生命保険の受取人を孫にするとき注意すべき相続税や贈与税などを解説

生命保険金で面倒なのは生命保険料負担者と受取人が異なる場合です。とりわけ死亡保険金は相続や贈与など権利関係が複雑になり受取人が妻や子又は孫なのかによって事後の対応が異なります。生命保険契約で孫に財産を残したい場合には何に注意すべきか学んでおきましょう。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

生命保険の受取人を孫にしたい方へ

生命保険の受取人を孫にしたい、という方はいらっしゃると思います。

生命保険金の受取人を孫にしたいとき、相続税について考えておく必要があります。

相続人である妻や子を受取人にする場合と非課税枠が異なります。


そこで、この記事では「生命保険の受取人を孫にしたい」場合について

  • 孫を受取人にしたときに起こること
  • 生前贈与という選択肢
  • 孫が法定相続人となる場合

以上のことを中心に解説していきます。

この記事を読んでいただければ、生命保険の受取人を孫にしたい場合の基本的知識を得ることに役立つかと思います。  




孫は法定相続人ではない

生命保険の被保険者が亡くなった場合に支払われる死亡保険金ですが、注意したいのは被保険者に子がいれば孫は法定相続人にならないことです。

孫が相続人になるには、子が被保険者より先に亡くなって代襲相続する場合又は孫と養子縁組をした場合です。

孫が代襲できる場合、被保険者に妻がいても妻は常に第一順位の者と共に相続するので構いません。


孫が法定相続人に該当するならば死亡保険金の受取人に指定しても納税負担が増えないので安心です。 

孫と養子縁組していれば法定相続人になる

子がいれば孫は、代襲相続を除き法定相続人になりません。

ただし被相続人(財産を遺す人)が孫と養子縁組をしていれば子とみなされます。


生命保険の被保険者が受取人を孫にし、養子縁組をすれば相続税の2割加算はされません。

生命保険の死亡保険金に関しては、法定相続人に含むことができる養子縁組の数には制限があります。 

生命保険の受取人を孫にした場合に起こる事


さて、ここまでで、孫は特定の状況でなければ、基本的には法定相続人ではないということを解説してきました。


次に、実際に生命保険の受取人を孫にした場合に起こることを解説していきます。


生命保険の受取人を孫にした場合には、さまざまなデメリットが存在します。


具体的には税金に関する不利益が起きてしまいます。

それではどのようなことが起こってしまうかを個別に解説していきます。

生命保険の相続税非課税枠が適用されない

生命保険の受取人が相続税を納める場合、非課税限度額が定められています。

その額は、500万円×法定相続人の数です。


例えば妻と子が相続人であれば、500万円×2=1千万円まで非課税で生命保険金に関して相続税を納める必要はありません。

しかし法定相続人でない孫が受取人であれば、受け取った死亡保険金すべてに相続税がかかります。


したがって孫を受取人に指定するときは法定相続人に該当するのか否かを調べてから契約しましょう。 

生命保険に相続税の納税義務が発生する

生命保険の死亡保険金について保険料負担者によって納税すべき税目が異なります。

生命保険料負担者が被保険者であれば、受取人が子であれ孫であれ相続税の納税義務があります。


一方生命保険料負担者が子で受取人が子であれば所得税、生命保険料負担者が子で受取人が孫であれば贈与税の納税義務があります。


死亡保険金の受取人指定には被保険者が亡くなった後の比較検討は欠かせません。 

相続税を2割増で払わなければならない

生命保険の受取人に孫を指定した場合、死亡保険金の受け取り時に相続税が2割加算されることがあります。

ただし、孫といっても代襲相続人でない孫のことです。


ですから本来相続人となるべき子(孫の親)が亡くなっておりその分を孫が相続するときは2割加算されません。


例えば、被保険者に子AB二人おり、Aが被保険者より先に亡くなって孫Cが代襲したときBCが相続人になります。

この場合Cが死亡保険金の受取人でも2割加算されません。 


死亡保険金の相続についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

生前贈与3年分が相続税の課税対象になる

相続税の対象財産には、生命保険金などの相続や遺贈で取得した財産、相続時精算課税対象の贈与財産、そして相続や遺贈を受けた人が被相続人が死亡する前3年以内に贈与を受けた財産があります。

したがって被保険者が生命保険料を負担し受取人が孫であれば相続を受けた人に該当し、3年以内生前贈与が相続税の課税対象になる場合があります。 

生前贈与という選択肢

生命保険の被保険者が60歳以上である場合に孫への生前贈与を選択し、相続時精算課税制度を利用すると2千500万円まで特別控除により贈与税がかかりません。

そのかわり相続時に相続財産として加算した上で相続税を計算します。


孫を生命保険金の受取人として相続税が2割加算されるならば、生前贈与を利用し孫の学習費等に使うことができます。


死亡保険金と違い祖父母が孫の成長を見届けながら金銭面で貢献できる点も生前贈与の魅力でしょう。 

名義預金、定期贈与に注意

生命保険の受取人を孫にせず生前贈与で相続時精算課税を利用するには、孫の年齢が20歳以上との規定があります。

祖父母が孫名義で口座を開設し祖父母が通帳を管理していると、実質は贈与ではなく相続とみなされるので注意が必要です。


20歳以上の場合は孫本人の名義で本人が管理しましょう。

また相続時精算課税を選択しない定期贈与は毎年110万円を超えた額は贈与税の対象になります。


これらを理解していなければ生命保険金の受取人を孫にせず生前贈与を利用しても無意味になります。 

まとめ:孫を死亡保険の受取人にするときにはよく考えよう

生命保険の受取人を孫にした場合の注意点や生前贈与という選択肢について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 

 今回の記事のポイントは、 
  • 孫は法定相続人ではないので非課税枠が適用されない
  • 被相続人が孫と養子縁組をしていれば子とみなされるので孫が法定相続人となる
  • 死亡保険金ではなく、孫に生前贈をするという選択肢もある
でした。

生命保険料の負担者と被保険者及び受取人については生命保険契約時によく考えましょう。

それぞれが誰であるかで生命保険金の受取時に税目や税負担者が変わってきます。


自分の財産を妻や子ではなく孫に使って欲しいと贈与に代えて生命保険の受取人に指定したにも拘わらず、思わぬ負担で被相続人の望み通りの効果が出ないことも。


相続時精算課税を利用して生前贈与をした方が有利なのか、死亡保険金の受取人にした方が孫のためになるのか生命保険契約時によく考えましょう。 


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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