更新日:2020/06/16
会社員の医療費控除はどうするの?わかりやすく説明します!
会社員でも医療費控除を申告することができますが、毎年行う年末調整では申告ができません。申告は確定申告で行う必要があります。ただし、医療費控除だけを申告する場合は、還付申告として確定申告期間にかかわらず、5年の猶予期間内でいつでも申告が可能です。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 会社員の医療費控除は年末調整で行うことができない
- 会社員の医療費控除は確定申告で行う!
- 医療費控除は診療または治療費、交通費等が対象となる
- 高額医療費や出産一時金等で戻ってきた金額分は医療費控除に加えない
- 会社員が支払った医療費の合計で10万円を超えれば医療費控除が受けられる
- 会社員が医療費控除を行う場合の計算方法をモデルケースで説明
- 会社員が確定申告で医療費控除を行う場合の申請方法の流れ
- 会社員が医療費控除で使用する確定申告書の記載方法について
- 会社員の医療費控除では支払った費用を明細書にまとめる
- 会社員の医療費控除は「医療費通知」があればより申請が楽に!
- 医療費控除をする資格が失われないうちに提出時期を守って申告しよう!
- 会社員が医療費控除を行う場合の注意点
- 医療費控除の対象は会社員本人だけでなく家族のために使った医療費も含む
- 会社員が医療費控除の確定申告をした後は領収書を5年間保存する
- まとめ:サラリーマンは確定申告のやり方に不慣れなので慎重な手続きを!
目次
会社員の医療費控除は年末調整で行うことができない
普段から健康には気を使っていても、思わぬ怪我や病気により突然長期の入院や手術になってしまうことがあります。
そんな時は、高額な治療費や医療費が必要になってしまうこともあるでしょう。
そのように一年間の医療費が高額になった時には、医療費控除で税金を安くする手続きがありますが、医療費控除は確定申告でしか行うことができません。
普通の会社員であれば年末調整しかやったことがなく、確定申告というと難しいイメージがありますよね。
会社員の方に向けて、医療費控除の手続きの流れを説明したいと思います。
そこで、この記事では「会社員の医療費控除の手続き」について、
- 医療費控除の計算の基礎
会社員の確定申告と医療費控除の手続き
- 医療費控除の手続きの注意点
以上のことを中心に解説していきます。
この記事を読めば、会社員の医療費控除の方法から実際の手続きまで、すべてが理解できます。
是非最後までご覧ください。
会社員の医療費控除は確定申告で行う!
所得税や住民税を安くする節税方法として有名なものは保険料控除や寄附金控除などです。こういった税金関係の手続きは、通常は確定申告によって行います。
ですが、会社員の代表的な控除の手続きだけは、年末調整によって行うことができる特例が認められています。
保険料控除や扶養控除、配偶者控除については、年末調整で行うことが認められており、会社員は確定申告を行わずともすべて会社が所得税の計算をしてくれることとなっています。
しかし、控除のひとつとして有名な医療費控除については、会社の事務作業の負担も考えて年末調整では行えないこととなっており、会社員が自分で確定申告をする必要があります。
そこで、この項目では会社員が確定申告を行うため、まずは医療費控除の基礎からご説明します。
医療費控除は診療または治療費、交通費等が対象となる
医療費控除は、病気や怪我などの治療に関する診療費、治療費などの医療費を申請できるものです。
しかし、医療費は単に診療費や治療費だけではなく、治療のために医師から処方された薬代や、入院中の食事代、治療のため病院に行くために使用しバス代や電車代などの交通費も対象となります。
一方、美容整形やインフルエンザの予防接種などは医療費控除の対象外となります。あくまでも治療に関する医療費ということが前提の制度です。
高額医療費や出産一時金等で戻ってきた金額分は医療費控除に加えない
医療費控除は、あくまでも自分で支払った医療費のみが申告の対象となります。
例えば健康保険制度において、被保険者の負担は基本的に3割となっています。医療費控除で申告できるのは、その3割負担の分のみです。
また、同じく健康保険制度には高額療養費や出産一時金などの制度もあります。これらは医療費を補填する目的のものであり、医療費控除においてはこれらの制度で補填される分については、医療費からは除かなければなりません。
同様に、自身で加入している民間の医療保険から保険金が出た場合には、これも医療費を補填する目的のもののため、医療費控除の金額からは控除しなければなりません。
会社員が支払った医療費の合計で10万円を超えれば医療費控除が受けられる
医療費控除は医療費の全額が所得から控除されるわけではありません。
これは医療費控除が、医療費の合計から10万円を引いた金額を所得から控除できるという制度のためです。
つまり、通常の風邪程度で受診をしていても、なかなか医療費控除を受けることができる金額には至りません。あくまでも、手術や入院、長期通院など医療費が高額になった時にその医療費の負担を減らすという目的の制度なのです。
会社員が医療費控除を行う場合の計算方法をモデルケースで説明
では、実際に会社員が医療費控除を行う場合にいくら申告ができるのかを、モデルケースを使ってご説明します。
例として、
- 年間の医療費:30万円(3割負担分)
- 高額療養費:5万円
- 医療保険の保険金:10万円
- 上記医療保険の保険料:3万円
の人の医療費控除の金額を計算します。
この場合、医療費控除として申請できるのは、30万円ー5万円ー(10万円ー3万円)ー10万円=8万円となります。
会社員が確定申告で医療費控除を行う場合の申請方法の流れ
会社員が医療費控除を行う場合は、年末調整では行うことができず、確定申告を行うこととなります。
しかし、年末調整そのものができないかというとそうではなく、年末調整では通常の保険料控除や扶養控除を行ったうえで、確定申告では医療費控除のみを申告するということもできます。
会社員が医療費控除で使用する確定申告書の記載方法について
会社員が医療費控除で確定申告を行う場合、主に使用するのは「確定申告書A」という書類です。
これとの選択で「確定申告書B」という書類もありますが、確定申告書Bは事業所得や不動産所得など様々な所得の種類がある場合に使用するもので、一般的な会社員の所得は給与所得のみですので、給与所得のみで使用できる確定申告書Aを使うのが一般的です。
所得の金額や扶養控除、医療費控除などの金額は、年末調整を行った際に会社から発行される「源泉徴収票」の金額をそのまま転記すれば問題ありません。
医療費控除の書き方ですが、医療費控除額の金額を、確定申告書の「所得から差し引かれる金額」の「医療費控除」の欄に記載します。その後は申告書の計算のとおりに税金額を計算すれば完了します。
会社員の医療費控除では支払った費用を明細書にまとめる
医療費控除を行う場合、確定申告書の他にも提出する書類があります。それが「医療費の明細書」です。
医療費の明細書には、一年間に支払った医療費を事細かに記載する書類で、例えば病院や薬局などの名称や所在地、診療の内容、診療費の金額を記入する用紙となります。
また、支払った医療費だけではなく、保険金などで補填される金額なども記載する欄があり、さらに医療費控除の際には必ず差し引かれる10万円、もしくは所得の5%の金額を記載し、最終的な医療費控除額を計算するための書類です。
確定申告においては、この医療費の明細書を作成するとともに、算出された医療費控除額を確定申告書にそのまま記載する必要があります。
会社員の医療費控除は「医療費通知」があればより申請が楽に!
医療費を申告する際は、確定申告書や医療費の明細書とあわせて医療費の領収書も添付する必要があります。これは虚偽の申告を防ぐためでもありますが、平成29年度の確定申告からは、領収書に代えて「医療費通知」という書類でも申告が可能となりました。
医療費通知とは健康保険組合から送付される書類で、毎年10月までの医療費が一覧で記載されており、これを領収書の代わりとすることができます。しかし、その医療費通知に記載されている金額の整合性を確認するためにも、領収書は捨てずに取っておきましょう。
加えて、医療費通知で分かるのは健康保険の適用となる治療費のみです。健康保険適用外の治療費については記載されておりませんし、医療費通知に記載されているのは10月分までですので、当年度の11月から12月に受診した医療費については、やはり領収書を取っておく必要があります。
これは後ほど解説する領収書の保存義務とも関係しますので、領収書は保管しておきましょう。
医療費控除をする資格が失われないうちに提出時期を守って申告しよう!
確定申告を行うのは基本的に申告年度の翌年の2月16日から3月15日までの間です。この期限を過ぎてしまわないよう、年が明けたあたりから準備を進めるようにしましょう。
また、万が一申告期限を過ぎてしまった場合でも、5年間は過去の分に遡って確定申告を行うことができる制度があります。
しかし、いずれにしても期限を守って正しく確定申告を行いましょう。
会社員が医療費控除を行う場合の注意点
ここまでは、会社員が医療費控除をどのように行うかということと、そもそも医療費とは何か、また実際の確定申告の方法や計算上の注意点を述べてきました。
ここからは、会社員が医療費控除を行う場合の注意点について、お得に医療費控除の制度を活用するためには家族の医療費も医療費控除の対象となることと、領収書の5年間の保管義務について詳しく説明していきます。
制度をきちんと活用するためには欠かせない知識となりますので、しっかりと確認してください。
医療費控除の対象は会社員本人だけでなく家族のために使った医療費も含む
医療費控除で申告できる対象は、何も会社員本人の医療費だけではありません。医療費控除は、生計を一にする家族の医療費もすべて対象となります。
この生計を一にするとは、同居している家族はもちろん、大学などで遠方に住んでいる子供の医療費なども対象となります。
また、家族に収入がある場合でも医療費は本人の分に含めることができ、所得税の扶養などとは一切関係がありません。
よって、家族の中で最も収入の多い人が医療費控除の申告を行うことが、最も節税効果が高くなります。
確定申告で医療費控除をする際は、家族の分の医療費もすべて申告した方が節税になりますので、是非利用しましょう。
会社員が医療費控除の確定申告をした後は領収書を5年間保存する
会社員が医療費控除の確定申告をする場合、医療費通知の書類で申告を行うことが可能となりました。
その際、申告を受けた税務署は、5年間の間医療費の明細書に関して内容の確認のため、申告者に対して領収書の提示を求めることができます。
医療費通知などで確定申告を行う場合でも、5年間は領収書を保管するようにしましょう。
まとめ:サラリーマンは確定申告のやり方に不慣れなので慎重な手続きを!
ここまで、サラリーマンが医療費控除を申告するための確定申告について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回のこの記事のポイントは、
- 医療費控除における医療費には、実際の治療費の他に経費も算入できる
- 医療費控除における確定申告には必要な書類がある
- 医療費控除は、自分の医療費だけではなく家族の医療費もまとめて申告できる
サラリーマンは、所得税や住民税の申告について通常年末調整ですべて済んでしまうため、税金について苦手意識を持っている人や税金の計算方法について詳しく知らないという人がほとんどです。
しかし、医療費控除をはじめとする申告には確定申告が必須のため、避けては通れない手続きなのです。