更新日:2018/03/28
生命保険料控除額の新制度・旧制度・新旧併用の場合の上限と計算方法
生命保険料控除額の上限は新制度の場合は所得税12万円、住民税7万円、旧制度の場合は所得税10万円、住民税7万円、新旧併用の場合は所得税12万円、住民税7万円となります。生命保険料控除には新制度3種類、旧制度2種類あり、それぞれに上限があることに注意が必要です。
目次を使って気になるところから読みましょう!
生命保険料控除に限度額はあるの?
年末が近づいてくると、年末調整や確定申告などで苦手な税金と向き合わないといけない時期がきます。
特にその中でも生命保険料控除は、平成24年前後の保険契約で計算方法が違い、自分の契約している保険では、いくらまで税金が控除されるのかわからないという方が多くいらっしゃると思います。
この記事では、具体例を出しつつ、新制度の生命保険料控除の算出方法、旧制度の生命保険料控除の算出方法、新旧併用した場合の算出方法、そしてその上限額について解説します。
この記事を読み終わる頃には、自分の契約している保険ではどのくらい税金が控除されるのかを自分の手で計算できるようになります。
そのために、是非最後までご覧ください。
生命保険料はそれぞれの契約ごとに”控除額の上限がある”
これを「生命保険料控除制度」といいます。
生命保険料控除制度とは、支払った保険料の1年間分を計算し、保険料の金額により一定額を所得から差し引からます。
所得から差し引かれると、差し引かれた所得を元に所得税が計算されるため、結果、所得税と住民税の金額が下がります。
なぜ、このような生命保険料控除制度があるかというと、生命保険に加入しているということは、自分の保障や自分に何かあった時の家族の保障を自分で働いたお金で賄っています。
これにより、国の負担も減ります。
自分のお金で自分の保証を準備しているので、代わりに国は税金を安くすることで保障の負担を助けています。
しかし、加入すればするほど節税対策できる!わけでは無く、控除できる上限額が決まっています。
さらに、生命保険料控除には新契約と旧契約に別れるので注意が必要です。
自分で加入している保険で新旧がわからない場合は、保険会社から郵送されてくる控除証明書を見れば新旧の区分が記載されているので確認してみましょう。
また、以下で詳しく記しますが、控除の種類は3種類に分かれています。
- 一般生命保険料控除(定期保険・終身保険・学資保険など)
- 介護医療保険料控除(医療保険・がん保険・介護保険など)
- 個人年金保険料控除(個人年金保険)
詳しく見ていきましょう。
生命保険料控除の計算方法には”新制度”と”旧制度”がある
ただでさえ、わかりずらい税金の話であるのに生命保険料控除の仕組みは平成24年を境に変更されました。
平成24年以前を旧制度、平成24年以降を新制度と呼びます。
旧制度では、生命保険料控除は
- 一般生命保険料控除
- 個人年金保険料控除
の2種類でしたが、
新制度では
- 一般生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
の3種類となりました。
種類が増えただけでなく、計算方法や上限額も変わったので次に説明していきます。
新制度(平成24年度以降)の場合:上限額は”所得税12万円、住民税7万円”
新制度の生命保険料控除の上限額は、
- 一般生命保険料控除額が所得税4万円、住民税2.8万円まで
- 介護医療保険料控除額が所得税4万円、住民税2.8万円まで
- 個人年金保険料控除額が所得税4万円、住民税2.8万円まで
と一律所得税4万円、住民税2.8万円となっております。
また、住民税の控除額の上限はそれぞれ2.8万円ですが、合計では7万円(2.8万*3=8.4万よりは少ない)であることを知っておきましょう。
また具体的に支払った保険料に対しての控除額の計算方法は以下のようになります。
所得税(新制度)
年間払込保険料額 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 払込保険料全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 払込保険料×1/2 +10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 払込保険料×1/4 +20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
住民税(新制度)
年間払込保険料額 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 払込保険料全額 |
12,000円超 32,000円以下 | 払込保険料×1/2 +6,000円 |
32,000円超 56,000円以下 | 払込保険料×1/4 +14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
このように、年間に支払った保険料額によってそれぞれの控除額が決まります。
旧制度(平成23年度以前)の場合:上限額は”所得税10万、住民税7万”
旧制度の生命保険料控除の上限額は、
- 一般生命保険料控除額が所得税5万円、住民税3万5千円まで
- 個人年金保険料控除額が所得税5万円、住民税3万5千円まで
と一律所得税5万円、住民税3万5千円となっております。
また具体的に支払った保険料に対しての控除額の計算方法は以下のようになります。
所得税(旧制度)
年間払込保険料額 | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 払込保険料全額 |
25,000円超 50,000円以下 | 払込保険料×1/2 +12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 | 払込保険料×1/4 +25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
住民税(旧制度)
年間払込保険料額 | 控除額 |
---|---|
15,000円以下 | 払込保険料全額 |
15,000円超 40,000円以下 | 払込保険料×1/2 +7,500円 |
40,000円超 70,000円以下 | 払込保険料×1/4 +17,500円 |
70,000円超 | 一律35,000円 |
このように、旧制度の場合も新制度と同じく年間に支払った保険料額によって、それぞれ控除額が決まります。
新制度と旧制度を合わせての申請は”新制度”の計算方法
生命保険料控除の計算において、最も計算がややこしくなってしまうのは、新制度適用の保険と旧制度適用の保険のどちらも加入している場合です。
この場合は、新制度適用の保険のみ生命保険料控除を申請して計算することもできますし、逆に旧制度適用の保険のみ生命保険料控除を申請して計算することもできます。
さらに、新制度適用と旧制度適用を合わせた新旧併用という形で生命保険料控除を申請することもできます。
そしてその場合、所得税と住民税の控除額の上限は新制度が適用され、それぞれ一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除において、最大所得税4万円、住民税2.8万円が控除され、合計所得税12万円、住民税7万円控除されることになります。
生命保険料控除において”新旧制度の併用は要注意”
しかし、更新・転換・特約付加の中でも、無料で付加できる特約(リビング・ニーズ特約など)は途中で付加したとしても新制度の対象となりません。
また、怪我のみを保障する傷害特約も新制度の対象にならないなど、一般の方ではわかりにくい部分もありますので、必ず保険会社の担当者に確認することをお勧めします。
担当者がいない場合でも、加入している保険会社のお客様センターでも対応してくれます。
新旧制度の併用は、上限控除額が”最高額になる計算方法”で申請できる
新制度適用の保険と旧制度適用の保険のどちらも加入している場合は、以下の三つの生命保険料控除の申請方法があると説明しました。
- 新制度適用の保険のみ生命保険料控除を申請
- 旧制度適用の保険のみ生命保険料控除を申請
- 新旧併用という形で生命保険料控除を申請
この3つの計算方法で得られた控除額のなかで一番大きい控除額で申請することが可能となります。
場合によっては数万円も控除額が変わってきますので、もしこの場合に当てはまる読者の方がいらっしゃいましたら、次の具体的なケースをしっかりと確認しましょう。
新旧併用の場合、どちらも申請、もしくはどちらかによってお得になることも
併用する区分ごとの限度額及び、制度全体の適用額は新制度のものとなります。
そうなってくると、新旧2つの制度が適用される保険に加入していても申告額は併用しないほうがお得な場合も出てきます。
ご自身にとって一番お得になるほうで申告をすることをおすすめします。
どれが一番お得になるのか計算が難しい場合は、加入している担当者の方や税務署に確認してみても良いでしょう!
まとめ
生命保険料控除の上限と計算方法について、新制度、旧制度、新旧併用に分けて説明してきました。
いかかでしたでしょうか。
新制度のみの保険、もしくは旧制度のみの保険しか契約していない場合であれば、この記事の前半までを読んだら計算方法とその上限がわかるかと思います。
どちらの保険も契約している場合は、どの計算方法が控除額の最大となるのかを考える必要があります。
また、高い保険料を支払っているのに、所得税の控除額の上限12万に到達していないのは何故なのかというような疑問がもし解決されたなら幸いです。
一般生命保険料控除の上限が4万円、介護医療保険料控除の上限が4万円、個人年金保険料控除の上限が4万円であり、その合計値が12万円というだけであり、一つの保険に高い保険料を支払っていても控除額が12万円になるというわけではないということです。
また、「生命保険料控除 シミュレーション」などでGoogleで検索すると、実際に自分の保険料を打ち込んだら、自動的に控除額が提示されるツールもありますので、そちらを利用するのもおすすめです。