生命保険料控除の新制度を解説!新旧併用での控除額算出を理解しよう

平成24年に生命保険料控除の制度が改正されました。制度改正に伴い、生命保険料控除の対象に介護が増え、新旧併用の計算方法ができるなど様々な点が違います。損しないために、新制度と旧制度での変更ポイント、新旧併用でのお得に控除額を算出する方法を徹底解説していきます。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

平成24年の生命保険料控除の新旧制度の違いを徹底解説!

平成22年に生命保険料控除の税制改正が行われ、平成24年から新旧制度が混在することとなりました。

これにより、保険会社から10月ごろから送られてくる生命保険料控除証明書に「新制度」「旧制度」の文字が書かれるようになっています。


この生命保険料控除の新旧制度で所得税と住民税がどれだけ控除されるのかわからず、困惑している方も多いのではないでしょうか?


ただでさえ難しい税金のことですが、制度改正で計算方法がさらにややこしくなっています。


そこで、この記事では

  • 新制度の2つの変更ポイント
  • 新旧制度が両方混在している時の注意点
  • いろいろなケースで新旧制度をお得に活用するシュミレーション(新旧併用のケース含む)

をわかりやすく解説します。


この記事を読めば、生命保険料控除の新旧制度で悩むことはなくなると思うので、最後まで読んでみてください。

平成24年付近の契約で適用される制度はどちらになるのか?

まず、新旧制度間でどちらが適用されるのかについて解説します。


以下の4つのケースを考えます。

  1. 平成23年以前に契約した保険
  2. 平成24年1月1日以降に契約した保険
  3. 平成23年以前に契約し、平成24年以降に契約内容の変更*を1月1日に行なった保険
  4. 平成23年以前に契約し、平成24年以降に契約内容の変更*を4月1日に行なった保険

*ここでの契約内容の変更とは、保険の更新、特約の付加などが含まれます。


平成23年平成24年平成25年...
ケース1旧制度旧制度旧制度旧制度
ケース2-
新制度新制度新制度
ケース3旧制度新制度新制度新制度
ケース4旧制度旧制度(〜3/31)
新制度(4/1〜)
新制度新制度

平成24年の1月1日以降に契約された、更新された保険に新制度が適用されます。

注意しておくべきなのは、平成23年以前に加入していた保険を、年の途中で保険の更新や特約の付加を行なった場合です。


例えば、平成23年以前に加入していた保険商品を、平成29年の8月1日に保険の更新を行なった場合、平成29年の7月31日以前と8月1日以降で適用が変わります。


この時には、その日を境に旧制度適用、新制度適用が行われ、新旧両方の制度が混在している状態となるので、生命保険料控除額を算出する際には注意が必要になるわけです。


では、生命保険料控除の制度改正の内容を詳しく見ていきましょう。

新制度のポイント①:介護医療保険料控除が新設

生命保険料控除の新制度の1つのポイントは、介護医療保険料控除が新設されたことです。

旧制度では下記の2つでした。


  • 一般生命保険料控除
  • 個人年金保険料控除

しかし、新制度では下記の3つとなりました。

  • 一般生命保険料控除
  • 介護医療保険料控除
  • 個人年金保険料控除

一般生命保険料控除と個人年金保険料控除はそのまま存在していますが、新旧制度で分類が若干異なります。

各控除枠に分類される保険の種類とは?

控除枠に関しては、各保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書に記載されています。

保険に加入の際にも、生命保険料控除のうちのどの適用範囲に該当するかを説明されていると思いますが、改めて確認しておく必要があります。

各控除枠の基準としては、以下の表の通りです。


控除枠基準
一般生命保険料控除生存や死亡、高度障害に起因して支払う保険料
介護医療保険料控除入院や通院に起因して支払う保険料
個人年金保険料控除個人年金保険契約に関係する保険料

新制度での、一般生命保険料控除では、死亡保障のある終身保険や定期保険、養老保険、学資保険などが適用範囲となります。


旧制度で一般生命保険料控除に該当していた、医療保障の保険、がん保障の保険など、入院・通院費用を保障する保険は、介護医療保険料控除に分類されることとなります。

また、介護保障や介護費用保障のある保険も介護医療保険料控除に分類されます。

介護医療保険料控除が新設された理由とは?

この改正で気になるのは、なぜ介護医療保険料控除が一般生命保険料控除から分離されたのかというポイントかと思います。


平成22年の税制改正は、「納税者にとって、公平で透明性があり納得感のある税制制度」を目的とされていました。

その中で、所得控除が高所得者に有利な現状があると指摘されました。


そこで、所得税にある、所得再分配機能や財源調達機能を強めるための一環として、医療や介護にかかるような所得層の方に対して控除額が充てられるような仕組みとなったようです。


詳しいことは、財務省が発表している、平成22年の税制改正の解説に記載されているので、気になる方は読んでみると面白いかと思います。

新制度のポイント②:年間支払い保険料合計額と控除額、限度額の対応が変更

生命保険料控除の2つめの新制度のポイントとしては、各分類の控除額、限度額が変更された点です。

この変更で新旧制度間で額が異なり、困っている方も多いのではないでしょうか?


それでは見ていきましょう。

新旧制度での所得税、住民税の限度額と支払い保険料ごとの控除額を確認しよう

控除限度額

まずは、所得税、住民税それぞれの控除限度額を見て見ましょう。

区分税種別旧制度新制度
一般生命保険料控除所得税5万円
4万円

住民税3.5万円2.8万円
介護医療保険料控除
所得税-
4万円
住民税-2.8万円
個人年金保険料控除
所得税5万円4万円
住民税3.5万円2.8万円
合計全体
所得税10万円12万円
住民税7万円7万円

生命保険料控除の上限額は上記の表の通りになっています。


合計全体では、17万円から19万円になり、2万円増額となっている一方で、一般生命保険料控除は、1.7万円分減額となっています。


一つ気をつけなければならないのは、新制度での住民税の限度額です。

合計で7万円分が控除の限度額となっており、全区分で2.8万円分の保険料を支払っても合計では7万円までとなっています。


また、新旧制度を併用した場合にも合計額は新制度の、所得税12万円、住民税7万円の計19万円となります。


では、次に所得ごとの新旧間での控除額を見ていきましょう。所得税、住民税ごとに新旧制度の違いをまとめています

所得税(旧制度・新制度)

旧制度新制度
年間払込
保険料額
控除額年間払込
保険料額
控除額
25,000円以下払込保険料全額20,000円以下払込保険料全額
25,000円超
50,000円以下
払込保険料×1/2
+12,500円
20,000円超
40,000円以下
払込保険料×1/2
+10,000円
50,000円超
100,000円以下
払込保険料×1/4
+25,000円
40,000円超
80,000円以下
払込保険料×1/4
+20,000円
100,000円超一律50,000円80,000円超一律40,000円

住民税(旧制度・新制度)

旧制度新制度
年間払込
保険料額
控除額年間払込
保険料額
控除額
15,000円以下払込保険料全額12,000円以下払込保険料全額
15,000円超
40,000円以下
払込保険料×1/2
+7,500円
12,000円超
32,000円以下
払込保険料×1/2
+6,000円
40,000円超
70,000円以下
払込保険料×1/4
+17,500円
32,000円超
56,000円以下
払込保険料×1/4
+14,000円
70,000円超一律35,000円56,000円超一律28,000円


ちなみに、新制度と旧制度の両方を混在させて申告することは可能ですが、所得税と住民税で異なる保険料支払い額で申告することは不可です。

旧制度と新制度が混在している方はお得な方を選択できる

旧制度と新制度が混在している場合は、お得な方を選択することができます。

それゆえ、どちらがお得か計算して考えて新旧制度を適用すべきです。


合計限度額は前述の通り、新制度の方がお得なので新制度を適用すべきでしょう。

一方で、介護医療保険料控除にあたる区分の控除が小さい方は、旧制度の一般生命保険料控除で計算すると控除額が大きくなる可能性があります。


詳しいケーススタディーは後述します。

新旧の生命保険料控除が混在しているケース

それでは、旧制度と新制度の新旧併用での生命保険料控除額の限度額はどうなるかについてケーススタディーで考えていきたいと思います。


前述の通り、旧制度と新制度が混在している場合は全体の限度額が所得税12万円、住民税7万円となります。 

基本的には新制度で申告した方が限度額まで達する可能性は高いと言えます。

また、制度改正から5年ほど経ちましたので、新制度だけで申告することが多いかと思いますが、今後旧制度該当の保険を解約するかどうか迷っていると言う方もいらっしゃると思うので、以下の2つのケースを考えます。

ケース①:まずはシンプルなケースを想定してみる

以下のケースをケース①として考えます。

  • 旧制度で一般生命保険料控除該当保険
    終身保険で月額1万円、年間12万円支払い
  • 新制度で一般生命保険料控除該当保険
    ドル建て終身保険で月額3000円、年間3.6万円支払い
  • 旧制度で個人年金保険料控除該当保険
    個人年金保険に月額1万円、年間12万円支払い

こういった方の場合、旧制度の条件で申請した方がお得となります。


新制度の一般生命保険料控除を考えた時に計算すると所得税2.8万円・住民税2.3万円となります。介護医療保険料控除に該当するものはありませんので、旧制度の上限いっぱいの、一般生命保険料控除の所得税5万円・住民税3.5万円分、個人年金保険料控除の所得税5万円・住民税3.5万円分の合計、所得税10万円、住民税7万円分控除されることとなります。


この場合、新制度でも発行されるドル建て終身保険の生命保険料控除証明書に関しては、提出しなくてもよいです。廃棄しておきましょう。

こちらも申請した場合、担当者によって間違えて新旧併用のパターンと勘違いしてしまい、合計金額の上限を所得税で4万円、住民税で2.8万円とされる可能性があります。


新旧併用という言葉がでてきましたが、新旧併用のパターンを見ていきましょう。

ケース②:新旧制度を合算で申請した方がお得な場合?

次に、新旧合算で計算考えた方がお得なケースを見ていきましょう。
  • 旧制度一般生命保険料控除該当保険
    定期保険で月額2500円、年間3万円支払い
  • 新制度一般生命保険料控除該当保険
    ドル建て終身保険で月額5000円、年間6万円支払い
  • 旧制度一般生命保険料控除該当保険
    医療保険で月額1100円、年間1.4万円支払い
  • 新制度で介護医療保険料控除該当保険
    がん保険で月3000円、年間3.6万円支払い
  • 旧制度で個人年金保険料控除該当保険
    個人年金保険に月額1万円、年間12万円支払い

これは少しややこしいので表で整理して見ましょう。


所得税

区分旧制度控除額新制度控除額
一般生命保険料控除3.6万円(*1)3.5万円(*2)
介護医療保険料控除0万円2.8万円(*3)
個人年金保険料控除5万円0万円
(*1)(3万円+1.4万円)×1/4+2.5万=3.6万円

(*2)6万円×1/4+2万円=3.5万円

(*3)3.6万円×1/2+1万円=2.8万円 

住民税

区分旧制度控除額新制度控除額
一般生命保険料控除2.85万円(*4)2.8万円
介護医療保険料控除0万円2.3万円(*5)
個人年金保険料控除3.5万円0万円
(*4)(3万円+1.4万円)×1/4+1.75万円=2.85万円

(*5)3.6万円×1/4+1.4万円=2.3万円


となります。

この場合、上限額の所得税12万円、住民税7万円に近づけたいと考えるでしょう。


注意しなければならないのは、旧制度適用、新制度適用、新制度と旧制度の合算計算の3パターンになります。


最後の、「新制度と旧制度の合算計算」で一般生命保険料控除の枠を利用することを「新旧併用」と言いますが、この場合(合算して計算した場合)、各枠ごとに新旧合計で上限が所得税4万円、住民税2.8万円となります。


これに当てはめて表で整理しましょう。

まずは所得税についてです。

旧制度新制度新旧併用
一般生命保険料控除3.6万円
3.5万円
4万円
介護医療保険料控除0万円2.8万円(新制度)
個人年金保険料控除5万円0万円(旧制度)
合計8.6万円6.3万円11.8万円

次に住民税です。

旧制度新制度新旧併用
一般生命保険料控除2.85万円2.8万円(旧制度)
介護医療保険料控除0万円2.3万円(新制度)
個人年金保険料控除3.5万円0万円(旧制度)
合計6,35万円6.1万円7万円
(上限)

すなわち、今回の場合、新旧併用で申告するのがもっともお得です。

その場合、所得税は、4万円+2.8万円+5万円=11.8万円となります。

一方で、住民税は、計算すると2.85万円+2.3万円+3.5万円=8.65万円となりますが、全体の控除限度額が新旧併用の場合でも7万円以下なので、7万円となります。


所得税に関しては、全部合計して12万円になるわけではないので注意をしましょう。


平成23年以前に加入している保険(旧制度適用の保険)に加入中の方は、基本的に

  1. 新旧併用で申請する
  2. 旧制度で申請する

の2パターンになるかと思います。

特に2の例になる方の特徴としては、新制度適用の介護医療保険料控除の控除額が小さく(具体的には〜2万円)、旧制度適用の一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の控除額が4万円〜5万円となっている方です。


こういった計算に困った場合は、インターネット上で生命保険料控除のシュミレーションができるので、「生命保険料控除 計算 シュミレーション」などで検索してみると良いかと思います。

生命保険料控除の申告でよくある勘違いと注意点

では、今回の改正を含む、生命保険料控除に関するよくある間違いを解説します。
  • 生命保険料控除は納税者本人だけが対象となる?

こちらは誤りです。


納税者が保険料を負担している契約すべてを含みます。

すなわち、妻や子どもなどの家族も含みます。

  • 生命保険料控除証明書に書かれている新旧の控除は全て記入しなければならない?

これも誤りです。


先ほども述べたように、旧制度のみで申請した場合の方が安くなる可能性があります。一般生命保険料控除の上限が旧制度で新制度より1万円多いという点がポイントなので、ここはチェックして、確定申告書類に書くようにしましょう。


また、上限に達していれば記入してもしなくても同じなので、必ずしも全て記入する必要はありません。

  • 生命保険料控除は必ず申告しなければならない

これも誤りです。


控除は申告の権利があるだけで義務ではありません。

ただ、絶対にお得なので、記入して還付金を受け取った方が良いと思われます。

生命保険料控除をうまく活用したい方は保険のプロに相談しよう

ここまで生命保険料控除を考えてきて、自分の加入している保険で生命保険料控除を最大限活用できているのだろうかと思った方も多いかと思います。 

こういった控除の話に関しては、自分で考えると思わぬ落とし穴にハマって後悔することも多いので、保険とお金のプロであるファイナンシャルプランナーに相談するのがオススメです。


無料で相談できるだけでなく、お肉などのプレゼントキャンペーンを行なっている相談所もあるようですので、チェックして見てはいかがでしょうか?

まとめ

ここまで生命保険料控除の新旧制度を考えてきましたが、新制度の特徴とお得な確定申告の方法を考えられたと思います。

新旧併用をする場合は少し難しいですが、実は年末調整書類に全部書き込んでおけば、もっとも得をする方法で計算をしてくれたりもします。



ただ、生命保険料控除は見落としがちで、うまく申請ができていないと損をしてしまうことになりますので、知識として知っておくことが重要です。


今年も間違いなく確定申告を行い、控除で還付金を受け取りましょう。


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