傷病手当金から所得税や住民税などは引かれる?非課税?確定申告の必要性も解説

傷病手当金から税金は引かれるのでしょうか?今回、所得税や住民税などの税金が傷病手当金に課税されるのか、確定申告や年末調整の必要はあるのかなどを解説します。また、傷病手当金の支給額の計算方法や支給日、扶養との兼ね合いなどの基本情報もおさらいします。

所得税や住民税は傷病手当金から引かれる?課税・非課税の税金を解説


元気で働いているサラリーマンの人でも、万が一病気や怪我で仕事を休まなければならなくなったときは給料がもらえず、とても不安になりますよね。


そんなとき心強いのが傷病手当金の制度ですが、もし傷病手当金から税金が引かれてしまうと手取りが少なくなり、せっかくもらえるはずの金額が少なくなるとがっかりしてしまいそうです。


そこで、この記事では「傷病手当金から所得税や住民税などの税金は引かれてしまうのか」について、

  • 傷病手当金の所得税や住民税などの税金における課税区分
  • 傷病手当金と税金に対する疑問
  • 傷病手当金と社会保険料の関係

以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、傷病手当金と税金の関係について詳しく知ることができ、万が一の際に慌てずに備えることができます。


是非最後までご覧ください。

傷病手当金は課税を免除される「非課税所得」!

傷病手当金は、病気や怪我により業務に就くことができなくなってしまったとき、その療養中の生活保障として健康保険組合から行われる給付のことです。


毎月の給与額のおよそ60%程度を受け取ることができるため、給与などの補填の意味合いを有しており、一見収入と扱われ、税金が課税されそうな給付金と勘違いされやすいです。


しかし、傷病手当金は給付の根拠ともなっている健康保険法および地方公務員等共済組合法によって、所得税や住民税などの税金は非課税と規定されています。


上記の規定のため、傷病手当金には税金はかからないこととなります。


参考:国税庁「給与所得」

傷病手当金受け取りで、確定申告や年末調整が必要な場合と不要な場合

傷病手当金は非課税ということはお分かりいただけたかと思いますが、傷病手当金を受け取っていた期間の確定申告年末調整はどの様に申告したらいいのか、疑問を持つ方もいると思います。


このような場合に申告は必要なのでしょうか?基本的には必要ないと言われていますが、場合によっては確定申告を行うことで税金の返還があるようです。


どのような場合に必要なのでしょうか?以下でそれぞれご紹介します。

傷病手当金を受給しても、基本的には確定申告や年末調整は不要

傷病手当金には税金がかからないことになっているため、基本的には受給していても年末調整や確定申告時に申告する必要はありません。非課税・確定申告なども不要ということから、傷病手当金から引かれるものは特に無いと言えます。


健康保険組合の種類によっては、付加給付として、法定給付終了後にも受給することができる場合もあります。この付加給付も非課税となるため、確定申告や年末調整時の申告は不要となります。


病症手当以外の用件で確定申告などを行う際にも、傷病手当金を収入として申告する必要はありません。


また、医療費控除をを受けるために確定申告を行う場合もあると思います。


生命保険の保険金などを受け取っていた場合、受け取った金額を差し引く必要がありますが、傷病手当金は差し引く必要が無く、医療費控除の申告にも影響はありません

退職後に傷病手当金を受給する場合は確定申告が必要

傷病手当金を受給しているときに確定申告が必要になるのは、退職後に受給をしている(受給中に退職した)場合になります。


確定申告を行うのは、払いすぎている税金の返還を求めるためです。


源泉徴収として毎月給料から引かれている税金は1年間の所得を見込んで計算されたものです。


働けない場合は給料が減るため、源泉徴収額も減るのですが、傷病手当を受給する前の段階ではどれほど減るのか分かりません。


退職していない場合や、次の会社に就職している場合、年末調整を会社で行ってもらえ還付されるのですが、退職してしまった場合は自分で行う必要があるのです。


ほとんどの場合、確定申告を行うことで、払い過ぎていた税金が還付されるので、退職した場合は忘れずに確定申告を行うようにしましょう。

傷病手当金を受給していても扶養控除を受けられる?


傷病手当を受給している状態で、扶養控除を受けられるのでしょうか?


ここでポイントになるのが、扶養の種類です。

  • 所得税の扶養:扶養家族の人数で所得控除を受けられる
  • 社会保険の扶養:扶養者が社会保険料を負担せずに保険の給付を受けられる制度

このように2種類あることはご存じでしたか?


扶養控除を受けられるかどうかは、どちらの種類かによって違ってきます。


それぞれ以下で詳しくご紹介します。

配偶者控除や扶養控除の計算において、傷病手当金は所得に含まない!

まずは所得税の扶養についてご紹介します。


所得税の扶養を受ける場合、配偶者控除であれば103万円以下、配偶者特別控除であれば201万6千円未満、の給与収入である必要があります。


傷病手当を受給している場合、これらの金額以上の手当金を受給してしまうと、扶養から外れることになるのでは、と不安を感じる方もいるかもしれませんが、病症手当金は所得税の計算上所得からは外されます


所得税の扶養だけを考えた場合、病症手当金の額は気にしなくてよい、ということになるのです。

130万円以上傷病手当金を受給した場合は、社会保険の扶養から外れる

所得税が非課税であるということは、いわゆる103万円の壁を越えない範囲であれば所得税法上の扶養に入ることができ、扶養に入れた側が配偶者控除によって38万円の所得控除を受けることができます。

しかし、扶養には2種類あり、所得税法上のものの他に社会保険における扶養というものもあります。

社会保険の扶養とは、配偶者の扶養に入ることによって社会保険料の負担無しで社会保険に加入することができる制度です。

社会保険の扶養に入るためには本人の年間収入が130万円以下という基準がありますが、この収入の中には給与等はもちろんですが、傷病手当金も対象になるのです。

つまり、傷病手当金をもらうことで年間の収入が130万円を超えた場合、その年度は社会保険においては配偶者の扶養に入ることができず、社会保険料を負担しなければならなくなるため注意が必要です。

傷病手当金は医療費控除額から引く必要はない?

医療費控除を受けようと考えている方もいるかと思います。病気などで会社を休んでいるため、治療費も高額になってしまう方が多いのではないでしょうか。


医療費控除を受ける場合、傷病手当金はどの様な扱いになるのか気になりますよね。保険金と同じように差し引く必要があるのか、非課税なので差し引く必要はないのか、気になるところです。


また、そもそも医療費控除について詳しく分からない、という方も多いと思いますので、以下でそれぞれご紹介したいと思います。

そもそも医療費控除とは?

医療費控除は、1年間にかかった医療費が10万円を超えた場合、申告することで所得控除を受けることができる制度です。


期間は1月1日から12月31日の1年間の間です。


自分の医療費だけでなく、生計を一にする配偶者や親族にかかった医療費も合計することができます。


どれくらいの金額が控除されるかは、計算することができます。式は以下の通りです。

1年間の医療費合計-保険などで補填される金額-10万円=医療費控除額

総所得200万円以下の場合、10万円の部分が総所得の5%になります。


式を見ていただくと分かるように、保険などで補填される金額を差し引く必要があるのですが、この金額に傷病手当金は含まれているのか、以下で詳しく説明します。

傷病手当金は、医療費控除額から引く必要はない

また、勘違いが多いこととして傷病手当金を受け取ったとき、医療費控除の対象となる医療費から差し引かなければならないのかという点です。


医療費控除は、年間の医療費から、その療養行為にかかる医療保険の給付金や高額療養費などの給付金は差し引かなければならないことになっているためです。


医療費控除は、療養にかかった支出額のみが控除できる制度のため、支出を減らす上記のような給付金は控除額から減らさなければなりません。


しかし、傷病手当金は療養行為にかかる費用を補填するためのものではなく、生活保障のための給付金であり、直接的に医療費を軽減するための給付金ではありません。


そのため、傷病手当金は医療費控除の対象となる医療費からは差し引かなくて良いこととされています。

傷病手当金受給中にも支払いが必要な税金は、「住民税」と「社会保険料」

このように、受給者にとっては税金面では有利となる傷病手当金ですが、いくつか注意点があります。


傷病手当金をもらっている間は税金がまるまる免除されると勘違いされる方も中にはいますので、以下に支払いが必要な税金などについてまとめました。


特に給与から住民税や社会保険料が天引きされていた人は、予想外の出費に驚かないように、この部分の知識は付けておく必要があります。


また、まれに課税されるケースもありますので、ご注意ください。

住民税は傷病手当金を受け取っていても支払いが必要

まず、傷病手当金をもらっている期間中でも住民税の支払いは必要です。


住民税は、前年度の所得に応じて翌年度6月から税金を納付することとなっています。


給与所得者であれば特別徴収により毎月給与から天引きされますが、療養期間中は給与をもらっていないと考えられるため、給与からの天引きができません。


しかし、その場合でも毎月の住民税は納税しなければならないため、逆に住民税額を会社に支払わなければなりません。


また、退職した場合は普通徴収により個人が納めなければならず、傷病手当金をもらっているからといってその住民税が免除されるわけではありませんので、ご注意ください。


ただし傷病手当金をもらっているときは、その分給与所得も減っていると考えられるため、翌年分の住民税額はその分安くなります。

社会保険料の支払いも必要

また、傷病手当金をもらっている最中でも、会社に在籍している間は社会保険に加入しており、社会保険料の支払いも必要になります。


社会保険料は、住民税と同様に毎月の給与から天引きされ、会社が個人に代わって納付しています。


このため、給与が発生していない場合は給与からの天引きができませんので、住民税と同様に社会保険料に該当する金額も会社に支払わなければなりません。


なお、会社に支払うときには以下の2つのパターンが考えられます。

  1. 毎月、会社から個人に社会保険料および住民税相当額の振込依頼通知が来る
  2. 復職時に、休職期間中の社会保険料および住民税がまとめて請求される

会社によっては、一度会社が立て替えておいて、復職後に少しずつ天引き額を上乗せすることで、従業員の負担感を少なくしてくれることもあります。


しかしいずれにせよ支払いが免除されることはありませんので、どのように支払っていくかは会社としっかり相談しておきましょう。

傷病手当金の受給者が死亡した場合は相続税の課税対象

傷病手当金は、基本的に本人が申請をし、その本人が受け取る給付金です。


このため通常相続の問題は発生しませんが、療養期間中に受給者が亡くなってしまうことも考えられます。


この場合、傷病手当金は本人には振り込まれず、遺族など本人とは別人の名義の口座に振り込まれることとなります。


高額療養費や傷病手当金といった給付金は、本来亡くなった方の財産の一部であるとみなされるため、遺族の方がこれらのお金を受け取ったときは、相続税の対象となりますのでご注意ください。

傷病手当金とその税金に関するQ&A集

傷病手当金が税金の対象外の収入であることは分かりましたが、他にも注意すべきことがあります。


社会保険における収入の範囲は所得税とは異なり、所得税法上は収入とはみなされなくとも、社会保険の上では収入とみなされるものが存在します。


特に配偶者の扶養に入っている人は、いくら傷病手当金を受け取ったのかを覚えておいたほうが良いです。


ここからは、主に社会保険における傷病手当金の取り扱いについて、詳しくご説明します。

傷病手当金の支給額はいくら?支給日は?

傷病手当金の支給額は人によって違いがあります。計算式は以下のようになっています。

直近12ヶ月の標準報酬月額の平均÷30×2/3

およそ給料の2/3が支給額となります。


標準報酬月額の平均が30万円だった場合、

300,000÷30×2/3=6,667円

およそ6,667円が支給日額となるのです。


入社してから12か月経っていない場合では、

  1. 入社月から支給開始月までの標準報酬月額の平均
  2. 加入している健康保険組合の標準報酬月額の平均

の金額の低い方が適用されます。


支給日がいつになるのか、いつもらえるのか気になる方も多いと思いますが、支給日は加入している健康保険組合によって違います。


TJKの場合では、毎月10日、20日、末日のいずれかに入金される、ということになっています。


支給期間はどこの健康保険組合でも同じで、最長1年6か月までとなっています。


この期間中、有給休暇などを取得して給料の支払いがあった場合、その期間の支給はありません。また、休職中にボーナスが出る場合もありますが、ボーナスは賞与となり、ボーナスを受け取っても傷病手当金が減額されることはありません

会社側が傷病手当金と社会保険料を相殺するのは違法?

もともと給料から天引きされている場合が多い社会保険料ですが、会社を長期間休んでいる場合、給料が発生しません。


このような場合、傷病手当が一度会社に振り込まれるシステムになっていると、社会保険料がそこから天引きされるのではと考える方もいるかと思います。


しかし、傷病手当は給料ではないため、会社が勝手に社会保険料を天引きすることは違法になります。


このような場合、勝手に天引きすると違法になるため、本人の同意を得てから傷病手当金から社会保険料を相殺する方法をとることをおすすめします。


本人が拒否した場合は、別の形で徴収する必要が出てきます。

傷病手当金受給中は国民健康保険の保険料の減免対象?

傷病手当金を受けているときに、やむを得ず会社を退職し国民健康保険に切り替えるというケースもあるでしょう。


国民健康保険料は、本人の所得によってある程度金額が変わり、生活困窮者などは保険料が免除されたり、減免されることもあります。


しかし、傷病手当金を受け取っている間は一定の収入があるため、生活困窮者とはみなされなくなり、保険料の減免を受けることは難しいと考えられます。

傷病手当金から失業保険に切り替えた場合、税金はかかる?

また、傷病手当金を受給中にやむを得ず会社を退職するケースでは、療養後に再就職のため失業給付を受給することもあるでしょう。


失業給付は働くことができ、なおかつ就業の意志のある人が、就業までの生活費として給付を受け取ることができる制度のため、傷病手当金と重複して受給することは制度の理念上ありません。


しかし、療養が終わった後は再就職のために活動をするという人も多いでしょう。


そんなときは失業給付に税金がかかるのかは気になるところですが、失職給付は最低限の生活の保障のための給付であり、所得とはみなされません。


そのため、所得税や住民税がかかることはありません


また失業給付も傷病手当金と同様に、所得税の課税対象ではないということは確定申告や年末調整における所得税の精算については申告不要となります。

傷病手当金に関する税金まとめ

ここまで傷病手当金と税金に関する疑問等について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは、

  • 傷病手当金は所得税や住民税などの税金がかからない
  • 傷病手当金を受け取った年度は、確定申告や年末調整は不要
  • 傷病手当金を受給して年間収入が130万円を超えると社会保険の扶養に入れない

です。


配偶者の扶養に入っている場合はその年の収入額だけに注意していれば、他に傷病手当金を受給することによるデメリットは特にありません。


せっかく高い社会保険料を支払っているので、万が一就業が難しくなるような怪我や病気となってしまった場合は、必ず傷病手当金を申請するようにしましょう。


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