更新日:2023/11/17
船客傷害賠償責任保険とは?知床遊覧船事故の事例を用いて解説
船客傷害賠償責任保険とは、乗客の運送中に事故が起こった際の損害費用を補償する損害保険です。知床での遊覧船事故では、船客傷害賠償責任保険を使い、損害費用を保険金で支払った事例があります。船舶を用いて乗客を運搬する事業を行っている方々は加入が必要と言えます。
内容をまとめると
- 船客傷害賠償責任保険とは、保険の対象としている船舶で、旅客の運送中に事故が起こった場合の損害賠償責任を補償する保険のこと
- 補償内容は船客に対する損害賠償責任に関する費用、救助費用
- 特約に加入することで補償範囲を拡大することができる
- 船客傷害賠償責任保険の加入対象は遊覧船や貨物船、通船など 戦争や故意の事故については保険金が支払われない
- 保険金の支払限度額は1人当たりと1事故あたりで決められる
- 保険料の計算は船舶の乗客定員数や船舶の重量、事故経験の有無などにより決められる
- 知床の遊覧船事故でも実際に活用されていた
- 保険や事業のリスク対策に関する相談は「マネーキャリア」がおすすめ
目次を使って気になるところから読みましょう!
船客傷害賠償責任保険とは?
2022年4月23日に北海道の知床で遊覧船に関する大きな事故が起こったことはご存じかと思います。事故後の乗客の家族への説明会で、「船客傷害賠償責任保険」には加入していると説明していました。
そこでこちらの記事では船客傷害賠償責任保険について詳しく解説していきます。まず船客傷害賠償責任とは、保険の対象としている船舶で、旅客の運送中に事故が起こった場合の損害賠償責任を補償する保険です。
つまり船客傷害賠償責任保険は、第三者への損害賠償費用を補償するための保険です。今回の記事では以下の内容について解説していきます。
- 船客傷害賠償責任保険の補償内容
- 知床観光船事故における活用事例
- 船客傷害賠償責任保険の保険料
- 船客傷害賠償責任保険の加入方法
船客傷害賠償責任保険の補償内容
まずは船客傷害賠償責任保険の補償内容と保険の対象について解説していきます。早速、船客傷害賠償責任保険の補償内容以下になります。
- 賠償責任補償
- 救助費用
- 旅客船
- 貨物船
- 通船
- 渡船 など
保険金の支払い対象
続いては保険が支払われる対象について解説していきます。こちらの船客傷害賠償責任保険での保険金の支払い対象は以下です。
保険金支払い内容 | |
---|---|
損害賠償金 | 損害賠償費用を請求した人に支払われる治療費など |
損害防止費用 | 損害の拡大や防止に取り組んだ際に発生した費用 |
権利保全行使費用 | 被保険者が発生した事故において、別の人に損害賠償請求できる場合の権利を保全、行使する際に要した費用 |
緊急措置費用 | 乗客の応急手当などで要した費用 |
協力費用 | 事故解決のため、保険会社で協力したことで要した費用 |
争訟費用 | 裁判の費用や弁護士への報酬などの費用 |
救助費用 | 乗客を救助したり、捜索する際に要した費用 |
こちらの保険に加入しておくことで、事故の発生から事故解決まで幅広く補償することができると言うことが分かると思います。
保険金の支払いができない内容
続いては、反対に保険金の支払いができない内容について解説していきます。以下のような場合は保険金の支払い対象とはなりません。
- 定員がオーバーしている船舶での乗下船で生じた事故
- 船長や乗務員などの関係者の故意による事故
- 戦争や内乱
- 海賊行為
- 地震や噴火や津波
- 暴動や政治的な騒擾
- 燃料などにより汚染された物の放射性や爆発性が起因となった事故 など
保険金の支払限度額
最後は保険金が支払われる限度額について解説していきます。船客傷害賠償責任保険では1人当たりに支払われる保険金と1事故あたりで支払われる保険金の設定をすることが可能です。
まず船客1人当たりに支払われる保険金については、2,500万円/人~となっており、500万円単位で設定することができます。ただし希望金額が高額すぎると、保険会社が引き受けできない可能性があります。
続いて、1事故あたりに支払われる保険金ですが、上記の1人当たりに支払われる保険料に船舶検査証に記載されている乗客定員数をかけた額が支払われる保険金と、救助に要した費用としての保険金の2種類があります。
救助に要した費用については、30万円に乗客の定員数をかけた額または、1億円の内、低い額を支払限度額として設定されます。
こちらの船客傷害賠償責任保険では、免責はありません。
船客傷害賠償責任保険の保険料
続いては船客傷害賠償責任保険の保険料について解説していきます。船客傷害賠償責任保険の保険料は以下の要素で決定されます。
- 船舶の乗客定員数
- 船舶の重量
- 材質
- 装備
- 船舶の構造
- 船舶の管理状況
- 運航経路
- 過去に事故をしたことがあるかどうか など
知床観光船事故における活用事例
ここでは実際に船客傷害賠償責任保険が活用された事例を紹介します。記事冒頭でも触れたように、知床観光船事故では、船客傷害賠償責任保険の活用がされました。その事例をこちらでは詳しく解説していきます。
まず事故の内容は、 令和4年4月23日に北海道知床半島沖合で、乗客26名を乗せた遊覧船が沈みかかっていると通報がありました。こちらの事故で乗客や船長などを含めた18名が死亡し、旅客6名が行方不明となりました。
この当時の出航状況は、知床遊覧船の運行基準を超えている状況のため、本来は運行を中止すべきでしたが、船長が出航させました。
事故後に行われた被害者の家族への説明会で、運営している社長は「船客傷害賠償責任保険」に加入していると説明しました。
こちらの事故では少なくとも20人ほどが保険金が支払われる対象となると考えられます。つまり船客傷害賠償責任保険に加入していない場合、保険の上限である1億円が全ての人に支払われたとすると、20億円ほどを保険で補償できたと考えることができます。
そのためこの船客傷害賠償責任保険に加入していなければ、20億円を自社で全て負担しなければいけないと言うことになります。
船客傷害賠償責任保険の加入方法
ここまで船客傷害賠償責任保険の補償内容や実際の活用事例について解説をしてきました。そこでこちらの保険が自社にも必要と考え、加入を希望する方もいると思います。
こちらの船客傷害賠償責任保険の加入方法は、こちらの保険を取り扱っている保険代理店や保険会社に問い合わせることで保険に加入することができます。
しかし保険会社に問い合わせて、保険に加入する前に自分が経営する事業において具体的にどのようなリスクがあるのかを知った上で本当に加入すべきか検討したいという方もいるでしょう。
そんな方々には保険やリスク対策に詳しい専門家に相談できる「マネーキャリア」をおすすめします。
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まとめ:船客傷害賠償責任保険について
ここまで船客傷害賠償責任保険の補償内容などについて解説してきましたが、いかがだったでしょう。
以下が今回の記事の簡単なまとめです。
- 船客傷害賠償責任保険とは、保険の対象としている船舶で、旅客の運送中に事故が起こった場合の損害賠償責任を補償する保険のこと
- 補償内容は船客に対する損害賠償責任に関する費用、救助費用
- 特約に加入することで補償範囲を拡大することができる
- 船客傷害賠償責任保険の加入対象は遊覧船や貨物船、通船など
- 戦争や故意の事故については保険金が支払われない
- 保険金の支払限度額は1人当たりと1事故あたりで決められる
- 保険料の計算は船舶の乗客定員数や船舶の重量、事故経験の有無などにより決められる
- 知床の遊覧船事故でも実際に活用されていた
- 保険や事業のリスク対策に関する相談は「マネーキャリア」がおすすめ