【確定申告】妊娠出産費用は医療費控除の対象?申告して還付金を!

妊娠出産費用の一部は医療費控除の対象で、会社員でも年末調整ではなく確定申告で自己申告します。妊婦健診や産後健診、分娩費用、さらに乳児健診は対象なのでしょうか?また、出産育児一時金や医療保険の給付金を受け取った場合の医療費控除額の計算方法はどうなるのでしょうか?

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

医療費控除を申告して妊娠出産費用の一部の還付金をもらおう

妊娠・出産で何かとお金がかかってしまった・・・でも、その費用は医療費控除の対象になる場合があるのです。

妊娠・出産でかかった費用で、医療費控除として税制上の優遇措置が得られるなら大変助かりますよね。


しかし、妊娠・出産に関係した費用が全て医療費控除に該当するわけではありません。


そのため、どんな費用が医療費控除の対象となるか迷われるか気になりますよね。


そこで、この記事では「妊娠出産費用の医療費控除」について、

  • 妊娠出産費用のどんな出費が対象なのか
  • 医療費控除の具体的な計算方法
  • 医療費控除の還付金を受け取るための確定申告について

以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、医療費控除の基本的知識と、医療費控除の対象となる妊娠・出に関係する費用・申告方法を知ることに役立つかと思います。




医療費控除とは?妊娠出産費用の何の出費が対象?

医療費控除とは、1年間にかかった医療費に税制上の優遇措置が受けられる仕組みです。


この医療費はご自分のために支払った費用だけではなく、家族のために医療機関等へ支払った費用も該当します。


ただし、医療費を支払うと行政が自動的に税金から控除してくれるわけではありません。控除を希望する場合は、自主的に住民票のある地域を管轄する税務署へ申告する必要があります。


この申告が認められると還付金という形で支払ったお金が戻ってきます。


翌年度の住民税などの税金が安くなるメリットも

住民税には、全ての納税者から一律に税金を徴収する「均等割」と、納税者の前年度の所得を基に計算され徴収する「所得割」があります。


医療費控除では所得割の方が関係してきます。住民税所得割の税率は10%と一定であり、医療費控除による住民税の減税額は医療費控除額の10%になります。

例えば、医療費控除額が50万円であれば、50万円×10%で5万円、医療費控除額が90万円であれば90万円×10%で9万円、翌年度で住民税が減税されることになります。

医療費控除の申請のため、会社員でも確定申告をする必要がある

サラリーマンのような会社員の方は、通常、所得または経費は年末調整という形で行われますが、医療費控除の申告については年末調整では認められません。

自営業・自由業者の方々と同じくに確定申告書で提出する必要があります。


ただし、確定申告の時期(毎年2月16日~3月15日)に限定されておらず、還付申告としていつでも申告可能です。ただし、5年以内に申告を行う必要があります。

妊娠出産費用ではどんな費用が対象となるのか?健診費用は対象?

医師や助産師、看護師が治療目的で行ったものであれば、医療費控除の対象になります。こちらでは、医療費控除の対象と認められる費用、認められない費用を説明します。

医療費控除の対象と認められる費用


  • 不妊治療
  • 人工授精
  • 妊婦定期健診(妊婦健診)
  • 妊娠悪阻(おそ)や切迫早産等の入院費
  • 出生前診断:検査の結果、異常が見つかり医療的処置をした場合のみ対象です。
  • 羊水検査:検査の結果、異常が見つかり医療的処置をした場合のみ対象です。
  • 妊娠検査
  • 正常分娩
  • 異常分娩(帝王切開等)
  • 分娩費用
  • 一ヶ月健診
  • 産後健診
  • 乳児健診
  • 乳腺炎等を治療するための母乳マッサージ
  • 交通費

申告の際はこれら健診費・治療費・分娩費の領収書等が必要になります。交通費に関して、バスや電車で医療機関へ通う場合、必ずしも領収書は取得しなくても構いませんが、家計簿等に記録するというように工夫して、実際にかかった費用を説明できるよう備えておきましょう。


医療費控除の対象と認められない費用


  • 妊娠検査薬
  • 差額ベッド代:ご自分で希望した場合は医療費控除の対象となりません。
  • 里帰り出産のためにかかった交通費:医療機関ではなく実家に戻るための交通費は対象外です。
  • 出産準備品の購入代:パジャマ・洗面具等も控除対象外です。
  • 紙おむつ代
  • 予防接種代

医療費控除の具体的な計算方法は?

医療費はかかった分だけ全額戻るというわけではなく、保険金などで補填される金額(高額療養費・出産育児一時金等)がある場合は、戻ってくるお金の分は差し引いて申告することになります。


また、年間所得が一定以下の方々の計算方法も異なります。以下では具体例をあげて、計算方法を説明します。

出産育児一時金(出産手当金)や医療保険の給付金を受け取った場合の計算例

医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)となります。

(実際に医療機関へ支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額)-10万円(※)


(※)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく、総所得金額等の5%の金額を差し引くことになります。


○その年の総所得金額等が200万円以上の人


(事例)
  • 年間所得:600万円
  • 医療費:150万円
  • 出産育児一時金:42万円

医療費150万円-出産育児一時金42万円-10万円=医療費控除98万円


医療費控除額が98万円となります。


○その年の総所得金額等が200万円未満の人


(事例)
  • 年間所得:160万円
  • 医療費:40万円

医療費40万円-8万円(160万円×5%)=医療費控除32万円


医療費控除額が32万円となります。

医療費控除の還付金を受け取るための確定申告の方法とは?

妊娠出産費用の医療費控除を希望する場合、妊娠または出産したご自分または配偶者の医療費を、住民票のある地域を管轄する税務署へ申告することになります。

その際、自営業・自由業の方々とは異なり、会社員の方は年末調整を行っているため、確定申告に手間取ることもあるかと思います。


また還付申告を行う場合には、5年以内に申告すれば良いわけですが、「そのうち申告する。」と考えて放置してしまい、申告期限が過ぎてしまうことも考えられます。


そこで、こちらでは申告手続きの方法と必要書類について説明します。

主な申告手続きの手順と必要なもの

まず申告手続きの際にはいろいろな書類を準備する必要があります。サラリーマンやパート・アルバイト等の給与所得者であれば、医療費控除を受ける場合には、自営業者・自由業者の提出書類の他、収集すべき書類が追加で必要となります。

医療費控除の必要書類について


医療費控除のための申告は、給与所得者の場合、追加の書類も必要となります。


  • 確定申告書A:国税庁のホームページや各税務署で取得します。
  • 医療費等の領収書・レシート:医療費控除の対象となる費用の領収書・レシートを用意します。申告の際に必ずしも提示しなくてよいですが、医療費控除の明細書へ転記する場合に必要となります。領収書・レシートもご家庭で5年間大切に保管しましょう。
  • 医療費控除の明細書:1年間にかかった医療費の明細をまとめる書類です。こちらも国税庁のホームページや各税務署で取得します。
  • 医療費通知:健康保険または国民健康保険の保険者から送付された「医療費のおしらせ」です。こちらの書類があれば簡単に明細書を作成できます。ただし、必ずしも準備しなければならない書類ではありません。
  • (給与所得者の場合)源泉徴収票
  • 本人確認書類:マイナンバー(個人番号カード)の両面の写しを添付した添付台紙が必要です。マイナンバー(個人番号カード)が無い方は、①番号確認書類の写し(通知カード、住民票の写し、住民票記載事項証明書のいずれか)+②身元確認書類(運転免許証、パスポート、在留カード等のいずれか)の写しを用意します。
  • 印鑑:認印で構いません。

医療費控除の申告の流れ


申告の流れは次の通りです。提出不要な書類はありますが、税務署から後日、領収書の提出等が求められる場合もあります。費用の証明に必要な書類は必ず大切に保管しておきましょう。


  1. 費用に関する証明書類の準備:医療費の領収書・レシートを大切に保管します。その他、医療費通知があれば明細書に転記しやすくなります。
  2. 医療費の明細書へ記載:税務署等で取得した医療費控除の明細書を作成します。領収書・レシート・医療費通知を参考に作成します。
  3. 源泉徴収票を取得
  4. 確定申告書へ記載:確定申告書Aを事前に税務署等で取得し、給与所得者の場合、源泉徴収票を参考に作成します。
  5. 税務署へ提出:確定申告にかかわらずいつでも提出可能です。ただし、期間が定められており、5年間の猶予期間となります。
  6. 還付金を受け取る:指定口座にお金が振込まれます。書類に不備が無ければ、申告から振込まれるまで3週間程度かかります。

実は医療費控除を申請しない場合でも活用できるセルフメディケーション税制とは?

セルフメディケーション税制とは、健康の維持増進・疾病の予防のため、予防接種、健康診査、がん検診等の取り組みを行う個人が、医薬品を購入し対価を支払った場合、所得控除が受けられる特例制度です。

つまり、きちんと健康診断などを受けている人を対象として、一部の市販薬を購入すれば所得控除が受けられるようになったということです。医療費控除よりも必要書類は少なく申告しやすいことが特徴です。


ただし、医療費控除を申告する場合、こちらの特例制度は申告できません。


[1]セルフメディケーション税制の対象者


本税制の対象者は所得税・住民税を納めている方で、次に該当する方となります。


  • 特定健康診査(メタボ健診)を行った人
  • 予防接種を受けた人
  • 定期健康診断(事業主健診)を受けた人
  • 健康診査を行った人
  • がん検診を行った人

[2]対象となる医薬品と所得控除額


控除の対象となる医薬品は1,600品目以上になります。薬局で探す際は「セルフメディケーション税控除対象」と、薬品のパッケージに明記されていますので、それを参考に選びましょう。


要指導医薬品・一般用医薬品として販売されている市販薬の内、医療用から転用された特定成分を含む医薬品を年間1万2000円を超えて購入した場合、1万2000円を超えた部分の金額(上限8万8000円まで)について所得控除を受けることができます。


[3]提出方法と必要書類


確定申告で提出することになります。確定申告書の他、次の書類が必要です。


○特定健康診査(メタボ健診)の場合


次の3点のうちのいずれかを準備します。

  • 領収書(原本):特定健康診査と明記または保険者名の記載がある場合
  • 結果通知表(コピー可):特定健康診査と明記または保険者名の記載がある場合
  • 証明依頼書:領収書または結果通知表に、特定健康診査と明記も保険者名の記載もない場合

○予防接種の場合


次の2点のうちのいずれかを準備します。

  • 領収書(原本)
  • 予防接種済証(原本)

○定期健康診断(事業主健診)の場合


次の2点のうちのいずれかを準備します。

  • 結果通知表(コピー可):特定健康診査と明記または保険者名の記載がある場合
  • 証明依頼書:領収書または結果通知表に、特定健康診査と明記も保険者名の記載もない場合

○健康診査(人間ドック等)の場合


次の2点のうちのいずれかを準備します。

  • 領収書(原本):特定健康診査と明記または保険者名の記載がある場合
  • 結果通知表(コピー可):特定健康診査と明記または保険者名の記載がある場合
  • 証明依頼書:領収書または結果通知表に、特定健康診査と明記も保険者名の記載もない場合

○市町村がん検診の場合


次の2点のうちのいずれかを準備します。

  • 領収書(原本)
  • 結果通知表(コピー可)

医療費控除の還付金を受け取って、妊娠出産費用で節税しよう

妊娠出産費用の医療費控除について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

 

今回の記事のポイントは

  • 妊娠出産費用は、概ね健診も治療も医療費控除の対象となる
  • 妊娠出産費用の医療費控除は、自主的に申告する必要がある
  • 医療費控除を申告しなくても、医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制を選択して申告できる

 でした。


医療費控除を申告する場合、確定申告の方法に慣れていないと、何かと手間がかかりますが、領収書等を確認しながら慎重に手続きを進めましょう。

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