「一時払い」の払込方法の場合、生命保険料控除の対象となるのか?

保険料を一時払いした場合、支払った年の1度しか生命保険料控除の対象にならないということと、さらに一時払い個人年金保険の場合、一般の生命保険料控除の対象とはなりますが、個人年金保険料控除の対象とはならないことを知っておきましょう。

一時払いでも生命保険料控除の対象になる

生命保険の保険料の支払い方にはいくつかあり、月払い・半年払い・年払い・全期前納・一時払いのいずれかの方が多いでしょう。


どの払い方でも、生命保険に加入をし、保険料を支払っている場合は、生命保険料控除の対象となります。


毎年年に一度、生命保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書をもとに、会社員の方は、年末調整で、自営業の方は確定申告で、それぞれ控除を受けることになります。


しかしながら、保険料の払い方によっては、毎年控除を受けることができるものと、一度のみ控除を受けることができるものと2パターンあります。


この一度しか控除を受けられない払い方が、「一時払い」です。

保険料一時払いの特徴

保険料の一時払いとは、契約したときに、全部の保険期間の保険料をまとめて支払うことをいいます。


例えば、保険期間が20年の保険を契約する場合、20年分の保険料を最初にすべて払ってしまうことです。


一時払いは、支払う保険料総額が最も安くなります。これは全額をさきに保険会社に支払うことで、保険会社が運用するお金が増えるため、運用益も増えるからです。


そのため、貯蓄型保険の場合は、返戻率が高くなるので、貯蓄目的の場合で、一時払いするだけのお金のある方は、一時払いを選択する方も多いです。


一時払いできる保険の種類は終身保険、養老保険、個人年金保険、学資保険などです。


最近では定年退職者向けに、退職金を用いた、一時払い終身保険、一時払い個人年金保険など、一時払い専用の商品が販売されています。


しかし、一時払いのほうが貯蓄性が高いと説明しましたが、ここに大きな問題があります。


それは、さきほども説明したように、一時払いの場合は、支払った年しか生命保険料控除の対象とならないということです。


そのため、月払いで長い間支払うほうが、生命保険料控除として税金が控除されるため、そちらのほうがお得になる可能性もあるのでは?と思う方も多いでしょう。


それを知るためには、生命保険料控除でどのくらいの金額が控除されるかにもよります。


生命保険料控除額には上限があるので、ほかの保険で上限をむかえる場合もありますし、夫婦の場合、妻の保険を夫の生命保険料控除に組み込むこともできることや、今後新しい保険に加入したり、保険の見直しをしたりすることを考えると、少し複雑な問題です。

一時払いにおける生命保険料控除の2つの注意点

一時払いにおける生命保険料控除の2つの注意点を紹介していきます。

注意1:一時払いの場合、生命保険料控除は保険料を支払った年のみ

これまでも説明したように、一時払いにおける生命保険料控除の一番の注意点は、生命保険料控除は保険料を支払った年のみということです。


これはしっかりと頭にいれておきましょう。

注意2:個人年金保険を一時払いで契約しても個人年金保険料控除の対象にならない

さらに、個人年金保険を一時払いで契約した場合も「一般の生命保険料控除」の対象となり、「個人年金保険料控除」の対象にはならないことも、注意しなければいけません。


個人年金保険料控除が適用される条件のひとつに、「10年以上の期間にわたる定期的な保険料の払い込み」があるためです。


個人年金保険料控除は一般の生命保険料控除と同じく上限額が4万円(旧制度の場合は5万円)であり、個人年金保険限定なので、一時払い個人年金保険がこの控除枠を使えないのは少しもったいないと言えます。


一般の生命保険料控除は、ほかに加入している生命保険で控除枠が上限をむかえるのは、よくあるからです。

一時払いと違い、全期前納払いでは毎年生命保険料控除の対象となる

生命保険料の払方で、「一時払い」とよく比較されるのが、「全期前納」払いです。これら二つの払方の違いについて、これからお話をしたいと思います。


前納払いの場合、一時払いと違って毎年生命保険料控除を受けられます」で、生命保険料控除において全期前納払いと一時払いを具体的に比較した記事を掲載しています。

一時払いと全期前納払いの主な違いは、一括で支払った保険料の扱われ方

一時払いと全期前納払の違いを簡単に説明すると、


  • 「一時払い」:全期間分の保険料を一度に支払う方法です。
  • 「全期前納」:年払や月払の全期間分の保険料を一度に支払い、保険会社に預けておく方法です。保険会社が1回あたりの年払や月払の保険料分を充当していくような支払い方法です。

一時払いの特徴について、簡単にいうと、以下の3点があげられます。


  1. 保険料の総支払額は「全期前納」に比べて安い
  2. 被保険者の死亡、解約時等に保険料は返還されない
  3. 生命保険料控除を利用できるのは、保険料を支払った年のみ

一方で、全期前納払いの特徴は以下のとおりです。

  1. 保険料の支払総額は「一時払い」に比べて高い
  2. 被保険者の死亡、解約時等には、未経過分の保険料が返還される
  3. 生命保険料控除は、保険料払込期間の間は毎年利用することができる

生命保険料控除の控除額はどのくらいになるのか

そもそも、「生命保険料控除」とは、以下の大きく3種類に分けることができます。


  1. 一般生命保険料控除
  2. 介護医療保険料控除
  3. 個人年金保険料控除

それぞれ加入されている生命保険によって、控除される種類が異なるので、自分が加入している保険がどの控除に該当するのか、注意が必要です。


ただし、一般的には、保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書に、該当する保険料が記載されています。


1.の一般生命保険料控除とは、簡単にいうと、定期保険や終身保険などのいわゆる、死亡保険に支払っている保険料に対する控除です。


2.の医療介護生命保険料控除に関しては、がん保険や入院・手術をした際にでる医療保険の保険料に対する控除です。


3.の個人年金保険料控除は、その名のとおり、個人年金保険に加入されている方の保険料に対する控除になります。(ただし、一時払いの場合はこの控除の対象ではありません。)

新制度と旧制度で控除額の計算方法と上限が異なる

この他に、この生命保険料控除は平成24年1月1日以降に加入した生命保険と、平成23年12月31日までに加入した生命保険と、いわゆる、「新」「旧」で区分分けがされます。


自身の生命保険の加入時期によって、控除する際に用いる計算式が異なるので、注意が必要です。


控除の最高額は「一般生命保険料控除」、「介護医療保険料控除」、「個人年金保険料控除」それぞれ4万円(住民税は2万8000円)で、合計して12万円です。


また、平成23年12月31日までに加入した旧契約は「一般の生命保険料控除」、「個人年金保険料控除」それぞれで5万円(住民税は3万5000円)で、合計して10万円(住民税は7万円)です。

一時払いの場合と全期前納の場合の控除額の違い

保険料を一時払いにした場合は、この生命保険料控除の恩恵を受けるは契約した年の1回きりです。


一方で全期前納を選んだ場合には、保険料は毎月支払われるという扱いになるので、毎年減税を受けることができるのです。もちろん、きちんと生命保険料控除証明書も毎年送られてきます。


例えば、10年払い済みの終身保険100万円の保険料を、全期前納払いで980,000円支払ったとすると、1回分(1年分)の保険料は、


980,000円x1/10で98,000円となります。


年間保険料が80,000円を超えているので、所得税の所得控除額は最高額の40,000円、住民税の所得控除額も同じく最高額の28,000円となります。


さきほどもお話をしましたが、保険料は一時払いの方が全期前納と比較して低く抑えることができます。


しかし、全期前納は毎年控除を受けることができるという観点から、どちらがトータルで考えたときにお得なのかは、場合によりますので、注意が必要です。

会社員は年末調整、自営業者は確定申告で生命保険料控除の申請をする

会社員の方は、年末に会社から生命保険料控除申請書が届くので、それを提出し、会社から指示された手続きを行うと、生命保険料控除を受けられます。


しかし、自営業の方は年末調整がないので、確定申告のときに生命保険料控除の申請をすることになります。


会社員の方で、生命保険料控除の申請を忘れた場合には、確定申告をすれば、生命保険料控除を受けられます。

まとめ

生命保険に加入する際には、その保険料の払方を自身で選択します。


どの支払い方が一番得かは一概には言えません。


保険料を支払う方の経済状況やライフスタイルによって、どの方法を選ぶかを考える必要があります。


一時払いや全期前納払いは、月払い等に比べて、トータルの保険料は安くなりますが、一度に大きな資金が必要なため、そもそもお金に余裕がないと選択できない支払い方法です。


また一時払いの場合は、支払った年しか生命保険料控除の対象とはなりません。


もし、一時払いや全期前納払いを選択しようとする際には、それぞれの特徴やメリットを理解した上で、検討をおこないましょう。


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