不妊治療・体外受精の費用は医療費控除の対象!助成金との併用も可能

不妊治療費用は保険適用外で高額となることが多いですが、実は人工授精・体外受精などの不妊治療は医療費控除の対象となります。ただし、確定申告を自分でしないといけないので注意しましょう。ここでは、不妊治療の費用から医療費控除について、確定申告や助成金との関係について解説します。

不妊治療・人工授精の費用は医療費控除の適用対象になる?


現代の日本では晩婚化が進み、30~40代で結婚し子供を授かりたいという夫婦も増えてきています。


晩婚化が進んだことで自然妊娠が難しく不妊治療をスタートする夫婦も多いですが、不妊治療で人工授精をすると費用も高額になり家計を圧迫してしまいますよね。


「赤ちゃんは授かりたいけれど、費用は少しでも安く抑えたい」と悩む方はたくさんいますが、不妊治療人工授精の費用を医療費控除として、節税できることは知っていましたか?


とはいっても、不妊治療の方法などによって対象となるのかどうかが変わります。


そこで、この記事では、不妊治療・人工授精や体外受精は医療費控除の適用対象となるのかについて


  •  不妊治療にかかるお金 
  • 医療費控除の対象となる不妊治療の費用
  • 助成金や高額療養費を活用した場合の医療費控除をシュミレーション
  • 間違えやすい不妊治療の医療費控除の計算
  • 不妊治療・人口授精を受ける場合の確定申告方法
  • 不妊治療・人工授精の確定申告をする際の注意するポイント

以上のことを中心に解説します。


この記事を読んでいただいたら、不妊治療・人工授精と医療費控除の関係について理解していただけると思います。


ぜひ最後までご覧ください。 

医療費控除とは|住民税や所得税が節税できる!

医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に自分や配偶者、生計が一緒の親族が支払った医療費が一定額を越えたとき、かかった医療費の額をもとに計算される金額の所得控除ができることをいいます。

では、医療費控除とはどんなものなのか、控除を受ける条件、そして医療費控除と不妊治療の関係について説明していきます。


以下の記事で、医療費控除を申請できる医療費の合計金額や手続きについて詳しく解説しているので参考にして下さい。

不妊治療で医療費控除の適用対象となる費用・ならない費用

不妊治療は医療費控除を受けられるものもありますが、全額自己負担で検査や治療を受けなくてはならないものも多いです。

これから不妊治療を始めようと考えている方にとって、経済的負担も大きい不妊治療はどこまで医療費控除の対象になるのか気になりますよね。

不妊治療で医療費控除の対象となる費用にはどんなものがあるのでしょうか。

対象となる費用は、

  • 不妊治療の検査代(血液検査やその後の卵管造影検査など)、
  • 人工授精
  • 体外受精
  • 顕微授精などの治療費
  • 処方箋
  • 鍼治療やマッサージ代
  • 医薬品・漢方薬代
  • 不妊治療に通うための交通費
  • 採卵消耗品代 
  • 卵子凍結保存料・保管料
  • 医師の紹介料

等です。


しかし、

  • 赤ちゃんを授かるために買った栄養ドリンクや
  • 健康食品
  • 妊娠検査薬
  • 排卵検査薬

等は対象外とされています。


対象となるものも多いので領収書を置いておくか、かかった費用をメモしておきましょう。

不妊治療の助成金と医療費控除は併用することができる

不妊治療はすべてが自己負担だと高額医療費になるため、少子化対策として助成金を受け取れたり医療費控除が適用されたりするようになりました。


体外受精などをして助成金を受け取った場合は、実際にかかった医療費から受け取った助成金の額を引いた費用が実際支払った不妊治療の医療費になります。


実際支払った医療費が10万円を超える場合は、医療費控除との併用が可能です。


不妊治療だけで10万円を超えなくても、ほかにかかった医療費と足して10万円を超えた場合も医療費控除として確定申告することができます。


助成金を受け取った方でも、医療費控除との併用ができないかどうか計算してみましょう。


以下の記事で、「不妊治療の助成金」について詳しく解説しているので参考にして下さい。

不妊治療にかかる費用

保険適用外のものが多い不妊治療ですが、実際どのくらいの費用がかかるのか分からない方も多いのではないでしょうか。 


不妊治療は行う検査や治療によって金額が違い、不妊の原因を見つけるための検査(血液検査や卵管造影検査など)では約15,000円(保険適用)の費用がかかるようです。 


人によって違いますが、健康保険適用外である人工授精をする場合は、1回につき1万円〜3万円程度かかります。 


また、体外受精をするとなった場合は、採卵費用(回数や採卵する数によっても費用が違う)と受精を合わせて1回につき30万円〜50万円程度の費用がかかります。 


ほかにも、妊娠検査薬や排卵検査薬、不妊治療に通うための交通費など、様々な費用がかかるでしょう。 


体や心、経済的にも負担が大きい不妊治療を無理なく続けるためには、不妊治療の医療費控除について知り経済的負担を減らしていくことも大切です。

シミュレーション|助成金や高額療養費を活用した場合、医療費控除はいくら?

高額療養費制度とは公的医療保険制度のひとつで、ある一定金額を超えて医療費を支払った場合、払った医療費が一部戻ってくる制度です。


期間は、毎月(1日~月末まで)の間に支払った高額医療費のうち、年齢や総所得によって超えた分の差額が後から戻ってきます。 


計算方法については、厚生労働省のページを参考にしております。

所得区分一カ月あたりの自己負担限度額
(毎月1日~末日)
年収約1,160万円以上252,600円+(医療費-842,000)×1%
<多数回該当:140,100円> 
年収約770~約1,160万円167,400円+(医療費-558,000)×1%
<多数回該当:93,000円>
年収約370~約770万円80,100円+(医療費-267,000)×1%
<多数回該当:44,400円>
年収約370万円以下57,600円
<多数回該当:44,400円> 
住民税非課税者35,400円
<多数回該当:24,600円>

それでは、助成金や高額療養費制度を利用した場合の医療費控除の計算方法はどうなるのでしょうか。


以下で詳しく解説いたします。 


医療費控除の計算方法

高額療養費制度医療費控除は似たような名称ですが活用できる条件が違います。

そして、それぞれの制度は併用することができます。 


例えば、高額療養費制度を活用する場合は、医療費控除を申請する年の医療費総額から高額療養費制度によって給付された金額を差し引いてから申請をします。


不妊治療を受けたことで支給された助成金についても、医療費控除の申請をするときには差し引いてから申請をします。


以下で具体的な数字を使ってシミュレーションします。

  • 年収が400万円の方が、ある月に医療費が35万円かかった場合 

高額療養費制度を活用せずに医療費控除を申請すると、

35万円-10万円=25万円

が医療費控除の対象となります。


しかし、高額療養費制度を活用した場合は、自己負担額が89,097円になるため、医療費控除を申請できなくなります。


各種保険などで助成金が給付される場合は、その金額も総医療費から差し引くことを覚えておきましょう。

多くの人が間違える要注意な計算例

助成金や高額療養費、医療費控除は併用することが可能ですが、計算の方法を間違えると医療費が10万円に満たず「医療費控除は受けられない」と確定申告を諦めてしまう方もいます。

ここでは、間違いやすい計算例を見ていきましょう。

  • 人工授精費用で45万円、その他の医療費(など)で12万円かかり、補てんされた金額が60万円だった場合(補てんされた金額=助成金42万円+付加金18万円)

よくあるNGの例

(45万+12万)-60万-10万=-13万円=0円 

次にOKの例

{(45万-60万)=-15万=0円(マイナスは0円とします)}+12万-10万=2万円

医療費を全て合わせてから補てん分を引いた場合、医療費控除対象額マイナスになり医療費控除を申請できないことになります。


しかし、人工授精のために補てんされた助成金などは、その費用からのみ差し引くことになりますので、この場合、2万円分の医療費に関して医療費控除の申請をすることが可能可能です。

不妊治療・人工授精で医療費控除を受けるためには確定申告が必要

不妊治療・人工授精で医療費控除を受けるためには、企業で行われる年末調整では手続きすることができません。

医療費控除を受けるには、翌年に確定申告をすることが必要になります。

そのため、生命保険料控除などを年末調整で行ってくれていると安心しているサラリーマンや会社員の方も、医療費控除は自分で確定申告をする必要があるので注意しましょう。


確定申告の期間内に手続きを行うことで、還付金減税を受けることができます。


それでは、具体的な手続き方法を詳しく解説させていただきます。 

医療費控除の申告方法や申込用紙の取得方法は?

医療費控除を申請するためには所得税の確定申告が必要で、その際に「医療費控除の明細書」を添付して所轄の税務署に提出します。

以下の書類を準備して手続きを進めていきましょう。
  • 源泉徴収票(年末に勤務先でもらえる)
  • 医療費の領収書やレシート(家族の分も)
  • 医療費控除の明細書
  • 確定申告書A様式
  • 本人確認書類(マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カードと免許証などのコピーを添付した台紙
実際に提出するのは所得税の確定申告書医療費控除の明細書本人確認書類(マイナンバーカード、マイナンバー通知カードと免許証などのコピー)です。

本人が税務署へ直接提出する場合、本人確認書類については提示するだけでもOKです。源泉徴収票と領収書などは提出用紙を作成するときに使います。

ただし、医療費の領収書はご自宅で5年間は保存する必要があるのでご注意ください。税務署から求められた時は提出しなくてはなりません。

治療のためにかかった電車やバスなどの交通費も医療費控除の対象になります。領収書がない場合は、利用した日付と乗車した区間、料金をメモしておくだけでもかまいません。

 

  • 確定申告書と医療費控除の明細書の取得方法

近くの税務署で配布されていますが、手軽なのは国税庁のホームページで作成したものをダウンロードする方法です。


国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で画面の案内に従って必要事項を入力していくだけなので、初めてでも簡単に申請用紙を作成することができます。

不妊治療の医療費控除で確定申告をする際の注意点

不妊治療を受けた場合も、入院や通院、薬局で購入した薬の費用などと同じように、医療費控除で確定申告できることがわかりました。


ただ、損をせず、スムーズに確定申告できるように注意すべき点がいくつかあります。


例えば、不妊治療が年をまたぐ場合や、共働き夫婦の場合、結婚前(事実婚)のカップルの場合についてです。


ここでは、その3つの注意点について詳しく解説します。

不妊治療が年をまたぐ場合の医療費控除について

不妊治療を受けたとしても、すぐに赤ちゃんを授かれるケースは多くはありません。そのため、不妊治療が年をまたぐ可能性も大いにあります。


その場合、医療費控除はどうすればよいのか迷う方も多いでしょう。医療費控除は医療費を支払った年で計算します。


例えば、

2019年の12月から2020年の1月にかけて不妊治療を受け、2020年の1月中頃に治療費の支払いをした場合の治療費は、2020年の医療費控除の対象となります。


ただし、不妊治療の費用を支払った年の翌年に助成金を受け取った場合は、治療費を支払った年の医療費控除から差し引きします。


不妊治療費の支払いをした年についての助成金が確定していない時期に、医療費控除の確定申告をする場合は、助成金や保険金などの見積額を差し引きして申請します。


また、確定申告をしたあとに助成金や保険金などの見積額が確定額と違っていた場合は、更正の請求修正申告で訂正する必要があります。

不妊治療の医療費控除は夫婦どちらが確定申告するべきか

医療費控除により所得税として還付される金額、住民税から減額される金額は以下の計算式で求めます。


所得税の還付金医療費控除の対象となる金額×所得税率
住民税の減額金額医療費控除の対象となる金額×10%

医療費控除の対象となる金額は以下の計算式で求めますが、1年間の所得が200万円未満の場合は所得の5%となります。

1年間に支払った医療費の合計-保険金などで補てんされる金額-10万円(1年間の所得が200万円未満の場合は所得の5%)

計算結果がマイナスの場合は医療費控除の対象外です。


住民税の減額金額は夫婦どちらで確定申告しても差はありません。しかし、所得税の還付金は所得税率が高いほうが多くなります。


例えば、次の夫婦のケースについて見ていきましょう。

  • 実際に支払った医療費の合計が50万円
  • 保険金などで補てんされる金額が15万円
  • 夫の課税所得390万円
  • 妻の課税所得250万円

夫が医療費控除を申請した場合は所得税率20%、所得税の還付金額は50,000円になります。一方、妻が医療費控除を申請した場合は所得税率10%、所得税の還付金額は25,000円になります。


所得税率は、課税される所得金額が多くなるにつれて高くなりますので、収入が高いほど、所得税の還付金額が多くなる可能性が高いです。


所得税率は以下の表で確認してください。


課税される所得金額
税率
195万円以下5%
195万円を超え330万円以下10%
330万円を超え695万円以下20%
695万円を超え900万円以下23%
900万円を超え1,800万円以下33%
1,800万円を超え4,000万円以下40%
4,000万円超45%

(出典:国税庁HP

結婚前(事実婚)のカップルの場合、合わせて確定申告できない

結婚をしていない同棲のカップルは、まとめて確定申告をすることができません。


なぜかというと、結婚をしていないと、同一の世帯として認められていないからです。医療費控除はあくまで世帯を単位として行います。


そのため、同じ場所に住んでいても同一の世帯ではない場合には、個別の医療費控除の確定申告を行ってください。 

まとめ|不妊治療費用は医療費控除の対象になる

不妊治療・人工授精の医療費控除について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

今回の記事のポイントは 、

  • 不妊治療は保険が適用されない治療も多いですが、人工授精体外受精などは医療費控除の対象になる
  •  不妊治療・人工授精の医療費控除を受ける場合は確定申告をする必要がある
  • 高額療養費助成金医療費控除と併用できるが、総医療費から差し引いて10万円以下になると申請できなくなる
  • 医療費控除の申請は、夫婦のうち所得の高い方が申請したほうが還付金が多くなる

でした。


人工授精の治療を受けることで妊娠の確率は確かに上がりますが、1回で妊娠できるとは限りません。人工授精で妊娠できた方の多くは5~6回の治療を受けているようです。


人工授精の治療を1回受けるための費用はそれほど大きな負担にはならないかもしれませんが、回数を重ねることで大きな負担となります。 


医療費控除はそういった負担を軽くするために活用できる制度です。助成金はもちろん、医療費控除もうまく活用して不妊治療に取り組めればと思います。


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この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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