医療保険は現物給付と現金給付に分類?知っておきたい医療保険制度

日本の医療保険は現金給付と現物給付に分類されており、知らないところで現金給付や現物給付を受けていることもよくあります。しかし、2つの給付の内容を知らないと、受けられる給付を見過ごしてしまうことも?今回は、医療保険の現金給付と現物給付について詳しくご紹介します。

医療保険の現物給付と現金給付について知っておくべき知識とは?

病気やケガで仕事を休んだときなど、いざというときお世話になる医療保険。


そんな医療保険の給付方法には、実は「現物給付」と「現金給付」の2種類があります。


名前から何となく察しがつくかもしれませんが、実際のところ、現物給付と現金給付にはどのような違いやメリットがあるのか、それぞれどんな内容なのかご存じの方はそれほど多くないでしょう。


この2つの給付方法について知っておかないと、出産や死亡などの大きなイベントでお金に困っているとき、本来なら受けられるはずだった給付をもらい損ねてしまうかもしれません。


そこで、この記事では「医療保険の現物給付と現金給付」について、


  • 現物給付と現金給付とは何か
  • 現金給付ごとの詳しい内容と条件
  • 現物給付の対象となる治療


以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、医療保険で受けられる給付をすべて見逃さずに受け取ることができるようになります。


是非最後までご覧ください。


医療保険の保険給付には現物給付と現金給付がある

医療保険で実際に手当を給付するときは、主に2つの給付方法が用いられます。

医療サービスを提供する現物給付と、直接手当金を給付する現金給付(医療給付)です。


現物給付とは、病院などに保険証を提示することで、一定割合の支払いのみで診察や治療などの医療行為を受けられる給付のことです。


「割引」という「現物」を受け取っていると考えれば分かりやすいですね。


例えば、病院に行ったとき、窓口で支払う金額が3割負担なのは、知らない間に現物給付を受けているからなのです!


一方で、現金給付とは、文字どおり現金で支給される給付のことです。


  • 出産時や死亡時などに支給される手当金
  • 現物給付が難しいときの立て替え払い


などが現金給付にあてはまります。

出産手当金や出産一時金などは、実は現金給付だったのです。

医療保険の現金給付(法定給付)の種類

医療保険の現金給付(法定給付)には、多くの種類があります。


【出産したとき】


  • 出産手当金
  • 出産育児一時金・家族出産育児一時金

【病気・ケガなどで仕事を休んだとき】

  • 傷病手当金

【医療費が高額になったとき】

  • 高額療養費
  • 限度額適用認定証
  • 高額療養費(特定疾病に関する特例)
  • 高額介護合算療養費

【病気・ケガをしたとき】

  • 療養費
  • 移送費

【死亡したとき】

  • 埋葬料
  • 家族埋葬料

ここからは、これらの現金給付の内容と条件について詳しくご説明していきます。

ご自分が利用できそうな現金給付の欄をご覧ください。

出産手当金

出産手当金は、被保険者が出産のために仕事を休んで給料をもらえないときに利用します。

内容

欠勤1日につき、支給開始日の月より前の12か月間における標準報酬月額を平均し、その額の1/30からさらに2/3した額が給付されます。

出産日の以前42日(双子の場合は98日)~出産後56日までの間に給付されます。

出産予定日より出産が遅れたときは、予定日を出産日として給付します。

条件

出産手当金は、社会保険に加入している女性限定の給付であり、産休・育休を取得する女性にとって大きなメリットです。

出産育児一時金(家族出産育児一時金)

出産育児一時金(家族出産育児一時金)は、女性の被保険者が出産したときにもらえる給付で、出産すればほとんど誰でももらうことができます。

出産育児一時金は、たとえ貧困状態などでも、費用のせいで出産をためらうことがないよう設けられた制度です。

ただし、市町村によって金額が異なったり、給付ではなく直接産婦人科に納付されたりすることもあるので、お住まいの地域ごとに確認しておきましょう。

内容

一児ごとに42万円が給付されます。

ただし、産科医療補償精度に加入していない医療機関などの場合は、39万円しか給付されません。

条件

被保険者・被扶養者が妊娠4か月以上で出産(死産・早産・流産も含む)したときに給付されます。

生活保護受給者は対象外ですが、社会保険に加入していれば受け取ることができます。

傷病手当金

傷病手当金は、病気・ケガなどで仕事を休んで給料がもらえなかったときに利用します。

傷病手当金は、サラリーマンのような健康組合に加入している方だけが受けられる現金給付です。

内容

欠勤1日につき、支給開始日の月より前の12か月間における標準報酬月額を平均し、その額の1/30からさらに2/3した額が給付されます。

条件

被保険者が、病気・ケガの療養のため、3日以上連続して仕事を休んで給料を受けられないときに給付されます。

高額療養費

高額療養費は、医療費が高額になってしまったときに受けられる給付です。

内容

保険医療機関などに支払った一部負担金が一定の額を超えたとき、その超えた分の金額が給付されます。

ただし、給付額は被保険者の年収によって異なります。

生活保護受給者などの貧困層の場合でも、自己負担限度額を超えた場合は高額療養費が支給されます。

条件

高額療養費は、健康保険料を滞納せずに納めている方であれば、誰でも平等に受け取ることができる公的保障です。

限度額適用認定証

限度額適用認定証は、医療費が高額になったときに利用する給付です。

病院に支払う金額が前もって高額になると分かった時点で、加入している組合や市町村の窓口へ行き、限度額適用認定証の発行を申請しておくと負担が軽減できます。

内容

70歳未満の被保険者または被扶養者が限度額適用認定証を保険医療機関に提示することで、医療機関の窓口での支払いを、高額療養費の自己負担限度額までしか支払わなくてもよいようになります。

※平成24年4月より、外来の医療費も対象となりました。


条件

健康保険料を滞納せずに納めていれば、誰でも平等に受けることができる現金給付です。

高額療養費(特定疾病に関する特例)

高額療養費(特定疾病に関する特例)は、文字どおり、特定の疾病において高額医療費の負担が減る制度です。

被保険者の所得によって限度額が変わるため、給付を受ける際は確認しておきましょう。

内容

医療費の自己負担額が1万円で済みます。

ただし、慢性腎不全の患者で、70歳未満の上位所得者(標準報酬月額53万円以上)の自己負担額は2万円です。

条件

以下2つの患者に限り、高額医療費を支払わずに済みます。

  • 血友病
  • 人工透析が必要な慢性腎不全など

高額介護合算療養費

高額介護合算療養費は、医療保険と介護保険の合算自己負担額が著しく高額になったときに給付されます。

対象となるのは、毎年8月1日から翌年7月31日の1年間にかかった自己負担額の合算です。

内容

自己負担額が「著しく高額」になったかどうかを判断するために、基準額がもうけられています。


基準額を超える医療費がかかった場合は、高額介護合算療養費が適用されます。


基準額は被保険者の収入によって異なるので、ご自身がどの基準額にあてはまるのか確認してください。


【基準額:平成27年8月診療分以降】

所得区分基準額
①区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)
(報酬月額81万円以上の方)
212万円
②区分イ
(標準報酬月額53万円~79万円の方)
 (報酬月額51万円5千円以上~81万円未満の方)
141万円
③区分ウ
(標準報酬月額28万円~50万円の方)
(報酬月額27万円以上~51万5千円未満の方)
67万円
④区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方) 
(報酬月額27万円未満の方)
60万円
⑤区分オ〈低所得者)
(被保険者が市町村民税の非課税者等)
34万円


条件

医療機関別、医科・歯科別、入院・通院別で自己負担額が21,000円以上ある場合、合算の対象になります。


ただし、入院時の食費や差額ベット代などは含まれません。


また、高額療養費高額介護(予防)サービス費を受け取った場合は、高額介護合算療養費の対象となりません。  

療養費

療養費は、やむ得ない事情で被保険者証を提示できなかったり、補装具を作成したりしたときに、組合が負担すべき額を給付する制度です。

内容

やむを得ない事情で医療費が全額負担になったとき、後から市町村に申し出て3割負担にしてもらうことができます。


例えば、旅行先で熱を出して病院へかかったとき、被保険者証を持っておらず、通常の3割負担ではなく全額負担で治療したとします。


この場合、旅行先から帰った後、市町村の窓口へ領収証を提出し、多く支払った7割分の療養費を返還してもらうことができます。


条件

組合が負担すべき額を支払ったときに利用します。

例えば、以下のようなケースなどでは療養費を請求できます。

  • 保険診療を受けるのが困難なとき
  • 事業主が、資格取得届の手続き中で被保険者証を受け取っておらず、保険診療が受けられなかったとき
  • 感染症予防法により、隔離収容されて薬価を微収されたとき
  • 療養のため、医師の指示により義手・義足・義眼・コルセットを着用したとき
  • 生血液の輸血を受けたとき
  • 柔道整復師などから施術を受けたとき

移送費

移送費は、適切な保険診療が緊急で必要なとき、病気やケガにより移動が困難な方に支給されます。

内容

医師の指示で自動車や電車などの交通機関を利用したとき、もっとも経済的な通常の経路・方法によって算定された費用が給付されます。


条件

移送費は、次のすべてに該当すると保険者が認めた場合に支給されます。

  • 移送先での療養が、保険診察として適切であること
  • 患者が、療養中の病気やケガにより移動が困難であること
  • 緊急・その他やむを得ないこと

埋葬料

埋葬料は、被保険者が亡くなったときに支給されます。

内容

一律5万円の埋葬料が支給されます。

条件

被保険者の埋葬を実行した家族に支給されます。

被保険者に生計を維持されていた家族であれば、被扶養者でなくてもかまいません。

家族埋葬料

家族埋葬料は、被扶養者が亡くなったときに給付されます。

埋葬料との違いは、被保険者と扶養関係があるかどうかです。

内容

一律5万円が支給されます。  

条件

故意に事故を起こした場合は給付を受けられませんが、自殺による死亡については家族埋葬料が支給されます。 


ただし、

  • 業務上の原因
  • 通勤災害による病気やケガで死亡した場合


上記の場合は健康保険の家族埋葬料が支給されず、労災保険の葬祭料(葬祭給付)または労働基準法に基づく葬祭料が支給されます。

医療保険の現金給付を受けるための手続き方法

医療保険の現金給付を受けるためには、手続きによって申請する必要があります

例えば、出産一時金では


  • 出産一時金請求書
  • 分娩した医療機関などから交付された領収証の写し


この2つを、市町村の窓口か、加入している健康組合に提出する必要があります。


出産手当金では、


  • 出産手当金請求書
  • 医師の出産証明書


この2つが必要です。


このように、受ける現物給付によって提出する書類が異なります。


自分が受ける予定の現物給付の内容に応じて、どのような書類が必要で、どの書類を準備をしてもらえるのか、市町村の窓口や加入している健康保険組合に確認しておきましょう。

医療保険の現金給付には時効があるので要注意

医療保険の給付を受ける権利には時効があります。

給付が受けられるようになった日の翌日(起算日)から2年で時効になります。


その日を過ぎると給付を受ける権利を失うので、医療給付の申請手続きは早めに行いましょう!


【医療給付の種類と時効起算日】

給付の種類時効起算日
療養費療養に要した費用を支払った日の翌日
高額療養費
高額介護・高額医療合算療養費
診察月の翌月1日
移送費
家族移送費
移送に要した費用を支払った日の翌日
傷病手当金労務不能であった日ごとにその翌日
出産手当金出産のため労務に服さなかった日ごとにその翌日
出産一時金
家族出産育児一時金
出産日の翌日
埋葬料(費)
家族埋葬料
死亡した日の翌日
(埋葬費については埋葬を行った日の翌日)

これらの起算日から2年以内に給付申請が必要です。

参考:医療保険の現物給付の対象者と対象となる治療

ここまで、医療保険の現金給付について解説してきました。

ここからは、医療保険の現物給付についてご説明していきます。

現物給付とは、「現金」という形以外で受ける給付のことでしたね。

どの医療保険でも、現物給付の対象となる治療は決まっています。

現物給付の対象外である治療は自由診療と呼ばれ、医療費の全額を自己負担しなければならないので注意してください。


【現物給付の対象となる治療】

  • 診察と診療に基づく検査

業務上や通勤中の病気・ケガは労災保険の対象なので、医療保険の現物給付に含まれません。


  • 薬、注射、治療材料

治療に必要な薬や注射、包帯などの治療材料にも保険が使えます。


ただし、厚生労働省が認めていない薬は対象になりません


医師が認めた装具(義手・義足)にも保険が使えます。


  • 処置・手術

治療に必要な処置や手術にも現物給付が適用されます。


ただし、現在研究中の治療や、医学会で認められていない特殊な治療は対象外です。


  • 入院・看護

医師が必要と認めた入院や、入院中の看護に保険が使えます。


ただし、入院中の食事代は、一定額を自己負担しなければなりません。


また、入院の際、個室や特別室に入るときは、健康保険で利用できる一般室の料金との差額を自己負担しなくてはなりません


  • 在宅介護にともなう看護

訪問看護ステーションから派遣される看護師などの費用にも、現物給付が適用されます。


ただし、自宅までの交通費などは自己負担です。


また、介護保険認定を受けた方は、介護保険の利用を優先します

まとめ:医療保険の現物給付と現金給付

医療保険の現物給付と現金給付について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは、


  • 現物給付と現金給付とは何か
  • 現金給付ごとの詳しい内容と条件
  • 現物給付の対象となる治療


です。


会社勤めの方などの中には、普段何気なく医療保険の現金給付を受けていた方も多いかもしれません。


しかし、現金給付の内容や条件を知っておくことで、適切な期間で、適切な金額の現金給付を受け取ることができます。


また、出産や死亡などの際は、必要な手続きを踏むことで医療保険の現金給付を受けることができます。


いざ何か起きたとき慌てずに済むよう、ご自分に関係ありそうな現金給付の内容と、現物給付の適用範囲を知っておきましょう。


医療保険の現金給付や現物給付を活用することで、より豊かな人生を送ることができたらよいですね。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。  

この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、保険相談や選び方のポイントを伝える「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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