公務員の傷病手当金が支払われる条件とは?病気休暇や休職との関係を解説

福利厚生が手厚い公務員。うつ病など長期の治療を必要とする場合、最大3年休職することができます。加えて、共済組合の傷病手当金制度を利用することで、休職中は無給になることはありません。この記事では、傷病手当金が支払われる仕組みについて説明します。

公務員の傷病手当金が支払われる条件とは?

福利厚生が手厚い公務員ですが、病気やケガで仕事ができなくなった場合に受給できる制度について知りたいと思っていることと思います。


公務員の場合、病気休暇や休職制度を利用するには、どのような条件で利用できるのかが気になるのではないでしょうか?


実は、公務員は民間企業とは違い有給で仕事を休職できる期間が約3年間あるのです。


この記事では、

  • 公務員が傷病手当金が受給できる条件
  • 病気休暇と病気休職制度とは
  • 病気休暇と病気休職制度の給料とボーナス
  • 制度を利用する際の注意点
について、詳しく解説します。

この記事を読んでいただければ、公務員が傷病手当金を受給できる条件がわかるので、病気やケガをした際に役に立つかと思います。ぜひ最後までご覧ください。


公務員が傷病手当金をもらうための条件

傷病手当金は、健康保険に加入していれば誰でも支給される制度です。


しかし、公務員は他に病気休暇や休職制度を利用することができます。


以下の項目でも説明しますが、傷病手当金は1年6か月は給料の約3分の2が支給額になりますが、病床手当金は最大90日間は支給額100%、休職制度は3年間は失職することなく、1年間までは80%支給されます。


ただし、2年目以降には無給になるので、その時に傷病手当金の手続きをすると良いでしょう。

公務員の病気休暇、病気休職制度とは(風邪も含む)

公務員がうつや精神疾患、風邪などの病気やケガで休みを取る場合に、病床休暇や病気休職という2つの制度を受けることができます。


病気休暇とは

6日以上、うつや風などの病気で欠勤する場合、医師の診断書を提出すれば、病気休暇を取得することができます。

このとき診断書なく休んでしまうと、ただの欠勤扱いになるので要注意です。

病気休暇を取得できれば最大90日間は支給額の100%の給料を受け取ることができます。


休職制度とは

休職を取得すれば、取得から3年間は休職して治療に専念することができます。

病気休暇を取得後、回復に至らなかった場合に取得します。

再度、病気休暇を取得できるのですが、その場合ですと給料が50%に減額するのに対し、休職制度を利用すると初めの1年間は給料の約80%は支給されるのです。

ただし、2年目以降は無給になってしまいます。

ですが、3年間は休職扱いになるので失職する心配がないのがメリットです。

公務員の傷病休暇、傷病手当金とは

公務員の場合には、病床休暇や休職を利用すれば一定期間は、ある程度の給料は保証されます。


しかし、公務員の場合には休職し1年後には制度上無給の状態になってしまいます。

職は失わないが無給の状態ですと、生活苦に陥りますし、治療も満足に受けられません。


そこで、傷病手当金といって、地方共済組合からおおよそ3分の2程度の給料を受け取ることができる制度があります。


傷病手当金とは

傷病手当金が支給されるには条件があります。

まずは待期期間といって、病気やケガで仕事を休んだ日から連続して3日間が待期期間といい、4日目以降も仕事に行けなかった場合に成立します。

待期期間には、土日祝日や有給休暇も含まれます。 


傷病手当金を受けられる期間は、支給日から最長1年6か月です。

万が一、途中で仕事復帰をして、また休むことになった場合には、仕事復帰した期間は延長されることなく、その間も支給期間に含まれているのでご注意ください。

病気休暇・病気休職中に受け取れる給料・給与、ボーナス額の計算

病気休暇や病気休職中に受け取れる給料は、金額が異なりますので一度以下の表で確認しましょう。


病気休暇・休職中に受け取れる給料

期間給料
病気休暇最大90日100%支給
休職休職後1年間80%支給
休職2年~3年無給(傷病手当金)


ボーナスについて

病床休暇中のボーナスについては、ボーナス時期からさかのぼり過去半年間の勤務状況を基準に支給されます。

休職制度の1年間のボーナスに関しては、病床休暇と同様にボーナス期から過去半年間を基準に支給されます。

つまり、給料が80%支給の場合、ボーナスも80%支給されるということです。


休職制度を利用した場合2年目からは無給になるため、傷病手当金を申請します。

傷病手当金は給料の約3分の2ですが、1日あたりの傷病手当金の支給額の計算方法は以下の通りです。

傷病手当金の支給開始日以前の12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

傷病手当金は、土日祝日も含めた金額が支給されます。

傷病手当金の申請方法・手続きや診断書

では、傷病手当金の申請手順を紹介します。

  1. 傷病手当金を申請したい旨を勤務先に伝える
  2. 申請に必要な書類を準備する
  3. 申請書類に記入
  4. 申請書類を提出
以上の流れで手続きをしていきます。

申請書類の準備ですが、勤務先で健康保険担当者を通じてもらうか、自分で健康保険の被保険者からもらいます。
協会けんぽや健康保険組合のホームページからダウンロードができます。

申請書類に記入は、傷病手当金の書類には自分自身で記入する箇所、働けないという証明として医師の診断書が必要であったり、会社に勤務状況や収入などの証明を記入してもらう場所があります。
その他にも必要書類を提出しなければならない場合があるので、必ず確認してください。

公務員が傷病手当金受け取る際の注意点

傷病手当金を受け取る際の注意点としては、有休を使うか傷病手当金を使うかの判断です。


傷病手当金を利用する場合は、3日以上連続して休業した後に、4日目から傷病手当金が支給されます。

しかし、4日目以降に有給休暇を利用した場合には、その期間の傷病手当金の支給が停止されてしまいます。


傷病手当金は給料の80%ですが、有給休暇だと100%支給されます。

そのため、傷病手当金を利用せずにあえて有給休暇を取得した方がお得になる場合もあります。

傷病手当金の支給期間内でも支払われないケース

傷病手当金の支給期間内であっても、支給されないケースがあります。

それは、傷病手当金の他に別の給付金がある場合は、傷病手当金の支給を停止されるか、金額を調整される場合があります。


支給されないケースは以下の場合です。


障害厚生年金または障害手当金

障害厚生年金を受けている場合には、同じ理由での病気やケガでの傷病手当金を受け取ることはできません。


老齢退職年金

退職後に老齢退職年金を受ける場合には、万が一退職前から継続して傷病手当金を受け取っていたとしても、傷病手当金は支給されません。


労災保険(休業補償給付) 

業務中の怪我や病気で労災保険から休業補償給付を受けている間に、業務外の病気やケガがあった場合でも、休業補償給付を受けている期間内は、傷病手当金を受け取ることはできません。


出産手当金

出産手当金が支給される場合には、同時に支給されません。


育児休業給付金

育休中に収入がある場合には支給されません。

公務員の休職期間がリセットされるクーリング制度

公務員が、けがや病気で休職や病気休暇を取得し、その後復帰をした後に、また病気が再発した場合には病気休暇をリセットできるクーリング制度というものがあります。


しかし、クーリング制度には条件があります。

それは、復帰後実勤務数が20日間は通常の勤務を行うことです。

なぜこのような条件が設けられたのかというと、病気休暇を簡単に取れやすくしてしまうと軽い気持ちで取得したりと乱用するのを防ぐためです。


ちなみに、病床休暇から20日間の間に復帰し休みがちになる場合には、病床休暇を通算することになります。

これは、職員が復帰後にしっかりと仕事ができるのか判断するための制度です。


病気休暇のカウント方法ですが、国家公務員の場合「勤務をしない土日祝日も病気休暇の日数に含める」としています。


クーリング制度は、平成23年1月に国が取り入れ、自治体よってはこれを準用していることもありますが、他の自治体では制度が異なる場合もあるので、確認しておくと良いでしょう。

公務員の傷病手当金の受け取りについてよくある質問

傷病手当金の受給は、申請して不備がない場合に約2週間後に口座に振り込まれます。


傷病手当金は1年6か月まで支給されますが、見込みの状態では申請ができません。

したがって、実際に休んだ日数分だけの申請を行わなければならないのです。


例えば、4/1~4/30までの傷病手当金の申請をする場合は、4/30以降に医師に証明書を発行してもらったのちに提出することになります。

もし長期間、会社を欠勤する場合には、1か月単位のサイクルでの申請が良いでしょう。

退職後も傷病手当金を受給可能?

退職後も傷病手当金を受け取ることは可能です


退職すると健康保険の被保険者ではなくなってしまいますが、以下の条件を満たした場合には、退職後であったとしても傷病手当金が支給されます。


  • 退職した日の前日までの過去1年以上被保険者であったこと
  • 退職した際に傷病手当金を支給されていた、又は支給できる状態にあったか
退職をして健康保険の被保険者でなくなった時に、会社から給与を受けていたため傷病手当金が支給されなかった場合でも、退職後に傷病手当金を受け取ることができます。
傷病手当金は、他の報酬があった場合には受給が停止されるので、その期間は傷病手当金を受け取ることができないからです。
したがって、停止した状態であって、権利が消滅したわけではありません。

民間企業の傷病手当金との違い

公務員は、うつや風邪、精神疾患などの病気やケガをした場合に、病気休暇や病気休職制度があり、給料が保障される期間が合わせて3年3か月ほどあるので、極めて恵まれた環境にあります。


しかし、民間企業の中でも特に中小企業は有給の病気休暇は制度化されたものがほとんどありません。

休職制度がある企業でも、無給のものが多く健康保険の傷病手当金が支給されるだけのところがほとんどなのです。

非正規公務員も同じ制度を利用可能?

非正規公務員は、正規公務員と同じ制度を利用することができません。


正規公務員の場合ですと、うつなどの病気やケガで仕事を休む場合、90日間の病気休暇と3年間の病気休職制度の2つの制度を受けることが可能です。

その間にも、80%以上の給料を受け取ることができます。


しかし、非正規公務員の場合ですと、30日間の病気休暇のみとされています。

病気休職制度を受けることはできません。

給料も、約60%ほどしか受け取ることができません。


他にも、正規公務員は共済組合員なのに対して、非正規公務員は厚生年金保険なので、共済組合員の福利厚生など利用できないのです。

共済組合員の場合は、将来もらえる年金の額が民間の厚生年金よりも手厚くなっています。

傷病手当金を受け取り中に公務員試験は受験できる?

傷病手当金を受給中に公務員試験の受験は可能です。


きちんと手続きをしていれば、受験することができますし、違法行為にあたりません。

また、二次面接の際に、傷病手当金を受給しているかということも聞かれることはないので、特に自分から申告する必要もないでしょう。


しかし、現状で傷病手当金を受け取っているということは、仕事復帰ができない状態ということになります。

そのような状態にも関わらず、公務員試験に合格し働くということが、自分自身可能なのかどうかを見極める必要があります。


仕事がないということは、将来的にも不安に感じることと思いますが、しっかり仕事復帰ができる状態まで回復することがなにより大切なことです。

公務員が傷病手当金をもらうための条件のまとめ

公務員が傷病手当金をもらうための条件について解説しましたが、いかがでしょうか。


今回の記事のポイントは

  • 公務員は病気休暇と休職制度を利用できる
  • 休職中でも給与とボーナスをもらえる
  • 傷病手当金の他に給付金がある場合は支給されない
  • 病気休暇をリセットできるクーリング制度がある
です。

公務員は民間企業とは違い、休職中でも給与の保障があり、とても恵まれた環境にあると言えます。

職場復帰に向けて治療する上で、公務員はしっかりとした制度が整っています。
万が一、うつ病やケガなどで、仕事ができない状態になってしまったら、すぐに退職するのではなく、病気休暇や病気休職制度を利用して、職場復帰のための治療に専念してください。

そのためには、休職中の給与やボーナスなど金銭的なことも知っておくことは大切なことだと思います。

ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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