生命保険料控除を毎年受けられるのは前納払いの場合!一時払いとの違いも解説!

当記事は生命保険料控除について詳しく知りたい方向けに解説します。今回は前納払いの場合は生命保険料控除を毎年受けられるという内容で注意点や基礎知識を解説します。後半では、一時払いとの違いも解説するので、前納払いと一時払いについて理解しておきましょう。


生命保険料控除の適用範囲について正直あいまい、、
そんな方に向けて、前納払いであれば毎年生命保険料控除を受けられる!という内容で解説していきます。

前納払いと一時払いによって生命保険料控除の適用範囲が変化するため、節税対策で損をしないようしっかり確認しておきましょう!

全期前納払いの生命保険料控除

生命保険料控除は所得控除のひとつで、一年間に支払った保険料の金額により、一定の金額を保険料負担者の課税対象所得から差し引くことができます。

これにより所得税や住民税の税額が軽減されます。


保険料の支払方法には、月払、半年払、年払、一時払い、全期前納払いなどがありますが、全ての支払い方が生命保険料控除の対象となるわけではありません。ここでは、全期前納払いと一時払いについて見て行きます。


全期前納払いの仕組み

前納払いとは、一定期間分の保険料を前もって保険会社に払っておく方法で、全期前納払いは、保険料払込期間分の保険料を、契約時に全て一括で支払ってしまう支払方法です。

例えば、45歳加入、10年払い済みの終身保険100万円の年払保険料は97,854円、10年間では978,540円になりますが、これを契約時に10年分全期前納払いで支払う場合は、少し割り引かれた(これを前納率といいます)977,806円をまとめて支払います。


全期前納は保険期間分の保険料を一括で保険会社に支払いますが、保険会社はそれを全額その保険に充当するわけではなく、保険料の支払い時期が来るたびに1回分の保険料(前述例でいえば97,854円)だけを保険に充当して、残りは保険会社で預かる形になります。


一時払いと全期前納払いの違い

全期前納払いに似た保険料の支払方法に、一時払いがあります。どちらも生命保険の契約時に保険料を一括で支払うという点では同じなのですが、決定的な違いがあります。生命保険料控除にも影響してくるこの違いについて、解説します。

一時払いの仕組み

一時払いとは、全保険期間分の保険料を契約時に1回で支払う方法のことを言います。保険会社側から見ると、保険会社がその保険契約で定められた保障をするのに必要なお金を、契約時に全額徴収するのが一時払いということになります。

保険会社は受け取った保険料を運用する

一時払いは全保険期間分の保険料を一括で受け取ってそれを運用をするため、一時払い保険料は、月払や年払で支払う保険料の総額よりも安くなります。


また一時払いの保険、とくに一時払い終身保険は、預金のかわりとして利用することもできます。たとえば一時払い終身保険の場合、契約後数年間は元本割れするものの、4~5年程度でプラスマイナスゼロ、その後は利息がついて増えていきます。

一時払いと全期前納払いとの違い

一時払いは払込回数が一回

一時払いも全期前納払いも、契約時に全保険期間分の保険料を一括で支払う点では同じですが、払込回数が異なります。

払込回数とは保険料を払い込む回数で、例えば10年払い済みの終身保険を年払いで払うのであれば10回です。払込回数が最多なのは終身払いで、払込期間が10年、5年、3年と短くなるにつれて払込回数も少なくなり、払込回数が1回と最少なのが一時払いということになります。


全期前納払いの払込回数は払込期間による

これに対して全期前納払いは、払込回数は特定されていません。契約時に一括で払い込みはしますが、あくまでも初回分の支払いに加えて残りの払込回数分は保険会社に預けておく形です。


たとえば10年払い済み保険を年払いで支払うのであれば、初回分の保険料に加えて残りの9回分の保険料も保険会社にあらかじめ預けておくという意味です。


2回目以降は、保険料の支払い期限が来るたびに、あらかじめ払ってあるお金から充当されていく形になります。なお、預けているお金は所定の利率で運用されます。


一時払いは「支払う」、前納は「預ける」

一時払い保険料は、保険料として「支払い」ますから、例えば万が一のことがあって死亡保険金が支払われる場合に、支払った保険料は戻ってきません。


一方、全期前納払いは、保険会社に保険料としてのお金を「預けて」いますから、万が一のことがあった場合には、死亡保険金に加えて未経過分の保険料が戻ってきます。


例えば、加入年齢45歳、10年払い済みの終身保険100万円、年払保険料97,854円、全期前納払い保険料977,806円というケースで、加入1年後に万が一のことが場合は、100万円の死亡保険金と未経過保険料879,952円(977,806円ー97,854円)が支払われます。


一時払いと全期前納のどちらがお得か

保険料総額で比較をすれば、一時払いの方が安いのでお得です。しかし、前述の通り、保険期間の途中で万が一のことがあった場合は、保険金に加えて未経過保険料が戻ってくるので、全期前納のほうがお得だということになります。


全期前納払いは生命保険料控除が適用されるのか


生命保険料控除は、1年間に支払った保険料に応じて所得控除が受けられる制度ですが、一度にまとまった保険料を支払う全期前納払いも、生命保険料控除の対象となるのでしょうか?全期前納払いの場合の生命保険料控除の扱いについて見て行きます。

全期前納払いは毎年前納分の生命保険料控除を受けられる

結論からお話しすると、全期前納払いの場合でも生命保険料控除は受けられます。しかも、控除を受けられるのは初年度だけではなく、払込期間中毎年受けることができます。

その理由は、一度にまとまった保険料を支払うとはいっても、その全額が当該年度の保険料として充当されるわけではなく、あくまで一年分に充当され残りは保険会社の預かり金となるに過ぎないからです。


全期前納払いは、払込期間中、毎年生命保険料控除を受けられるのですが、一時払いの場合は支払った年しか生命保険料控除を受けられないことに注意が必要です。 

全期前納払いにした場合の年末調整や確定申告における生命保険料控除の手続き

では、全期前納払いで保険料を支払った場合の、年末調整や確定申告における生命保険料控除の手続きはどうすれば良いのでしょうか。

生命保険料控除証明書は毎年発行される

具体的な手続きは月払や年払と同様で、保険会社から毎年生命保険料控除証明書が発行されますから、それに記載された生命保険料控除額を、所得税の申告書をはじめとする各種書類に記載し、証明書として添付するだけで大丈夫です。


全期前納払いの場合の生命保険料控除額の計算方法

手続き上は、生命保険料控除額は証明書に記載されているので、自分で計算する必要はありませんが、計算方法は以下のようになっています。

翌年以後に払込期日が到来する保険料を一括して払い込んだいわゆる「前納保険料」については、次の算式により計算した金額が、本年中に支払った保険料の金額となります。

前納保険料の総額(前納により割引をされた場合には、その割引後の金額)× 前納保険料に係る本年中に到来する払込期日の回数/前納保険料に係る払込期日の総回数

出典: https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/nencho2015/pdf/21-33.pdf


例えば、10年払い済みの終身保険100万円の保険料を全期前納払いで980,000円支払ったとすると、1回分(1年分)の保険料は、980,000円x1/10で98,000円となります。


年間保険料が80,000円を超えているので、所得税の所得控除額は40,000円、住民税の所得控除額は28,000円となります。

(所得控除額の早見表はこちらをご参照ください:税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」|公益財団法人 生命保険文化センター  http://www.jili.or.jp/knows_learns/basic/tax/premium.html )


まとめ

一時払いと違い、全期前納払いは生命保険料控除を受けられます。

保険会社にお金を一回で支払うという点では同じでも、全期前納払いはあくまで翌年以降の保険料を預けているに過ぎないからです。月払や年払同様、生命保険料控除証明書は毎年発行されますから、それに基づいて申告をすれば、控除を受けるのは難しいことではありません。

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