入院時の差額ベッド代とは?病院都合なら支払い不要?料金の相場も解説

入院、個室や4人部屋などを選択した際にかかる差額ベッド代ですが、病院都合なら支払う必要がないことをご存知でしょうか。今回、差額ベッド代の平均的な料金、差額ベッド代支払いを拒否しても良い場合、差額ベッド代が医療費控除や高額療養費制度の対象になるのかを解説します。

差額ベッド代とは?料金の相場は?同意書なしなら支払う必要なし?


個室に入院すると差額ベッド代で入院費が高いなどという言葉を耳にした方は多いと思います。


入院の際に大部屋意外を希望すると、余分に費用がかかってしまうのです。


1日あたりの差額はそれほど高いものではありませんが、入院が長引いた場合など思った以上に高額になってしまう場合も多々あります。


差額ベッド代とは何なのか、相場や発生する条件など気になりますよね。


この記事では

  • 差額ベッド代とは?
  • 相場はどれくらい?
  • 支払いが必要な条件について
  • 差額ベッド代を拒否してもいい3つの例
  • 医療費控除などの対象なのか?
  • 差額ベッド代が補償対象となる民間保険
  • 差額ベッド代を支払いたくない場合
についてご紹介します。

入院費用は治療費だけでなく、生活必需品代などの雑費もかなりかかることがあります。思わぬ出費となって慌てないよう、理解を深めておきましょう。

ぜひ最後までお読みください。

入院時の差額ベッド代とは?差額ベッドの支払いが必要な条件も


個室や少人数の部屋を希望する方も多いと思います。大勢の人と同じ部屋で入院する場合、気を使ってしまいゆっくり治療に専念できないと感じてしまいますよね。


このように、一般的な大部屋から、特定の条件を満たした部屋に移動する際に発生するのが差額ベッド代です。


差額が発生する条件としては、

  • 個室や少人数の部屋を自分で希望した
  • 個室などを利用する際に病院の同意書にサインをした

などが挙げられます。


他人がそばにいると眠れない、気を使ってしまい治療に専念できない、といった方も多いと思います。


一人で入院したいと考える方も多いと思いますが、自ら個室を希望すると差額ベッド代が発生することになります。


また、個室などへの移動を行う際、病院側から同意書へのサインを求められます。この同意書にサインをすることで、差額を支払う必要が出てきます。

個室と4人部屋で大きく異なる差額ベッド代の相場

厚生労働省より公表されている「主な選定療養に係る報告状況」によると特別の療養環境に係る病床数がここ数年で増えていることがわかります。


特別の療養環境に係る病床数とは一般の病床ではない病床で、いわゆる差額ベッド代が発生する病床のことです。


2014年には特別の療養環境に係る病床数は233,387床ですが、2017年には266,165床と32,778床増えています。


その一方で全体の病床数は減っていることから、割合として差額ベッド代のかかる病床が増えていく傾向は今後も続いていくでしょう。


それでは具体的にどれくらいかかるのか相場を見ていきましょう。

差額ベッド代は公的医療保険制度の適用外

中には医療費は3割負担だから、個室を利用してもそれほど負担は増えないのでは?と考える方もいるかと思います。


しかし、差額ベッド代は公的医療保険制度の対象とならないため、注意が必要です。健康保険などの3割負担は適用されません。


その他適用外となるものには、

  • 食事代
  • 生活用品代

などがあり、これらはかかった分だけ全額自己負担となってしまうのです。


さらに、医療費控除を受ける際にも適用されません


差額ベッド代込みの金額が11万円だったとしても差額ベッド代が3万円だった場合、条件である10万円に達していないため、控除を受けることはできません。


公的な制度では対象外となってしまうため、入院時にどうしても個室の利用をしたい、と考えている方は、民間の医療保険、特に差額ベッド代が補償対象となっている保険への加入をしておくようにしましょう。

3~4人部屋の相場

2017年7月の同上の資料によると3~4人部屋の1日当たりの平均徴収額は2,619円になっています。


具体的な金額分布は以下の通りです。

1日当たり病床数割合(%)
~1,080円11,91327.95
~2,160円13,59931.90
~3,240円8,05218.89
~4,360円2,4865.83
~5,400円3,3267.80
~8,640円3,0467.15
~10,800円
1810.42
~16,200円230.05
~32,400円30,01
合計42,629100

金額に幅はありますが、おおよそ3千円弱ほどが相場といえるでしょう。

2人部屋の相場

また2人部屋の1日当たりの平均徴収額は3,119円です。


金額の分布は以下の通りです。


相場はおよそ3千円強でしょう。

1日当たり
病床数割合(%)
~1,080円8,71619.53
~2,160円12,73028.53
~3,240円9,73021.80
~4,360円4.0819.15
~5,400円3,9638.88
~8,640円3,1657.11
~10,800円1,2862.88
~16,200円8932.00
~32,400円500.11
~54,000円40.01
合計44,618100

個室の相場

個室では平均徴収額は7,837円と大きく跳ね上がります。

1日当たり病床数割合(%)
~1,080円6,6033.69
~2,160円13,3737.47
~3,240円21,97712.28
~4,360円16,9939.50
~5,400円28,12515,72
~8,640円39,52222,09
~10,800円18,95210,59
~16,200円19,68111,00
~32,400円11,5936.48
~54,000円1,7721.00
~108,000円2910.16
それ以上360.02
合計178,918100

また特別の療養環境に係る病床のうち実に70%近くが個室になっています。


また個室は金額の幅もかなりの広がりがありますが、相場は8千円前後といえるでしょう。

差額ベッド代の支払いが必要な条件とは?

条件は以下のようになっています。

  1. 病床数は4床以下であること。
  2. 病室の面積は一人当たり6.4平方メートル以上であること。
  3.  病床のプライバシーを確保するための設備があること。
  4. 少なくとも「個人用の私物の収納設備」、「個人用の照明」、「小机等及び椅子」の設備があること。
したがって4人部屋だがらといって差額ベッド代が発生しないわけではありません。

差額ベッド代の発生する部屋は、そもそも入院生活の向上や患者の選択を広げるために認められているもので、その差額は患者が負担することが決められているのです。

厚生労働省が定める差額ベッド代の支払いを拒否しても良い場合3つ

自ら希望して個室へ移動した場合や、同意書へサインをした場合はベッド代の差額を支払う必要がありますがあるのは分かりますよね。


しかし、中には差額ベッド代が発生することを知らなかった場合や、気が付いたら個室にいた、という可能性もあります。


このような場合でも支払わなくてはならないのでしょうか?


一見支払わなくてはならない状況のようですが、以下の場合は支払が必要ありません。

  • 同意書にサインをしていない
  • 治療上必要である
  • 病院側の都合

これらの場合、差額ベッド代の支払いを拒否してよいと厚生労働省が定めているのです。


以下で詳しくご紹介していきます。

同意書による確認を行っていない場合

入院初日から2人部屋で、何の説明もなかったのに、請求書を見たら差額ベッド代が請求されていた、ということもあるかもしれません。


自分が利用したのだから、払わなくてはいけないと考える方もいますよね。


しかし、発生する条件として「同意書による確認」があります。そのため、同意書での確認・署名が無かった場合は差額ベッド代は発生しない、ということになるのです。


また、確認があった場合でも、同意書への説明が不十分であった場合(差額が発生する説明などが無かった場合)などは支払いを拒否できることになっています。


なんだかわからずに差額ベッド代を支払うことはせず、同意していない場合はしっかりと拒否するようにしましょう。

「治療上の必要」により差額ベッド室に入院した場合

中には医師が個室の使用を指示する場合もあります。病気の治療を行う上で必要と判断された場合ですが、この場合は支払い拒否が可能となります。


治療上必要には、

  • 救急・術後など、安静が必要または常時監視・看護が必要な場合
  • 免疫力が低下している場合
  • 集中治療の場合
  • 末期患者の場合
  • エイズに感染している場合

などが挙げられます。


ICUに入ることになったけれども、ベッド代が心配、という方もいるかと思いますが、必要と判断されるため拒否が可能となります。


免疫力が低下していた場合、他の感染症を予防するために他の患者との隔離が必要になります。隔離などの必要に応じて利用する場合は拒否できることになっています。


これらの場合でも、同意書にサインを求めることがあります。


サインしなかった場合は拒否ができても、サインをしたら支払う責任ができてしまうため、サインを行うのは差額などの確認をしてから行うようにしましょう。

「病院側の都合」で差額ベッド室に入院させた場合

病院側の都合」による場合も、差額ベッド代の支払いは不要です。


どのような場合が病院側の都合に当たるのでしょうか?

  • 感染力の強いウイルスかかっているなどで病院が個室に入院するべきと判断した場合
  • 大部屋に空きがない場合

などの場合が病院側の都合となります。


ウイルス性の病気は数多くありますが、中には感染力がとても強いものもあります。


このような場合、大部屋だと他の患者さんも入院しているため、感染が拡大してしまう可能性も高くなります。


このような院内感染を避けるために、個室などを利用する場合は、差額ベッド代は発生しません。


また、入院時に大部屋に空きが無いために個室に入院、という場合もあります。


自分の希望ではないため、このような場合も室料差額などは取られることはありません。

差額ベッド代を支払いを求められたが、病院都合で回避できた体験談

ここでは、差額ベッド代の支払いを入院時に病院側に求められたが、病院都合であったため支払いを拒否できたケースについて紹介します。

  • 先日急患で病院に搬送された際に、即入院となってしまいました。その際に病院側から個室に入院することになるので差額ベッド代が別途必要と言われました。同意書などはなく理由説明も特にされなかったのですが、私はその時とてもそこまで気が回る状況ではなかったのは確かです。ただ、付き添いで来ていた夫が差額ベッド代の支払いは必要ないことに気づき、病院側に代わりに伝えてくれました。結局大部屋が空いていないために個室に入院することになりましたが、病院都合だったので差額ベッド代を請求されることはなく退院できました。
差額ベッド代を支払わなくてはいけないケースとそうでないケースを知っておくことは大切ですね。

入院時の費用を少しでも安くするために、差額ベッド代の支払いをしなくていい場合についてはしっかり押さえておきましょう。

差額ベッド代は、医療費控除や高額療養費制度の対象内?

差額ベッドの費用を負担する必要はあるけれど、医療費控除になっているからそれほど負担はない、または高額療養費制度の対象となっているから、差額ベッド代がいくらかかっても変わらない、と考えている方もいるかと思います。


本当に差額ベッド代は医療費控除や高額療養費制度の対象となっているのでしょうか?


また、民間の保険では保障されるのかも気になるところです。


それぞれ以下で詳しくご紹介します。

差額ベッド代は、医療費控除や高額療養費制度の対象外

差額ベッド代は、健康保険の3割負担の対象外となるため全額自己負担になります。


また、治療費が高額となる場合は「高額療養費制度」を利用することができます。


一定の金額以上の治療費となった場合、申請することで超えてしまった金額が返還される制度です。


高額療養費制度を使うつもりだから、個室にしても負担しなくて済む、と考えるかもしれませんが、この制度は保険診療の自己負担金額が対象となっています。


そのため、健康保険の対象外となっている差額ベッド代は対象外となってしまうのです。


しかも基本的に所得税の医療費控除にも適用されません。 


国税庁のHPには「本人や家族の都合だけで個室に入院したときなどの差額ベッドの料金は、医療費控除の対象になりません」としっかりと説明があるくらいです。


ただし、病院側の都合の場合などそもそも差額ベッド代が請求されない場合はベッド代を負担することが無いため(上記項目参照)、結果として差額ベッド代は全額自己負担かつ所得税医療費控除にもならないことになるのです。

民間の医療保険なら差額ベッド代も保障される

健康保険や高額療養費制度などの国の制度では差額ベッド代はカバーされないことをご紹介してきました。


しかし、中には他人がいると落ち着いて休めない、といった方も多く、このような方はどうしても個室や少人数の部屋を利用した方が病気の治りも良くなりそうですよね。


意外と高額になってしまう差額ベッド代は、絶対に自己負担しなくてはならないのでしょうか?


このような場合の解決策として、民間の医療保険が挙げられます。医療保険で支払われる「入院給付金」や「手術給付金」などは差額ベッド代に充てることもできます。


もしどうしても入院する際は個室がいい、といった場合、このような民間の保険を利用することをおすすめします。

参考:差額ベッド代の相場は病院や地域によっても異なる

上記のように相場に幅があると、入院費がどれくらいになるのか知りたくでもますますわからなくなりますよね。


差額ベッド代は通常より良い病室になりますので、その相場は病院や地域によって全く異なってくるのです。


設備やベッドも高級ホテル並みの病室もあれば、大部屋より広い少し快適な4人部屋程度のものもあります。


設備や料金をは病院が自由に決めることができるのです。


ただしその概要は病院の受付窓口や待合室などに床数や料金を掲示する義務がありますので、確認してみましょう。

各病院が設置できる差額ベッドの数は最大で5割まで

厚生労働省の通知では、各病院が設置可能な差額ベッド代のかかる病床数は、全病床の5割

までと決められています。厚生労働省通知より


ゆえに、どの病院においても必ず健康保険診療の範囲で入院できる病床が最低でも半分は存在しているはずなのです。


病院によりばらつきはあるかもしれませんが、上記の「主な選定療養に係る報告状況」の資料によると、全体の総病床数のうち差額ベッド代のかかる病床数は20.5%となっています。


病院内には保険診療範囲内の病室はきちんと備わっているので、支払いを望まない場合はあらかじめ伝えておきましょう。

他の都市に比べて東京の病院は差額ベッド代が高い

差額ベッド代の相場は地域や病院によってばらつきがあり、病院や個室のグレードによってさまざまなのはわかってきました。


しかしながら全体としては東京都心の差額ベッド代は高い傾向にあります。


理由としては、東京都心の物価水準がそもそも高く人件費などがかかること、病院収益に差額ベッド代が占める割合が大きいこと、差額ベッド室でより快適な入院生活を望む患者側の意識などがあるでしょう。


それでは具体的に各地域ごとの病院で差額ベッド代はいくらになるのか例をあげてみていきましょう。

自分の住んでいる地域の差額ベッド代の相場を知ろう

病院名差額ベッド代(日)
旭川医療センター3,850円
北海道大学病院5,400~12,960円
仙台医療センター12,000~30,000円
東京医療センター15,000~75,000円
福井県立病院5,400~16,200円
名古屋医療センター5,500~55,000円
大阪医療センター3,500~32,000円
広島記念病院5,400~15,120円
済生会松山病院4,400~13,200円
九州医療センター2,000~25,000円
沖縄県立中部病院5,400~10,800円

差額ベッド代を全国から選んだいくつかの病院で上げてみました。


1日当たりの料金になりますので入院日数が長くなれば自己負担額はそれだけ大きくなります。


上限金額が主に個室にかかる料金になりますが、ほとんどの場合は1万円を超えてきています。

参考:差額ベッド代を支払いたくない場合にとるべき対策

緊急搬送などで、搬送先の病院に個室以外の空きが無く、差額ベッド代の同意書にサインを求められる、というケースも考えられます。


こちらは大部屋でかまわないのに、サインをしないと入院できない、という場合です。


サインをしてしまうと差額代を支払う必要が出てしまいますが、空きが無いなど病院側の都合では支払いを拒否することができるはずですよね。


このような場合の対策としては、同意書に「大部屋希望」などと記入をし、こちらが個室を希望していないことを明らかにしておきましょう。


支払いの際に同意書のコピーと厚生労働省からの通達文のコピーを添えて、病院側に提出することが一つの手段です。


このような方法でも差額ベッド代を請求してきた場合、社会保険事務所国民健康保険課厚生局で相談することができます。

入院したらかかることもある差額ベッド代の相場まとめ

入院時の差額ベッド代についてご紹介しましたがいかがでしたか。


まとめると

  • 差額ベッド代のかかる病床は増える傾向にある。
  • 相場は2~4人部屋では3千円前後。個室では8千円ほど。
  • 病院や地域によって異なる差額ベッド代。東京は高くなる傾向。
  • 病院が差額ベッド代を請求するためには同意書が必要。
  • 差額ベッド代は全額自己負担。
になります。

実際に病気やケガなどで自身や家族が入院することになったとき、できるだけリラックスして過ごしたい、過ごしてもらいたい、また、おちついた環境で治療したい、してもらいたいと思いますよね。

その一方で差額ベッド代のかかる病室はできるだけ避けたいとも思われるのではないでしょうか。

自身の地域の病院や差額ベッド代の相場について知っていれば、
入院で思わぬ出費に慌てず、きちんと治療ができるように整えることができます。

ほけんROOMでは、この他にも保険やお金に関する記事を多数掲載しています。是非ご覧ください。

ランキング