事業承継にも消費税が課されるってほんと?事業承継の消費税の仕組み

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事業承継には相続(贈与)税や所得税以外にも消費税が課される場合があるのはご存知ですか。また、事業承継の消費税は課税になる場合もあるため、知らずに損してしまうこともあります。本記事では事業承継の消費税の仕組みについて詳しく解説します。ぜひ最後までご覧ください。


▼この記事を読んで欲しい人
  • 事業承継の際にどんな税金がかかるか知りたい方
  • 事業承継の際、どれ位の税額がかかるか不安な方
  • 税金の申告方法が知りたい方

▼この記事を読んでわかること
  • 事業承継には消費税が課される場合もある
  • 譲渡(贈与)の仕方でも消費税が課される状況は変わって来る
  • 事業承継の際はのれん代・棚卸資産等へ注意する必要がある

内容をまとめると

  • 国内で事業者が事業を営む場合、そのほとんどに消費税がかかる
  • 個人事業主が承継を行う際は後継者の納税義務も確認しておく
  • のれん代の評価が高いと、その消費税額も大きくなる
  • 事業承継の相談は、何回でも相談無料のマネーキャリア法人保険相談が最適
  • マネーキャリアは顧客満足度93%、オンラインで簡単に予約ができます!

目次を使って気になるところから読みましょう!

事業承継には相続税・所得税に加えて消費税が課される場合がある

こんにちは、マネーキャリア編集部です。


先日、事業承継先がようやく決まりそうな経営者の方からこんな相談がありました。


「私の息子が事業を承継すると言ってくれた。ようやくひと安心といったところだ。しかし、事業承継を行う場合に税金はかかるのだろうか。後継者に重い負担とならないか心配だ。課される税金があれば教えてもらいたい。」とのことです。


ようやく後継者候補も見つかり、いよいよ事業承継へ向けた作業が動き出し、安心する現経営者は多いことでしょう。


しかし、どのような税金が課されるのか、後継者に重い負担とならないか、よく検討する必要があります。課税される段階となって慌てる前に、税金の特徴や仕組みを知り備えておきたいものです。


今回は事業承継の消費税の特徴や仕組み、申告方法や押さえるべきポイント等を解説します。事業承継に課される税金を事前に把握し、対策を打ちたい経営者の皆さんのお手伝いとなれれば幸いです。

個人事業主に課される消費税の仕組みと計算方法

事業を営む皆さんには「消費税」が課税される可能性もあります。ただし、どんな個人事業主にも課税されるわけではありません。


まずは課税対象の条件等を良く把握し、申告・納付の有無を判断する必要があります。


こちらでは、

  • 消費税の課税対象とは?
  • 消費税税率等について
  • 消費税の納税義務者について
  • 消費税が免除されるケース
以上を解説します。

消費税の課税対象は国内における全てのサービス・商品

消費税の課税対象は、事業者の全ての行動が対象となるわけではありません。次のような行動
  • 国内で事業者が事業として対価を得て行う資産譲渡等
  • 輸入取引
が課税対象です。

国内で課税対象となる取引等

個人事業者や法人が対価を得て譲渡等を繰り返し、継続・独立して行う行為が対象です。つまり、事業活動のほとんどが課税対象になるとみて間違いありません。

ただし、会社員や無職の方々が自家用車等の財産を手放す行為は該当しません。このような1回きりで終わる行為は対象外です。

また、物品の販売等を実施して反対給付を得る必要があります。そのため、個人事業者や法人の寄附金や無償の取引は原則として課税されません。

その他、事業として有償による商品・製品等の販売、資産の貸付・サービスの提供いずれかであることが必要です。

輸入取引

外国貨物の引取りの場合、保税地域(外国貨物の保管・加工・製造・展示等ができる場所)から引き取られる物が課税対象です。こちらの場合、引き取る者が誰であるかは問われていません。つまり、事業者はもちろん一般消費者も納税義務者となるのです。

現在の日本では消費税税率は10%軽減税率が8%となっている

消費税率は皆さんがご存知の通り10%となっています。例えば10,000円の品物には消費税として1,000円がプラスされ、「11,000円」を支払うことになります。


しかし、一定の商品の場合、税額は8%に軽減される制度があります。それが「軽減税率」です。事業者はこの軽減税率を考慮に入れつつ、税額の算定が求められます。


軽減税率の対象は

  • 飲食料品(ただし酒類、外食等を除く)
  • 定期購読契約を締結し週2回以上発行される新聞
が該当します。

具体的に対象となる商品は次の通りです。
  • 飲用または食用に該当する商品
  • テイクアウト・宅配
  • 学校給食、有料老人ホームでの飲食の提供サービス
等が該当します。

消費税の納税義務者は「商品の上乗せ消費税ー仕入れ時の消費税」を納付

消費税は事業者が商品をお客に売り、利益を得る場合はもちろん、お客へ販売する商品を卸売業者から仕入れる際も課税されます。


消費税の納税義務者は、課税されたこれら税金分を全て申告・納付するのではなく、次のように納税額を算定します。

  • 「商品の上乗せ消費税」ー「仕入れ時の消費税」

こちらでは事例をあげて実際に申告・納付する税額をみてみましょう。


(例)小売業者の場合

  • 売上:20,000+(1)消費税2,000円
  • 仕入:8,000+(2)消費税800円
事例では売上に(1)消費税2,000円、仕入に(2)消費税800円がかかっています。この場合、(1)-(2)を差し引いた税額を申告・納税することになります。

2,000円-800円=1,200円

1,200円分を納付税額として申告・納税します。

課税売上高が1,000万以下の事業者は消費税が免除される

国税庁「納税義務の免除」にて、原則として消費税が免除される事業者は「基準期間における課税売上高が1,000万円以下」と明示しています。事業者であれば、必ず消費税の申告・納税をしなければいけないわけではないのです。


この基準期間とは、消費税の納税義務が免除されるか否かを判断する期間のことです。個人事業者はその年の前々年(法人:その事業年度の前々事業年度)が当該期間です。前年ではないので注意が必要です。


また、年商が単に1,000万円を超えたからといって、無条件に消費税課税事業者となるとは限りません。次の売上高をカウントすることになります。


そもそも課税売上高とは

  • 消費税がかかる売上の合計額
  • 輸出取引等の免税となる売上の合計額
を合わせた売上高を指します(消費税は含まず)。

特に個人事業主の場合、これらの条件を超えるケースは限定されるとみて間違いないでしょう。

事業者の行う取引にある消費税の種類について

事業者の行う取引は、何でも消費税の課税対象となるわけではありません。中には税金をとらない方が良いと判断された取引もあれば、課税される要件を満たしていないのでとらないという取引もあります。


こちらでは

  • 不課税取引とは?
  • 非課税取引とは?
以上を解説します。

事業者の行う取引は「資産の譲渡等」と「不課税取引」の2つがある

資産の譲渡等が消費税の課税対象になるのは、既に述べた通りです。しかし、取引の中には「不課税取引」となるものもあります。


不課税取引は

  • 事業者が事業として行う取引
  • 国内取引
  • 対価を得て行われる取引
  • 資産の譲渡、貸付け及びサービスの提供
要件の全部または一部に該当しない場合が対象となります。

具体例をみてみましょう。
  • 従業員の給与・賃金→雇用契約なので事業に該当せず
  • 寄附金や祝金、補助金→対価ではない
  • 無償取引→対価がない
  • 保険金→保険事故で受け取るお金なので、対価に該当せず
  • 配当金→株主の地位があって受け取れるお金、対価に該当せず
  • 物品を盗難・滅失した→資産の譲渡等に該当せず
  • 賠償金:損失を埋めるために支払われるお金、対価に該当せず
保険金や賠償金は、契約内容や損害等のケースによって莫大な金額を得られることもあります。しかし、どんなに大きなお金が動いても、対価性が無い以上は不課税となります。

資産の譲渡等には課税取引になる場合と非課税取引になる場合がある

前述した課税要件に本来合致する取引でも、課税すべきではないを判断された取引を「非課税取引」と呼びます。この取引は大きく2つに分かれます。


消費税の性格になじまない取引

次の貸し付けや譲渡、手数料が非課税取引に該当します。

  • 土地の譲渡・貸付け
  • 有価証券等の譲渡
  • 利子を対価とした貸付金、保険料を対価とした役務の提供
  • 郵便切手、印紙、証紙等の譲渡
  • 国、地方公共団体等の手数料
  • 国際郵便為替、外国為替業務
ただし、土地の譲渡・貸付けであっても、例えば皆さんが一時的にマイカーを駐車するとき利用する駐車場等の施設の場合、利用料は課税されます。

また、有価証券等の譲渡では、収集用や販売目的のものはやはり課税されてしまいます。

社会政策上の配慮されるべき取引

課税対象にはなり得ても、医療や出産、介護等を受ける方々の税負担を増やすべきではない、との配慮から非課税となる取引もあります。
  • 公的医療、高齢者の医療確保、身体障がい者等の法律に基づく医療
  • 助産費用
  • 埋葬料、火葬料
  • 特別養護老人ホームやホームヘルパー等の在宅サービス
  • 幼稚園、小中高校、大学等の授業料および入学検定料、教科書用図書等
  • 住宅の貸付け等
医療の場合、健康診断や美容整形等の費用は課税対象です。また、埋葬料、火葬料には課税されないものの、一般の葬儀費用には課税されます。

この様に、一見非課税となり得るような取引でも、消費税が課される場合はあるので注意しましょう。

消費税の計算方法について

消費税の納付税額の計算は次の通りです(課税売上高は税抜き)。


課税期間中の

  • 課税売上に係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額
売上税額・仕入税額は
  • 標準税率対象→税込売上額(または税込仕入額)×7.8/110
  • 軽減税率対象→税込売上額(または税込仕入額)×6.24/108
で算定します。このようにかける割合が異なって来るので注意が必要です。


計算の方法としてはまず標準・軽減税率ごとに計算し、売上・仕入消費税額をそれぞれ算定します。

事例をあげて計算してみます。

標準税率の対象(単位/万)
  • 税込売上:6,000
  • 税込仕入:2,500
軽減税率の対象(単位/万)
  • 税込売上:3,000
  • 税込仕入:1,000

(1)売上額は

(6,000×7.8/110)+(3,000×6.24/108)=598

(2)仕入額は

(3,000×7.8/110)+(1,000×6.24/108)=271

(1)-(2)で

598-271=327

消費税の納付税額は327万円となります。

どれが標準税率となるのか、軽減税率となるのかをしっかり分類するのは骨の折れる作業です。しかし、それらを区分した後の計算方法はシンプルと言えます。

消費税が課される資産例【有形固定資産と無形資産】


事業者は取引に関する消費税の納税の有無、その税額等をよく確認する必要があります。その他に、現在の会社等を承継(売却等)するときも課税される場合があります。


M&Aによる事業承継で会社が売却される場合、消費税の課税対象となるのは次の資産です。

  • 所有している建物
  • 車両運搬器具
  • 器具・備品
  • 機械等の装置
  • 船舶や飛行機
等が該当します。これらは「有形固定資産」と呼ばれています。

一方、
  • 漁業権等
  • 特許権
  • 商標権
等も対象です。これらは「無形資産」呼ばれています。

一見、無形資産は「物」として存在していないので、消費税が課されることに納得のいかない方々もおられることでしょう。

しかし、漁業権は一定の水面で漁業を行う排他的独占的権利ですし、特許権ならば発明に排他的支配権が設定され、商標権は商品や役務の事業者が他者と区別するための標識を独占的に使用できる権利です。

この形の無い権利により、事業として大きな利益があげられる以上、課税対象となるのです。

事業承継における個人事業主への消費税の3つ仕組みを解説


事業承継先が決まって安心している現経営者は多いことでしょう。しかし、承継先の決定は第一ステップであり、第二ステップ以降は実際の承継の実行、生じる課税への対応が求められます。


こちらでは、

  • 個人事業主の無償譲渡(贈与)のケース
  • 個人事業主の有償譲渡(贈与)のケース
  • 相続が発生したケース
以上を解説します。

個人事業主の事業承継①「無償譲渡(贈与)と消費税」

個人事業主が、ご自分の事業用資産を個別または全部を無償で贈与するケースの場合、次のような税金がかかります。

  • 個人が譲受→譲渡する個人事業主は課税なし
  • 法人が譲受→譲渡する個人事業主はみなし譲渡所得課税(所得税)の可能性

このケースならば譲受側は資産を得るので、税金の支払い義務が生じます(後継者が個人の場合は贈与税、法人の場合なら法人税)。


一方、事業を譲渡する個人事業主側は、対価を受け取らない以上、基本的に税金を支払う必要もないです。当然ながら個人事業主側に消費税が課されることはありません。


しかし、個人から法人へ譲渡する場合は、たとえ無償であったとしても、「みなし譲渡所得」が発生するケースもあります。


この所得は、無償または著しく低い価額で資産を譲渡した場合、時価で譲渡したとみなして課税される税制措置のことです。


こちらは時価の1/2未満で譲渡した場合に適用されます。税法上、贈与した資産の時価が取得価額より高い場合、その値上がり益が譲渡所得の対象となり、所得税が課されます。

個人事業主の事業承継②「有償譲渡(贈与)と消費税」

個人事業主が有償で譲渡するケースの場合、次のような税金がかかります。

  • 個人・法人が譲受→譲渡する個人事業主は所得税・消費税を支払う
個人事業主→個人・個人事業主→法人いずれの事業承継のケースでも、資産を売却して得られた対価のほとんどは現金となるはずです。

ほとんどの場合、金銭での取引となります。この場合は、譲渡(売却)側が受け取った現金は所得として扱われます。売却側は所得税・消費税双方を支払う必要が出てきます。

一方、譲り受けた個人は所得税・消費税を、譲り受けたのが法人ならば法人税等を支払うことになります。

個人事業主の事業承継③「相続と消費税」

個人事業主が亡くなり、個人や企業が相続という形で引き継ぐケースもあります。この場合は

  • 個人が相続した→相続税
  • 法人が相続した→法人税
が課されます。

個人事業主が亡くなっている以上、被相続人に税金が課されることはありません。一方で相続の発生後、相続人の中から承継する人が決まった場合、相続税を支払うことになります。

後継者が相続で引き継ぐケースでは、先代の課税売上高も引き継ぎます。よって、一定期間経過後、消費税の申告・納付が必要な可能性もあります。

事業承継における法人への消費税の仕組み

法人の場合でも経営者が高齢となり、親族や従業員を後継者として事業承継する場合、同業他社へM&Aを利用し事業承継する場合等があります。こちらも事業承継は無償と有償とが考えられます。


こちらでは

  • 法人の無償譲渡(贈与)のケース
  • 法人の有償譲渡(贈与)のケース
  • 有償譲渡時の必要書類
以上を解説します。

法人の事業承継①「無償譲渡(贈与)と消費税」

株式会社の事業承継では、後継者の経営権を盤石にするため、株式譲渡が行われます。株式譲渡を行う際、いきなり譲渡はできません。その場合は、株主総会・取締役会での譲渡の承認等が必要です。


無償の場合の税金は次の通りです。


(1)法人→個人へ譲渡

  • (譲渡する側)法人:法人税
  • (譲り受ける側)個人:所得税
個人に無償で譲渡した場合、内容によっては「寄付金」「役員賞与」等という形で課税を受けます。もしも、実質的に役員への利益供与と判断されたならば「役員賞与」と判断され、その全額に法人税が課税されます。

一方、譲り受ける側が個人ならば、贈与税は個人→個人の場合に課税されるものなので該当せず、所得税が課されることになります。事業用資産の譲渡価額に対しては消費税等が課されます。

(2)法人→法人へ譲渡
  • (譲渡する側)法人:法人税
  • (譲り受ける側)法人:法人税
譲渡する側も譲受する側も法人税がかかります。基本的に時価部分へ法人税の課税判定がなされます。事業用資産の譲渡価額に対しては消費税等が課されます。

法人の事業承継②「有償譲渡(贈与)と消費税」

こちらも、事業用資産の譲渡価額に対して消費税等が課されます。有償の場合の株式譲渡は次の通りです。


(1)法人→個人へ譲渡

  • (譲渡する側)法人:法人税
  • (譲り受ける側)個人:所得税
譲渡する側の法人は確実に法人税の対象となりますが、譲り受ける側が個人の場合、適正な取得時価で譲り受けた場合、課税関係は生じません。時価より高い価額で譲り受けた場合も同様です。

(2)法人→法人へ譲渡
  • (譲渡する側)法人:法人税
  • (譲り受ける側)法人:法人税
譲渡する側も譲受する側も法人税がかかります。ただし、譲り受ける側が適正な取得時価または時価より高い価額で譲り受けた場合、課税関係は生じません。

有償譲渡(贈与)の場合の必要書類について

M&Aによる有償で事業承継を行うことに当事者が合意した場合、譲渡する側は株式等の引き渡しを、譲り受ける側は対価の支払いを行います。これを「クロージング」と呼びます。このクロージングの際、必要書類を準備しなければいけません。


譲渡側が用意する書類

株式譲渡(売却)に関して、承認を得た旨の書類が必要となります。主に次の書類を揃えます。
  • 株主名簿の写し:会社実印押印済
  • 名義書換の委任状と印鑑証明書または名義書換済の株主名簿の写し
  • 株式譲渡承認申請書、株式譲渡承認書(譲渡制限株式の場合)
  • 売主の証明書:交渉当事者が必要と認めた場合
このように現経営者の独断で事業承継を行うわけではなく、株主総会または取締役会で承認を得たという証明が必要となります。

株主総会または取締役会で、株式譲渡に関して異論が噴出し手続きがなかなか進まない場合、書類の作成等も遅れてしまう点に注意が必要です。

譲受側が用意する書類

株式譲受(買収)に関して、主に次の書類を揃えます。

  • クロージング書類の受領書:事業承継契約に必要な書類を受け取ったことを証明
  • 印鑑証明書
  • 登記事項証明書
このように買収するお金だけではなく、事業承継を行う意思のあること示すため上記の証明書も準備します。

なお、用意する書類は特に法定されていないものの、当事者が必要と感じた書類は追加で準備することとなります。

事業承継(親族内承継)をした場合に課される消費税について

個人事業を行う現経営者に親族がいて、例えば子が事業承継の意思を示した場合、概ね親族内承継が行われることでしょう。もちろん、後継者として相応しい人物になるよう育成する期間等も必要です。その他、気になるのが後継者の消費税納税義務ではないでしょうか。


こちらでは、生前承継」そして「相続承継」が行われる場合、それぞれについてみていきましょう。


生前承継の場合

生きている間に承継をする場合、いったん事業の廃止手続きを行い、後継者が開始手続きをします。この手続きは株式会社の承継方法と大きく異なる部分です。


一方、後継者が事業承継する前に事業も起こしていなかったならば、「開業届」を税務署に提出します。


消費税は原則として、開業後2年以内は納税義務が発生しません。ただし、開業して何年たっても課税売上高が1,000万円以下の場合、納税義務は生じません。


相続承継の場合


ご自分が亡くなり、相続により相続人の誰かが事業承継をするという場合、相続人の手で事業の廃止手続きを行い、後継者が開始手続きをします。ただし、相続による承継の場合は、先代の課税売上高も後継者が引き継ぎます。


例えば次のケースでは後継者が消費税の納税義務者として納付が必要です。


(例)令和2年に先代が死亡、相続で後継者が承継


  • 先代:課税売上高700万円
  • 後継者:課税売上高500万円

→合計1,200万円


令和4年に後継者は消費税を納める必要があります。つまり、先代が消費税課税事業者で無かったとしても、後継者の課税売上高と合わせて1,000万円を超えると課税事業者に該当してしまうのです。

事業承継(親族内承継)消費税に関する必要書類について

消費税は大切な税金ですが、はたして消費税に関する提出書類はどんなものがあるのか、気になる方々も多いはずです。そもそも商品やサービスを受ける場合、消費税は価格に付加されているのが通常です。


こちらでは

  • 必要な書類とは?
  • 免税を受ける際の書類

以上を解説します。

納税する場合とくに必要な書類はない

消費税の納税に関して、特に必要な手続きはありません。課税売上高1,000万円以下なら納税義務が免除され、1,000万円を超えたならば納税義務が発生します。


ただし、

  • 基準期間・特定期間に課税売上高1,000万円超え、逆に1,000万円以下になった
  • 免税事業者が課税事業者を選択
  • 新設法人で課税事業者に該当する

という場合、税務署に届出が必要です。


つまり納税の場合、特に手続きは必要ものの課税事業者に該当する、またはしなくなったという時は、税務署側へ知らせる必要があるのです。

免税を受ける際には「消費税課税事業者選択不適用届出手続」が必要

先代の個人事業主が消費税課税事業者であったならば、後継者がその事業を引き継いだ場合は消費税の納税義務も発生します。


とはいえ、後継者が引き継いだからと言って、先代と同じように課税売上高1,000万円超える利益を得られるかはわかりません。後継者としては、免税事業者からはじめたいものです。


後継者が消費税を課税されないようにしたいなら、「消費税課税事業者選択不適用届出手続」を行います。こちらは、免税事業者に戻るための手続きです。提出は、免税事業者へ戻ろうとする課税期間の初日の前日までに行います。


ただし、この手続きをすれば必ず免税されるとは限りません。特定期間(個人事業者:その年の前年1月1日~6月30日)における課税売上高が1,000万円を超えると、やはり課税事業者となってしまいます。

事業承継の消費税に関してポイントを解説

事業承継の際に、現経営者としては「現時点で消費税がどれ位になるのか、いまいちよくわからない。」という利益・資産があるはずです。事業承継を行う上で課される消費税は変動するものが多い点に注意しましょう。


こちらでは

  • のれん代の場合はどうなる
  • 棚卸資産について
以上を解説します。

のれん代が大きい場合事業承継はおすすめできない

事業承継のとき「のれん代」の評価が大きい場合には、消費税額も大きくなる点に注意しましょう。事業承継で譲渡側(売り手)が大きな売却利益を得ても、重い消費税の負担で手元に残るお金が少なくなる事態も想定されます。


この「のれん代」とは無形固定資産であり、次のようなものが対象です。

  • 企業のブランド
  • 保有するノウハウ
  • 顧客との関係(パイプ)
  • 従業員の能力等
のれん代は長い時間をかけ、企業の地道な事業活動の積み重ねによって構築されたものです。M&Aによる事業承継の際は、譲受したい企業(買い手)から高い評価を受けることもあります。

高い評価自体は、経営者であるご自分の事業が認められたことを意味します。しかし、のれん代にも消費税が課税されます。

のれん代は譲渡側(売り手)は経営利益の3〜5年分を言われています。しかし、のれん代は例えば「経営利益が〇〇億円なら、のれん代は〇億円になる」と、明確に法定されていません。そのため、予想外にのれん代が大きくなることも考えられます。

事業承継当日までわからない棚卸資産には注意が必要

「棚卸資産」は毎日のように変動するため、事業承継当日にその消費税の負担が大きくなることも考えられます。


棚卸資産は一般的に「在庫」とも呼ばれています。事業者が販売する目的で一時的に保管している、商品や製品、原材料、仕掛品が該当します。


ご自分の商品や製品等が飛ぶように売れれば、棚卸資産はどんどん減少していくかもしれません。つまり在庫がない状態もあり得るはずです。


しかし、棚卸資産は毎日のように変動します。棚卸資産にも消費税が課税されるので、事業承継時に棚卸資産を多く抱えている場合、やはり消費税額も増えるのです。


取引の需要をよく考慮しても、事業承継当日に自社の棚卸資産がどうなっているかは、なかなか予測の難しい面があります。

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ここまで読んできて個人事業主・中小事業者の方々は、消費税が思っていたよりも負担となり得ること、節税方法を工夫する大切さを痛感したことでしょう。課税の仕組みや方法に関し、疑問や不明点があれば、なるべく早めに専門家へ相談した方が無難です。


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相談員は専門家ばかりなので、税金等の仕組みをわかりやすく説明し、利用者にとって有益なアドバイスを提案してくれるはずです。

まとめ:事業承継は生前贈与なら譲渡側に消費税が課されないからお得

今回は事業承継の消費税の特徴や仕組み、申告方法や押さえるべきポイント等を解説してきました。


事業承継の際、後継者を誰にするかという課題はもちろん、消費税をはじめとした課税に関することも、大きなハードルであることがおわかりになったはずです。消費税等をなるべく抑えた事業承継方法を、今後検討していくことが大切です。


今回は

  • 消費税は、ほとんどの事業者の事業活動が課税対象となる
  • 事業者は消費税税率・軽減税率双方を確認する必要がある
  • 取引には非課税取引や不課税取引も存在する
  • 事業承継には消費税の他、いろいろな税金がかかる
  • 消費税がどれ位かかるのか予測の難しい資産等もある
消費税があまりに多額となる事業承継ならば、無理に進めることは避けた方が無難です。事業承継とは別の方法を模索したり、税を軽減する措置等の利用も検討したりして、節税対策を考えていきましょう。

マネーキャリアでは、他にも読んで頂きたい記事が多数掲載されていますので、是非ご覧ください。

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