額な返戻金を受けとることが可能になるという仕組みです。

2.不動産

不動産の評価額を決定する方法は以下の3つです。

  1. 近隣で売買された事例ベース
  2. 不動産鑑定士による鑑定額
  3. 公示価格などの公的評価額(国土交通省が定めた標準地での土地の価格)

上記の方法はすべて、実際に売買される金額よりも低くなることが多いです。


例えば、退職金として現物支給したときの評価額が1000万円だったとしても、

本人が売却するときには実際の売買金額=3000万円になるケースがあるので、譲渡時の評価額を上回る可能性があるということです。


もちろん、不動産の価格は経済状況などの外部要因にも左右されるので、必ずしもこうなるとは限りません。このあたりは注意が必要ですね。

3.自動車

自動車の評価額は、以下の2つの方法で決定します。
  1. 売買事例価格(市場で売買された価格の事例)
  2. 精通者意見価格(中古車販売店で査定された価格)
いずれも中古として評価されるので、当たり前ですが新車よりも低い評価額になります。

評価額は、複数の中古自動車販売店から見積もりを取ったうえで、最も適切と判断できる査定価格を選択する必要があります。

とはいえ、どの金額が最適かを判断する基準がないので、複数の見積もりの中から一番安い見積金額を評価額とすれば問題ありません。

退職金を現物支給するメリット②流動資産比率を向上できる

退職金を現物支給すると、会社資産の流動資産比率を向上させることができます。

「流動資産」とは、現金に代表されるような「いつでも活用できる資産」をあらわしています。
これとは逆に、「すぐに活用しにくい資産」をあらわすのが「固定資産」です。

資産の中で流動資産の割合が少なくなった場合、何かあったときに対応できる資産が少ないとみなされて、銀行内の評価が低下する可能性があります。

一方で、現物支給した場合は現金を支払ったわけではないので、現金を手元に残すことができますよね。

不動産などの「固定資産」が減ると、相対的に総資産内の「流動資産」割合がアップします。こうなると、銀行側の評価は下がりにくいと言えますね。

ほとんどの会社では、銀行からの融資がなければ事業の維持・拡大はあり得ません。
銀行内での評価が高ければ、新しく融資してもらうときにも有利な条件になることが多いです。そのため、銀行内の評価を維持しつつ退職金を支給できる現物支給は、会社にもメリットが大きいですよね。

退職金を現物支給するメリット③課税金額を抑えられるケースもあり

現物支給は評価額と実際の金額の差額が役員側への利益になりますが、

企業としては損失になってしまいますよね。


ですが、損失が出た場合は利益額から差し引くことができるため、

結果として法人税を安くすることにつながります。


特に利益がたくさん出ている場合、法人税もかなりの金額になるので、

現物支給によって課税金額を抑えると良いでしょう。


ですが、生命保険は2021年3月に規制が入ったことで、税金対策として生命保険は機能しなくなってしまいました。詳細内容は別の記事でご覧ください。


では、残りの不動産、自動車について解説していきますね。

1.不動産

不動産は、帳簿上の価格よりも低い評価額で現物支給することで法人税を抑えることができます。

例えば、会社が1億円で購入した不動産に対して、8000万円の評価額で役員に譲渡すると、会社は2000万円損したことになりますよね。

ですが、この損失は会計上「経費」として扱われるので、その分利益額から差し引くことが可能です。

利益が下がれば法人税も下がるため、結果として役員個人の資産形成ができたうえで、法人税の金額を下げることが可能となります。

2.自動車

自動車も、基本は不動産と同じように、購入した額以下の金額で譲渡した場合、その差額を損失として計上できます。 

また、支給する自動車は退職までの期間に応じて次の中から選んでおくのが良いです。
  1. 減価償却後のもの
  2. 市場価格が下がったもの
例えば、退職金での自動車支給が決定している場合、
支給対象となる役員の退職時までに減価償却が終わるものを購入しておく必要があります。

車の種類ごとに減価償却時の耐用年数が決まっているため、
退職まで数年あるなら新車、時間がないなら中古車を購入するというような判断です。

事前に知っておくべき知識

退職金の現物支給に関するメリットを記載してきました。


ですが、いずれも契約に関連した手続きが必要だったり、資産に関わる話なので税金も注意しておかないといけません。


現物支給をする前に、把握しておいた方が良い知識や注意点があります。

この点が正確にできていない場合、現物支給をすることで損失が出る可能性もありますので、必ず読んでくださいね。

現物の評価額や税金関連を事前に確認する!源泉徴収に注意!

退職金の現物支給では、現物の適正な評価額を必ず把握しておく必要があります。

不動産や自動車の適正な評価額は、帳簿に記載された減価償却後の金額ではなく、実際の市場で取引されている金額です。

この確認ができていないと、資産の不利益を被るだけでなく、源泉徴収贈与税などの税金支払いで損失の拡大につながる可能性があります。

評価額と市場で売買される金額は異なります。
特に現物の状況の良しあしで価格にも大きな影響が出てくるので、これらの価格を正確に把握するのは難しいです。

よって、税理士などの専門家をうまく活用することが必要です。

不動産を支給する場合に特に気をつけること

不動産には様々な税金が関連してきますので、他のものと比べても特に注意が必要です。

特に注意したいのは以下の2つです。


①不動産取得税と登録免許税


不動産を取得した役員は、不動産取得税登録免許税を個人負担する必要があります。

特に不動産取得税は、「不動産の評価額×4%」となっていて、5000万円の不動産なら200万円とかなりの高額になります。

売却時の利益計算時に、この税金を考慮しておかないと赤字になる可能性がありますね。


②消費税の取り扱い


株主総会や取締役会で退職金の支給を決定する際に、以下の情報を明示すると消費税課税対象取引になりません。

  1. 現物資産による支給であること
  2. 現物資産の種類・金額

この2つを明示しないで、退職金を支給することとその金額だけを決定すると、

税務上は代物弁済とみなされて、消費税の計算に影響します。

代物弁済とは、当初は金銭で支給する予定のものを、事後に現物資産で弁済したという考え方です。


消費税がかかる・かからないで手取りの金額も大きく変わるので、必ず明示するようにしてください。

現物を支給するために必要な書類や費用を確認する

退職金の現物支給には、すべて「名義変更」が発生します。

これを行うためには様々な書類を準備する必要がありますし、評価額の根拠になる書類を外部に用意してもらうことも必要です

また、役員への退職金は取締役会などの会議で承認される必要があるので、承認されたことを示す議事録などは必ず残しておきたいです。

また、名義変更を行うにあたって費用がかかることがあります。
自動車や不動産は公的な登録変更が必要になるので、必ず費用が発生します。

特に不動産は費用が高額になるので、費用も含めた利益計算をしておかないと、結果的に不利益になってしまう可能性があるので、事前のシミュレーションをおすすめします。

なお、生命保険の名義変更はシンプルな手続で費用もかかりませんが、解約返戻金などの現金を受け取った場合は確定申告が必要なケースがあるので、受け取った役員は忘れずに実施する必要があります。

まとめ

退職金の現物支給について書いてきましたがいかがでしたでしょうか。


この記事のポイントは以下の通りです。

  • 退職金の現物支給は、主に会社役員への退職金支給時に用いられる
  • 生命保険、不動産、自動車の名義変更による譲渡が用いられる
  • 会社の流動資産比率を向上できる
  • 法人税の課税金額を抑えることが可能になる
  • 生命保険はホワイトデーショックで税金対策には使えなくなる
  • 現物の評価額、税金関連の事前確認が必須
  • 手続きに必要な書類、費用まで含めて確認しておく

各種手続きとそれにかかる費用、税金も考慮したシミュレーションなど検討しておくべき事項が多数ありますので、事前準備がすべてです。


現物支給を検討されている方は、専門家もうまく活用した準備を進めてくださいね。


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ほけんROOMでは他にも法人保険に関する記事を多数掲載していますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。

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