パーキンソン病の医療保険制度|訪問看護は介護保険と医療保険どちらか?

パーキンソン病の医療保険制度|訪問看護は介護保険と医療保険どちらか?-サムネイル画像

この記事では、パーキンソン病の人が利用できる公的支援制度を中心に、パーキンソン病と医療保険について解説します。また、訪問看護やリハビリでは介護保険と医療保険どちらかを使うか、併用できるのか、医療費は何割負担なのかについても解説しているのでぜひご覧ください。

▼この記事を読んでほしい人
  • パーキンソン病の公的支援制度を知りたい人
  • パーキンソン病の医療費や介護費について気になっている人
  • パーキンソン病でも医療保険に入れるのか知りたい人

内容をまとめると

  • パーキンソン病で利用できる医療費支援制度は難病医療費助成制度、介護保険、医療保険、後期高齢者医療制度の4種類。
  • 他にも、障害者総合支援法や身体障害者福祉法を利用して様々なサポートが受けられる。
  • パーキンソン病の訪問看護やリハビリは基本的に医療保険を利用するが、状況によっては介護保険を利用する。
  • パーキンソン病で医療保険と介護保険の併用はできない。
  • パーキンソン病で保険に加入するのは難しいが、状況次第では入れる保険もある。
  • パーキンソン病での保険加入は、保険のプロであるファイナンシャルプランナーに相談しよう。
  • マネーキャリアの無料FP相談はファイナンシャルプランナーに何度でも無料で相談できるので、下のボタンから申し込みましょう。

パーキンソン病患者の医療費支援制度


近年、高齢化が進み「パーキンソン病」の患者数が増えてきています。


パーキンソン病はこのような病気です。

振戦(ふるえ)、動作緩慢、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害(転びやすいこと)を主な運動症状とする病気で、50歳以上で起こる病気です。時々は40歳以下で起こる方もあり、若年性パーキンソン病と呼んでいます。

引用:難病情報センター


この記事では、パーキンソン病と医療保険について解説します。民間の医療保険を考える場合、公的な制度も把握した上で検討する必要があるため、パーキンソン病患者の医療費支援制度についても解説します。


パーキンソン病では、重症度によって受けられる支援が異なります。支援が受けられる重症度はホーン&ヤール重症度という基準で判定します。


ホーン&ヤール重症度の基準はこちらです。

ホーン&ヤール重症度

こちらの基準を基に、利用できる医療費支援制度を解説します。

難病医療費助成制度

パーキンソン病は国の指定難病に指定されています。難病医療費助成制度はこの指定難病患者が利用できる医療費助成制度です。自己負担額が、医療費の2割まで、または自己負担上限額までとなり、それ以上の自己負担額分が助成されます。


難病医療費助成制度が利用できる要件はこちらです。

  • パーキンソン病患者(ホーン&ヤール重症度3度以上・生活機能障害度2度以上)
  • 各医療保険に加入していて、医療費の自己負担がある方

※月ごとの医療費が33,000円を超える月が年間3回以上ある場合は、症状の基準を満たさなくても対象となる

※パーキンソン病の医療費に関して、他の公費による医療給付を受けている場合は対象外


自己負担上限額は世帯の所得に応じて決まります。医療費の自己負担上限額はこちらです。


有効期間は1年間で、継続して利用する場合は更新が必要です。申請や更新は保健所などの申請窓口に以下の書類を提出します。

  • 診断書(臨床調査個人票)
  • 申請書(指定難病医療費支給認定用)
  • 公的医療保険の被保険者証のコピー
  • 市町村民税の課税状況の確認書類
  • 世帯全員の住民票の写し

必要書類は自治体によって変わるので、事前に申請窓口に問い合わせてから準備をしましょう。

介護保険制度

介護保険制度は高齢者の介護を社会全体で支える制度です。40歳以上の介護保険加入者が何らかの支援や介護が必要と認定されたとき、費用の1割~3割を支払って介護サービスを受けることができます。


介護保険制度を利用できる対象者はこちらです。

  • 65歳以上の方(第1号被保険者)
  • 40〜65歳未満で各医療保険に加入している特定疾病患者(第2号被保険者)

40〜65歳未満のパーキンソン病患者の場合、ホーン&ヤール重症度1度または2度で難病に認定されなかった場合、利用できます。


介護保険制度は介護の必要な度合い(要介護認定)により、受けられる介護サービス・支給限度額が異なります。


要介護認定は、要支援1〜2、要介護1〜5の7段階で判定されます。


これらの基準で認定した介護度別に、月々の支給限度と自己負担額をまとめたものがこちらです。


介護保険で利用できるサービスは自宅や施設で利用できるサービス、福祉用具をレンタルできるサービス等があり、利用できるサービスは要介護度によって変わります。


介護保険制度の申請窓口はお住まいの市区町村になります。詳しくは、お住まいの市区町村や地域包括支援センターに問い合わせましょう。

身体障害者福祉法

身体障害者福祉法は、身体障害者の自立と社会活動への参加を促すものです。


パーキンソン病患者は身体障害者手帳の交付対象となる障害(肢体不自由)に該当し、身体障害者手帳の交付を受けると障害の等級に応じた様々なサービスを受けることができます。


身体障害者福祉法で利用できる主なサポートはこちらです。


利用できるサポートは、生活における支障の程度や症状などに応じた障害等級や、お住まいの自治体よって異なります。お住まいの市区町村の担当窓口に確認しましょう。

障害者総合支援法

障害者総合支援法は、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策について定めた法律で、従来施行されていた障害者自立支援法を改正する形で2013年4月に施行されました。


この改正により、18歳以上のパーキンソン病患者はホーン&ヤールの重症度分類にかかわらず利用することができるようになりました。


そのため、ホーン&ヤールの重症度が低く、難病医療費助成制度が利用できなかった人や、障害者手帳が交付されず身体障害者福祉法を利用できなかった人も利用することができます。


40歳以上のパーキンソン病患者で介護保険制度の対象となっている方は、介護保険制度が優先されるため、併用はできません。


支援の内容は

  • 自立支援給付:介護給付、訓練等給付、補装具、自立支援医療など
  • 地域生活支援事業:理解促進研修・啓発や自発的活動支援、相談支援など

の2種類に分けて構成されていて、多岐に渡ります。


利用にあたり、自立支援給付80項目の調査をしてその人に必要な支援の度合いを測り、その度合いに応じたサービスを利用することができます。

医療保険制度

医療保険制度の一つである高額療養費制度は、自己負担限度額以上の医療費がかかった際に、限度額を超えた医療費の還付が受けられる制度です。


高額療養費制度は他の制度で医療費が助成されていない、

  • 難病の受給者証や1、2級の身体障害者手帳を持っていない人
  • 75歳未満の人

が利用できます。


70歳未満の高額療養費における自己負担限度額はこちらです。


申請先は、最寄りの保健所や市区町村の担当窓口になります。必要書類は加入している公的医療保険によって異なるので、事前に確認しましょう。

後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度75歳以上の人と、一定の障害のある65歳以上75歳未満の人を対象とした医療制度です。


後期高齢者医療制度にも高額療養費制度が設けられていて、医療保険の高額療養費制度と内容は同じですが、自己負担限度額が異なります、


後期高齢者医療制度の高額療養費自己負担限度額はこちらです。


ひと月の医療費が限度額を超えた場合は、

  • 高額療養費支給申請書
  • 本人確認ができる身元確認書類(後期高齢者医療被保険者証、運転免許証等)
  • 認印
  • 口座が確認できるもの等

こちらの必要書類を準備し、市区町村の担当窓口へ申請しましょう。

パーキンソン病の場合、訪問看護で医療保険と介護保険のどちらを使う?


パーキンソン病が進行すると、訪問看護サービスを利用する機会もあるでしょう。訪問看護とは、看護師が自宅に訪問して、病気や障がいに応じた看護を行うことです。


訪問看護で行う看護は以下のようなものがあります。

  • 健康状態の観察
  • 病状悪化の防止・回復
  • 療養生活の相談とアドバイス
  • リハビリテーション
  • 点滴
  • 注射などの医療処置
  • 痛みの軽減や服薬管理
  • 緊急時の対応
  • 主治医・ケアマネジャー・薬剤師・歯科医師との連携

パーキンソン病患者がこれらのサービスを受ける際は、介護保険ではなく基本的に医療保険を利用します。しかし、年齢やホーン&ヤール重症度によっては介護保険を使ってサービスを受けることになります。


どちらの適用になるかは、こちらのチャートを参考にしてください。


パーキンソン病は「2号被保険者の16特定疾病」「厚生労働大臣が定める疾病等」のどちらにも含まれています。


しかし、「厚生労働大臣が定める疾病等」では「ホーン&ヤール重症度分類がステージ3以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る」と但し書きがあります。


そのため、40歳~65歳未満の介護保険2号被保険者と、65歳以上の人が訪問看護を受ける場合は、「ホーン&ヤール重症度分類がステージ3以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度」の条件に該当する場合は医療保険を、該当しない場合は介護保険を利用します。


複雑で分かりづらい場合は、かかりつけ医やケアマネージャーに相談しましょう。

パーキンソン病になっても加入できる医療保険


パーキンソン病患者に対する公的な支援はあるものの、医療保険を自分で備えておきたいと考えている人は、パーキンソン病でも医療保険に入ることができるか気になっているでしょう。


結論から言うと、パーキンソン病で医療保険に加入するには難しいです。


難病指定されているパーキンソン病は、研究が進んでいるものの現在の医療では根本的な治療方法はありません。投薬治療など、継続的な治療が必要なためリスクが高いと判断されて医療保険には入りづらくなっています。


しかし、一部の医療保険なら加入できる可能性があります。医療的なリスクが高い人向けの商品である、

  • 引受基準緩和型保険
  • 無選択型保険

こちらの医療保険あれば、治療の状況次第では加入できる可能性があります。医療保険の加入を希望している人は、検討してみましょう。

引受基準緩和型保険

引受基準緩和型保険は告知内容が、通常の医療保険の基準よりも緩やかな商品を指します。


通常、保険に加入する際は「告知」をおこないます。告知では「職業」「身長・体重」「受診歴」「病歴」等を保険会社へ告知します。これは保険に加入する人のリスクが高くないかどうかを審査するためです。


保険会社それぞれに基準を設けていて、この基準を超えると「リスクが高い」と判断され、加入を断られたり、加入できても特別保険料や不払い要件が付きます。


引受基準緩和型保険はこの告知の項目が少なく基準が低いため、持病がある人でも加入しやすい商品です。


しかし、リスクが高い人でも加入しやすい反面、保障の内容が薄かったり、保険料が割高になるというデメリットがあります。

無選択型保険

無選択型保険告知がなく、保険会社による審査を必要としない保険です。告知が無いので、引受基準緩和型保険よりも入りやすくなります。


無選択型保険は「無審査・無告知」で誰でも加入できるので、持病や既往歴がある人でも、だれでも加入することができます。


しかし、保険給付を受ける人が多く加入する傾向にあるため、保険会社が加入者に対して保険金や給付金を支払う確率が高くなります。


そのため、一般的な保険と比べ、保険料が非常に割高となっています。また、無選択型医療保険は現在治療中の病気や既往症は対象外であったり、契約から保障開始まで日が空くなど制約が多いのが現状です。

まずは通常の医療保険を検討する

上記では保険加入時の告知項目が通常よりも少ないので加入しやすい「引受基準緩和型保険」と、告知の必要がない「無選択型保険」を解説しました。


しかし、どちらの医療保険も通常の医療保険よりも保障内容が薄く保険料が割高になります。通常の医療保険でも、治療状況によっては正しく告知することで加入できる場合もあります。


保険会社や担当窓口へ問い合わせをして、まずは通常の医療保険を検討してみるようにしましょう。


パーキンソン病の人の保険加入は、様々な注意が必要です。保険のプロに相談してアドバイスを受けながら加入手続きを進めていくと安心です。


マネーキャリアでは、保険のプロであるファイナンシャルプランナーに何度でも無料で保険の相談ができます。ぜひ利用しましょう。

パーキンソン病の医療保険制度に関するQ&A


こちらではパーキンソン病の医療保険制度に関するQ&Aを解説します。

  • パーキンソン病で医療保険と介護保険の併用は可能?
  • パーキンソン病の訪問看護やリハビリで医療保険または介護保険は利用可能?
  • パーキンソン病の場合、医療費は何割負担?どのくらい?
  • パーキンソン病の特定疾患申請方法は?
  • パーキンソン病になったら障害年金をもらえる?
  • パーキンソン病は障害者認定される?

パーキンソン病で医療保険と介護保険の併用は可能?

パーキンソン病で様々なサービスを利用する際、公的制度である医療保険と介護保険は併用できません


介護保険は40歳以上の人が加入対象なので、40歳以上の人は医療保険と介護保険の両方に加入していることになります。


この場合、要介護(要支援)認定を受けていて、医療と介護の両方が適用される場面では、介護保険が優先されます。


要介護(要支援)認定を受けていない人は、そもそも介護保険を利用することができないので医療保険を利用することになります。しっかり線引きがされているため、併用することはできません。

パーキンソン病の訪問看護やリハビリで医療保険または介護保険は利用可能?

パーキンソン病の訪問看護やリハビリを受ける際、医療保険または介護保険を利用することは可能です。


年齢ホール&ヤーン重症度の分類で利用する保険は変わります。


どちらの保険を使うことになるかは、上記の「パーキンソン病の場合、訪問看護で医療保険と介護保険のどちらを使う?」を参考にしてください。

パーキンソン病の場合、医療費は何割負担?どのくらい?

パーキンソン病の場合、公的医療保険制度、後期高齢者医療制度、公的介護保険制度、難病医療費助成制度のどれかを利用して、医療や介護サービスを受けます。


どの制度を利用しているかによって、医療費の負担割合は変わります。

  • 医療保険制度:3割
  • 後期高齢者医療制度:1割(所得の高い人は2割または3割)
  • 介護保険制度:1割(所得の高い人は2割または3割)
  • 難病医療費助成制度:1割または2割(医療保険上3割負担の人は2割負担)

所得や、元々も医療保険の負担割合によって変わるので、詳しくは自分が加入している医療保険の窓口に問い合わせましょう。

パーキンソン病の特定疾患申請方法は?

パーキンソン病の特定疾患の申請は、難病指定医が作成する診断書(臨床調査個人票)を準備し、その他の必要書類と一緒に、都道府県・指定都市の申請窓口へ提出します。


申請の流れはこちらです。

  1. 診断書(臨床調査個人票)の作成
  2. 必要書類の準備
  3. 都道府県・指定都市の窓口へ提出
  4. 医療受給者証が交付される

診断書(臨床調査個人票)は、都道府県知事または指定都市の市長によって指定された難病指定に作成してもらわなければいけません。


かかりつけ医が難病指定医ではない場合は、難病指定医のところへ紹介状を書いてもらい、受診してから診断書を作成してもらう必要があります。特定疾患申請をする場合は、まずはかかりつけ医に相談しましょう。


診断書(臨床調査個人票)が作成されたら、こちらの書類を準備して申請窓口へ提出します。

  • 特定医療費支給認定申請書
  • 診断書(臨床調査個人票)マイナンバーを確認できる書類
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • 健康保険証のコピー など

申請窓口は都道府県・指定都市により異なるので、お住いの自治体に問い合わせましょう。

パーキンソン病になったら障害年金をもらえる?

パーキンソン病の診断がされただけでは障害年金をもらうことはできません。障害年金は病名ではなく、日常生活にどの程度制限を受けているかが認定のポイントになるからです。


パーキンソン病の場合、主に肢体の障害で障害年金を請求をします。パーキンソン病は薬を服用することで肢体の症状が軽減されることが多いため、服薬で症状が抑えられている場合は障害状態であると認定されづらく、障害年金を請求するのは難しいのが現状です。


長期間服薬を続けているうちに薬が効かなくなってしまうなど、日常生活が困難になっている場合は請求できる可能性があります。

パーキンソン病は障害者認定される?

パーキンソン病は「肢体不自由」の障害に該当し、身体障害者手帳の交付対象となります。身体障害者手帳は、1〜7級の等級のうち1~6級の障害のある人に交付される手帳です。


そのため、パーキンソン病は障害者認定されると言えます。


しかし、身体障害者の認定には原則として障害が固定していることが前提となっているので、症状が変動しているパーキンソン病の場合は認定されないことがあります。

パーキンソン病患者の医療保険制度に関するまとめ


こちらの記事では、パーキンソン病患者の医療保険制度について解説をしました。


パーキンソン病は難病と指定されているため、公的助成もありますが、症状によって利用できるもの、できないものがあるため複雑ですね。かかりつけ医やケアマネージャー等に相談しながら、自分たちに合ったサービスを利用していきましょう。


公的制度も利用できますが、自分で民間の医療保険や介護保険、生命保険を備えたいと考えている人もいるでしょう。しかし、パーキンソン病の人が保険に加入するのは難しいと言えます。


現在の医療では、パーキンソン病の完治は難しく、薬で症状を緩和させる治療方針がとられています。定期的な通院が必要な上、入院や介護状態になるリスクも高くなるため、保険加入は厳しいのが現状です。


しかし、商品によっては加入できるものもあります。保険のプロであるファイナンシャルプランナーと相談しながら、病状とリスク対策の兼ね合いを考えていくと良いですね。


マネーキャリアの無料FP相談では、ファイナンシャルプランナーに何度でも無料で相談ができます。保険だけではなく、お金に関すること全般を相談できるので、ライフプランを含めてじっくり相談してみましょう。

ランキング