退職金はどうやって決まる?退職金の計算方法や相場を解説

会社を経営する人であれば優秀な人材を確保するためにも退職金制度は充実させておきたいですね。退職金制度における退職金の額の決め方をご存知ですか?この記事では、退職金の金額の決め方のいくつかの計算方法や、中退共について詳しく解説します。

内容をまとめると

  • 退職金の決め方には、①定額制②基本給連動型③ポイント制④別テーブル方式
  •  中退共の計算方法は、掛金の月数によって退職金の額の算出法が異なる
  •  中小企業の大卒定年退職者の退職金の相場は、およそ1,120万円
  • 退職金の積立なら法人保険の加入がおすすめ
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監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

退職金はどうやって決めれば良い?


会社に貢献してくれた社員が退職するとき、退職金を渡す経営者は多いと思います。けれど、どのくらいの金額が妥当なのか、どのような決め方をすればよいのかと気になる人もあるでしょう。

感謝の気持ちをかたちとして表すためにも、退職金は大切なものです。

そこでこの記事では、

  • 退職金の計算の仕方
  • 中退共の計算例
  • 【参考:退職金の相場は?】

という内容で、退職金の決め方についてご紹介していきます。


最後までご覧いただいて、勇退する社員も経営者も双方が満足のいく退職金が渡せるような参考にしてください。


退職金制度について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

一般的な退職金の計算方法


退職金の支払いは、法律で定められているものではありません。

退職金をどのように扱うかは各会社が定めるもので、支払いうタイミングや退職金の額の計算方法など詳細については、就業規則などに明記するなどしまとめておくとよいでしょう。

ここからは、一般的な退職金の計算方法として、

  1. 定額制
  2. 基本給連動型
  3. ポイント制
  4. 別テーブル方式

について、それぞれ詳しくご紹介します。

①定額制

退職者が会社に勤めた期間の長さに応じて、退職金の額を導き出すという決め方です。


制度がシンプルなため、ややこしい計算をする必要がなく、誰から見ても退職金の額がはっきりとわかりやすくなっています。


具体的には、勤続年数と会社で設定した支給比率を乗じて算出します。


計算式としては、

退職金の額=勤続年数×支給比率

となります。


この決め方は管理が容易であるという点が大きなメリットですが、会社へどれだけ貢献したかが考慮されないという欠点があるため、定額制を導入している会社は少ないのが現状です。


この制度は、

  • 退職事由によって支給比率を変える(自己都合か会社都合か)
  • 会社の発展に尽力した退職者に対しては、特別加算制度を設けるなどして功労者への慰労とする

などして変化を持たせることで、デメリットを軽減させるという運用の仕方もあります。

②基本給連動型

退職者の退職時の基本給と、勤続年数を乗じて算出する決め方です。


この計算方法も、比較的容易であるため管理がしやすいのがメリットです。


計算式としては、

退職金の額=退職金の基本給の額×勤続年数×支給比率

となります。


自己都合による退職の場合は、退職事由係数を掛け合わせて会社都合による場合との差を持たるのも良いでしょう。


この制度は、

  • 支給率を勤続年数に応じて変動させる
  • 退職時の基本給と在職中の基本給の平均の乖離を防ぐため、算出の元となる基本給の額を在職期間の基本給の平均額とする

などの運用方法があります。


ただし、会社への貢献度を反映しにくい、勤続年数が重視され中途採用の優秀な人材にとって不公平感があるなどのデメリットがある決め方でもあります。

③ポイント制

複数の要素をポイント化して、ポイントによって退職金の額を決めるという制度です。


ポイント化する要素としては、

  • 勤続年数
  • 会社への貢献度
  • 役職や職務級の在籍年数
  • 人事評価

などが挙げられます。


この決め方のメリットは、

  • 会社への貢献度を反映しやすいため、社員のモチベーションが上がる
  • 中途採用の社員でも退職金額が大きくなる可能性があるため、優秀な人材を獲得しやすい
  • 給与制度と関連性がないため、給与制度の見直しが行いやすい

などがあります。


一方デメリットは、

  • ポイントの管理業務が煩雑である

ということが挙げられます。

④別テーブル方式

勤続年数と退職時の役職などの職務級とを掛け合わせて退職金の額を算出するという決め方です。


この決め方は、給与制度とは別の賃金テーブルで退職金基準額を設定します。


例えば、

勤続年数10年15年
退職金
基準額
80万円180万円
職務級
1級の
係数
0.90
0.85
職務級
2級の
係数
1.000.90
職務級
3級の
係数
1.051.00

などと、基準額と職務級による係数を設定します。


勤続10年の職務級3級の退職者の場合は、

退職金の額=退職金基準額×職務級係数

で計算するため、

80万円×1.05=84万円

となります。


この決め方は、管理がしやすく、また退職金の額が予測しやすいため経営サイドからは安定した制度と言えます。


一方、会社への貢献度が反映されにくいのが欠点と言えます。

中退共の退職金の一般的な計算例


中小企業の福利厚生の充実を図ることを目的とした国の制度に、中退共制度があります。


中小企業において退職金制度がある割合は65.9%となっています。(令和2年「中小企業の賃金・退職金時事情」より)


しかし、中小企業が独自に退職金制度を設けることは現実問題として困難なケースが多いでしょう。そのため、中小企業では中退共の制度を活用する事例があります。


ここからは、中退共における退職金の決め方について、掛金納付月数が、

  1. 23か月以下
  2. 24カ月から42カ月以下
  3. 43カ月以上

の場合に、それぞれどのように計算すればよいのかをご紹介します。

①掛金納付月数が23ヶ月以下の場合

23カ月以下のときは、どれだけの掛金をどれだけの期間納付したかによって計算します。


掛金の納付月数によって退職金の額は次の表のように定められています。

納付月数退職金額
1~110円
12
3,600円
134,200円
144,800円
155,400円
166,000円
176,700円
187,400円
198,200円
20
9,000円
219,900円
2210,800円
2311,700円

退職金の額は、掛金が1,000円のときのものです。 

 

例).21カ月での退職、掛金が10,000円の期間が21カ月、掛金をさらに10,000円追加した期間が10ヵ月の場合

掛金は1,000円を1本として計算します。この場合は掛金はそれぞれ10,000円ですので10本となります。 

区分掛金納付月数21月(対応退職金額9,900円)×10本+10ヵ月(対応退職金額0円)×10=99,000円

となりますので、99,000円が退職金の額となります。

②掛金納付月数が24月以上42月以下の場合

24カ月以上42カ月以下のときの決め方は、掛金と納付月数とで退職金の額を計算するもので、とてもわかりやすいです。


24月以上42月以下の場合は、区分によって対応退職金額が決まっているわけではなく、掛金と納付月数を掛け合わせれば、退職金の額は計算できます。


例).36カ月で退職、掛金が20,000円の期間が36カ月、掛金をさらに6,000円追加した期間が9カ月の場合

掛金相当額36月(36,000円)×20本+掛金相当額9カ月(9,000円)×6本=774,000円

となりますので、774,000円が退職金の額となります。


③掛金納付月数が43月以上の場合

43カ月以上のときは、基本退職金の額と付加退職金の額とを合わせて算出します。


付加退職金は、基本退職金にプラスされるものです。43月目からは1年ずつ算出し、それぞれの合計額が付加退職金の額となります。

 

付加退職金の算出基準となる支給率については、中退共の運用状況や支出の額などによって毎年変動があります。


43カ月以上の場合は、23カ月以下の場合のように、掛金納付月数によって退職金の額が決められています。詳しくは中退共のホームページでご確認ください。


例).55カ月で退職、掛金が10,000円の期間が55カ月の場合(各年度の支給率を0.005として計算します)

基本退職金の額:区分掛金納付月数55月(対応退職金額55,520円)×10本=555,200円

A:区分掛金納付月数43月(対応退職金額43,010円)×10×0.005=2,151円


B:区分掛金納付月数55月(対応退職金額55,520円)×10×0.005=2,776円

付加退職金の額:A+B=2,151円+2,776円=4,927円

基本退職金と付加退職金の合計額がである560,127円が、退職金の額となります。


参考:退職金の相場

ここで退職金の相場を見ていきましょう。

令和2年の「中小企業の賃金・退職金事情」の調査によれば、モデル退職金は次のようになっています。
高卒の場合
勤続年数自己都合退職会社都合退職
10896,000円
1,148,000円
202,788,000円3,332,000円
定年-10,314,000円

大卒の場合

勤続年数自己都合退職会社都合退職
101,135,000円1,483,000円
203,534,000円4,250,000円
定年-11,189,000円

なお、退職金制度導入のメリットや退職金の相場については、「退職金制度」の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

まとめ

ここまで、退職金の決め方についてご紹介してきましたがいかがでしかた。


この記事の内容をまとめると、

  • 退職金の決め方には、①定額制②基本給連動型③ポイント制④別テーブル方式がある
  • 中退共の計算方法は、掛金の月数によって退職金の額の算出法が異なる
  • 中小企業の大卒定年退職者の退職金の相場は、およそ1,120万円。

でした。


退職金制度が充実していることは、優秀な人材を獲得するために大切なポイントとなります。就業規則などにきちんと明記して、福利厚生が充実している会社であることをきちんとアピールしていきたいですね。



ほけんROOMでは、他にも法人保険に関する記事を多数掲載していますので、ぜひご覧ください。

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