法人向けの医療保険のメリットやデメリットを解説!損金算入は可能?

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医療保険に法人契約すると、メリットの方が注目されがちですが、実は給付金の受け取り時に税金がかかるなど3つのデメリットが存在します。今回は、法人契約の医療保険の3つのデメリットと3つのメリット、や法人向けの医療保険の経理処理について解説していきます。

内容をまとめると

  • 法人向け医療保険とは、法人を契約者、役員や従業員を被保険者とした医療保険のこと
  • 法人として医療保険を契約することで、給付金が課税対象に成ったりするデメリットがある
  • 反対に法人向けの医療保険委加入するメリットは、保険料の一部を損金算入できる点などがある
  • 自社に適切な生命保険に加入するために「マネーキャリア」で専門家に相談することがおすすめ

法人医療保険にデメリットはあるのか?

みなさんの中には、万が一の場合に備えて法人医療保険への加入を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。


残念ながら、法人医療保険のメリットばかりに目がいき、給付金や見舞金に税金がかかることを見逃している方が多いのも現実です。


しかし、法人医療保険のデメリットを理解しないまま加入してしまうと、経営者が入院した際に納得のいく見舞金を渡せないのみではなく、無駄な税金を支払う可能性もあるのです。


そこで、今回は「法人契約の医療保険」に関して、

  • 法人医療保険の3つのデメリット
  • 法人医療保険の3つのメリット
  • 2つのおすすめ法人医療保険
  • 公的医療保険と民間医療保険の違い
についてご説明します。


この記事を読んでいただければ、法人契約の医療保険に加入することが本当に必要なのか、加入するならどのようなタイプの保険が合っているのか判断しやすくなるでしょう。


法人のがん保険についての詳細は、ほけんROOM公式内の別記事にてご紹介しています、興味のある方はぜひご一読下さい。

法人医療保険の3つのデメリット

法人契約の医療保険の3つのデメリットに関してご説明します。

法人契約の医療保険は以下の備えとして加入を検討される方が多いかと思います。

  • 万が一の場合の事業保障や医療費
  • 従業員の医療費サポート(福利厚生)

一見、手厚く保障を受けられるのでメリットばかりのように感じられますが、加入する前に確認しておきたい以下の3つのデメリットもあるのです。

  • 給付金が課税対象となる
  • 見舞金は役員賞与と判断される可能性がある
  • 慶弔見舞金規定による明確な指針が必要

具体的に説明します。

【デメリット1】給付金が課税対象になる

給付金とは、入院や手術などの際に保険会社から受取人に支払われるお金のことを言います。


法人契約の場合、給付金の受取人は法人となっているものが多く、受け取った給付金は益金(雑収入)として課税所得となります。


課税所得とは益金から損金を差し引いた額のことで、この課税所得額に税金が課せられることになります。


課税所得=益金ー損金

税金=課税所得×税率


では、実際にどのくらい税金がかかってしまうのか、以下の例で見てみましょう。

  • 給付金:100万円
  • 実効税率:30%

この場合、税金額は

100万円×30%=30万円

となり、100万円ー30万円=実質70万円しか受け取れない計算になります。


一方、法人ではなく個人で保険を契約している場合、給付金は金額にかかわらず非課税となるため、100万円全額の受け取りが可能となります。


この点から、経営者などは個人でも保険に加入することが多いようです。



【デメリット2】見舞金は役員賞与と判断される可能性がある

見舞金は金額によっては役員賞与と判断される可能性があります。


給付金として法人に100万円が支払われ、被保険者である役員に全額見舞金として支給した場合はどうなるのでしょうか?


見舞金(福利厚生費)として経費で落とせるのは「社会通念上相当な額」とされており、約5~10万円が相当とされています。


そのため、見舞金が「社会通念上相当な額」を上回って支給されてしまうと、その超過分は「役員賞与」と見なされる可能性があります。


役員賞与は法人税法では損金不算入であるため、役員賞与として支払った部分については課税対象となります。


役員個人としても、賞与を受け取ったことで所得税・住民税を負担することになってしまいます。


この点から、見舞金の補填として個人でも保険に加入することが多いようです。

【デメリット3】慶弔見舞金規定を作成して明確な指針が必要

見舞金は支給が義務付けられているわけではありません。


見舞金を福利厚生費として経費で落とすためには、慶弔見舞金規定による裏付けが必要です。


見舞金は、

  • 慶弔見舞金規定に基づいた支払い
  • 世間一般的に妥当な額
  • 支払いの基準や金額が公平

といった場合に、福利厚生費として計上することができます。


そのため慶弔見舞金規定を作成し、

  • 支給される事由
  • 対象者
  • 見舞金の金額
  • 手続きの方法
以上のことを明確に定める必要があるのです。

法人医療保険の3つのメリット

ここまでデメリットについて説明してきました。


「課税対象となるのであれば、加入しない方がいいのではないか」と感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、デメリットのみではなく3つのメリットがあります。


  • 支払う保険料を損金算入できる
  • 個人名義でも保障を継続できる
  • 入院に備えることができる


これらが一体どのような効果をもたらすのか、どうすれば法人医療保険を効果的に活用できるのか、具体的に見ていきましょう。

【メリット1】支払う保険料を損金算入できる〜医療保険には税金がかからない?!

法人として契約した場合、支払い保険料を損金算入することができるため法人保険の税制優遇を受けること期待できます。


損金算入するということは、支払った分だけ課税所得から控除されるので税務効果が期待できます。


2019年の税制改正により、年間保険料の額が30万円以下の医療保険については、全額損金算入することが認められています。


法人契約の医療保険に5人加入した場合は、最大150万円までが全額損金算入することが可能です。


法人保険に関する経理処理の詳細はほけんROOM公式内の別記事にてご紹介しています。

興味のある方は、ぜひご一読下さい。

【メリット2】名義変更することで個人名義でも保障が継続できる

終身保障の医療保険に加入した場合、社長の引退のタイミングで個人名義に変更することで、引退後も一生涯の保障がついてくることになります。


引退に関係なく保障が付いてくるということは、大きな安心ですよね。


名義変更の方法に関しては、後で詳しく説明します。

【メリット3】もしもの場合の入院に準備できる

医療保険ということで、もちろん万が一の入院にも備えることができます。


単純に医療費をカバーできるという点でも魅力的ではあるのですが、経営面でも安心感が得られます。


もし経営に携わる方が長期入院となってしまったら、会社の運営に支障が出て入院中の会社のダメージは大きいものです。


このダメージをカバーするためにも事業補償として入院給付金を活用することができます。

法人向けの医療保険の経理処理の方法とは?

ここからは法人向けの医療保険の経理処理について分かりやすく解説していきます。まず法人向けの医療保険の保険料の経理処理は保険料の支払方法により異なります。


保険料の支払方法は以下の2パターンです。

支払方法内容
全期払い契約期間満了まで保険料を払い続けること
短期払い保険契約期間よりも早い期間で保険料を払い終えること


ここでは、短期払いの内容について紹介します。


短期払いの保険料については一部を損金算入することが可能です。短期払いは上記の表でも解説したように短期間で保険料を払い終える支払い方法です。そのため保険料支払い期間と支払いを終えた後で経理処理が異なります。


まず保険料支払い期間については以下の計算式で算出された金額を損金算入します。

年間保険料×保険料払込期間÷保険期間

上記で算出された金額以外は全て資産計上するようになっています。


続いて保険料を支払い終えた後の経理処理について解説します。ここで紹介する医療保険は終身タイプの第三分野保険となります。その終身タイプの医療保険の保険期間は116歳を満期として「116歳-契約年齢」ででた年齢を保険期間としています。


そのため116歳まで資産計上していた前払支払保険料を取り崩すことで損金算入していきます。


短期払いの経理処理については解説しましたが、全期払いの経理処理について詳しく知りたい方もいるかと思います。全期払いの経理処理について知りたい方は以下からご覧ください。

2種類のおすすめ法人医療保険

ここまでデメリット・メリットそれぞれについてご説明してきました。

それではどのような法人契約の医療保険を選べばいいのでしょうか。

課税などのデメリットを踏まえたうえで、おすすめしたい法人医療保険は次の2つです。

  • 掛け捨ての終身医療保険
  • 契約者が法人で、受取人が個人の医療保険
なぜこれらのタイプの保険がおすすめなのか、具体的にご説明しましょう。

掛け捨ての終身医療保険

掛け捨ての医療保険とは、解約返戻金のない終身医療保険のことです。掛け捨ての医療保険の場合、法人名義から社長名義に変更することでメリットのあるタイプです。


解約返戻金のないということで

  • 保険料は安く抑えられていることが多い
  • 保険譲渡時に社長の負担がない
という点が特徴です。


以下の例で考えてみましょう。

  • 保険種類:終身医療保険
  • 払込期間:60歳払込
  • 契約者:法人
  • 被保険者:社長
  • 受取人:法人


保険料は社長が60歳になるまで法人が支払います。


短期払込の終身医療保険の場合、保障期間(終身)と保険料払込期間(60歳まで)の期間が異なります。


このような場合、支払った保険料のうち一定額が「前払保険料」として資産計上され、保険料支払い完了後に計上された「前払保険料」部分を取り崩していくこととなります。


しかし、社長引退のタイミングで名義変更し、法人から社長個人に保険を譲渡すると、それまで資産計上されていた保険料は「雑損失」として全額損金算入できるのです。


通常、保険を譲渡する場合は譲渡時点での解約返戻金額をもって売買することとなっていますが、今回の場合は解約返戻金がないため経営者個人にも負担が全くありません。


社長は保険料を支払う必要がなく、一生涯の保障を得られることになります。


もちろん名義変更後に給付金を受け取っても、個人で受け取ることになるので課税されず、デメリットに挙げられていた給付金の税負担を大きく抑えられることになります。


このタイプの保険商品は、法人にも経営者個人にもおすすめの商品と言えますね。

契約者が法人で受取人が個人の医療保険

契約者が法人で、受取人を「社長・役員・従業員」といった被保険者に設定できる医療保険もおすすめです。


デメリットでもご説明したように、見舞金には上限があり十分に保証できるとは言えません。


しかし、この契約方法の場合、保険料は法人が支払うものの給付金は被保険者に直接支払われ、なおかつ全額非課税となるのです。 

 

支払い保険料は福利厚生費として損金に算入でき、給付金を受け取った場合も税金はかからないという点で、税務効果は大きいと言えます。

まとめ:法人医療保険の3つのデメリットを知ろう

法人契約の医療保険のデメリットとメリットについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは、

  • 給付金は課税対象となる
  • 見舞金は「社会通念上相当な額」までしか支払うことができない
  • 見舞金を福利厚生費とするには慶弔見舞金規定が必要
  • デメリットをカバーできる医療保険も存在する

です。


安易に加入してしまうと思いがけない税負担といったデメリットがありますが、名義変更など上手に活用することで、社長の入院時や従業員の福利厚生として様々なニーズに応えることができるのです。


デメリットも把握した上で法人医療保険を上手に取り入れていくことで、社長のみならず従業員も安心しながら働ける環境が整うことでしょう。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい法人保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。

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