傷病手当金は確定申告・年末調整でお得に!?医療費控除や扶養も解説

休職中の傷病手当金について、所得として年末調整・確定申告すべきか気になりますよね。基本的に義務ではありませんが、確定申告することで還付金を受けられお得な場合があります。ここでは、傷病手当金について確定申告した方が良い場合、医療費控除と扶養控除の関係も解説します。

傷病手当金を受給しても年末調整や確定申告基本的には不要


休業中に支給される傷病手当金は生活の支えになる大切なお金です。

基本的には年末調整や確定申告をする必要はないため、これらの手続き等を気にすることなく安心して受け取ることができます。

しかし中には年末調整等を行うことでお得になるケースもあることをご存じでしょうか?手続きを忘れてしまうと、損をしていることになってしまうのです。

正しい税務知識を身に付けて適切に節税を行うことが大切です。

そこでこの記事では、傷病手当金を受け取った場合に、
  • 確定申告で税金の還付を受けられるケースと手続方法
  • 医療費控除を受ける場合
  • 扶養控除・配偶者控除との関係
  • 住民税や社会保険料の支払いについて
  • 受給中の副業について
以上のことを中心に説明したいと思います。

休職中は傷病手当金以外に収入がないないため、節税や節約を行うことはとても大切です。ぜひ最後までお読みください。

傷病手当金|年末調整や確定申告で税金が還付される場合がある

仕事ができなくなってしまい、休職を余儀なくされてしまった場合に支給される傷病手当金ですが、受給すると所得税などが課せられるのではと不安になる方もいるかもしれません。


所得税は1年間に得た所得全般に課税されるものですが、傷病手当金などでは例外的に非課税所得とされているのです。


受給ししている間は基本的に所得がなくなるため、全体的な所得税額も減るのが一般的です。所得税は1年間の所得に対して課税される税金のため、傷病手当を受給して所得が少なくなった場合、受給前まで支払っていた所得税が払いすぎとなってしまう可能性が高くなるのです。


そのため、確定申告を行うことで、払い過ぎた税金の還付を受けることができるのですが、

  • 在職中
  • 退職後

で手続きに違いがあるのです。


それぞれの手続き方法をご紹介していきたいと思います。

在職中(休職中)の場合

最終的な所得税額は年収が確定する年末時点で決まるので、それまでに毎月の給与から天引きされた源泉徴収税額とはズレが生じます。


この過不足を精算するのが年末に行われる年末調整です。


会社が行う手続きなので休職中でも会社に在職していれば年末調整を受けることができ、扶養控除や生命保険料控除等を受ける人は年末調整の際に扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」を提出します。


そして源泉徴収税額が多くて税金を払い過ぎている場合には、12月分の給与から天引きする税金の金額を調整することで精算するのが一般的です。


しかし休職中で無給の場合には12月分の給与がなくて天引きされる税金との調整もできません。通常の精算方法とは違って還付金を直接受け取る形になります。


会社側が源泉徴収簿の写し等を税務署に提出して手続きを進めますが、その際には還付金を受け取る本人からの委任状も必要なので記入を依頼されるはずです。


通常は11月頃に会社の担当者から年末調整の案内があるはずですが、詳細な内容は国税庁HP「年末調整の過不足額の精算」でも確認できます。

傷病手当金受給中に退職している場合の確定申告

退職している場合は退職後に再就職しているかどうかで行うべき手続きが異なります。


退職後年内に再就職した場合

再就職先の会社で年末調整を受けることが可能です。

以前の勤務先からの収入と転職先からの収入を合わせて源泉徴収税額と確定税額の過不足が計算されます。


なおこの際に以前の会社からの給与額や源泉徴収税額が分かる資料として源泉徴収票を提出しなければいけません。


退職する際に受け取るか退職後に郵送される物なので、無くさないように大切に保管して下さい。


再就職していない場合

再就職していない場合は会社が行う年末調整を受けられません。

自分で確定申告を行う必要があります。


確定申告は1月1日~12月31日の所得を計算して翌年2月16日~3月15日に自ら税額を申告して納税する手続きですが、会社員時代には源泉徴収や年末調整だけで課税関係が終了していることが多いので、確定申告のことがよく分からず困る方も多いはずです。


退職した会社から受け取った源泉徴収票や各種所得控除を受けるための書類をそろえる必要があり、確定申告書の記入にも時間が掛かると思います。


よく分からない場合には一人で抱え込まず、税務署や税理士に早めに相談するようにして下さい。

傷病手当金と医療費控除について|確定申告が必要

休職中に病院へ通い、治療費が一定以上になることも多いと思います。このような場合には医療費控除も受けることができますが、こちらも確定申告が必要になってきます。


申告する際に、民間の医療保険などで保険金を受け取っていた場合は、その金額を差し引く必要があるのですが、傷病手当金はどうなるのか気になる方もいるかと思います。


傷病手当金を受給していても、医療費控除から受給金額を差し引く必要はありません。以下で医療費控除について詳しくご紹介していきます。

医療費控除で還付を受けるには確定申告が必要

傷病手当金の受給者の中には休職の原因となったケガの治療等で医療費がかかる人もいると思います。


年間の医療費が10万円(総所得金額が200万円未満の人は総所得金額の5%)を超えた場合には超えた金額を所得から控除できる医療費控除を利用でき、医療費控除で還付を受けるには確定申告が必要です。


控除限度額は200万円で保険金等で補填された金額は除かれますが、税率を掛ける前の所得金額を低く抑えることで所得税額も安くできます。


そして自分の医療費だけでなく同一生計の家族分の医療費も含めることが可能です。

対象となる医療費には主に以下のようなものがあります。

  • 医師又は歯科医師による診療又は治療の対価
  • 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価
  • 治療を目的としたあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価

この他にも妊娠中の定期健診や出産費用も医療費控除の対象になります。


詳細な内容は国税庁HPの「医療費控除」「医療費控除の対象となる医療費」に掲載されているので、ご自身やご家族の医療費で控除の対象になるものがないかどうか確認してみて下さい。

傷病手当金は扶養控除や配偶者控除に影響する

傷病手当金は所得税が非課税となるため、扶養控除配偶者控除にも影響がないと考えるかもしれませんが、扶養控除がや配偶者控除には影響があるため注意が必要です。


これらの控除への影響を考える上で重要なことが、

  • 税務上の取扱い
  • 健康保険制度上の取扱い

というこれら2つの違いです。


税務上の取り扱いでは非課税対象となる傷病手当金ですが、健康保険上では取り扱い方が違うのです。以下で詳しく解説していきます。

所得税の計算と社会保険上の計算で扶養控除の扱いが違う

税金の扶養と健康保険の扶養の対象を表にしたものが以下のようになります。

所得税の扶養控除健康保険の被扶養者
対象者同一生計の親族で6親等内の血族及び3親等内の婚族等(配偶者は除く)直系尊属、配偶者、子、孫、兄弟姉妹とそれ以外の3親等内の親族で扶養者と同居し生計を維持されている者等
収入要件年間の所得金額が38万円以下年間の収入金額が130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は180万円未満)
収入要件を判断する際の金額傷病手当金等の非課税所得は含めない所得税では非課税になる傷病手当金や出産手当金なども含む

以上のように、税法上の扶養では傷病手当金などの非課税となる収入は所得に含まれないため、控除の対象になるかどうかの計算には、支給された金額を含ませる必要はありません。


一方健康保険上の扶養では対象となることに注目です。


休職中に退職し、家族の扶養に入ることを考えていても、傷病手当金を含めた見込み年収が130万円を超える場合は扶養に入ることができないのです。健康保険の扶養に入れないということは、健康保険料の負担が生じてしまうため、出費が多くなってしまいます。


さらに、健康保険へ自分で加入する必要があり、会社の健康保険制度に継続加入をするか、自治体の国民健康保険に加入する必要があります。

扶養親族等の移動がある場合は要注意

所得税の扶養控除や配偶者控除はその年の12月31日の現況で判断されます。年末調整の手続きをして以降12月31日までの間に家族構成が変わった場合等には注意しなければいけません。


例えば年末調整の手続きは11月頃に会社から案内が行われて必要書類に記入して提出しますが、配偶者控除を受ける前提で書類を提出した後12月31日までに離婚をした場合には配偶者控除は受けられなくなります。


扶養控除の対象になると思って申請したものの最終的にご家族の年収が増えて38万円を超えてしまうケースも扶養控除対象外になるので注意が必要です。


このようなケースでは結果的に年末調整で提出した書類が正しくなかったことになり、後々に税務署から指摘を受けて修正の手続きをすることになります。


年末調整の際に正しく手続きをしておけば不必要な手間が掛かることもないので、手続きミスをしないように気を付けましょう。

【注意】傷病手当金受給中も住民税や社会保険料の支払いは必要

休職中に受け取る傷病手当金の金額は休職前の給与額の約3分の2であり、休職前に比べて収入が減るので生活面で支出を切り詰める人も多いはずです。


そして出来る限り支出を減らしたいという思いがある中で「休職中は住民税社会保険料は免除されるだろう」と勘違いする人が多いのですが、実はこれらは休職中でも支払義務があります。


育休・産休の取得時には社会保険料の免除制度があるものの、休職は住民税や社会保険料の免除事由にはなりません。


休職前のように給与天引きで支払いが完了する訳ではないので支払方法の確認も必要です。


傷病手当金をご自身で受給して社会保険料等相当額を会社に支払う方法や、傷病手当金の受取代理人として会社を指定して会社が社会保険料等を引いた上で本人に傷病手当金を支給する方法などが考えられますが、まずは会社に確認・相談するようにして下さい。


なお住民税については給与天引きにより納税する特別徴収ではなく自分で納付する普通徴収に切り替えることも可能です。


いずれにしても休職中の住民税や社会保険料の納付方法は会社によっても方針が異なる場合があるので、会社担当者に確認することをおすすめします。

傷病手当金を受給中、副業やアルバイトで収入を得ることはできるか


傷病手当を受給して休職をしている間に、体の調子がいいときに副業などをしてみようと考える方もいるかもしれません。このように、受給中に副業やアルバイトなどで収入を得てもいいものなのでしょうか?


傷病手当を受給する条件の一つが、「仕事をすることができない」です。そのため、受給中に副業などで収入がある場合は、その日の傷病手当金の支給は無くなることになります。


副業などで得た収入が、傷病手当金よりも少なかった場合は、その差額が支給されることになりますが、基本的に受給中は副業などは行えないと思っておいていいと思います。

参考|退職金や失業手当は確定申告の対象となるのか

傷病手当金について解説してきましたが、退職金失業手当はどうなるのか気になる方がいると思います。これらも場合によっては確定申告が必要になります。


退職金は所得税などが特別徴収されることになっているため、会社で「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合、確定申告を行う必要はありません。この申告書の提出を行っていなかった場合だけ、確定申告が必要となるのです。


失業手当は傷病手当金と同様、所得に含まれない収入となるため、基本的には確定申告の必要はありません。しかし、確定申告を行う方がお得になるケースがあり、

  • 年度途中で退職し、年末調整を行っていない
  • 再就職したが失業中の健康保険料などを年末調整に含めていない

などの場合、税金の還付が受けられる可能性が高いため、確定申告を行うようにしましょう。

まとめ|傷病手当金は確定申告不要だが、することで還付金を受け取れる場合がある

いかがでしたか?ここでは傷病手当金の確定申告や控除申請についてご紹介しました。


この記事のポイントは

  • 傷病手当金受給中は確定申告をすることで税金の還付が受けられる場合がある
  • 医療費控除を受ける場合は確定申告が必要
  • 所得税の扶養と健康保険の扶養では傷病手当金の取扱いが異なる
  • 受給中でも住民税や社会保険料は支払いが必要
  • 副業などで収入がある日は傷病手当の受給はできない
  • 退職金は基本的に確定申告は不要だが、失業保険は確定申告を行うことで税金の還付がある

になります。


休職中に受給できる傷病手当金、基本的には非課税であるため確定申告などを行う必要はありませんが、医療費控除などを受ける場合や、税金の還付がある場合は、確定申告を行った方がお得になります。


傷病手当金が支給されると言っても給料の2/3程度です。このようなときにはしっかりと節約をしたいですよね。節税や節約等の生活に役立つお金の知識を身に付けて活用することが大切です。


ほけんROOMでは他にも保険に関する記事を多数掲載しています。興味のある方はぜひ参考にしてください。

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