受取人が死亡した場合の生命保険金。受取人は誰?相続扱い?税金は?

生命保険金の受取人が死亡した場合は、受取人の法定相続人が生命保険金を受け取ります。ただし、生命保険金の配分は、死亡した被保険者との関係によって課税内容がかなり変わります。また、法定相続人が複数いると手続きが思うように進まないこともあります。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

生命保険金の受取人が死亡しているとき、生命保険金はどうなる?

生命保険の保険金受取人が死亡してしまってどうすればいいかわからない方。

受取人が亡くなった場合、生命保険金を受け取るのは誰なのか気になりますよね?

親族間でトラブルを起こさないよう、今のうちにしっかりと生命保険金の受取人について確認しておきたいですよね。


そこで、この記事では生命保険の受取人が死亡した場合について、

  • 生命保険金の受取人が死亡した場合の受取人は誰か
  • 法定相続人が生命保険金を受け取るときの配分
  • 法定相続人が生命保険金の受け取るときの税金

以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、生命保険金の受け取りに関するトラブルや不安を解消することができます。


是非最後までご覧ください。


受取人が死亡したときは受取人を変更するべき

通常、生命保険金の受取人が死亡したときは、すみやかに受取人を変更しなければなりません。


保険契約者や、被保険者が死亡した時にはすぐに手続きをするのですが、受取人死亡時にはこの手続きを忘れてしまうことが多いようです。


問題となるのは、受取人変更の手続きをしないまま被保険者が死亡した場合です。

受取人変更しなかった場合、保険金は受取人の法定相続人に支払われる

もし受取人を変更する前に生命保険金の被保険者が死亡した場合、生命保険金は受取人の法定相続人に支払われます。

法定相続人とは、民法で定められた相続人(財産をもらえる人)のことです。

法定相続人の中でも、財産を相続できる優先順位などが定められています。

ここで気をつけてほしいのは、生命保険金は被保険者(保険をかける対象)法定相続人に支払われるのではないということです。

そもそも生命保険金は、被保険者が相続する財産ではなく、受取人の財産です。

そのため、本来生命保険金を受け取るはずだった受取人を基準とし、受取人の法定相続人に支払われるのです。

法定相続人の範囲について

では、法定相続人の範囲はどのように民法で定められているのでしょうか。

法定相続人となる人物は、以下のとおりです。
  • 配偶者
  • 直系卑属(子、孫、ひ孫)
  • 直系尊属(父母、祖父母)
  • 兄弟姉妹
  • 甥姪
また、法定相続人の中でも、財産を受け取ることができる優先順位が存在します。

法定相続人の中で優先順位がある

法定相続人の優先順位は以下のとおりです。

配偶者

配偶者に相続順位はなく、常に相続権があります


第1順位:直系卑属

第1順位である直系卑属常に相続権があります


直系卑属には、

  • 実子
  • 養子
  • 内縁関係の子
  • 愛人の子
  • 胎児

  • ひ孫

があてはまります。


第2順位:直系尊属

直系卑属がいないとき、第2順位として直系尊属に相続権が発生します。


直系尊属には、

  • 父母
  • 祖父母

があてはまります。


第3順位:兄弟姉妹および甥姪

直系卑属、直系尊属がいないとき、第3順位として相続権があります。

  • 兄弟姉妹
  • 甥姪

があてはまります。

配偶者は常に法定相続人になる

受取人の配偶者は常に相続人となります。

ただし、内縁関係の男女は配偶者に該当しません。

なぜなら、日本では法律婚主義を採用しているからです。


法律婚主義とは、「婚姻は一定の法律上の手続きにより初めて成立する」という立法上の考え方です。


つまり、「一定の手続きをしていないと法律上は夫婦として認められないよ」ということですね。


日本では、市区町村役場などの行政機関へ届け出ることによって婚姻が成立します。


内縁関係では法律上で婚姻が成立していないため、法定相続人になることはできません。

養子も法定相続人になる

実子だけではなく、養子も法定相続人になることができます。

受取人と養子縁組した養子は、法律上受取人の血族と同じ扱いになるので、実子と同じように法定相続人になることができます。


前妻・前夫は法定相続人にならない

受取人の前妻(元妻)または前夫(元夫)は法定相続人になりません。

離婚した前妻または前夫は、法律上有効に成立した婚姻関係を解消しているので、離婚した時点で法定相続人ではなくなります。

前妻・前夫の子供の場合

離婚した受取人と元配偶者とのあいだに子がいる場合、その子は法定相続人となります。

その子の優先順位は、両親の離婚後も変わらず第1順位です。

これは、たとえ両親が離婚しても親子関係が消滅するわけでなく、離婚後も受取人と元配偶者にとっては実子であることに変わりないからです。

法定相続人の1人が死亡している場合

死亡保険金が下りるとき、受取人の法定相続人のうち1人が死亡した場合は、代襲相続が発生することもあります。


代襲相続とは、相続人が「財産を与える人(被相続人)」よりも先に死亡していた場合、相続人の子が遺産を相続することです。


代襲相続できるのは、財産を与える人の直系卑属だけです。


分かりづらいので、「父、母、兄、弟2人の5人家族で、被保険者が父、受取人が兄(未婚)」のケースを例に説明します。


このような状況で、被保険者(父)と受取人(兄)が死亡したとします。


まず、受取人である兄の法定相続人は以下のようになります。

  • 第1順位:なし
  • 第2順位:母(直系尊属)
  • 第3順位:弟2人(兄弟姉妹)

このとき、法定相続人の1人である母が死亡したらどうなるのでしょうか。


生命保険金がどのように配分されるかは、被保険者(父)が亡くなるタイミングによって少し変わってきます。


被保険者(父)と受取人(兄)が母よりも先に死亡した場合

本来、亡くなった受取人の財産は代襲相続されますが、この例では受取人に子がいないため代襲相続されず、第2順位である母が死亡保険金を受け取ります。


その後、母が死亡したら、母の第1順位法定相続人である弟2人がそれぞれ死亡保険金を受け取ります。


被保険者(父)と受取人(兄)が母よりも後に死亡した場合

受取人(兄)の直系尊属である母がすでに亡くなっているので、第3順位の弟2人がくり上がってすぐに生命保険金を取得します。

法定相続人の1人が音信不通の場合

通常、相続財産を分ける場合は、音信不通の法定相続人がいたとしても、法定相続人全員による協議が必要です。

音信不通の法定相続人を無視した遺産分割協議は無効となります。

生命保険金についても同じで、音信不通の法定相続人がもらうべき受け取り分を無視して、ほかの法定相続人が生命保険金を受け取るわけにはいきません。


そのため、音信不通の法定相続人については、不在者財産管理人を家庭裁判所に選んでもらう必要があります。


不在者財産管理人とは、音信不通で行方が分からない相続人の財産を管理する者のことです。

受取人の法定相続人は保険金を均等に受け取る

これまで解説してきたとおり、受取人が亡くなっているにもかかわらず受取人を変更しなかった場合、死亡保険金は受取人の法定相続人に分配されます。

では、実際のところどれくらいの割合で生命保険金が分配されるのでしょうか。

通常、遺産を相続するときは、法定相続割合というものにしたがって分配の割合を決めます。

法定相続割合とは、文字どおり「法定相続人のうち誰がどれくらい遺産をもらえるか」という割合のことです。

たとえば、「配偶者は財産の1/2、子はそれぞれ財産の1/6をもらえる」などのように割合が決められています。

しかし、例外を除き、生命保険金については原則として法定相続割合が適用されません

法律では、複数の法定相続人がいる場合、それぞれ等しい割合で生命保険金を受け取る権利があると規定しています(民法427条)。

たいていの生命保険会社はこの法律にしたがい、約款で「法定相続人は生命保険金を均等に受け取る」と規定しています。

では、さまざまなケースでどのように生命保険金が分配されるのか見てみましょう。

受取人が被保険者よりも前に死亡していた場合

受取人が被保険者よりも前に死亡した場合、被保険者は受取人変更の手続きを行なわなければいけません。

手続きのためには、
  • 名義変更請求書
  • 保険証券
などの書類が必要です。

手続きしないまま被保険者が亡くなった場合は、くり返しになりますが、受取人の法定相続人が死亡保険金を受け取ることになります。

このとき、生命保険金は、前述の民法427条で定められたとおり均等に分配されます。


たとえば、「3,000万円の生命保険金を受け取るはずだった受取人が死亡し、その受取人に妻と子2人がいる」という場合、それぞれが受け取る生命保険金は以下のようになります。

  • 妻:1,000万円
  • 子2人:それぞれ1,000万円ずつ

受取人が被保険者より後に死亡した場合

被保険者が死亡し、その後受取人も死亡した場合も、やはり受取人の法定相続人が生命保険会社に死亡保険金を請求します。

この場合も、法定相続人が複数いれば、死亡保険金はそれぞれ均等に分配されます。

ただし、受取人が死亡保険金の支払いを受けた後に死亡した場合、死亡保険金は受取人の相続財産となります。


この場合、死亡保険金は通常の相続財産になるので、法定相続割合にしたがって分け与えられることになります。


たとえば、法定相続人として妻と子がいる場合、法定相続割合は「妻1/2、子それぞれ1/6」と定められています。


死亡保険金1,200万円を受け取った後に死亡した受取人に妻と子3人がいた場合、それぞれに分け与えられる財産は次のようになります。

  • 妻:600万円
  • 子3人:それぞれ200万円ずつ

ただし、有効な遺言が存在していたときは、遺言の内容を優先して財産を分け与えます。

受取人と被保険者が同じ人だった場合

受取人と被保険者が同じ人の場合に被保険者が死亡した場合、死亡保険金は、受取人の相続財産として相続の対象となります。

よって、法定相続割合が適用されます。

また今回は保険金は法定相続人が相続し、受け取った金額には相続税が課せられます。

受取人と被保険者が別の人で、同時に死亡したと推定される場合

受取人と別人である被保険者が同時に亡くなった場合、死亡保険金は均等に分配されます。

たとえば、「受取人が妻、被保険者が夫で、不幸にも自動車事故などで同時に死亡したと推定される」などのようなときは、死亡した夫妻のあいだに相続は発生しません

よって、本来ならば受取人となるはずだった妻を基準として、妻の法定相続人が生命保険金を取得します。

受取人の法定相続人が保険金を受け取る場合の税金について

ここまで、生命保険金をもらう受取人の法定相続人についてご説明してきました。

ここからは、生命保険金にかかる税金について解説していきます。

生命保険金は課税の対象になります。

どれくらいの額が課税されるかは、生命保険の契約者、被保険者、受取人が誰であるかにより異なってきます

それに基づき、生命保険金には以下2種類のうちどちらかの税が課されます。
  • 相続税:遺産を相続したときにかかる税金
  • 贈与税:ある人からある人へお金をあげたときにかかる税金
相続税と贈与税のどちらが課税されるかによって、課税額が大きく変わってくることもあります。

相続税か贈与税かを確認

生命保険金に相続税と贈与税のどちらが課税されるかは、以下の図のように決められています。


死亡保険金と税金の種類

死亡保険金と税の種類


契約者と受取人が同じで、被保険者が別の場合:所得税の対象

契約者と保険金受取人が同じ場合、生命保険金は所得税の対象となります。


生命保険金が契約者の所得とみなされるからです。


契約者、受取人、被保険者がそれぞれ別の場合:贈与税の対象

契約者と保険金受取人が異なる場合、生命保険金は贈与税の対象となります。


契約者が保険金受取人にお金を贈与したとみなされるからです。


契約者と被保険者が同じで、受取人が別の場合:相続税の対象

契約者と被保険者が同じで、保険金受取人が別の場合は、所得税にも贈与税にもあてはまらず、生命保険金は相続税の対象となります。

受取人の法定相続人と被保険者の法定相続人が同じかどうかを確認

受取人の法定相続人と被保険者の法定相続人が同じかどうかで、生命保険金に課税される税額も異なります。

ここでは、相続税がかかるケースで説明してみます。

受取人の法定相続人と被保険者の法定相続人が同じ場合

「契約者と被保険者が夫、受取人が妻で、妻が先に死亡し、夫も受取人変更前に死亡し、夫妻に子2人がいた場合」を例に挙げます。


この場合、夫妻に共通する法定相続人として、子2人が死亡保険金をもらいます。


仮に死亡保険金が1,000万円だとしたら、子2人でそれぞれ500万円ずつ受け取ることになります。


このとき、実は生命保険金すべてに税金がかかるわけではなく、法定相続人の人数によって、以下のような金額が非課税になるよう定められています。

非課税額=500万円×法定相続人の人数

上記の式にあてはめると、例のケースにおける非課税額は以下のようになります。

非課税額=500万円×法定相続人2名=1,000万円

よって、死亡保険金1,000万円に税金はかかりません。


受取人の法定相続人と被保険者の法定相続人が異なる場合

「契約者と被保険者が夫、受取人が妻、妻が先に死亡し、夫も受取人変更前に死亡し、妻の法定相続人として妻の弟2人がいた場合」はどうなるのでしょうか。


この場合は、妻の弟2人が生命保険金をもらいます。


仮に死亡保険金が1,000万円だとしたら、弟2人がそれぞれ500万円ずつ受け取ります。


しかし、この弟2人は夫の法定相続人ではありません。


このように、受取人の法定相続人と被保険者の法定相続人が異なる場合、残念ながら非課税枠は適用されません


しかも、非課税枠がないだけではなく、相続税は2割加算されます。


相続税率(平成27年1月1日以後の場合)は10%と定められているので、例のケースでは、弟2人それぞれの相続税額は以下のようになります。

500万円×10%=50万円

さらに、税額が2割加算されるので、

50万円×1.2=60万円

60万円が最終的に支払うべき相続税となります。


共通の法定相続人が死亡保険金を受け取るかどうかで、課税額が大きく異なるということが分かります。

受取人の法定相続人が保険金を請求する手続き

生命保険金を請求するとき、通常は以下の書類を用意しなければなりません。
  • 生命保険金請求書
  • 保険証券
  • 死亡診断書など
  • 受取人の印鑑証明書
  • 戸籍謄本(被保険者および受取人)

さらに、受取人が死亡し、法定相続人が生命保険金を請求するときは、

  • 法定相続人全員が確認できる資料(戸籍謄本など)

の提出が必要となります。


また、法定相続人が複数いるときは、原則、代表受取人を決めて請求することになります。

コラム:相続放棄と生命保険金の関係

相続放棄とは、相続人が被相続人の遺産の相続を放棄することです。


基本的に遺産は相続したいものです。しかし、被相続人には多額の負債があり、相続に魅力が感じられない場合などには相続放棄をすることができます。


ではそれがどのように生命保険に関係してくるのでしょうか。例を挙げて考えてみましょう。


夫は1千万円の負債を抱えながら死亡してしまいました。そこで通常妻は夫の遺産を相続しますが、1千万円の負債を相続したくないと考え相続放棄をしたとします。


この段階で妻から夫の遺産を相続する権利は失われました。


その後相続権は別の法定相続人(夫の親など)に移りますが、その時、実は夫には2千万円の生命保険金が掛けられており、相続人はその保険金を受け取れることがわかりました。


それを後から知った妻は遺産を相続したいと申し出ても、既に相続放棄をしてしまったので夫の遺産は受け取ることができないのです。


この例のように、遺産相続の際多額の負債の相続は避けたいので相続放棄をしたくなります。


しかし、相続放棄してしまうとその後遺産を相続できなくなってしまうので、相続放棄をする際はほかに遺産が残ってないのかをしっかり調べることを頭に入れておきましょう。

まとめ:生命保険の受取人が死亡したときの相続について

生命保険金の受取人が死亡した場合について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

今回のこの記事のポイントは、
  • 生命保険金の受取人が死亡した場合の受取人は誰か
  • 法定相続人が生命保険金を受け取るときの配分
  • 法定相続人が生命保険金の受け取るときの税金
です。

生命保険金をもらうことができる法定相続人の数が多ければ多いほど、連絡がつかない相続人や、生命保険金の均等配分に不満を漏らす相続人が出現し、生命保険金の請求手続きが思うように進まないおそれもあります。

そのため、被保険者は、受取人が先に死亡したらすみやかに受取人の変更手続きをして、後のトラブルを事前に回避しておいたほうがよいでしょう。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。


死亡保険金の相続についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

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