入院や出産でかかった差額ベッド代は医療費控除の対象となるか?

入院や子供の出産費用でかかった差額ベッド代(部屋代・個室代)は、医療費控除の対象になるのか?また、差差額ベッド代は医療費控除で確定申告した方が良いのかどうかの注意点と、する場合の書き方、申告する場合に診断書や領収書は必要か等について詳しく解説します。

入院や出産でかかった差額ベッド代は医療費控除対象か?

怪我や病気、出産時には様々な費用が必要となります。

その中でも、高額なものとしてあげられるのが差額ベッド代です。


退院する際の請求書を見て一番驚くのが、この差額ベッド代だといわれているほどとても高額なものとなります。


そんな高額な差額ベッド代は基本的に自己負担とされていますが、経済的にもかなりの負担となってしまいます。


しかし、そんな差額ベッド代は医療費控除として申告できます。


そこでこの記事では、入院や出産でかかった差額ベッド代について、

  • 差額ベッド代が医療費控除の対象になる場合とならない場合
  • 国税相が認める医療費控除対象
  • 医療費控除の申請を行うための確定申告の方法
  • 医療費控除に関する注意点
以上のことを中心に解説していきます。

この記事を読んでいただければ、差額ベッド代は医療費控除対象なのかが把握できると思います。

ぜひ最後まで読んでください。

差額ベッド代は医療費控除の対象になる場合とならない場合がある

差額ベッド代とは、1~4人部屋での入院時にかかる費用のことです。

正式には、「特別療養環境室料」といわれており、基本的に自己負担となります。


差額ベッド代は高額なものとなりますが、医療費控除の対象になるのでしょうか。


医療費控除の対象の場合、確定申告を行うことで所得から医療費の所得控除を受けられます。


ここでは、差額ベッド代が医療費控除の対象になる場合とならない場合の条件について解説します。

個室しかない病院や病院都合で必要と判断した場合は対象

差額ベッド代の医療費控除対象になる条件は以下の通りです。


  •  病院都合で個室を利用した場合
  • 出産時に個室を利用した場合  

ここでいう病院側の都合とは、以下のものがあります。
  • 4人以上の大部屋が空いていない
  • 免疫力の低下により感染症にかかる危険がある
  • 常に監視、介護が必要な場合
  • 後天性免疫不全症候群の病原体に感染している、クロイツフェルト・ヤコブ病の患者
などが上げられます。

出産時の個室利用についても、医療費控除の対象となります。

産婦人科では、妊娠は病気ではないですが母親がストレスをためないように基本的に個室のみで構成されている場合が多いです。

そのため、妊婦の場合は個室での入院になることがほとんどです。
この場合も医療費控除の対象になります。

産婦人科の中には、大部屋と個室の両方を完備しているところもあります。

この場合、病院の都合ではなく自らの意思で個室を利用した場合は医療費控除の対象外となるので注意しておきましょう。

自分で差額ベッド代が発生する部屋を希望した場合は対象外

自分で差額ベッド代が発生する個室(1~4人部屋)を希望した場合は、医療費控除の対象外となります。


「大部屋だと眠れない」「トイレ付きの個室がいい」など、入院するにあたって個室を病院側に希望した場合は、差額ベッド代は個人負担となります。


また、同意書にサインを行った場合も同様です。


入院時には、治療にあたっての同意書などの書類がたくさん配布されます。

その中に、部屋に関する同意書も含まれているでしょう。


たとえ、個室を希望していなかったとしても、病院の都合上個室でなくてはいけない状況だったとしても、個室で入院することを同意する書類にサインしてしまえば個人負担となってしまいます。


同意書が優先されてしまうので必ず入院時の書類は、身内の方と一緒に目を通すなどの対策を行いましょう。


どうしても「病院からの書類だから大丈夫」と安心感を抱いてしまいます。


サインを行うからには、内容をしっかり読んでからにすると後々のトラブルを回避できます。

国税省が定める医療費控除の対象となるもの・ならないもの

医療費控除とは、国税庁の「医療費を支払ったとき(医療費控除)」によると自分や親族に支払った医療費において、その支払った医療費が一定額を超えた場合に所得控除を受けられるというものです。


支払った金額がそのまま返還されるわけではなく、確定申告を行うことで所得税控除が行われます。

つまり、税金の一部を返してもらえるということです。


高額療養費制度と少し似ていますが、まったく違う制度なので注意しておきましょう。


高額療養費制度では、病院に支払った金額で自己負担限度額を超えた場合、その差額が払い戻しされる制度です。

ちなみに、差額ベッド代は対象外となります。


ここでは、医療費控除を受ける対象となる条件を解説していきます。

医療費控除を受けるための大前提となる条件

国税庁のHPに記載されている、医療費控除を受けるための条件は以下の通りです。


  • 納税者が、自分や生計を共にしている配偶者、その他の親族のために支払った医療費
  • その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること。(未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除が対象。)

医療費控除の最大限度額は、200万円です。

医療費控除の費用の計算式は以下のものとなります。

(実際に支払った医療費-保険金で受け取った金額)-10万円

その年の総所得金額が200万円未満の場合、総所得金額の5%が最後に引かれます。

これらの条件に当てはまる場合は、医療費控除を受けられるでしょう。

医療費控除の対象かは治療するうえで必要かどうかで判断

実際に医療費控除の対象かどうかを確認するための目安はあるのでしょうか。


医療費控除の対象となるものは、医師が治療を行っていくうえで必要と判断したものとなります。


例えば、入院中に病院から提供される食事は医療費控除の対象になりますが、病院外で購入してきた食事は対象外となります。


入院中の食事は、味が薄いと感じることも多いため、ふりかけやちょっとした缶詰などを購入する方も多いですが、入院中に食べたからと言って医療費控除の対象にはなりません。


では実際に、どんなものが対象となるのか見ていきましょう。



対象対象外
入院中医師の診断のもと必要とされる治療費個室を自分で希望した場合の差額ベッド代
特定保健指導入院時に必要なパジャマや洗顔など
付添料テレビや冷蔵庫などを借りる費用
交通費(公共機関やタクシー代)自家用車で通院した場合のガソリン代


表を見てみると、治療に必要なものだけが対象となることがわかります。


妊娠時には、定期検診や通院費、出産時のタクシー代、不妊治療費などが対象となります。


妊娠している間、ほとんどの項目において対象となっているのはとても助かりますね。


しかし、一つだけ無痛分娩における講座については対象外となります。


無痛分娩の講座を受けるための交通費なども対象外です。

差額ベッド代を医療費控除するための確定申告の書き方・申告方法

確定申告で差額ベッド代を医療費控除申請することで、医療費の所得控除を受けられます。


しかし、サラリーマンの場合だと確定申告自体を行ったことがないという方が多く、申告方法がわからないという方も多いことでしょう。


ここでは、医療費控除の申請を行うために必要な書類や申告書の書き方などを解説していきます。

医療費控除の申告で領収書や診断書は不要

確定申告で医療費控除の申告を行う場合、通常の確定申告用紙と一緒に医療費控除の明細書を提出します。


差額ベッド代において、病院からの証明書や診断書、領収書は必要ありません。


ただし、領収書においては5年間保管しておく必要があります。


5年を過ぎたものは破棄しても問題ありません。


医療費控除の申告は、5年間さかのぼって行うことが可能です。


あとは、書類と一緒にマイナンバーカードや通知カード、本人確認書類のコピーが必要です。

確定申告の申告方法とその書き方

確定申告の医療費控除申告方法は、国税庁の「確定申告特集」で詳しく掲載されています。


国税庁HPの確定申告書類作成コーナーにアクセスし、書類を準備しましょう。

源泉徴収の内容を記入し、医療費の領収書の内容も記入していきます。


差額ベッド代は、「その他の医療費」に含みます。


あとは、氏名やマイナンバーを記入して申告書を提出します。


申告書の提出方法は以下の方法があります。

  • e-Taxでデータ送信
  • 申告書を印刷してポスト投函
  • 申告書を印刷して直接持っていく

申告書の提出には、毎回マイナンバーと本人確認書類を一緒に提出する必要があります。
マイナンバーカードや通知カード、免許書のコピーなどを一緒に提出してください。

ただし、e-Taxを利用すれば本人確認書類の提出は必要ありません。

医療費控除で差額ベッド代が全額返還されるわけではないので注意

医療費控除の対象となったとしても、差額ベッド代がすべて返還されるわけではありません。


先ほど紹介した、医療費控除の計算式で出てくる医療費控除額は、返還される金額ではありません。


計算式から出た医療費控除額に所得税率をかけた金額が実際に返ってくる金額となります。


「給与所得控除後の金額」と「給与控除の合計」をみて課税所得額を確認し、下の表を参考に所得税率を確認できます。

課税所得額所得税率
195万円以下5%
195万円超330万円以下10%
330万円超695万円以下20%
695万円超900万円以下23%
900万円超1,800万円以下33%
1,800万円超4,000万円以下40%
4,000万円超45%



住宅ローン控除を受けている場合は、納税額が控除額より少なくなる場合があり、その場合は全額返還されません。


医療費控除の申請を行うか、そもそも病院に「個室を希望していない」と意思をしっかり伝えて同意書などにサインしないか、よく考えて対処したほうがいいでしょう。


差額ベッド代は医療費控除の対象かのまとめ

差額ベッド代は医療費控除の対象になるのか、について解説してきましたがいかがだったでしょうか。


この記事のポイントは、

  • 差額ベッド代は、病院の都合であれば支払いをしなくてもいい
  • 医療費控除の対象になるのは、治療に個室が必要と判断された場合のみ
  • 産婦人科では個室のみの場合が多く、この場合も医療費控除の対象になる
  • 医療費控除の申告を行う場合、意思の診断書などはいらないが領収書は5年間保管しておく
  • 医療費控除を行っても全額返ってくるわけではないので注意しておく
でした。

入院時、個室でなくてはいけない理由がない場合は4人部屋以上の大部屋で入院することをおすすめします。

差額ベッド代は、思っているより高額で1人部屋で平均1日7,837円ほどかかるといわれており、30日入院すると235,110円とかなり高額です。

医療費控除の対象になる場合は確定申告を行い、医療費控除の対象にならない場合は個室を希望しないことを伝えておくと安心です。

ほけんROOMでは、他にも保険にまつわる記事を多数掲載しておりますので、ぜひ読んでみてください。

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