医療費控除はインフルエンザや乳児の予防接種なども対象になる?

インフルエンザや乳児が受ける水痘などの予防接種の費用を、医療費控除として申請できればうれしいですよね。ここでは、予防接種の費用が医療費控除の対象になるのかどうかや、対象になる場合の手続き方法や医療費控除額の計算方法などについて解説していきます。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

予防接種の費用は医療費控除できる?

予防接種は、子供から大人まで1年に何度も受ける可能性があります。


その費用は決して安いとは言えず、意外と家計に響いてくるものです。


そこで考えるのが、「医療費控除」を受けられるかどうか。


医療費控除とは、1月1日から12月31日の1年間に支払った医療費総額が10万円(所得が200万円以下の場合は所得額×5%)を超えた場合、額に応じて所得控除(還付金として返ってくる)を受けられる制度です。


できれば、医療費控除で少しでも戻ってきて欲しい!と、思いませんか?


実は、予防接種にも医療費控除の対象となる場合と対象外となる場合があるのです。


ここでは、「医療費控除と予防接種」について

  • 医療費控除ができる予防接種とは。
  • 医療費控除の特例、セルフメディケーション税制とは。
  • 医療費控除の計算方法とは。
  • 医療費控除、確定申告の方法とは。

以上の点について、まとめています。

この記事を読んでいただければ、予防接種・予防注射を受ける際に医療費控除が適用されるのかどうか知りたい方に役立つかと思います。

最後まで読んで、賢く医療費控除を活用しましょう。




基本的には予防接種の費用は医療費控除の対象外

1年間で支払った医療費が10万円を超えた時に利用したいのが、医療費控除。

ここで気を付けておきたいのが、控除の対象となる医療費と、控除の対象にならない医療費があることです。


結論から言うと、基本的に予防接種は医療費控除の対象にはなりません


では、一概に予防接種は対象外になるのか?例外は無いのか?


もう少し細かく見ていきましょう。

インフルエンザやロタウイルスなど予防接種の費用は基本的に医療費控除の対象外

意外と線引きが細かくて分かりずらい医療費控除。対象となる基準は、「治療」かどうかです。



治療に関係する場合、医療費控除の対象になります。例えば、治療費・薬代・入院費・通院や入院のための交通費など…。


しかし、インフルエンザやロタウイルスなどの予防接種は、「治療」ではなく「予防」という扱いになります。


よって、医療費控除の対象にはならないんです。

赤ちゃん・乳児や子供が受ける水痘・おたふくかぜの予防接種も対象外になる

免疫力の低い赤ちゃんは数種類のワクチンを接種する必要があります。どんな内容なのか、詳しく見ていきましょう。


赤ちゃんが受ける予防接種には、「定期接種」と「任意接種」があります。

  • 定期接種…予防接種法によって推奨している
  • 任意接種…個人の意思で受ける

残念ながら、どちらの費用も医療費控除の対象にはなりません


しかし、定期接種は地域にもよりますが、ほとんど無料で受けられます。


また、任意接種も自治体によっては助成金制度を設けている場合もありますので、一度、ご自身の市区町村の制度を確認してみるといいでしょう。

例外的に「医師が必要であると判断した場合」は対象範囲となることがある

では、すべての予防接種が医療費控除の対象外なのかというと、そうではありません。対象になる例外があります。

例外となるポイントは、予防接種が「治療目的で行われる」ことです。


前述したとおり、医療費控除の対象となるのは、治療のために必要かどうかです。

なので、予防接種も治療目的であれば対象になります。


例えば、「インフルエンザにかかってしまい、病院に行ったら予防接種を打たれた。」この場合、医療費控除の対象になります。


また、医師の指示があった場合、それは治療目的と判断されます。


例えば、「インフルエンザにかかると、他の持病が悪化する。」とか、「インフルエンザにかかると命に係わるほど免疫力が低下している。」などの理由で医師が予防接種が必要と判断した場合は、医療費控除の対象になります。


医療費控除の対象になるポイントは2つ。

  • 治療目的
  • 医師の指示

予防接種が医療費控除の対象にならないとは、一概には言えません。以上のポイントをしっかりと覚えておきましょう。

予防接種のための交通費も医療費控除できない

医療費控除の対象になるもので、意外なのが交通費。

しかし、病院に行くための交通費が全て対象になるかというと、そうではありません。

予防接種のための交通費はどのような扱いなのでしょうか?


対象になる場合とならない場合をまとめていきます。


【医療費控除の対象になる交通費】

  • 通院や入院のために利用した公共交通機関(バス・電車)の交通費
  • 緊急で病院に運ばれた時に利用したタクシー代
  • 出産のために利用したタクシー代
  • 子供や老人など、付き添いが必要な場合の付添人の交通費

【医療費控除の対象外になる交通費】

  • 自家用車で通院した場合のガソリン代
  • 自家用車を使用した際の駐車場代
  • 公共交通機関で通院できるのに、タクシーを利用した時のタクシー代
  • 予防接種を受けるために利用した交通費

以上の通り、通院のための交通費は対象になりますが、予防接種のための交通費は対象外になるので、気を付けましょう。

予防接種は医療費控除対象外だからといって接種しないのはおすすめできない

これまでまとめてきた通り、予防接種は基本的に医療費控除の対象外となります。

医療費控除の対象外ということは、「費用もかかるし、予防接種は絶対に受けない!」と考えてはいませんか?


その考えは、非常にもったいないかもしれません。


みなさんは、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)をご存知でしょうか。平成29年1月1日から始まった制度です。


1年間で対象となるOTC医薬品(ドラッグストア等で販売されている薬)を購入した金額が、12,000円を超えた場合、その超えた金額(上限88,000円)について所得金額から控除することができる制度です。


医療費控除は、1年間で10万円を超えると利用できますが、こちらは12,000円を超えると利用できるため、従来よりも利用しやすくなっています。(医療費控除との併用不可)


セルフメディケーション税制を利用できる対象者は、所得税や住民税を納めていて、健康の維持増進および疾病の予防を目的とした一定の取組みを行う個人とされています。


では、対象となる一定の取組みをまとめてみましょう。

  • 特定健康診査
  • 予防接種
  • 定期健康診断
  • 健康診査
  • がん検診

以上、いずれかを受けている人が対象になります。


この中に、予防接種という項目があるんです。なので、医療費控除の対象にはなりませんが、予防接種を受けることによって、ご自身がセルフメディケーション税制の対象者になる可能性があります。


医療費控除は利用できなくても、セルフメディケーション税制は利用できるかもしれません。

そのためにもぜひ、予防接種は受けておきましょう。

税金はいくら戻ってくる?医療費控除額の計算方法

これまで、予防接種は医療費控除の対象になるのかをまとめてきました。

もし、医療費控除の対象になった場合、具体的にいくら戻ってくるのか気になりますよね?


ここでは、医療費控除の計算方法について説明していきます。

医療費控除額の計算式は所得金額によって異なる

まず、還付金額を求める前に、医療費控除額を確認してみましょう。

医療費控除額=1年間の医療費ー保険金等の額ー10万円


ここで注意して欲しいのが、これはあくまで「医療費控除額」なので、この金額がそのまま戻ってくるわけではありません。勘違いしてしまう方が多いので気を付けましょう。


医療費控除額を求めたら、次は還付金の計算です。


還付金=医療費控除額×所得税率


この式で利用する「所得税率」。これは、納税者の所得額に応じて以下のように税率が定められています。


  • 所得195万円以下       →5%
  • 所得195万円~330万円以下   →10%
  • 所得330万円~695万円以下   →20%
  • 所得695万円~900万円以下   →23%
  • 所得900万円~1,800万円以下  →33%
  • 所得1,800万円~4,000万円以下 →40%
  • 所得4,000万円~         →45%
所得とは、個人が1月1日から12月31日までの1年間で得た給与やボーナスなどの収入から、必要経費や各控除額を差し引いた金額のことです。年収ではないので気を付けましょう。

モデルケースで分かりやすく計算してみよう

【モデルケース:Aさん】

課税される所得額500万円で1年間の医療費40万円。保険金で10万円が補填された。(所得税率20%)


この場合、以下の計算になります。


 

 医療費控除額

40万円ー10万円ー10万円=20万円


 還付金

20万円×20%=4万円


このように、還付金を計算することができます。Aさんの場合、4万円が戻ってくる可能性があるということになりますね。

医療費控除を受けるには確定申告が必要

医療費控除の申請は、いつ、どこで行えばよいのでしょうか?

会社勤めの方は、年末に年末調整がありますよね。しかし、会社に医療費などの領収書を提出したところで、年末調整の中では医療費控除をしてはもらえません。


医療費控除を申請する場合、必ず確定申告を行わなければいけないのです。


では、どのような手順で行っていくのかを確認していきましょう。

申告する時期と方法

確定申告は、毎年2月16日から3月15日までの期間です。

ただし、医療費控除の申告は、1月からできますので、税務署が混み合う2月16日から3月15日より前に提出すると良いでしょう。


申告方法は、申告に必要な書類を自分で用意して、各市区町村の税務署に郵送か持参で提出します。


確定申告の時期になると、申告書作成・提出のための会場が設けられているので、一度調べてみましょう。この会場では、申告書作成をサポートしてくれるので、初めての方や、正しい申告ができるか不安な方にはおススメです。

医療費の領収書など申告に必要な書類を用意する

医療費控除の申告に必要な書類を確認していきましょう。2018年1月の申告から、変更点があるので、注意が必要です。


 【用意すべき必要書類】

  1. 確定申告書
  2. 源泉徴収票
  3. 医療費の明細書
  4. マイナンバーカード等本人確認書類添付台紙
  5. 医療費の領収書


この中で、実際に提出するのは1~4までの書類です。2018年1月の申告から、医療費の領収書の提出が不要になり、代わりに「医療費の明細書」の作成・提出が必要になりました。


医療費の明細書は、1年間の医療費をまとめて記載する用紙です。用紙や詳しい作成方法は、国税庁のホームページに載っているため、作成前に確認してみてください。


また、番号制度によって、マイナンバーも確定申告に必要になっています。こちらも、国税庁のホームページに「本人確認書類(写)添付台紙」がありますので、記載されている本人確認書類のコピーを貼って提出します。


医療費明細書に変わったため、領収書の提出が不要になりましたが、領収書は捨てないでください。


領収書の提示を求められる可能性がありますし、申告内容を訂正する場合に必要になるため、領収書は5年間は保管しておきましょう。

まとめ:予防接種の費用は医療費控除の対象になるか

予防接種は医療費控除の対象になるのかどうかについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回この記事のポイントは、

  • 予防接種の費用は基本的に医療費控除の対象にはならない。
  • ただし、予防接種の種類によっては控除対象になる例外ケースがある
  • セルフメディケーション税制の対象者になれるため、活用しよう

といったことがあるのです。


なので、自費になるからと予防接種を諦めるのはおすすめできません。


この記事を読んで、医療費控除やセルフメディケーション税制を活用し、少しでも還付金を手に入れていただければと思います。


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