自分が買った薬代は対象になる?医療費控除に含まれる範囲を解説!

1年間に購入した薬代は、確定申告することにより医療費控除を受けることができます。調剤薬局やドラッグストアで購入する薬が医療費控除の対象になりますが、全ての薬が含まれるわけではありません。対象となる薬の範囲や確定申告の時の注意点などを分かりやすく解説します。

医療費控除の対象になる薬代の範囲とは?

軽い症状の風邪や怪我であれば、医療機関で治療を受けなくても、調剤薬局やドラッグストアで薬を買って自分で治すという方も多いことでしょう。

それでは、身近なドラッグストアなどで医師の処方箋なしに購入した風邪薬などの薬代は、医療費控除の対象となるのか、気になりますよね。


実は、同じドラッグストアで買っても、医療費控除の対象となる薬代と対象外となる薬代があるのです。


そこで、この記事では、「医療費控除の対象となる薬代」について、

  • どのような薬代が医療費控除対象となるのか
  • 確定申告時の医療費控除の申告方法について
  • 平成29年度分から所得控除を申告できる新しい税制について

以上のことを中心に解説します。


この記事を読んでいただいたら、医療費控除を申告する際の役に立つでしょう。


ぜひ、最後までご覧ください。

治療目的の薬代は含まれる

医療費控除の対象となる費用と聞くと、医療機関を受診した際の診療費や、処方された薬代などを思い浮かべますよね。

しかし、実は調剤薬局やドラッグストアにて自ら購入した薬代も、医療費控除の対象となります。


ただし、医療費控除の対象となるのは、

  • 治療目的、または療養目的で必要となるもの
  • 病状に対して著しく高価なものではないもの

という以上のような条件があります。


それでは、具体的にどのような薬代が医療費控除の対象となるのか、さらに詳しく解説していきます。

処方箋が必要な薬だけではなく、ドラッグストアの第2類医薬品なども対象

調剤薬局やドラッグストアで購入する薬のうち、医療費控除対象となるものはどのようなものがあるのか、説明していきます。

まず、風邪薬や胃腸薬、頭痛止めの薬、痛み止め、アレルギーを抑える薬などは、治療目的が明確ですよね。


このように、治療目的で購入する第2類医薬品などの薬代は、医療費控除の対象となります。


また、花粉症やアレルギーのための目薬、ニキビ薬、捻挫や腰痛のための湿布薬、絆創膏や消毒液なども、病状の緩和・治療目的として認められており、医療費控除対象となります。


さらに、「医薬品」と記載されている栄養ドリンクも、風邪の回復のために購入して服用したのであれば、控除の対象とすることができます。


ただし、疲労回復や病気の予防のために栄養ドリンクを飲んだ場合には、控除の対象外となります。


このように、ドラッグストアで購入できる多くの市販薬が医療費控除の対象となっていますが、医師の指示・処方箋なしで医薬品を購入し、その薬代が医療費控除の対象となるのか判断が難しい場合には、自己判断せず、税務署に確認するようにしましょう。

美容・健康維持・予防目的の薬代は対象外

それでは反対に、調剤薬局やドラッグストアで購入しても医療費控除の対象とならない医薬品について説明していきます。


まず、医療費控除の対象となる薬代とは、『治療目的』の医薬品でなければなりません。


そのため、美容や健康維持のためのサプリメントや健康食品は控除の対象とはなりません。


また、予防目的である酔い止め薬、乾燥防止のためのハンドクリーム、肩こり用の湿布薬なども控除の対象とはなりません。


目薬に関してですが、花粉症やアレルギーのための目薬は医療費控除対象ですが、疲れ目用の目薬は控除の対象とはなりませんので注意が必要です。


また、医薬品ではない絆創膏やマスクに関しても、治療目的または医師の指示の元使用するものについては控除対象となりますが、常備用として購入したものは控除対象外です。


これら医薬品でないものが医療費控除の対象となるかは、常備用のための購入か、医師の指示または治療目的での購入かで判断しやすくなります。

薬を買いに行くために使った交通費も対象

調剤薬局やドラッグストアで購入した薬代だけでなく、その薬を買いにドラッグストアなどへ行った際の交通費も、医療費控除の対象となります。


ただし、控除対象となるのは、バスや電車などの公共交通機関を利用した場合に限ります。


自家用車やタクシーで薬を買いに行ってた際にかかったガソリン代やタクシー代は対象となりません。


家族の薬代は合算できる

医療費控除とは年間10万円以上の医療費について所得控除を受けられますが、自分一人分の医療費だと、年間10万も支払うことがないという方も多いことでしょう。


しかし、実は医療費控除は生計を共にする家族の医療費も合算することができます。


また、「生計を共にする家族」と言うと、同じ屋根の下で一緒に暮らしていないと対象とならないかと思われますが、別居している子どもや、郷里で一人暮らししている自分の母親などの医療費も合算することができます。


その家族を扶養していない場合でも、大丈夫です。


ただし、条件として、この別居している家族に対して仕送りをしているなど、医療費もこちらが負担しているという前提の元、診療費や薬代などの医療費を合算し、医療費控除の申告ができるのです。



申請には確定申告が必要!

医療費控除を受けるには、確定申告が必要となります。


現在では、パソコンを使ってインターネット上の国税庁のHPで確定申告の書類を作成することができますし、確定申告が初めてでどのように申告したら分からない方は、最寄りの税務署などでも相談しながら確定申告が行えます。


そして、平成29年度分の医療費控除の申告方法が少し変更となりました。


そこで、平成29年度分からの医療費控除の申告方法と、新たに始まった税制について説明します。

領収書もレシートも提出は不要!明細書の書き方

平成28年分までの確定申告では、医療費控除を受けるためには、医療機関で支払った治療費や薬代などの領収書やレシートの提示または提出が必要でした。


そのため、領収書やレシートの発行が難しい費用に関しては、医療費控除を受けることができませんでした。


しかし、平成29年分の確定申告から、医療費控除対象となる費用の領収書やレシートの提示・提出が不要となりました。


公共交通機関を利用した際の交通費などは、領収書やレシートがもらえないことがあるので、領収書などの提示・提出が不要となれば、とても助かりますね。


この医療費の領収書やレシートの提示・提出が不要となった代わりに、「医療費控除の明細書」を作成し、提出することとなりました。


医療費控除の明細書を記入する前には、1年分の医療費の集計をしておくと、明細書に記入しやすくなります。


そして、医療を受けた人別に医療費を支払った場所、支払った医療費の金額を記入していきます。


医療費の区分にチェックを入れる際、交通費は「その他の医療費」にチェックをするようにします。


忘れてはいけないのは、支払った医療費のうち、生命保険会社などから保険金を受け取り、補填された分の金額は、支払った医療費から差し引くことになっています。


明細書には、補填された保険金額を記入する欄もありますので、忘れないように記入しましょう。


最後に、支払った医療費と補填された金額の合計金額を計算し、それぞれ記入します。

提出しないが、調剤薬局などのレシートは5年間保管しておく

平成29年度分から医療費控除の申告の際には、医療費の領収書やレシートの提出は必要ではなくなり、申告者が「医療費控除の明細書」に自ら医療費を記入するだけでよくなりました。

しかし、記入内容の確認のため、税務署から医療費の領収書などの提示を求められる場合があります。


そのため、医療機関で支払った医療費や、調剤薬局やドラッグストアで購入した医薬品のレシート等は確定申告後も5年間は保管しておくようにしましょう。

消費税も医療控除の対象になる

調剤薬局やドラッグストアで購入した市販薬には、消費税が加算されますが、この消費税も医療費控除の対象となります。


レシートに記載されている購入した医薬品の金額が、消費税が含まれておらず、消費税額が外税となっている場合には、その医薬品の薬代に消費税を加算した金額を申告することができます。

申告期限は5年!さかのぼって申請することも可能

医療費控除の対象となる費用は、申告する前年度の1月1日~12月31日までに掛かった医療費で、合計金額が10万円を超えていれば、医療費控除の申告をすることができます。


しかし、前年度の医療費の合計金額が10万円を超えていたにも関わらず、うっかり医療費控除の申告を忘れてしまった、という方もいらっしゃることでしょう。


そこで、覚えておいてもらいたいことは、もしも医療費控除の申告を忘れてしまっても、医療費控除は過去5年以内の医療費であれば、税務署にて医療費控除の申告をすることができます。


医療費控除をきちんと申告しておくことで、所得税や住民税の負担を軽減できる可能性がありますので、ぜひ申告をしておきましょう。

薬代と医療費を合わせても10万円未満の場合は?

医療費控除とは、1年間にかかった医療費が10万円を超えた場合に申告できるものなので、医療機関にかかることが少なく、かかる医療費が10万円未満の場合、自分には関係のないことだと思うかもしれません。


しかし、ある条件をクリアしていれば、年間にかかる医療費が10万円未満であっても、医療費控除を受けられる場合があります。


その条件とは、医療費が「年間10万円以上」に満たなくても、医療費が年間「総所得金額の5%」を超えた場合、医療費控除を受けられるようになります。


この総所得金額とは、給与所得控除後の金額をいいます。


例えば、給与所得控除後の金額が200万円の場合、5%を掛けると10万円となります。


これは、もともと医療費控除対象となる「医療費が年間10万円以上」の条件と同じになりますよね。


それでは、給与所得控除後の金額が180万円とすると、180万円に5%を掛けると9万円となりますので、この場合の医療費控除は、年間の医療費が「9万円以上」で受けられるということです。


このことから、給与所得控除後の金額が200万円未満であれば、その金額に5%を掛けた金額は「10万円未満」となり、医療費が年間10万円を超えなくても、控除の対象となり、申告することができます。


このように、年間にかかる医療費が少ない場合でも、所得によっては医療費控除を受けられる可能性がありますので、医療機関にかかった際には、必ず領収書やレシートをきちんと受け取り、保管しておきましょう。

医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」とは?

これまでよりも医療費控除がさらに活用しやすいようにと、平成29年1月1日より、新しい税制が開始されました。

この新しい税制とは、医療費控除の特例で「セルフメディケーション税制」といいます。


セルフメディケーション税制では、対象となる人が市販薬を購入した際の薬代でも、所得控除が受けられるようになっています。


セルフメディケーション税制の対象となる人とは、所得税や住民税を納めており、「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人」と位置付けられています。


この取組を行う個人とは、定期的に以下の診断や検診のうちいずれかを受けている人を指します。

  • 特定健康診査(メタボ健診)
  • 予防接種
  • 定期健康診断(勤務先での健康診断も可)
  • 健康診査
  • がん検診

以上の診断や検診を受けている人が、セルフメディケーション税制の対象となる医薬品を購入した際の薬代のうち、年間1万2,000円を超えた薬代を所得控除として申告することができます。


限度額は年間1万2,000円を超えた分から8万8,000円までの範囲とされており、対象期間は平成29年1月1日から平成33年12月31日までに購入した市販薬の薬代となります。

レシートのマークやドラッグストアなどの店内表示を確認

それでは、「セルフメディケーション税制」の対象となる市販薬はどのように見分けたらいいのかを説明します。

そもそも、制度の対象となる調剤薬局やドラッグストアで販売されている市販薬とは、医療用成分が配合された市販薬で、「スイッチOTC」と呼ばれる医薬品になります。


このスイッチOTCとは、従来であれば医師の指示または処方箋が必要であった医療用医薬品を、ドラッグストアなどでも購入することができるように一般用に転用されたものです。


そして、セルフメディケーション税制の対象となるこれらの市販薬のパッケージには、「セルフメディケーション税控除対象」と書かれたロゴが印刷されています。


また、調剤薬局やドラッグストアによっては、普段から購入者が多い医薬品の棚に、税制の対象医薬品であることの表示をしている場合もあります。


しかし、中には製造過程でどうしてもロゴを表記できなかった医薬品もありますので、購入したい医薬品がセルフメディケーション税制の対象かどうか知りたい場合には、厚生労働省のwebサイトからも確認することができます。

健康診断や予防接種などを受けている証明書が必要

セルフメディケーション税制で所得控除が受けられるのは、健康診断や検診などを受けている人とお伝えしましたが、確定申告の際には、この「健康維持・増進、疾病の予防に取り組んでいる」ことへの証明が必要となります。


健康診断や予防接種を受けたことへの証明として、「領収書」または「結果通知表」の提出が必要です。


注意が必要なのは、健康診断などの結果通知表は写しでも構いませんが、予防接種済みの証明は原本を提出しなければなりません。

医療費控除と併用できないので注意!

この「セルフメディケーション税制」とは、医療費控除の特例となるので、従来の医療費控除制度とは併用することができません。

そこで、確定申告の際には、年間の医療費が10万を超えて申告することができる従来の医療費控除制度を利用するか、このセルフメディケーション税制の制度を利用し所得控除を受けるかを自分で選ばなければなりません。


どちらの制度を利用して医療費控除を申告するかを、きちんと確認しておくようにしましょう。


まとめ:医療費控除における薬代の範囲について

医療費控除の対象となる薬代について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは、

  • 治療目的の市販薬は医療費控除の対象となる
  • 市販薬を買いに行くときの交通費も控除の対象
  • 家族が購入した医薬品も合算して医療費控除の申告ができる
  • 平成29年度分から医療費の領収書等は提出が不要になった
  • 新しい税制「セルフメディケーション税制」では医療費控除のハードルが下がった

です。


市販薬の薬代も医療費控除の対象となり、また、新しい税制のおかげで所得控除がぐっと身近なものになりましたね。


知らなければ医療費控除として申告していないものも多くあると思います。 


今一度、医療費控除の対象となる医療費を確認し、申告忘れがないようにしましょう。


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