【株式運用】法人で株式運用するのは個人運用と比べてお得になる?

株式を運用するのは個人と法人ではどちらがお得なのでしょうか。また、個人が法人化して株式を運用する際にはどのようなメリットやデメリットがあげられるでしょうか。そこで今回の記事では、法人化して株式を運用する際の株式の税務・会計上の扱いや注意点についても解説します。

法人の株式運用は個人よりもお得になるの?


株式運用といえば個人でおこなっているイメージですがあえて法人化して株式運用をおこなっているかたもいるのはご存知でしょうか?


同じ仕事をするにしても法人化した場合と個人事業主でした場合にそれぞれメリット、デメリットがあるように、実は株式運用も実は個人か法人かでそれぞれにメリット、デメリットがあるのです。


もちろん人によって運用方法や規模が違いますので一概にどちらがいいかは判断できませんが、自分にあった株式運用を選択できるのはとても大きいメリットだといえます。


例えば運用にかかる費用や税金の話だけでいっても、法人でも個人でもそれぞれにメリット、デメリットがあるのですが、法人化するだけで節税の糸口を見つけられるとすれば検討の余地は多いにあるのではないでしょうか?


そこで今回の記事では

  • 法人化して株式運用をするメリット、デメリット
  • 株式の会計上、税務上の扱い
  • 法人が株式運用をしていくうえでの注意点

以上を中心に解説していきます。


こちらの記事を読めば株式運用を個人でしていくべきか法人化したほうがいいのかの判断することができるようになります。


ぜひ最後までご覧ください。

法人化して株式運用する際のメリットとデメリットを解説!

まずは法人化した場合のメリット・デメリットについて解説していきたいと思います。


そもそも株式運用を法人化することのメリットが思いつかない、といった方もいるかもしれません。しかし、法人化することによるメリットは意外と多いものです。


また、法人化した場合と、個人で運用を行う場合の違いはお分かりになるでしょうか?違いとしてのポイントは5つほどあり、分かりやすく表にすると、以下のようになります。

個人法人
所得証明できない給料として証明できる
税率約20%(経費×)約30%(経費〇)
確定申告手間がかからない
(特定口座の利用可)
手間がかかる
(一般口座しか利用できない)
損益通算不可可能
社会保険料負担安い
(国民健康保険・国民年金)
高い
(健康保険・厚生年金)
個人と法人では、以上のような違いがあります。これらを踏まえて、メリット・デメリットをご了解していきます。

法人化して株式運用する際のメリット

株式運用を法人化しておこなう際の主なメリットは節税と損失繰越になりますが、実は他にもメリットが多数ありますので1つずつ解説していきます。


経費を費用計上できるため節税対策となる。

法人での株式運用で一番のメリットといえば経費を費用計上できることになります。


例えば株式運用のセミナー費用や本の購入代なども費用計上が可能ですし、パソコンの購入費用や電話代、交際費なども費用計上することが可能になります。


費用計上することによって株式運用で得た利益と相殺させ、節税へとつなげるわけです。


損失の繰越が最大7年間可能

法人化して株式運用をすれば最大で7年間の損失繰越が可能になります。


例えば今期200万円の損失が計上されても、7年の間に200万円の利益が計上できれば、その利益にかかる税金を0にできるのです。


個人でも損失の繰越は可能ですが、最大3年までと短いため繰越年数が長い法人にメリットがあるといえます。


損益を全てまとめることができる

個人の場合、給与所得株式投資、FXなどの先物取引はそれぞれ損益を合算することができませんが法人ですと全ての損益を合算することができるメリットがあります。


例えば個人の場合、株式投資でいくら赤字を出していてもFXで利益を得ている場合にはその利益分の税金がかかってしまいます。


しかし、法人の場合は損益を合算できますので税金を減らすことができるのです。


個人と法人両方で株取引ができる。

法人で株式運用をしている場合、それと並行して個人でも株式運用が可能です。


この場合どのようなメリットがあるかといいますと、株主優待を個人と法人両方で受け取ることができたり、IPO(新規公開株式)の抽選も2口で参加できるなどがあげられます。


株主優待の例でいえば、100株で1000円相当のクオカードがもらえる場合には個人と法人両方で100株を保有していれば二重にクオカードをもらうことができるのです。


またIPOは値上がりしやすい人気株で、投資家としては是非ともおさえたいので個人と法人両方で抽選に参加できるのは大きなメリットだといえます。

法人化して株式運用する際のデメリット

株式運用を法人化しておこなうさいのメリットを解説しましたが、デメリットも何点があります。

主に税金にかかわってくるデメリットなので運営規模や内容と照らし合わせて法人化を検討しましょう。

利益が出たときの税負担が大きい

個人の場合、利益に課税される税率はおおよそ20%ほどですが、法人の場合実行税率として約30%の税率が課税されるため個人にくらべ税負担が大きくなります。


法人税は今も段階的に下げられてはいますがそれでもこの差分はかなり大きいといえるでしょう。


ただし法人化した場合、経費の費用計上、損益合算、損失繰越が7年と、利益が出ていないときのメリットは法人に軍配があがります。


会社の設立や維持に費用がかかる

会社を設立するには定款認証設立登記など合わせて約25万円ほどの費用がかかってきますし、法務局などに出向かなければならず申請に1週間ほど時間をとられてしまいます。


また会社は年に1回、決算公告をする義務があり6万円ほどの費用が毎年発生します。


決算は処理が煩雑になる作業でもし税理士などに頼むとすれば年間数十万の費用が必要になります。


その点、例えば個人事業主で開業するとしたら税務署へ開業届を出すだけでので費用も手間もかかりません。


決算公告も必要ないので維持費もかかりません。

株式運用の際にかかる税金の会計上・税務上の扱い


個人で株式運用をするさい、譲渡益課税配当課税の2種類の税金が課税されますが法人の場合は他の事業や経費なども含めた損益の合算に法人税が課税される仕組みになっています。


株式運用における損益は主に売却時の売却益や売却損から計算されますが、通常の商品売買とは異なる考え方となります。


それを理解するためにもまずは会計上、税務上の株式の扱いを理解することが重要になります。


会計上、税務上と分けて表現させてもらいましたが、株式は会計上は4つに分類され、税務上は2つに分類されるなど扱いが変わってくるためあえて分けて表現させてもらいました。


会計上の利益計算は利益や損益を重視するのに対し、税務上の所得計算は適切に課税されているかどうかを重視しているため株式のように扱いが難しいものは会計上、税務上で全く違う処理になります。

株式の会計上の扱い

会計上の株式の扱いは主に4つに分けることができます。これらは有価証券の保有目的によって分類され、それぞれ売買目的有価証券満期保有目的有価証券小会社及び関連会社株式その他有価証券と呼ばれます。


売買目的有価証券

売価目的有価証券とは時価の変動によって利益を得ることを目的とした有価証券です。決算の段階で所有している分は時価にて評価となります。


満期保有目的有価証券

満期保有目的有価証券とは満期まで所有することを目的とした有価証券であり、利息や償還額の受け取りが報酬にあたります。売買目的有価証券とは違い時価の変動が投資の目的ではないので時価評価されず、帳簿価格のままでの評価となります。

  

子会社及び関連会社株式

子会社及び関連会社株式とは子会社や関連会社への影響力を目的とした株式になります。 

あくまで影響力の行使が目的ですので時価の評価はおこなわず帳簿価格のままの評価となります。


その他有価証券

上の3つに当てはまらない場合はその他有価証券となります。例えばすぐには売却しないが市場の動向を見ながら売却する有価証券などがあげられます。決算時に時価評価をしますが早急な売却にはつながりませんので評価差額は純資産として計上します。

株式の税務上の処理

株式は税務上、売買目的有価証券売買目的外有価証券の2つに分けることができるのですが、売買目的かどうか、つまり時価で評価するかどうかが大きな違いといえます。


売買目的有価証券

税務上における売買目的有価証券とは、売買を目的とする有価証券でありその名の通り短期的な価格の変動により利益を得ることを目的としています。


この売買目的有価証券は更に専担者売買有価証券とそれ以外に細分化されます。


株式の専門部署によって運用される専担者売買有価証券は有価証券の売買を業としていることを定款に記載していることなどが必要な有価証券でであり、時価評価を必ずしなければなりません


売買目的有価証券はほとんどの場合で専担者売買有価証券に該当しますが専門部署でなくとも短期的な売買による利益を目的とするならばこれに該当します。


そのさい帳簿には短期売買目的であることを記載し、売買目的有価証券勘定で処理しなければなりません。


こちらも時価評価が必要となります。


売買目的外有価証券

税務上の売買目的有価証券以外の有価証券は売買目的外有価証券に分類され、満期保有目的等有価証券とその他の有価証券に分けることができます。


ここでいう満期保有目的有価証券とは、満期まで長期に渡って保有することを目的とした有価証券で時価評価はせず帳簿価格のままの評価になります。


また売買目的有価証券や満期保有目的等有価証券以外の有価証券はその他の有価証券に分類されます。


業務提携を目的とした有価証券や長期的な運用で利益を得るような有価証券はその他の有価証券になるといえるでしょう。

法人が株式を運用する際の注意点

法人が株式運用をする際に注意したいポイントとしては、

  • 取得原価
  • 譲渡原価

の2つが挙げられます。


取得原価は株式を購入(取得)した際の原価を、一方譲渡原価は株式を売却(譲渡)した際の原価になります。それぞれの購入や売却時の費用をそのまま原価とすればいいのでは?と考える方もいるかもしれませんが、それぞれの費用がそのまま原価となるわけではないことが注意したいポイントです。


原価に含めなくてはならない経費があったり、売却時はその時の取引価格などをもとに、計算して原価を算出する必要があるのです。購入価格=原価ならば分かりやすいのですが、では、どのような方法で計算するのでしょうか?


以下で取得原価と譲渡原価の計算方法や注意点について解説していきたいと思います。

法人が株式を購入する時の注意点

株式購入時には株式の購入費以外にもさまざまな経費がかかりますが、株の取得原価に含めなければならない経費と含めなくてもいい経費があります。


取得原価に含めなくてはいけない経費は委託手数料や購入手数料など、購入にかかわる諸手数料がそれにあたります。


それ以外の購入にかかった費用は含めなくてもいいことになっています。


例えば株式の購入費が20万円で購入手数料が1万円だった場合、株式の取得原価は

20万円+1万円 = 21万円

となります。


また購入以外にも贈与などで株式を得る場合がありますがその際は取得時点での時価や近似の株式から取得原価を算出します。

法人が株式を売却する時の注意点

売却する際に必要になるのが譲渡原価です。損益を出す際に必要となります。


1株当たりの価格を算出しますが、

  • 総平均法
  • 移動平均法

のどちらかで行います。総平均法で行う場合は、税務署に届け出が必要となるので注意しましょう。


総平均法とは株式を購入した時期の取引価額を全て合算し、その時扱った総株数で割る計算方法です。


移動平均法とは取得した価格とその直前の帳簿価額を合計し、総数で割る計算方法です。


分かりやすいように例を挙げてみましょう。

取引時期購入数量購入価格譲渡数量
期首1,000株60万円-
5月500株36万円-
6月--500株
7月1,000株80万円-
8月--300株
以上の条件で、それぞれの計算方法を用いて算出を行ってみます。

まずは総平均法です。

(60万円+36万円+80万円)÷(1,000株+500株+1,000株)=704円

1株当たりの価格が計算できたため、譲渡原価は、
  • 6月:500株×704円=352,000円
  • 8月:300株×704=211,200円
となります。通常年度末に1度計算すればいいのですが、年度末にならないと譲渡原価の計算ができないという特徴があります。

一方、移動平均法では5月・7月時点の1株当たりの価格を計算します。直前の価格が必要になるためです。

5月:(60万円+36万円)÷(1000株+500株)=640円

7月:(64万円+80万円)÷(1,000株+1,000株)=720円

1株当たりの価格がそれぞれ分かったので、譲渡原価を計算すると以下のようになります。
  • 6月:500株×640円=320,000円
  • 8月:300株×720円=216,000円
となります。

参考:株取引における配当金の扱いについて

株式運用を行っていると、「配当金」を受け取る場合もあります。配当金を受け取る場合は、二重課税の負担を軽減する措置がとられていることを知っておく必要があります。


配当金も課税対象となるのですが、受け取る配当金からはすでに税金が差し引かれているのです。そのため、配当金の一定割合を益金として処理します。


益金不算入となる割合は、株式の種類によって違い、以下のようになっています。

種類保有割合益金不算入割合
完全子法人株式等100%100%
関連法人株式等1/3超100%未満100%
その他の株式等5%超1/3以下50%
非支配目的株式等5%以下20%
法人化して株式運用を行う場合、多くの方は「非支配目的株式等」になると思いますので、この場合は20%が益金不算入となり、残り80%の配当金が益金として課税対象となるのです。

まとめ:法人化して株式を運用するメリットは意外と多い!

ここまで法人化して株式運用をするさいのメリット、デメリットや注意点を解説してきましたがいかがでしたでしょうか?

今回の記事のポイントは
  • 法人での株式運用は節税、損益合算、7年の損失繰越がメリット
  • デメリットは設立や維持費用がかかる点と利益が出たときの税負担が大きい
  • 株式運用での会計上と税務上での株式と扱いが違う
  • 株式購入時の取得原価と株式売却時の譲渡原価は計算方法が違う
でした。


法人での株式運用は設立の手間や初期費用、維持費用がかかる点、利益を上げていくと法人税の負担が大きくなるなど一見メリットが少ないように感じます。


ですが、実際は損益を全て合算できたり経費を費用計上できたりとメリットも多いのです。


これはどちらが得とは言い難い話で、経営規模や運用方法で検討していく必要があるといえます。


逆をいえば検討するからこそ自分の株式運用にあった方法を選べるといえるでしょう。


株式をよりよい形で運用していくためにも法人化も検討してみてはいかがでしょうか。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい法人保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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