更新日:2020/06/10
医療保険の出来高払いと包括払いとは?それぞれの利点を解説!
日本の医療保険制度は出来高払い方式が主流ですが、出来高払い方式を採用することで医療費が財政に与える負担が社会問題化しています。一方、包括払い制度とはどのような制度で、どのようなメリットがあるのでしょうか。本記事でこの2つの医療制度を解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
医療保険制度の出来高払いと包括払いとは何か解説します
日本は、国民皆保険制度という医療保険制度をとっていますが、その医療費が年々増加し、財政に与える負担が社会問題化してきています。
今まで医療保険においては、出来高払い方式が主流でしたが、最近では包括払い方式を取り入れる病院も出てきています。
この医療保険における出来高払いと包括払いについては、メディアでも取り上げられることがあり、名前は聞いたことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、この2つの方式については、「そもそもの仕組みがよくわからない」「それぞれの方式のメリットデメリットは?」といった疑問をお持ちの方も多いはず。
そこで、この記事では
- 出来高払い方式の仕組みとはどんなもの?
- 出来高払い方式のメリットデメリットはどんなこと?
- 包括払いの方式の仕組みとはどんなもの?
- 包括払い方式のメリットデメリットはどんなこと?
出来高払いとは?
日本の医療保険制度では、今のところ出来高払い方式が主流です。
この出来高払いというのは、病気やけがで医療行為(診察・処置・手術・入院等)を行った場合、そこで発生した一つ一つの医療費を合計して病院側が請求し、一部は患者から、残りを社会保険組合や国が支払う医療保険制度です。
この医療保険における出来高払い方式においては、実際にかかった費用から計算するのでは、非常に計算が複雑になってしまうため、診療報酬点数というものが一つ一つの医療行為や使われる薬剤・医療材料について決められています。
どういう医療行為を積み上げていったかによって、一つ一つの点数を合計していき、その総額を計算していき、かかった医療費の総額が支払われる仕組みが出来高払い方式ということになります。
出来高払いのメリット
医療保険における出来高払い方式とは、診察や手術・検査などそれぞれについての医療行為ごとに細かな点数を設定してそれらの合計点数で医療費総額が決まる方式です。
つまり、医療機関が医療行為を行った場合、その行為にかかった費用の総和が支払われえるということになるため、必要と考えられる医療行為を行いやすいという医療機関側のメリットがあります。
もちろん、このメリットについては、十分な医療行為を受けたいという患者側のメリットにもつながってくると考えられます。
出来高払い方式のもう一つのメリットは医療行為と診療内容の料金が明確になることです。
医療費の支払い側からすれば、治療費の明細を見れば、どのような医療行為を行って、その支払額となったかが明白なものとなるわけです。
出来高払いのデメリット
医療保険における出来高払い方式のメリットは、必要と考えられる治療をすべて行うことができることにありますが、その点がデメリットにもなってきています。
出来高払い方式は医療行為のそれぞれが点数の総和で決まりますので、無用な検査や投薬が行われやすいという問題点があり、デメリットとなりえるのです。
いわゆる過剰医療サービスといわれるもので、経営の面からしますと出来高払いのメリットは当然のように思えますが、倫理上や患者の健康、医療費負担の増加などを考えるならあってはならないことです。
そもそも治療期間が延びるほど医療機関が儲かるというのが出来高払いの問題点です。
包括払い方式とは?
現代の医療保険制度において、出来高払い方式の問題点は過剰医療につながる恐れがあるという点ですが、その背景には医療行為をすればするほど利益が生まれるという出来高払いのシステムがあります。
ここから生まれる医療費の増大を抑制する意味から医療保険において導入が進められているのが、包括払い方式です。
包括払い方式というのは、あらかじめ国が定めた病名と診療行為の組み合わせごとに、定額の医療費を定め、支払われる方式です。
例えるなら、出来高払い方式が食べた分だけ料金を支払う普通の外食であるのに対して、包括払い方式は一定額を支払う食べ放題のようなシステムです。
ただし、定額の医療費に含まれない手術や検査等について、必要と認められた場合は、出来高払い方式がこれに組み合わされます。
包括払い方式のメリット
医療保険における包括払い方式の最大のメリットは、医療費の抑制です。
前述したように、出来高払い方式は医療行為を行えば行うほど医療機関が医療保険から受け取れる金額が増えるシステムです。
それに対して包括払い方式はどれだけ投薬や検査などを行っても、医療機関が医療保険から受け取る金額が変わりません。
そのため、必要のない投薬や検査を行う意義がなくなるのです。
ですから、過剰な診察行為が減り医療保険における医療費を抑えることができると考えられています。
包括払い方式のデメリット
医療保険制度における包括払い方式は、患者や保険者側にとってみますと、医療費を抑えることができるというメリットがあります。
その反面、医療機関側にしてみますと投薬や検査を行っても収入が増えることにはなりませんので、いわゆる「手抜き医療」が起こる懸念があることも事実です。
こうした事態は患者を選別したり、新しい医療行為を阻害することにつながる恐れがあることもデメリットとして考えられます。
【参考】DPC(診断群分類別包括評)とは?
医療保険で包括払い方式を採用している医療機関において、よく出てくる言葉としてDPCというものがあります。
このDPCはDiagnosis Procedure Combinationの略で、日本語では診断群分類別包括評価と呼ばれています。
この診断群は、入院患者の病名や症状によって厚生労働省が分類したもの(約1440種類に分類されています)で、それぞれに1日当たりの医療費の金額(点数)が決められています。
ですので、病院側はその金額の中で適切と思われる治療行為を行い、その入院日数に応じて医療費を計算することになります。
つまり、医療機関側からすれば、この包括評価金額(点数)よりもより安く治療が行えれば利益が生まれ、これを超えることになると負担が出てしまうということになります。
ただし、どうしても包括評価内では対応できない治療の必要があると認めらる部分については、出来高払いによって治療が追加されることになります。
これによって、入院医療費の計算方法は変わりますが、自己負担金の支払い方法については基本的には変わりません。
出来高払いと包括払いについてのまとめ
ここまで、医療保険制度における、出来高払い方式と包括払い方式について解説してきましたが、いかがでしたか?
この記事のポイントは、
- 出来高払い方式の仕組みは、医療行為が行われた場合、その費用一つ一つを積み上げて計算し、患者と保険者に請求するものである。
- 出来高払い方式のメリットは、十分な治療を行えることにあり、デメリットは過剰な医療行為が行われる懸念があることである。
- 包括払い方式の仕組みは、あらかじめ国が定めた病名と診療行為の組み合わせごとに、定額の医療費を定め、支払われるものである。
- 包括払い方式のメリットは、医療費の抑制にあり、デメリットは十分な医療行為がなされない可能性が出ることである。
でした。
日本の医療保険制度においては、財政的な問題が起きていることは事実です。
その理由の一つに出来高払い方式がありますが、それを改善する方法として包括払い方式が一部で導入されています。
この2つの方式の違いを知っておくことで、いざという時の病院選びや、治療の選択につなげていきたいものですね。