更新日:2021/06/23
法人口座を複数持つメリットとデメリットをわかりやすく解説
法人口座を複数作る場合、どのような基準で金融機関を選ぶべきなのかをお伝えします。各金融機関がもつメリット・デメリットや近年増加傾向にあるネット銀行についても詳しく説明し、2つ以上の法人口座の組み合わせの正解をお教えします!
- 事業をされている方で、1つの法人口座に出金・納金が集中し悩んでいる方
- どの金融機関を併用するのが一番費用を抑えられるのか知りたい方
- 最近よく聞く「ネット銀行」について知りたい方
- 法人口座を複数作るメリットとデメリット
- ネット銀行を利用するメリット
- 各金融機関の特徴
- どこで法人口座を作るべきなのか
内容をまとめると
- 目的別に通帳を分けることができ、経営状態を可視化できる
- 銀行間の取引をすることで健全な経営をしているとみられ、融資の可能性が上がる
- 金融機関が破綻しても、預金保険制度を利用することでリスクヘッジができる
- 複数の法人口座が経営の負担になることがある
- 複数の通帳やカードを管理する必要がある
- ネットバンキングを利用すると年間2万円費用がかかる
- ネット銀行なら複数の法人口座を持てる
- ネット銀行は振込手数料が平均100円以上安い
- 口座に任意の名前を付けることができ、管理が楽になる
- 都市銀行は信用されやすく高額な融資も受けられるが、口座開設の審査が厳しく、維持費が高い
- 地方銀行はその地域のお金の流れに詳しいが、他の地域にいった場合に信頼度が落ちる
- 信用金庫は非営利で親身だが、規模が大きくなると使えない
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目次を使って気になるところから読みましょう!
同じ銀行で2つ以上の法人口座を作ることができる?
結論から言うと、
- 原則として、1つの銀行では1つの法人口座しか作れない
- ネット銀行なら1つの銀行で複数の法人口座開設が可能
となってなっています。
事業規模が大きくなり、多くの事業を展開するようになると、1つの法人口座だけではキャッシュフローの管理が難しくなっていきます。
そこで、多くの企業が「用途ごとに法人口座を複数使い分けたい」と考えるでしょう。
さらに言えば、現在取引のある「信頼関係を築いてきた銀行」との取引を続けたいはずです。
しかし、原則的には同じ銀行で法人口座を2つ以上持つことは不可能となっています。
その背景には、法人口座を複数利用した投資勧誘詐欺やマネーロンダリングといった、不正利用などが多発しているために、銀行の審査が厳しくなっているという現状があります。
加えて、法人口座を開設する際は、「本社(または主な事業所)が開設する支店の近くである」という条件があります。
遠隔地の支店を開設する場合、合理的な理由がない場合は拒否されることもあります。
ただし、違う銀行では問題なく法人口座の開設ができますし、近年増加傾向にあるPayPay銀行、GMOあおぞらネット銀行などのネット銀行では同じ銀行で複数の法人口座を持つことが可能です。
法人口座を複数作るメリット
ではそもそも、法人口座を複数開設するメリットとはなんなのでしょうか。
主なメリットは以下の通りです。
- 資金の管理がしやすくなり、経営分析が容易になる
- 入出金を継続的に行うことで、銀行からの信頼を得ることができる
- ネット銀行を併用することで、手数料を抑えることができる
- 銀行に万が一のことがあった場合のリスクを最小限にできる
など、これらのメリットが挙げられます。
これから、それぞれのついて詳しく説明していきます。
①資金の管理がしやすくなる
法人口座を複数作れば、目的ごとに口座をわけることができます。
それによって、事業・事業所・事業部門別などに管理することができ、それぞれのキャッシュフローを正確に把握することが容易になります。
事業を拡大するごとに入出金が複雑化し、「どの事業がどれくらい売上をだしているのか」が非常にわかりにくくなるため、経営状態の可視化が難しくなっていきます。
さらに、「この事業所はなぜ成績がいいのか」「この部門に投じている予算は適切か」などが把握しづらくなります。
そこで、用途ごとに法人口座を使い分けば、資金の管理がしやすくなることによって、経営状態を明瞭に把握することができ、経営分析に必要な要素を正しく管理することが可能になります。
②融資されやすくなる
当たり前の話ですが、銀行は取引実績のない会社や赤字を出している会社に融資することを渋ります。
「この会社はきちんと返済できる能力があるのだろうか?」「赤字補填のための借り入れではないのか?」などを気にするためです。
そのため、新規で法人口座を作るためには他の銀行できちんと取引実績があり、健全な経営をしている必要があります。
複数の法人口座で入出金が繰り返されており、実績がきちんと出せていれば、新規の法人口座を開設する際も信用されやすくなり、融資の可能性も高まるでしょう。
③振込手数料が節約できる
近年市民権を得つつあるネット銀行は実店舗をもたず、運営コストが低いという特徴から、実店舗を持つ銀行より振込手数料が安く設定されています。
そのため、メイン銀行を都市銀行または地方銀行にして、ネット銀行に入っているお金から各種振り込みを行えば、振込手数料が抑えられます。
都市銀行とネット銀行、2つの振込手数料はどう違うのでしょうか。
代表的な都市銀行の他行への振込手数料(3万円以上)は一回につき300円~450円に対し、
ネット銀行は150円~250円がボリュームゾーンとなっています。
一度だけなら100円程度の違いですが、これをずっと繰り返していくとなると馬鹿にならない金額になりますよね。
ですので、ネット銀行を併用することにより振込手数用の大幅な節約が可能になるといえます。
④ペイオフ対策
まず、ペイオフとはなにか説明します。
ペイオフとは、金融機関が破綻してしまった場合に預金保険制度によってお金が返ってくる制度です。
しかし、預金していた満額が返ってくるわけではなく、ペイオフ制度で保障されているお金は1,000万円とその利息分だけとなっています。
そこで、金融機関に預けるお金を分散させることにより、リスクを低減させる。
これをペイオフ対策といいます。
つまり、法人口座を複数持ち、資金運用することはペイオフ対策をしていることなるのです。
ペイオフ制度について詳しく知りたい方は預金保険機構の公式HPを参考にしてください!
法人口座を複数作るデメリット
ここまでメリットを紹介してきましたが、もちろんデメリットも存在します。
それは、以下の通りです。
- 各口座にお金が分散することにより、管理が煩雑になる
- 法人口座が増えるたびに、管理が面倒になる
- ネットバンキングを利用した場合、利用料が発生する
これらのデメリットについても解説していきます。
①キャッシュフローの管理が煩雑になる
②口座を管理する手間がかかる
法人口座を複数持つと、管理することが大変になります。
通帳やキャッシュカードが増えますし、IDやパスワードの管理もしなくてはなりません。
また、それぞれの法人口座が何のために作られたのかをきちんと把握しておかなければいけなくなります。
法人口座をむやみに増やすと、存在そのものを忘れてしまう可能性もあります。
そんな休眠口座をつくらないためにも、自分が管理できる数だけにとどめましょう。
一人で管理できる口座は2~3つ、多くて5つくらいでしょう。
③ネットバンキングの利用料がかかる
ネットバンキングとは、都市銀行や地方銀行が行っている、オンラインバンキングとも呼ばれるサービスです。
これを使えば、銀行の窓口やATMに行かなくても、PCやスマートフォンだけで資金の管理ができます。
しかし、ネットバンキングには利用料がかかり、都市銀行の月額平均は2,000円前後。
年間2万円以上の負担を強いられることになります。
そこで登場するのが、ネット銀行。
ネット銀行では維持費が無料で、24時間365日オンラインで完結させることができます。
次項から、ネット銀行のメリットについて紹介していきます。
ネット銀行で法人口座を作るメリット
ネット銀行とは、2000年に新たに誕生した、実店舗や専用のATMを持たず、インターネット上のみでサービスを完結させている銀行のことを指します。
実店舗や専用のATMを持たないという特徴から、様々なメリットがあります。
メリットは以下の通りです。
- 同じ銀行で複数の法人口座をつくることができる
- インターネット完結型のため、手数料が安く済む
- 目的ごとに応じて法人口座に名前を設定することができる
となっています。さっそく解説していきましょう。
①同一銀行でも複数の口座が作りやすい
冒頭でお話ししましたが、犯罪目的で法人口座が利用されるのを避けるため、実店舗を持つ銀行は、特別な事情がない限り2つ以上の法人口座を持つことができません。
しかし、ネット銀行であれば複数の口座を同じ銀行内に持つことができる場合が多いです。
複数口座が持てる代表的なネット銀行は、GMOあおぞらネット銀行、PayPay銀行などがあります。
②手数料が安い
ネット銀行は手数料が安く設定されています。
というのも、ネット銀行は自分たちで管理する店舗やATMを持たないため、運用コストを大幅に削減できているからです。
前述しましたが、ネット銀行は手数料が安いだけでなく24時間365日、インターネットでお金のやり取りを完結させることができます。口座の維持費用も無料です。
ネットバンキングでは年間2万かかった費用がなくなるのですから、ネット銀行を使えば経費を大きく削減できます。
ただし、振込手数料に関しては各ネット銀行によって違いがあるため、確認した上で一番自分に合った銀行を選ぶべきでしょう。
③口座が見分けやすい
法人口座は2つ目の口座から会社の名義(名前)に任意名をつけることができます。これによって、事業ごとに名前をわけて管理することが可能になります。
一般的な銀行を使っていると、銀行名だけではどの事業を行っているのかが把握しづらくなり、税理士に発注した際もこの処理の多さによって金額が変わる可能性があります。
しかし、ネット銀行で法人口座に任意名をつけることによって、どの事業がどのような経営状態にあるのか、一目瞭然です。
これによって、どの法人口座がどういった役割を担っているのかがわかり、スムーズな経営を助けてくれます。
それぞれの銀行の特徴を解説!どこで法人口座をつくれば良い?
これまで、ネット銀行のメリットを取り上げてきましたが、実店舗を持つ銀行にメリットがないわけでは当然ありません。
様々な形態がある銀行の中で、自分に合った銀行を組み合わせて利用することが大事になってきます。
- 都市銀行は審査が厳しく維持費が高いが、全国にあり信頼されやすい
- 地方銀行はその地域では強いが、拠点を移した際に知名度が問題になる
- 信用金庫は非営利で親身だが、事業規模が大きくなると使えなくなる
以上が各金融機関のメリット・デメリットです。
これから、そのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
①都市銀行
いわゆる「メガバンク」と呼ばれる銀行のことですね。三井住友銀行や三菱UFJ銀行などが代表的な都市銀行でしょうか。
全国に支店を持っているため、全国展開をしているような企業が適しているといえます。
知名度が高く取引先から信用されやすいですし、高額な融資にも対応できるなど、メリットは多数あります。
反面、法人口座開設の審査が厳しく、他の金融機関よりも維持費用が高いですし、振込手数料に関しても比較的高く設定されている傾向にあります。
また、全国展開をしていることから、担当者が転勤してしまい、長期的な信頼関係を作りにくい点もデメリットとして挙げられます。
②地方銀行
地域密着型の銀行のことで、一般的には全国地方銀行協会、または第二地方銀行協会に加盟している銀行のことを総じて地方銀行と呼びます。
地方銀行の特徴は地域密着型である、という点です。
ある地域に限定して支店を持っているため、その地域のお金の流れを把握していますし、都市銀行に比べると親身に相談に乗ってくれるケースが多いです。
その地域に根ざした経営を行っている企業にとっては使い勝手の良い銀行であるといえるでしょう。
ただ、当然デメリットもあります。
限定した地域にしか拠点を置いていないので、拠点を移した際には利用が厳しくなってきますし、カバーしていない地域では知名度が低く、都市銀行よりも信頼度が低くなってしまう点などが挙げられます。
③信用金庫
信用金庫も地方銀行と同じ地域密着型の金融機関ですが、営利を目的とせず、「地域の繁栄」を目的としているため、地方銀行よりも親身な対応がなされています。
会員制というのも大きな特徴で、会員になるためには信用金庫が指定した地域内に拠点を構えており、かつ、資本金9億円以下、または従業員数300人以下である必要があります。
設立間もない企業や事業規模が小さい企業も柔軟に対応してもらえますし、口座開設の基準も都市銀行、地方銀行よりも厳密ではないというメリットがあります。
ただし、先ほど挙げた資本金9億円以下、または従業員数300人以下という規定を超えると脱会しなければなりません。
まとめ:複数口座を開くなら地方銀行+ネット銀行がおすすめ!
法人口座を複数持つ際のメリット・デメリットや各金融機関の特徴についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事では、
- 法人口座2つ以上持つことのメリット・デメリット
- ネット銀行で法人口座を作る利点
- 各種金融機関の特徴
などについてお話させていただきました。
それを踏まえた上で、「結局のところどの銀行を使えばいいの?」という疑問にこたえたいと思います。
それはずばり、地方銀行+ネット銀行です!
なぜかというと、地方銀行は、
- その地域からの信頼が厚く、取引先からも信用を得やすい
- 都市銀行ほど法人口座開設の審査が厳しくない
- 親身に相談に乗ってくれる
- 信用金庫と違い、規模が大きくなっても取引を続けられる
といった特徴があります。
そこで、地方銀行をメインバンクとして利用することで取引先に安心感を与えつつ、2つ目からの法人口座はネット銀行にすることで、振込手数料などの費用を抑えることができるのです!
ぜひあなたの経営スタイルに合った金融機関の組み合わせを見つけてください!