傷病手当金は2回目以降も支給される?申請書の書き方や待機期間も解説

病気で休職すると受け取れる、健康保険の傷病手当金。2回目以降の申請だと受給条件がありますが、同じ病気(同一傷病)と別の病気の場合で条件や受給金額が異なります。今回は、2回目以降の傷病手当金の申請の受給条件から金額、申請方法(申請添付書類)について解説します。

傷病手当金を複数回(2回目以降)受け取る条件とは?



傷病手当金の支給期間は、支給開始日から最長で1年6ヵ月ですが、その期間を過ぎた場合や、もしくは過去に支給歴があった場合に、2回目以降受け取れるのか気になりますよね。


同じ病気でも受け取れるのか、再発の場合はどうなるのか、別の病気はどのような扱いになるのか、また申請方法は1回目と同じなのか、と不安になっているかと思います。


実は、1回目と2回目の病気の関係によって、支給条件が大きく異なってくるのです。


この記事では、2回目以降の傷病手当金の申請について

  • ケース①:1回目と同一傷病(同じ病気)の場合
  • ケース②:1回目と別の病気の場合
  • 傷病手当金(2回目)の申請方法、書き方と支給金額
  • 傷病手当金(2回目以降)のよくある質問

この記事を読んでいただければ、ご自身の状況において2回目の申請の傷病手当金は受け取れるのかの参考になるかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

ケース①:1回目と同一傷病(同じ病気)の場合

2回目以降の傷病手当金支給の条件は、次の2つパターンによって変わります。

  • 同じ病気による場合
  • 別の病気による場合

まずは、1回目の傷病手当金の支給時と同じ病気による場合を見ていきましょう。


ここで重要なのは、支給期間です。


まずは、傷病手当金についてのキホンのおさらいです。 

  • 1つの傷病につき支給期間は1年6ヶ月
  • 1年6ヶ月は支給開始からスタート
  • 1年6ヶ月は支給日数ではなくカレンダー上の期間

これを押さえておいてください。


なので、同じ病気で2回目の休職をした場合に傷病手当金を支給できるのは「最初の支給開始から1年6ヶ月以内であること」が原則です。

初回の受給開始から1年6ヶ月以内の場合

最初の支給開始から1年6ヶ月以内の場合は同じ病気で休業しても傷病手当金が支給されます。


この2回目の支給時には1回目の傷病手当金支給時にあった3日の待期期間は必要ありません。


ただし、この1年6ヶ月の期間の計算は支給された日数の合計ではありませんので注意してください。


「復職できている期間」も「支給されている時期」も含めて1年6ヶ月を1回目の傷病手当金支給開始時から計測します。


傷病手当金は「1傷病につき支給開始から1年6ヶ月の期間内の休業に対して支給」されますが、その1年6ヶ月を超えて1回目と同じ病気になり再度の休業になった場合は支給されないのでしょうか…?


そのようなことはなく、条件によっては支給されます。


つぎで解説しますね。

健康保険組合が別の病気と判定する場合(完治後の再発など)

傷病手当金の支給期間である1年6ヶ月を経過した後に、1回目と同じ病気で再び休業しても傷病手当金を支給してもらえる場合があります。


それは、1回目と同じ病気でも、一度病気が完治した後の再発と判断された場合です。


完治後に再発したという場合は1回目と別な病気とみなされ、新たに1年6ヶ月の支給期間が生じます。


完治したかどうかは、医学的な視点だけではなく、社会的治癒という視点も加味して健康保険組合が判断を行います。


この判断については、個々の状況によって変わりますから、加入している健康保険組合問い合わせてもらうほうがいいですが、簡単なポイントを紹介します。


社会的治癒が認められて完治後の再発とみなされるには、病気と就労状況が重要です。


1回目の傷病手当金を受給していた状況から復職し、通院や服薬などなく一定期間就労できていることは完治と判断される上でのポイントです。


その復職後、健康に働いていたが、病気になったというような状況だと完治後の再発として1回目と同じ病気でも別な病気とみなされ支給対象になるわけです。


ただ、繰り返しになりますが、支給対象かは健康保険組合が判断するものなので審査内容についてはご自身の状況を整理して、加入している健康保険組合にご相談ください。

ケース②:1回目と別の病気の場合

ここまでは、1回目と同じ病気でも傷病手当金を受給できるかについて解説してきましたが、つぎに2つ目のパターンの違う病気の場合を解説していきますね。


2回目以降が別な病気であれば、「1つの傷病につき最長1年6ヶ月の期間で傷病手当金が支給」される原則からもわかるように2回目の傷病手当金を受給可能です。


傷病手当金は、1つの病気や怪我ごとに最長1年6カ月の期間内の休業した部分で支給されるものと覚えておきましょう。


ただし、1回目と別な病気であっても、関連している病気だと別な病気とみなされず支給対象外の場合もあります。


例えば、がんの場合ですが、1回目の胃がんが転移して肺がんになったという場合は、別な病気と認められない場合もあります。

うつ病(精神疾患)やがん、切迫早産でも受給可能

傷病手当金は、病気やケガによって会社を休んで収入がない場合に支給されるものですが、その「病気やケガ」の対象になるものにはどんなものがあるのでしょうか。


実は、支給の対象となる病気は幅広いのです。


うつ病などの精神疾患で会社を休んでいる場合ももちろん対象となります。


がんなどの大きな病気も対象です。


また、切迫早産や切迫流産、妊娠悪阻、妊娠高血圧症など出産妊娠に関わるものも対象です。


出産妊娠関係だと自費診療も多いので健康保険組合から支給される傷病手当金も支給対象外のような気になってしまいますが、自費診療の病気でも傷病手当金では対象となる病気もあるのです。


ただし、注意点もあります。


切迫早産などで入院や自宅療養をしなければならず会社を休業する場合、産休期間の部分は出産手当金が受給できるので、傷病手当金もあわせて受給することはできません。


妊娠の早い段階から自宅療養を医師に言われたような場合は出産手当金の支給期間まで傷病手当金を受給できるようにしましょう。


2回目の傷病手当金の受給という点からは、うつ病などの精神疾患の2回目は、1回目のうつ病との関係の審査が厳しい傾向にあります。

  • 「完治後の再発で別な病気か」
  • 「完治しておらず同じ病気か」

同じ病名でも「完治」を境界線に同じ病気か別な病気かの判断が異なります。


そして、精神疾患の場合は、「完治」についての判断が難しいことからこのような傾向があります。

2回目以降の傷病手当金の申請が不支給と判断される基準

2回目の傷病手当金の申請をして不支給決定がされるようなケースをまとめてみますね。


つぎの項目に当てはまる場合は不支給になる場合があります。

  • 1回目の支給期間を経過後に同じ病気による場合(※1回目完治の場合を除く)
  • 1回目の傷病と関連していると判断された場合
  • 美容手術などの場合(傷病とみなされません)
  • 病院作成の就労不能証明の不足による場合(※この後解説)

病院で作成してもらえる就労不能証明は、一般的にその病院での状況しか証明してもらえません。


転院した場合には、転院前の病院での状況を証明してもらえませんので、転院する前に病院と話し合いをしておきましょう。


また、病院にかかる前に自宅療養していた期間を病院が証明してくれないとその期間は支給対象外となる場合もあります。


なので、休業して療養を考える場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

2回目以降の傷病手当金の支給金額・支給申請の方法とは?

1回目も2回目以降も傷病手当金の支給金額は同じです。


ご自身の標準報酬月額をもとに支給される傷病手当金の金額が決定されます。 


なお、同じ病気の場合(※完治後の再発除く)だと2回目以降の傷病手当金については、待期期間はありません。


通常、傷病手当金は休業し初めの3日間は待期期間として支給日数に含みません。


つぎに傷病手当金の申請方法と流れについて解説します。

  1. 傷病手当金支給申請書を職場又は健康保険組合から入手する
  2. 医師に傷病手当金支給申請書の意見書を記入してもらう
  3. 会社に傷病手当金支給申請書の事業主証明を記入してもらう
  4. 一般的には整った傷病手当金支給申請書を会社から健康保険組合へ提出

「傷病手当金支給申請書」は、協会けんぽの場合はホームページからもダウンロードすることができます。


「傷病手当金支給申請書」(協会けんぽホームページへ)


医師が就労不能を証明する「意見書」ですが、病院によっては作成までに、2週間くらいかかる場合がありますので、早めに確認と対応をするようにしましょう。


申請完了後に、健康保険組合での審査があり、審査の結果、傷病手当金が支給される場合は「支給決定通知書」が、不支給の場合は「不支給決定通知書」がご自宅へ郵送されます。


いつ指定の口座へ傷病手当金が振り込まれるのかについてですが、申請から約2~3週間後となります。

傷病手当金の支給金額の計算方法

傷病手当金は1回も2回目以降も支給額の計算式は同じです。


計算方法を解説していきますので、ご自身の給与明細などに記載されている「標準報酬月額」から支給される金額を計算してみてください。


まず、「標準報酬月額」から「標準報酬日額」を算出しましょう。


「標準報酬日額」とは傷病手当金の支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額を30で割った数値のことです。


そして、この「標準報酬日額」の3分の2が傷病手当金の支給日額ですので、その支給日額に支給日数(休業期間)をかけるとご自身の傷病手当金の受給額が算出できます。


文字だけだと分かりづらいので、具体例から計算してみましょう。


つぎのケースの場合で計算してみます。

  • 支給開始前の標準報酬月額の12ヶ月平均=30万円
  • 傷病により休業する期間=50日間 

30万円(標準報酬月額)÷30日=1万円(標準報酬日額) 

1万円(標準報酬日額)×2/3=6,667円(支給日額)

 6,667円(支給日額)×50日=333,350円(支給額)

傷病手当金の申請の手続きや必要書類(申請添付書類)

傷病手当金を申請するにあたって添付書類がいくつか必要になりそうですよね。


ですが、ご本人はご病気で就労もままならない状況です。


そんな状況での書類集めなんて想像しただけでも大変ですよね。


実は傷病手当金の申請には、「傷病手当金支給申請書」の提出だけです。


申請書には医師や会社に記入してもらう箇所がありますので、とりあえず通院している医療機関や職場に早めにご自身の状況を相談しましょう。

2回目以降の申請書類の書き方

ここでは、上で触れた「傷病手当金支給申請書」の書き方を詳しく解説します。


まず、申請書は以下の3つの部分からなっています。

  1. 被保険者(申請者)記入用
  2. 事業主記入用
  3. 療養担当医記入用

※ただし、場合によっては以上の書類以外の書類の提出を求められることもあります。


そのうち、自分で必要事項を埋める必要があるのは①の「被保険者記入用」の部分のみです。


②は会社側に、③は医師に必要事項を書いてもらうようにします。


そこで、①の「被保険者記入用」の部分の書き方と間違いやすいポイントを実際の申請書類を使って解説します。


傷病手当金支給申請書「被保険者記入用」部分

傷病手当金支給申請書「被保険者記入用」部分

間違えやすいポイントとしては、以下の2つです。

  1. 被保険者の具体的な仕事内容
  2. 療養のために休んだ期間(請求期間)

まず被保険者の具体的な仕事内容は、上記の「営業職」のように、具体的に書く必要があります。


次に、療養のために休んだ期間は、公休日も含めて仕事を休んだ日数を記入します。


そしてここに書いた日数分だけ傷病手当金が支給されることになります。


書類に不備があった場合は、給付が遅くなってしまうので間違いのないように書き、提出しましょう。

2回目以降の傷病手当金の受給でよくある質問。うつ病の場合は?

いろんな病気の中でも精神疾患、特に患者数が多いうつ病に関する疑問が多いです。


傷病手当金は健康保険組合の審査があり支給が不支給か決定されますので、確実なことは言えませんが、事例を紹介していきましょう。


そもそも、うつ病は完治の判断が難しいです。


1回目うつ病で休業し、復職したのち数年後に再びうつ病になるという事例は多いかと思いますが、この時、1回目のうつ病が完治して2回目うつ病になったと審査された場合は2回目の傷病手当金が支給されます。


しかし、1回目が完治したとみなされないと2回目のうつ病は1回目の継続とみなされて1回目の支給期間である1年6ヶ月を経過していると支給対象外です。


この完治の判断基準の明確な基準は示されていませんが、1回目のうつ病を治療し復職後に5年間くらい通院や服薬していなかったが、職場環境の変化などで再びうつ病になり療養のために休業に至り2回目の傷病手当金の申請をしたケースの場合は、1回目のうつ病は完治していて 2回目は新たに再発したと見なされて支給されました。


一方で、同じく5年ほど復職期間があってもその間に通院や服薬していると完治したとはみなされずに不支給となったケースもありました。


復職期間に通院や服薬をしていると不支給になるのかというとそういうわけでもないです。引き続き通院や服薬をしていたが、就労環境なども含めて1回目のうつ病は「社会的治癒」があったと判断され、2回目のうつ病で支給決定された例もあるようです。


ご自身の状況をよく整理して、加入している健康保険組合に相談してみるのが良いでしょう。

退職後でも傷病手当金2回目の受給は可能?

傷病手当金は、病気やケガによって就労できずに収入がなくなってしまうことを補償するものですので、退職してしまうと受給資格がないように思いますが、退職後も受給資格があるのです。


病気やケガで、長期間の休業をした場合、復帰しづらいと感じる方もいますよね。


特に、精神疾患などの場合だとその傾向があるようです。


職場環境などからうつ病にいたることもありますよね。


そんな場合だと退職して新しい職場で再スタートしたいと考えます。


そんな場合もありますから、傷病手当金の受給資格が維持されるのです。


それでは退職後に傷病手当金を受給する条件を解説します。


退職後に傷病手当金を受給するには、まず
退職日以前に傷病手当金を受給できる資格がないとだめです。


なので、3日間の待機期間に注意してください。


簡単に言えば、退職日の前に3日間以上連続して出勤しない日を経てから退職するということです。


これ以外にも細かな条件があります。

  • 健康保険加入が1年以上
  • 退職日に就労不可
    退職後も就労不能
  • 受給開始から1年6カ月以内
    給与の支給がないこと

条件を満たせば2回目も支給されます。


ただし、退職後は、1年6ヶ月の期間が残っていても一度仕事に就くことができる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。

2回目は待機期間がないため振込日(支給日)が早い?遅い場合は?

2回目以降の傷病手当金の振込は1回目より早いです。


それは、1回目で審査に時間をかけているからです。


なので、1回目と同じ病気が継続ということで2回目以降を申請している場合は1回目より早いです。


別な病気だと新たに審査しますから、1回目も2回目も変わらないです。


もしも、振込が遅い場合(申請から2週間以上経過)は、健康保険組合で何らかの理由で追加審査をしている場合か、会社から健康保険組合に提出するのが遅れたなどの場合です。


申請から2~3週間が経過しても振り込まれないという場合は職場に聞いてみましょう。


職場でもわからない場合は、職場から健康保険組合に確認してもらうかご自身で電話してみてもいいでしょう。

2回目の傷病手当金の申請をした人の体験談

ここでは、実際に2回目の傷病手当金の申請をした人の体験談から、もう一度申請方法などをおさらいしておきましょう。

  • 2回目に傷病手当金を申請する際、前回の申請方法とは違うのか気になっていました。そもそも受給資格は大丈夫なのか、申請書類はどこでもらえるのかなどが得に気になっていました。協会けんぽだったので、ネットから申請書類をダウンロードできたので便利でしたね。また支給までの期間ですが、1回目の時よりも早く受給できた気がします。

また、傷病手当金があるとはいえ、働けない期間が長くなれば家計が心配になりますよね。


そのような時は、お金のプロであるFPに相談することをおすすめします。


ほけんROOMでは、FPによる無料相談を受け付けています。


下のボタンから無料相談予約ができますので、是非ご利用ください。

まとめ:2回目以降の傷病手当金の申請

ここまで2回目以降の傷病手当金について解説してきました。


以下の5点が中心の記事でした。 

  1. 2回目が1回目と同じ病気を理由とする場合
  2. 2回目が1回目と別な病気を理由とする場合
  3. 2回目と1回目の病気が同じか別なのか健康保険組合が判断
  4. 2回目も1回目もうつ病の場合は「社会的治癒」がポイント
  5. 退職後でも傷病手当金を受給できる

1回目も2回目も支給される金額は同じですし、申請方法も同じで複雑ではありません。


しっかり療養して復職するようにしましょう。


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